※この作品はR-18です。

〜兎と鴉と女神達〜   作:坩堝の騎士王

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鴉と鋼の女神達(下)

 

織斑一夏は自らの左側に有る鋼と肉の混ざった奇妙な腕を引き攣った顔で見る。

こんなモンが直撃すればシールドエネルギーがあってもどうなるかは明白で、織斑一夏は初めて死の恐怖を体感していた。

そして刀一本で質量のある剛腕を逸らしたNIKKEを見る。

藤紫の髪をボブカットに仕上げ、バイザーで眼を覆った少女。

機動性重視なのかエナメル質のバトルスーツと、各所にプレートアーマーを付けただけの彼女は織斑一夏に振り向くと、手を伸ばす。

 

『立てますか?』

 

『……スゥー…ハァー…。おっおう……立てる……』

 

死の恐怖を飲み込んだ織斑一夏は立つ。

自分の友達はこんな恐怖を何度も何度も味わって尚も己を曲げずに生きている。

其の姿に憧れた自分が折れてどうすると、喝を入れる。

 

剛腕の主トーカティブは、一瞬の恐怖を乗り越えて、睨みつける事に無性に苛立った。

 

ーニンゲン風情ガッ!!俺二臆サズ二、刃向カウカ!!

 

『うぉっ?!喋った!!』

 

片言だが、一定の知性を持って話す異形の生物?に織斑一夏は驚愕しながらも、戦闘の姿勢は崩さない。

此方を嘲笑う様な形相のトーカティブだったが、次の瞬間、其の顔に鉛玉が雨霰の様に撃ち込まれる。

 

ーグォォ!?!?

 

鉛玉の雨霰が飛んで来た先に居たのは[黒龍]…両腕両肩のガトリング砲から煙が上がっている光景を見るに、牽制がてら発射したらしい。

 

『鈴!!』

 

『一夏!アンタ厄介なのに絡まれたわね!』

 

『鈴!!やべぇぞ此奴!喋る!!』

 

若干、目を輝かせながらトーカティブを指さす織斑一夏。

その様子に鈴音は苦笑、ボブカットのNIKKEは困惑していた。

が、ボブカットのNIKKEは咄嗟に飛んで来た物を弾いた。

それを尻目に怒涛の如く湧いてきたラプチャー達であったが、制空権を握るシンデレラがそれを許さない。次々と青色の光条が溶断し殲滅していく。

 

『ガラスの靴…ラプソディア!!』

 

シンデレラがそう唱えた瞬間、四枚のシールドから溢れた青色の光条が直線軌道で曲がり、ラプチャーを撃ち抜き始めた。

狂想曲と名乗るだけはあり、鋭角的にネジ曲がりながら、死角からのレーザー光がコアを装甲をぶち抜いていく。

ふと、地上を見ると、いつの間にかハスラーも復帰したのかラプチャーを蹴って吹き飛ばし、"紅華"と同じ服装のNIKKEが一刀両断している凄まじい絵面が目に入る。

左手しか武装が無いけど、先程の大暴れの後にも関わらず動きのキレが落ちていないのを見るに継続戦闘が可能なタフネスさを持っている事が伺える。

現に左手の武装で円月斬りぶちかましてるし……右手はラプチャーをぶん殴る方向にシフトしている。

 

そこに尻尾をぶった斬られたインディリビアがハスラーにタックルをぶちかまし遠くの壁ごとミンチにしようとしているが、ハスラーは[オルトゥス]のブースターを可変させて・高濃度の噴射炎を放出それを推進剤にして押し止めた。

 

そしてインディリビアに聞こえるようにある一言を呟き、[オルトゥス]のコアシステムに内蔵されたある機構を露出。

 

『…捕まえたァ』

 

『…!!!!辞メッッッッ』

 

『爆ぜろやァァ!!!!!!!!』

 

ドッパァァァァンン!!!

 

 

アリーナが一瞬膨大なパルス光によって瞬く。

ハスラーの繰り出した奥義……その名は[アサルトアーマー]……莫大な電磁パルスを攻撃に転用し対象に作用する…形勢を塗り替える切札にもなる一手だ。ハスラーはコレなる手札を三枚は保持しているが、そのうちの1枚を切ったのだ。

自爆特攻もいい所だが、大蠍の上半身を消し飛ばしたその一撃は中々に凄まじいと見受けられる。

パルスの奔流に見蕩れている一夏の横へハスラーが下降してきた。機体の各所は開き、放熱をしている様で熱気が押し寄せる。

 

『ハスラー?!お前無事だったか!』

 

『……アサルトアーマーで殺せねぇよなぁ……』

 

『それで殺せたらヘレティックなんて名乗らないでしょ』

 

織斑一夏の心配を他所に鈴音と話し込むハスラー。その横にカイネが吹っ飛んで来た。

自分が知らぬ間にカイネも戦闘を始めていた様だ。

 

『くっ…矢張り、強いなトーカティブというゴリラは!!!』

 

ー無駄ダ!貴様ラノ攻撃ハ既二、対応シテイル!!!ソコノ鴉トヒトモドキガ我等ノ脅威ダ!!!

 

『君達はハスラーが怖いのか?』

 

ー何ダト!!!

 

トーカティブはISの攻撃行為に既に対応しており、同時に学習済みだとも言える発言をした。だが、鴉…ハル・ハスラーの異名であるレイヴン…そしてヒトモドキと呼ぶ、NIKKE達の事だろうか?対応しても、乗り越えてくる彼等を恐れているとカイネが看破。その言葉に過剰に反応した事からほぼ正解に近いと見て取れる。

更に上空から、トーカティブに光の弾が命中。カイネの前に降り立ったのは…ヒトガタのブリキロボット……

 

『サァ!!カカッテキナサイ!!!コノ[パスカル]ガ相手デス!!』

 

『『『『( ゚д゚)』』』』

 

その近くに降り立った漆黒のNIKKEがパスカルの肩に手を置くと、窘めた。

 

『パスカル、粗方終わってる……』

 

『…ソウデシタカ2Bさん…オハズカシイ…』

 

場の空気が緩み始めた瞬間、

 

 

『ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!』

 

 

蠍の残骸の方から絶叫が轟く。

そこにあった光景にアリーナの全ては絶句した。

明らかに重傷で見るも無惨な姿に成り果てたインディリビアが残骸を押し退け立ち上がっている。その身は、肉や骨の代わりに人工繊維と鋼の骨に神経代わりのコード、血液の代わりにオイルをボタボタと垂れ流し左半身の大部分が消し飛んだインディリビアが居た。大腿部と左腕が殆ど消し飛んでいるにも関わらず、痛みではなく憎悪で持って此方を睨むインディリビア…それに身構えるハスラーと鈴音……

 

『……変ね…』

 

『再生しねぇな……』

 

『再生?!彼奴不死身かよ!』

 

『何と…』

 

『一夏?ヘレティックの大部分はナノマシンで構成されているのよ?ストックがある限り何度でも再生するわ。』

 

『…再生・適応・進化…三拍子揃ったISのような存在が、明確に人類を恨んで憎んで滅ぼそうとして来る。それがヘレティック…』

 

それを見ていたリバーレリオ……その傍らには更識楯無がボロボロの状態で転がされていた。リバーレリオの片袖から溢れた触手の群れは本音を絡め取り安全な箇所に上げていた。即ち片手で更識楯無含むIS部隊の相手をしていたのだ。

周辺は、ダメージレベルが限界を越えた教員のIS部隊が、無造作に投げられていた。

 

『ッッッッあっ……ガハッ…』

 

リバーレリオはつまらない物を見る目で更識楯無を一瞥した後、絶賛修復中のインディリビアの元に向かう。

 

『……手酷くやられましたねインディリビア……撤退しましょう。私達が扱える手駒は最早無いに等しいです。』

 

『リバーレリオ?!』

 

それは撤退を促す宣言。膨大な量のラプチャーを屠るに足る戦力が集まりつつあるこの学園。そして下手に追い詰めたら勢力をいつの間にか捲り返すレイヴンという人間。それ等が相手だと分が悪過ぎる為、撤退の選択をした。

そしてリバーレリオは片手の触手に吊っていた布仏本音を優しく下ろすと、額をくっつけ合いながらこう言った。

 

『…本音…愚かで可愛く愛しい私の家族…貴女と共にこれからを歩めないのは残念です…』

 

『お姉ちゃん?』

 

本音を最後とばかりに抱き締めたリバーレリオは本音をハスラーの元へ下ろすと、最後に聞こえるようにこう言った。

 

『私の名はリバーレリオ!自由主義をその名に刻む人類種の天敵!ヘレティックの参謀を務めております。此度の戦い…女神と鴉に敬意を評し今回の作戦の1部をお教え致しましょう!』

 

声を張上げたリバーレリオは、周囲のざわめきを余所に言葉を紡ぐ。

其れは宣誓。自らが明確な敵だと示し、後戻り出来無い様にした。

其れは彼女の覚悟…復讐に身を委ねた女の[漆黒の意志]…

故に自らの行いを此処で宣告する。

その宣告を聞いた更識楯無は、ボロボロの身体を動かしリバーレリオに向かって言い放つ。

 

『ッッッッ…虚ちゃん!そんな作戦は絶対に成功させないわ!!』

 

『私の復讐対象は貴女と更識と布仏の総ての家々ですよ?無論、既に毒は仕込んでいます。』

 

事もあろうに元主に向かって毒を盛った事を公言。其れに家にも蒔いたらしい。ジョン・ウィックもびっくりの行動力と執念である。

 

『最も、毒を盛られている事に関しては、とある方のお陰で気取られることなくすんなりと上手く行きました♪』

 

『……………あっ俺か|゚Д゚)))!』

 

『( *´艸`)……その通りでございます。貴方と言う強烈な光があったからこそ、影に潜み行動する事が出来ました。…そして毒の種類は欲望と理性の比率を歪めて本能のままに行動する…所詮、[ソドムとゴモラ]なる毒を創り、盛らせて頂きました。』

 

その作戦は、台頭して来た[独立傭兵:レイヴン]の影響が強かったと明言。

故に、ひそひそと行動ができたと言われた。

そして判明したリバーレリオの能力…毒を配合させて全く新しい毒を作る確かに恐ろしい能力だが、欲望と理性のコントロールを弄る毒を作れるのは驚きだ。だからこそハスラー達は割とえげつない事に辿り着いた。それを代弁する様に一夏が答える。

 

『待てよ!!じゃあ、更識楯無会長は毒のせいで思考が可笑しかった訳じゃなく、元々思ってた事が行動に出ただけ?!…しかも其れその人が考えていた事何だ……よな…』

 

織斑一夏は、言葉を選びながら、更識会長を見る。

鈴・カイネ・ハスラーとそのやらかしを知ってる教員の面々は更識楯無を冷ややかな目で見る。即ち、更識楯無がこの学園で好き勝手していた理由にもなる。……どうしようも無い傍若無人っぷりを考えていたが、理性を無くしたせいで行動してあちこちに火を付けて周り、結果的にヘイトを稼ぎまくっているのはそこまで考えてなかった彼女のツケだろう。

そこに穏やかな笑みを浮かべながら、リバーレリオはとんでもない爆弾を投下した。

 

『まぁ、あの毒は神経と電気信号の抑制を切る生理現象に等しいレベルですので、解毒は無理ですね。既に中枢にまで浸透してますし……』

 

リバーレリオの言葉の先を理解したカイネがぼやく。

 

『……(^_^;)今頃、更識本邸は、昼ドラも真っ青のドロドロなのか…』

 

ーギィィィィィィンンンンンン

 

途端に耳を劈く機音、全員が思わず耳を塞ぐ。

黒板に爪を立てた様な神経ゲバ立つ怪音に殆どが耳を塞ぐ中、耳が無い[パスカル]はリバーレリオに向かって銃を引き抜き撃とうと構える。その刹那、銃に吊り下がったアクセサリーにカイネが驚愕に包まれた。

 

そして音が鳴止んだ……アリーナにはトーカティブ・リバーレリオ・インディリビアの姿は無かった。

逃げられたのだ。散々、荒らすだけ荒らして逃げられた…

その事実に敗北の二文字がよぎる。

 

が、パスカルが、ハスラーの肩を叩く。

 

『アノ……トーカティブトヤラハ、アソコニ……』

 

『!』

 

トーカティブはアリーナの壁をよじ登っている。それを目視したハスラーは左手の武器もパージすると大型武装を展開する。

 

不明なユニットが接続されました。システムに深刻な障害が発生しています。直ちに使用を停止してください。

 

その音と共に展開されたのは超がつくほど大きな仰々しい装置。

左手に背部武装のアームユニットが接続され、背中の三節式の砲身が展開……ドイツの列車砲顔負けのカノン砲が出現。

 

 

『…試作型ッッッッ…だが!1発だけならッッッッ』

 

 

バチバチと迸る紫電、システムを無理やり直結したのかモニターには砂嵐が見え隠れしている。だが、敵の位置は捉えた。敵の移動速度・着弾位置を計測して……

 

『発射!!』

 

 

ドッッッゴォォォンンン!!!

 

 

ーグゥゥオォォォアァァァァ!!!!!!

 

 

轟音・衝撃を伴い発射された弾頭は狂いも無くトーカティブの中枢をぶち抜いた。

生命活動を停止させたトーカティブだった者が落ちてくる。

其れは長い闘いの終わりを示していた。

 

 

 

 

 

 





ー【OWーT04:ハルコンネン】ー

規格外の超大型兵装の1つ
左腕のアームに接続しエネルギーを配合・流入。
三節式の砲身を組み上げ、電磁加速と多段薬室…砲身内部のライフリング・複合マルチエネルギーにより80mmタングステン鋼特殊弾頭を撃ち放つ。
圧倒的加速による物理的破壊力は仮想戦闘プログラム内とはいえ、ランドイーター級の多重高圧装甲を貫通する。


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