※この作品はR-18です。

ようこそセクハラ至上主義の教室へ   作:セクハラ任三郎

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 繋ぎと綾小路攻略回。(BLになる事は絶対にありません)


第二話

 

 俺達はバスを降りた後、同乗していた奴らから色んな目で見られたが、そんな事は気にせずに、校門を入って直ぐにあったクラス表を見た。

 俺はD組、坂柳はA組だった。ちょっと寂しい。

 

 俺達は途中まで一緒に行動し、A組の教室前で別れた。

 

 「またな。坂柳」

 「ふふっ。有難う御座いました。鷹司さん」

 「気にすんなって」

 

 ずっとお礼を言ってくる。荷物持っただけなのに。

 俺は荷物を坂柳に渡し、さっき見つけたD組の教室に行くために廊下を遡る。

 

 扉を開けた。

 俺以外全員居るな。

 視線がこちらに集中する。

 女子の黄色い悲鳴と、男の「イケメンだな」 と「イケメン死ねよ」 の気持ちが籠った目線を向けられる。凡そ予想通りだな。

 …さて、俺の席は…

 

 「おはよう。君の席はあそこだよ」

 

 茶髪の男が話し掛けてきた。俺には劣るが、かなりのイケメンだな。それに良い奴っぽい。

 

 「あぁ、助かるよ。…何で俺の名前が分かったんだ?」

 

 理由は明白! 俺が有名人だからだろう! だが、敢えて聞く! 敢えてな!

 

 「ははっ。君を知らない人は居ないだろ? 僕の名前は平田洋介。これから一年、宜しく頼むよ」

 「あぁ、洋介。俺も龍臣で構わない」

 

 俺は洋介から言われた席に向かう。

 俺の席は一番後列の真ん中だな。微妙な席だ。

 左隣の席には、サイドに小さな三つ編みが一本あるロングの黒髪に、ほんの少し赤みがかった黒曜石のような瞳に、切れ長の大きな目。胸は…Cか? これまためっちゃ美少女だ。

 

 右隣の席には、二束で纏めたピンクのロング、赤い眼鏡、眼鏡の奥には美しい碧眼が見える。猫背だな。こっちの胸は…H、いや、Iか? でっけー。

 …この子、どっかで見た気がするな。気のせいか?

 

 にしても、この学校は美少女しか入れないのか? 今の所みんな可愛い。

 

 「あの、君って、龍様だよね?」

 

 俺が席に向かっていると、これまた美少女が話し掛けてくる。

 身長は160、いや、159だな。薄い金髪をインテークショートボブにし、薄紫色の瞳。可愛いなー。…少しの打算に大きな興奮、それに隠れた憎悪が見えるぞ。なんか恨まれることでもしたか?

 胸でか! Fいや、Gはあるんじゃ無いか…。坂柳とは真反対だ。俺のBIG Magnumが反応している。…この子も狙おう。

 

 「あぁ、君は…ファンの子かい?」

 「うん! 凄い。本物はテレビで見るよりもっとイケメンだ」

 「ははっ。有難う、級友として仲良くしてくれると嬉しいよ」

 

 ファンか。直ぐに食えそうで安心した。

 

 「後で連絡先交換しよ!」

 「あぁ、構わないよ。こちらからも頼みたい位だ」

 「もー。龍臣くんったら〜」

 

 可愛いな。隠している本性とのギャップが良いね。

 

 「? どうしたの? 龍臣くん」

 「いや、何でもない。…そろそろ教師が入って来そうだ。櫛田も席に戻るといい」

 「ふふっ。私の事は桔梗で良いよ。私も龍臣くんって呼んでるし」

 「そうか、桔梗。これから一年間宜しく頼む」

 「こちらこそ!」

 

 桔梗はそう言い残し、自分の席に戻って行った。…いい匂いだったな。

 

 それから数秒後、茶髪をポニーテールにし、ツリ目気味の茶目、胸元が大きく開いたレディーススーツに、ミニのスカートを履いた女教師が入って来た。…谷間が見えている。スカートも太ももの半ば程までしかない。なかなかえっちじゃないか。

 

 「えー、新入生諸君。私はDクラスを担当することになった、茶柱佐枝だ。普段は日本史を担当している」

 

 教卓越しに見える巨乳が凄い。

 うーん。エッチだな。

 

 「学年毎のクラス替えは存在しないから、卒業までの三年間、私が担任としてお前達と学ぶ事になる。宜しく」

 

 クラス替え無いのか。まぁ、そういう学校もあるか。

 

 「入学式の前に、この学校の特殊なルールについて書かれた資料を配らせてもらう。まぁ、既に入学案内と一緒に配布してあるがな」

 

 配られた資料を見る。

 まぁ、パンフレットに書かれてた内容と一緒だな。

 

 一.生徒全員。敷地内にある寮での学生生活を義務付ける。

 二.特例を除き、肉親含め外部との連絡を一切禁じる。

 

 大まかにはこんなもん。

 この二番目がデカい。ちょっと色(・)々(・)したせいで、週刊誌に撮られそうになったからな。卒業する頃にはほとぼり冷めるだろ。

 

 「今から配る学生証。敷地内にある全ての施設を利用したり、売店や飲食店で商品を購入する事が出来る。…まぁ、クレジットカードのような物だな。ただし、ポイントを消費することになるので、注意しろ」

 

 所謂Sシステムってやつか。

 財布もクレカも要らないのは便利だな。

 

 「そして。学校の敷地内において、このポイントで買えないものは無い。学校の敷地内にあるものなら何でも購入可能だ」

 

 ふーん。

 『なんでも』か。何処までだ? 女とか店とか買えるのか? 後で聞いてみるか。

 

 「施設では、機械にこの学生証を通すか、提示する事で使用可能だ。それからポイントは、毎月一日に自動的に振り込まれる。既に、お前達全員平等に十万ポイントが支給されている。あぁ、言い忘れてたが、一ポイントにつき一円の価値がある」

 

 先生の言葉に、教室中が騒がしくなる。

 

 …次の月からも十万ポイントなのか? 後で聞こう。

 

 「ふふっ。ポイントの支給額が多い事に驚いたか? この学校では実力で生徒を測る。入学を果たしたお前達には、それだけの価値と可能性がある。その事に対する評価みたいなものだ、遠慮なく使え」

 

 入学してから評価が一定な訳が無い。来月からは支給額が変わるな。クラス単位か? それとも個人単位か?

 

 「ただし、卒業後には全てのポイントを学校側が回収する。現金化は出来ないから、ポイントを貯めても得は無いぞ」

 

 外部との接触は禁じられている。学校側に依頼して、金を購入したり、株を購入したりが可能なら、この箱庭で金を稼ぐ意味があるな。これも後で聞こう。

 

 「振り込まれた後にポイントをどう使おうが、お前達の自由だ。勿論、誰かに譲渡しても構わない。だが、無理矢理カツアゲするような真似だけはするなよ? 学校は虐め問題にだけは敏感だからな。…何か質問があれば挙手を」

 

 

 俺は手を挙げ、質問する。

 

 「茶柱先生。幾つか質問です」

 「…なんだ?」

 

 俺は席をたち、先生に質問を投げ掛ける。

 

 「まずは一つ目。 このポイントで店の経営権や、株取引をする権利を購入する事は可能ですか?」

 「ぷぷっ! 出来るわけねぇじゃん! イケメンでも馬鹿だとなぁ」

 

 煩いな。…誰だっけ。

 

 「…相応の手順を踏んだら可能だ。まぁ、大量のポイントが必要だがな」

 「出来るの!?」

 

 先生はそんな彼を無視して、質問に答える。

 出来るのか。これは金の匂いがするぞ。

 

 「では、次。来月の支給額は十万ポイントですか?」

 「…お前らの評価が十万ポイントに相応したから、十万ポイントを支給したまでだ」

 「何を基準にしてるかは知りませんが、その『評価』が下がると支給額も下がるという事でいいですか?」

 「…」

 「了解です。言えないと」

 

 …これは教員としてバレて良かったのだろうか? 彼女は何故、苦々しい表情を作り喜びの感情を隠しているのだろうか? まぁ、どうでもいいな。

 支給額が変わるのは確定だな。後はその『評価』が個人か、クラスかだが…

 

 「えっ! どういうこと?」

 「? 今月貰えたんだから、来月も貰えるだろ」

 「考え過ぎっしょ」

 

 …うーん、 説明するか。

 

 「は〜。君達は本当に愚かだねぇ。ホークボーイが答えを聞いたじゃないか。まぁ、お飾りの脳みそには少し難しかった様だが」

 

 俺が口を開く前に、金髪をオールバックにした大柄なイケメンが、疑問に答えた。…ホークボーイって俺の事か。…てかアイツ、高円寺グループの一人息子だったか? パーティで見た気がする。

 

 「はぁ!? 何言ってるかわかんないんだけど!」

 「金髪の癖に偉そうな事言うな!」

 

 …馬鹿だ。

 グレー寄りの黒髪をショートにしている女子と、さっきも俺に突っかかってきた黒髪の短髪を中央で分けた男だ。

 俺と高円寺が反論する前に、茶柱先生が口を開く。

 

 「ゴホン! …他に質問がある奴は、後で職員室に来なさい。では、良い学生ライフを送りなさい」

 

 先生はそう言い残し、ぷりぷりしているお尻を揺らしながら退室した。エッチだなー。

 

 クラスは十万ポイントを何に使うかの話題で持ち切りだ。来月の為に貯めておく、パッーと使っちゃう、スポーツ用具を買う、等。

 そんな中、一人の生徒が立ち上がる。平田だ。

 

 「皆、少し聞いて貰っていいかな?」

 

 彼には不思議と、耳を傾けたくなる才能があるのだろう。皆が静かになり、話を聞いている。

 

 「僕達は今日から同じクラスで過ごす仲間だ。だから自発的に自己紹介でもして、一日でも早く仲良くなれたらと思うんだけど、どうかな?」

 

 こいつ良い奴だな。俺は賛成だ。

 

 「賛成だ。『評価』されるポイントについても共(・)有(・)しておきたい」

 「私もさんせー!」

 「私も賛成かな」

 

 『評価』されるポイントは幾つか予想できる。まずは授業態度、これは当たり前だな。次に提出物、これも当たり前。後は街を綺麗に使おうとか、ボランティアに参加するとかでも、ポイントが増えそうだ。

 個人単位だと有難いが、クラス単位の時の為に共有しときたい。

 

 賛成したのは俺、金髪ポニテのギャル、桔梗だ。

 周りの生徒も口々に「賛成ー」と言っている。

 

 それを確認した平田は口を開く。

 

 「有難う。じゃあ、言い出した僕から。僕は平田洋介、平田でも洋介でも構わないよ。趣味はスポーツ全般かな、特にサッカーが好きだよ。これから三年間、よろしく」

 

 「宜しくね! 洋介くん!」

 

 金髪ポニテの声を筆頭に、女子の黄色い悲鳴が鳴り響く。気持ちは分かる。アイドルや俳優と比べても、かなりいい感じの容姿を持っているからな。

 

 順繰りに自己紹介をしていく。ふむふむ、あの巨乳は長谷部と言うのか。

 そしてあの金髪は軽井沢恵、隣の巨乳は佐倉愛理ね。

 …このクラス、乳がでかいな。

 

 次は…桔梗の番だな。

 

 「じゃあ次は私だね!」

 

 元気が良いね。胸が跳ねてる。

 

 「私は櫛田桔梗と言います。中学からの友達は居ないので一人ぼっちです。だから、早く顔と名前を覚えて、友達になりたいって思ってます!」

 

 いいねー。抑揚や表情、視線誘導までほぼ完璧だ、大女優を目指せるポテンシャルがある。

 

 「私の最初の目標は、ここに居る皆と仲良くなることです。皆の自己紹介が終わったら、ぜひ私と連絡先交換してください!」

 

 良くもまぁセリフが出るな。本心が欠片も篭っていない。…かなり気に入った。

 

 「それから放課後や休日は色んな人と沢山遊んで、沢山思い出作りたいので、どんどん誘ってください。ちょっと長くなりましたが、以上で自己紹介を終わりますっ」

 

 うーん。可愛い。

 周りの生徒達も概ね好意的だ。

 平田が場を回す。

 

 「じゃあ、次――」

 

 

 「俺らはガキかよ。自己紹介何て必要ねぇ、やりたい奴らだけでやってろ」

 

 剃りこみの入った赤髪、ガタイのいい男が平田を睨みつけながらそんなことを言う。

 …頭脳は並以下、特筆すべきは身体能力か? 見ただけで分かる。かなり鍛えられているな。

 平田が何かを言う前に、俺が口を開く。

 

 「『評価』のポイントになるであろう所だけでも共有したいが、良いかい?」

 「あん? さっさと言いやがれ。俺の気が変わらねぇうちにな」

 

 うぜー。まぁ、気にしたら負けだ。

 

 「一.授業態度。私語をせずに真面目に授業を受けろ。二.提出物の提出。これはそのまま、ちゃんと期日を守って提出しろ。三.施設を綺麗に使え、トイレとか食堂とかだな。四.証拠を残して悪さをするな。この学校、至る所に監視カメラが仕掛けてあった。だが、カメラが無い所もある。やるならそこでやれ。これぐらいか? 後は喧嘩をするな」

 「…何で俺が従わないといけねんだよ」

 

 …俺の容姿に対する妬み、純粋な敵意、そして、本当に何故かを疑問に思っている。

 

 「…皆も他言無用で頼む。まず、茶柱先生への質問で分かった通り、来月も十万ポイントを貰える可能性は低い。そして、支給額は『評価』によって変わる。この『評価』が、個人単位かクラス単位かは分からないが、『評価』を下げて得する事は無い」

 「…ポイントが増えるかもしれねぇだろうが」

 

 なんだ? 今ので理解は出来たはずだ。何故納得しない? …あぁ、成程。納得はしたが、一度楯突いた以上、引けなくなってるんだな。無駄なプライドだが、気持ちは分かる。

 

 「まぁ、頭の片隅にでも入れて置いてくれ」

 「ちっ。そうかよ」

 

 赤髪はそう言い残し、教室を出る。

 それに続いて何人かの生徒も教室を出た。

 

 彼、彼女らに向かって、「有り得ない」や「自己紹介位いいじゃん」の声が飛ぶ。

 

 「悪いのは彼等じゃない。勝手にこの場を設けた僕が悪いんだ」

 

 それに対し、洋介がこんな事を言う。

 良い奴…って感じじゃないな。和が乱れるのを極度に恐れている? 赤髪に睨まれた時は、恐怖の感情がなかった。だが、退出した奴らにヘイトが向いた途端、恐怖、拒絶、決意の表情が浮かんでいた。俺以外は気付いてないかもだが、俺の目は誤魔化せない。

 過去のトラウマか? まぁ、どうでもいいか。

 

 その後も平和に自己紹介が進んでいく。

 次は、少し気になっている男子生徒の番だ。

 

 「俺は池寛治。好きなものは女の子で、嫌いなものはイケメンだ! 彼女は随時募集中なんでよろしく! 勿論、可愛い子か美人希望!」

 

 イケメンだ! の時にこちらを睨んでいたな。…直接妬みの感情を向けられるのは久しいな。

 

 「すごーい。いけくんかっこいー」

 「マジマジ? 自分でも悪かねぇって思ってんだけどさ、へへっ」

 

 純粋なバカだな。棒読みでも嬉しいのか。

 コイツは煽てれば何でもするタイプだな。いいコマになりそうだ。

 

 高円寺が凄い自己紹介をしたり、色んな人の自己紹介が終わり、次は俺の番だ。

 

 「次は、龍臣くん。お願いできるかな?」

 

 俺は立ち上がり、周りを見渡す。

 うん。皆興味深そうに見ているな。池と山内以外。

 

 「俺は鷹司龍臣。TVや映画、ネットとかで見た事あるかも知れないが、級友として仲良くしてくれると有難い。趣味は…俺もスポーツ全般と、最近は料理が好きかな。気軽に誘ってくれると助かるかな。後、支給額の件だけど、俺はクラス単位だと思ってる。協力してくれると有難いな」

 

 この名前と完璧な顔、完璧なスタイルで、俺が誰か分からないやつは居ないだろう。

 

 「協力するよー!」

 「やっぱり本物だ…!」

 「…実物はTVよりイケメンだな」

 「けっ! イケメンがなんだってんだ」

 

 桔梗が好意的だったこともあり、全体的に協力する感じの雰囲気になっている。

 好意的な視線が七割、興奮が二割、嫉妬が一割、…「誰だろう?」の視線が一つだけある。誰だ?

 俺はその視線を向けた相手へ、目を向ける。

 中肉中背。茶髪茶目。特質すべき所は何も……いや、目が無機質過ぎるな。それによく見ると、服の上からでも肉体が鍛えられていることが分かる。

 一番特殊なのは、感情が分からない事だ。こんな不思議な体験初めてだ。

 男と見詰め合う趣味は無いので、少し微笑んでから目を逸らした。

 

 「ね、ねぇ。バスで女子とキスしたって本当?」

 

 彼女は確か――松下千秋だったか。

 薄い茶色のロングで、左側に編み込みがあり、少しおでこを出している。青い大きい瞳を持っている。松下も可愛いな。

 松下の本心は、興奮と少しの疑問。だが、浮かべている表情は、失望、軽蔑、疑問だ。

 …この学校はおかしいんじゃないか? 皆女優になれそうだ。

 

 それにしても、もう噂になっているのか、早いなー。

 まぁ、適当に誤魔化すか? それとも認めるか?

 うーん。

 

 「あぁ、事実だよ」

 「そ、そんな! 信じてたのに…」

 

 「うぇーっ。ヤリチンかよ」

 

 認めた。そっちの方が面白そうだから。

 山内が煩いが、気にしない。

 松下は失望の表情を浮かべている。そんなこと思ってもない癖に。

 俺は彼女に近づいていく。

 

 「あ、あの。なんですか」

 「…」

 

 俺は無言で近づいていく。

 うーん。この状況を楽しんでいるな。

 隠れた本心もそうだが、全然逃げない。寧ろ少しずつ近付いてくる。

 

 「辞めないか、龍臣。松下さんが怖がっている」

 

 洋介が間に入り、止めてくる。勇気あるな。だが、お前の後ろにいる松下は落胆の表情を浮かべていた。

 

 「松下…いや、千秋。本当に嫌なのか?」

 「えっ‎♥」

 「本当も何も、怖がっているじゃないか」

 

 声からも、興奮しているのが分かる。…洋介は気付いてないみたいだな。ここは一つ、芝居をするか。

 

 「止めてくれるな! 洋介! 俺は彼女が欲しいんだ!」

 

 俺は全身全霊を掛けて、『婚約者を奪われた男』を演じる。

 洋介や周りの目には、俺の雰囲気が変わったように見えているだろう。

 

 「っ! 何を言うか! 彼女を怖がらせるな!」

 「……♥」

 

 良いね。洋介が本気で麻耶を守ろうとすることで、周りがこの雰囲気に呑まれていく。千秋本人も、目をトロンとし、頬を染め、興奮の表情を隠そうともしない。

 

 「千秋は…俺の彼女だ!」

 「っく!」

 「…♥ 龍臣…♥」

 

 俺の迫力に押され、平田が怯んだ。その隙に、千秋が俺の胸に飛び込んできた。

 ハハッ! これが『演技力』だ。

 

 俺と千秋の身長差の関係上。俺は見下ろし、千秋は見上げる体勢になる。

 俺たちは熱く抱き合い、そのまま顔を近づけ…

 

 「…凄いな」

 

 なんだ? 何(・)故(・)喋れた? 舞台でも、映画でも、俺の雰(・)囲(・)気(・)を崩された事は無かった。

 俺は千秋から手を離し、無機質な目をしている男の元に向かう。

 

 「お前…えっーと。何で喋れた?」

 「? 何でも何も、喋ったからだ」

 

 噛み合ってないな。いや、俺の質問が悪い。何分初めての経験だ、気が動転しているな。

 

 「いや、悪いな。俺の演技を見て呑まれなかったから気になったんだ」

 「…こちらこそ悪かったな。何分、映画やドラマは見(・)た(・)事(・)が(・)な(・)い(・)んでな」

 

 映画やドラマを見た事がない? 俺を見た事が無いじゃなくて? 

 

 「マジ? 古橋任三郎も? ラーガル・ハイも?」

 「さぁ? 知らないな」

 

 勿体なさすぎる! 人生の半分以上を無駄にしている。

 

 「まじー? 絶対見た方がいいって! 何なら俺がDVD借りて渡そうか?」

 「いや、お前の演技を見て、俺も興(・)味(・)が出てきた。自分で借りて見てみるよ」

 「あぁ。見終わったら教えてくれよ。てか連絡先交換しよう」

 「…あぁ!」

 

 なんだ? めっちゃ嬉しそう。

 まぁ、俺と連絡先を交換出来るんだ。これくらい喜んで当然だな。

 

 「ねー♥ 私とも交換しよー?」

 「あぁ、構わないよ」

 

 千秋が話しかけてきた。全然構わない。寧ろ大歓迎だ。

 

 

 「…うーん。仲良さそうだし、いい…のか?」





 初期清隆くんはチョロい(確信)
 これから色んな映画やドラマを通し、豊富な感情を学びます。
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