※この作品はR-18です。

〜兎と鴉と女神達〜   作:坩堝の騎士王

21 / 23
[シュピーゲル]
エルカノが開発した護身用シールド
普段はアタッシュケース状になっているが非常の際は折り畳み式のタワーシールドへと変ずる。盾はIS合金の中にこっそりガッデシアムを錬成しており板金された盾の中ではノアに次ぐ最高峰の防御力を有している。

ガッデシアムはインテグレーション・プログラムの景品。
インゴット塊が3つだった



鴉と鋼の女神達(中)

 

ーアリーナ廊下ー

 

廊下の非常灯と応援に使う為に持っていたペンライトを頼りに進む1年三組の生徒達は、途中の分かれ道でグループ毎に別れて、避難者の誘導に当たっていた。

 

一年観客席〜

 

「皆ー!こっち!!」

 

「キリノちゃーん!こっちにパニック起こしちゃってる人がー!!!」

 

「背中を摩って!ゆっくりとねー!」

 

「大丈夫?怪我してない?」

 

「歩ける人はこっちに来て、ホシノちゃんの後ろついてってー」

 

突然のパニックで転んだり、落下物で負傷したり、パニックを起こした子達のケア活動をしている面々。その中でもホシノと呼ばれた子は、避難者の先導役として唯一の扉の前でエルカノ製アタッシュシールド[シュピーゲル]とショットガン(あくまで対人)を構えて見張っていた。

対するホシノは何時もの、のんびり屋の雰囲気をかき消して鋭い眼光で非常灯の着いた廊下をジッと見ていた。

 

「(…ハスラー君にあれだけ言われたんだ。この役目はきっちり果たさないとね〜)」

 

「ホシノちゃん!軽傷の人達纏めたよ!」

 

「OK♪それじゃ、着いてきて……」

 

……別の場所では……

 

「ク……クロエちゃん、その赤いロボットは……」

 

「……」

 

ー……認証…ターゲット更新……

 

ナインボール・アサルト(NB仕様)がクロエ達の前に現れた。

この事態を予期していたハンドラーが手配していたのか、大型ヘリの中に格納されていた一機に[NEST]がオブザーバーとして伝送。

それのおかげか、ナインボールが起動して即、クロエの危機を察知して飛んできた。

 

「…アサルト様。…こちらに居られる皆様の護衛をお願い致します…」

 

そう言ってクロエは自らが持っているアタッシュケースを開き[44ー143 FIELD]の待機形態を取り出し展開した。これは現地で要救助者や負傷兵の保護の為にパルスバリアによるフィールドを作る装置である。。

 

ーマスター・クロエ…進行方向の奥カララプチャート思シキ多数ノ反応…同時二ソレヲ追ウ人(・)型(・)ト(・)思(・)シ(・)キ(・)何(・)者(・)カ(・)ガ(・)時(・)速(・)9(・)0(・)k(・)m(・)デ(・)接(・)近(・)中(・)……

 

そう言うとナインボールは、左肩の大型キャノン砲と右肩の二連8分裂ミサイルそして右手の連射型パルスガンのロックを解除し迎撃体制を整えた。…物凄く気になるのが時速90kmで走る人型生命の存在だ。其れはハスラーに聞いたNIKKEと名乗る者達の1人だと見受けられる。

 

「それは不味いですね。…[FIELD]があるとはいえ…おや?」

 

クロエが感じた視線の先には、二〜三人の女生徒…しかも一年三組の人達で、それぞれの手には鉄パイプや機動隊のライオットシールドを持っていたのだ。

 

「クロエちゃん!私たちにも手伝わせて!」

 

「クロエちゃんがダメと言っても私たちは自分の意思でここに居るからね!!」

 

自らの意思でここに居ると言われてはさすがにクロエも言い返せない。

その様子にクロエは瞑目しながら考えて、やがて3人のクラスメイトと目を合わせるとこう言った。

 

「…自らの意思と言われると言い返せませんね。尊重します。故に、私からも……死ぬのは許しません。貴女達は世界の裏……その戸口に立っています。踏み込む覚悟はおありですか?」

 

「「「うん!!」」」

 

「では、ここより先から来る機械を通さないようにしてください。

その後ろからハスラー様の知っている援軍が来ています。…ナインボール様もおりますので貴女達が死ぬ危険はありませんが、ご武運を!」

 

「クロエちゃん……え゛っ?!何そのキャノン」

 

「…[ドンナー]…マキナ様が開発なされた高圧電流を帯びた特殊弾頭を射出する[スタン弾ランチャー]です。機械類に当てた効果は数発で荷電負荷を起こしショートするとされています。生命体もほどによりますが二、三発で大概は黙らせられます♪」

 

にっこりとえげつない事を言うクロエに、ドン引きしながら引きつった笑みを零す三人。

 

 

 

……一方のアリーナでは……

 

 

 

……白磁。

第一印象がそうとしか見えない美女が、ラプチャーと呼ばれる機械を光の雨を持って薙ぎ払い降臨。

女性らしさを惜しげも無く晒した肢体・四枚のシールドが回転しながら周囲へと青い光を放った砲口を見せつけている。

 

リバーレリオはその端正な顔を歪め、残ったラプチャー達は威嚇を始める。

ふわふわと揺らめくフリルドレス姿はおとぎ話のシンデレラと相違無く、見る者の視線を釘付けにしている。そんな中、ハスラーに向かってひとつの影が飛び込んだ。

 

『やっほぉぉぉ!!』

 

『…ペローナ!?久し振りだ。シンデレラもあれから大事無いか?』

 

『(*^^*)』

 

白磁の女神にシンデレラと呼ぶとにこりと微笑んだ所を見るにシンデレラは彼女の名前と伺い知れる。

するとハスラーの身体から力が抜けたのかがくんと地面に膝を着いた。

すぐ様反応したペローナによって支えられるが、今の戦いのダメージは途轍も無く蓄積されていた事をその体が示していた。これ以上やると取り返しのつかない事になると……

 

『レイヴン!大丈夫!?』

 

『……大丈夫…じゃねぇな…すまんな…支えてくれて』

 

ーメインシステム、通常モードに移行ー

 

これ以上は戦闘継続がこんなんだと分かり[オルトゥス]のシステムを通常モードに切り替えて、敵を見据える。

HEADパーツは左眼が裂けて、ハスラー自身の蒼い眼が顕になり、左肩のアーマーは損壊し肩が露出……右腕のパーツは歪んでいる。

 

『ッッッ(アバラにヒビ入ったな…右腕もすげぇ痛む…鎮痛剤無いのが惜しいな…)』

 

『…レイヴン?痛み止め…要る?』

 

ペローナに支えられたハスラーの左サイドにふわふわと降りて来たシンデレラは一粒の錠剤を取りだした。[エデン]で作られたソレは、[人間]用に調整された鎮痛剤。

当然余所見をするシンデレラに光線が発射されたが、飛来した一枚の盾に光線が炸裂するも吸収される。

更に2枚の盾から、青色の光が礫となり光線の発射先に降り注ぐ。

 

青色の礫が命中した暫く後、煙の中から、尻尾をズタボロにされている[インディリビア・エスコルピオ]が這い出て来る。

 

『…すっげ……』

 

ハスラーの大暴れもそうだが、見てるだけでも凄く硬い蠍の化け物を意図も容易くボロボロにしたシンデレラと名乗る少女は織斑一夏からしても凛々しく[戦場の女神]と称するに相応しい風貌をしていた。シンデレラとペローナの様子を見るにハスラーとは知り合いでハル・ハスラーがレイヴンとして活動してる時に助けられ今、助ける側になったのだと確証は無いがそう見えた。

 

そこに観客席の入口から声が飛ぶ。

 

「ハスラー君!!観客の避難終わったよ〜!!!クロエちゃんが通路の隔壁をオーバーライドで開けてくれてスムーズに進んだの!!!後、クロエちゃん曰く、ナインボールと誰かが外にいる機械蜘蛛軍団相手にしてくれてるってー!!」

 

 

「「「「「!?!?!?」」」」」

 

 

その報告は、3組が主導して観客をVIP席に到るまで全て避難させたという報告。

其れにクロエ・クロニクルがISの施設をオーバーライドし通路で降りていた隔壁をこじ開けたおかげで避難がスムーズに進んで終了。そしてアリーナの外にも居るらしい機械蜘蛛の大群をナインボールと名乗るナニカと誰かが蹴散らしているという報告だった。

 

リバーレリオの顔はこれ以上無いくらいに眉間に皺の寄った嫌な顔をしており、明らかに不機嫌な事が分かる。

そんなリバーレリオの感情を知ってか知らずか、更識楯無がISのオープンチャンネルを使って大々的に説得を試みたのか言葉を紡ぎ始めた。

 

『…虚ちゃん。戻ってきて、虚ちゃんはこんな事…今なら私が何とかするわ。だからお願い…』

 

『こんな事……ですか…きっと悪い夢だとか、言うんでしょう?私はこれが夢と言うなら永久に覚めない方を望みます!鴉の手から溢れた私はそうするしか無いんですよ!!』

 

更式楯無による説得の言葉を遮るようにリバーレリオは感情を込めながら、言葉を紡ぐ。

そして今、この状態が夢だと言うならばいっそそのままでも構わないと意志を示した。

最後に自らを助けてくれなかったハスラーに対しての文句も添えて……

それに対し、ハスラーが自らの心に秘めた言葉を言う。

 

『…それがお前の選択か…並ば言(・)葉(・)は(・)不(・)要(・)。』

 

『ッッッ……いえ、今更、憎んでも仕方ないです。たまたま私がそうだっただけなんです。貴方は私の数倍も私になるはずだった者達を助けて導いています。…私は深いですよ?』

 

ーギシャァァァァァァ!!!!!!

 

理解出来る者は余りいない意味深な会話が繰り広げられるが、それを中断する様に金属を引き裂く様な声を張上げながらインディリビアが、蠍のアギトを開いてハスラーめがけて飛びかかる。シンデレラは四枚のガラスの靴でシールドを貼るがその眼前に白と桃色が特徴の影が滑り込むと……

 

ードゴォォン!!!

 

蠍(・)の(・)顔(・)面(・)に(・)腰(・)の(・)入(・)っ(・)た(・)右(・)ス(・)ト(・)レ(・)ー(・)ト(・)を(・)ぶ(・)ち(・)込(・)ん(・)で(・)吹(・)き(・)飛(・)ば(・)し(・)た(・)。

 

『『『『( ゚д゚)』』』』

 

『……ヘレティック二体は、流石に状況的に不利です。…良く耐えました。シンデレラ…そしてお久しぶりです。独立傭兵レイヴン?』

 

砂埃を払い純白に金縁の鎧を纏って降り立ったのは、Gs.Ⅱドロシー。

エデンの党首にしてハスラーが出会ったNIKKEの中で紛れも無い最強格に位置する。

見た目でも数十トンはある蠍の化け物を10数mは容易く殴り飛ばした優雅なお嬢様…と言う属性の多さに驚愕のままで固まった会場。

 

『ドロシー様✨️…』

 

『わ〜お…』

 

『』

 

今のアリーナは人間の限界を容易く踏み越えた超越者のバーゲンセール状態。

リバーレリオは、継(・)承(・)さ(・)れ(・)た(・)記(・)憶(・)で知ってるのか物凄い怠そうな顔になったが、後ろから爆音を立てて襲来したインディリビアが大きなハサミをドロシーに振り上げたのを見てほんの少し表情が緩む。

 

ーコノ!!!!女神風情ガァァァァ!!!!

 

『では……任せましたよ?"蕾花"、"紅蓮"?』

 

インディリビアに用は無いと言わんばかりに後ろを向いたドロシー。

火に油を注ぐとんでもない言葉だがドロシーには背中を託せる仲間が居る。心の底から信頼を寄せたゴッデスの親友達が……

故に、後を託す。何故なら……

 

斬鬼はインディリビアを赦して等いないから…

 

 

『ー桜花裁断ー』

 

『…十日紅・斬!!』

 

色の違う二種類の斬撃。……薄桃色の斬撃がエスコルピオのハサミを幾重にも切裂き、……朱色の斬撃が一刀の元、巨大で分厚い尻尾をぶった斬った。

ドロシーは、降り注ぐ残骸を尻目にライフルを構えると唱えた。

 

『ー神白飛翔ー』

 

其れはNIKKE達が持つバーストと呼ばれる奥義…銘を呼ばねばならないが、ラプチャーのべらぼうな耐久性能を問答無用でぶち抜ける…ハスラーのオーバードウェポンみたいな物だ。

貫通力に重点を置いた銀弾はインディリビアの中核付近をぶち抜いた。

それにより維持限界を迎え残骸と共に爆散したインディリビア……崩れた鉄の巨躯は無惨に崩壊し、中心には息も絶え絶えなインディリビアが立っていた。

その右手からは肉と骨の変わりにコードと部品が見え血の代わりにオイルがボタボタと流れ落ち人じゃない事を示していた。

 

『……彼奴!!サイボーグか?!』

 

『違うけど違わないさ。織斑一夏…ここに居るNIKKEは人類守護の盾、ヘレティックは、怨みと怒りで人類を滅ぼそうと目論む奴等だ。…俺も何度が交戦したことはある。Mechanized Memories(機械化された記憶)…って奴かもな。』

 

『なっ?!?!』

 

『…そうなのか……ハスラー…やっぱお前カッコイイな✨✨』

 

そう言いながら、増援の如く押し寄せるラプチャーを斬りまくって居る織斑一夏。

真面に斬らず関節部分を斬り、返すように中枢を突き刺す…まるで手作業のようだが、それでもコツコツと積み上げている技量は中々のものだと目を見張る。

それを見ていたドロシーは、ある指示を出す。

 

『…"香花"…英(・)雄(・)に(・)焦(・)が(・)れ(・)、その背を目指す白武者を援護してあげて下さい。』

 

『?解りました。』

 

織斑一夏の背後に、その体躯を大幅に改良したスクランブル型ラプチャー:トーカティブが剛腕を振り上げる。

 

ー死ネ!!!ニンゲンガァァァ!!!!!!

 

『やべっ!?』

 

居合の姿勢のままで落葉の様に滑らかに織斑一夏とトーカティブの間に躍り出たボブカットのNIKKEは、その剛腕を前に怒号響く戦場とは違う厳かな雰囲気で、静かに疾く刀を抜刀した。

 

『ー抜刀パリィ』

 

刀がトーカティブの左腕に食込むと、刀に押されトーカティブの左拳の向きがまるで堰き止めた川の様に変わり織斑一夏の左スレスレに突き刺さる。

 

 

 

 

 

ー次回に続く!!!

 




[ナインボール・レプリカ]
現在のエルカノで制作したユニバーサル規格のパーツで仕立てられたナインボール
ボーンフレーム(内装骨格)を基礎として組上げているため
変形機構はオミットされているが固有の武装は無く、エルカノが開発した各種武器を携行・使用が可能になっている。

【AMー34ー564 ドンナー 】
マキナの開発したクロエ・クロニクル専用スタン弾ランチャー
高圧の電流を帯びた特殊弾頭を射出…対象に過剰な電流を蓄積させ続け荷電超過による固定ダメージを狙う為の特殊武器。
コスパが良く、大概を黙らせられる逸品。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。