「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
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ティーパーティーのホストこと桐藤ナギサに話を持ち掛け、早速、飂熾冘巫髏についての話し合いの場を用意してもらう事に成功。
飂熾冘巫髏トリニティ部隊の今後の扱いについてどうなるかはこの話し合いに懸かってると言っても過言ではない。上手く話し合いの舵を私が握れればいいのだが……。
クロノという暴走列車の挙動が、よく読めない。それが本当に私の胃を締め付けてくるのだ。
そして次の日。
クロノ達と軽く打ち合わせを済ませた私は、遂にナギサとの話し合いに臨む……。
「「失礼します」」
「──おや。『幹部の生徒』と聞いていましたが、やはりあなた方でしたか。先日のあの停学を経てもまだ組織を抜けていなかったのですね」
「もうテロ活動してないっつの。文句あるワケ?」
「クロノ。──申し訳ありません、ナギサ様。私の友人がご無礼を……失礼いたしました」
「お気になさらず」
「──確かに私も彼女も、そして、一部の生徒達は未だ飂熾冘巫髏に所属しています。しかしながら、先日のトリニティ総合学園との戦闘行為及び私達の停学以降は、テロ行為とされる活動には、一切加担しておりません」
「停学以降、所属は、名ばかりのものであると?」
「いいえ。テロ行為などは一切しておりませんが、組織としての活動は行いました。クロノスでも報道されていましたが、先日の『ハドマ学園篭城戦』に私達も部隊を指揮する形で作戦に参加しています」
「……そ……それは……初耳ですね。報道は、私も目を通すようにしていますが──その事件は『七囚人を中心に徒党を組んだスケバンが夜間のハドマ学園に攻め込んだ。ハドマ学園の生徒は力を合わせこれを撃退した』──という話だったと思いますが?」
「
「…………リエさ……いえ、失楽園が? 飂熾冘巫髏と和解した……ですって……?」
「学園と組織の和解については、シャーレの先生が後見人です」
ナギサはほんの少し目を見開く。自校を破壊して乗っ取り、あまつさえ自分の不在時に他の学園との併合を実行した。
──そんな組織との「和解」だ、ナギサも驚きを隠せないのは当然と言える。普通なら有り得ない。そう、
しかしナギサは、少し前にリエと対談した時に、彼女の人の良さに触れている。だから納得せずとも理解はできたらしく、溢れんばかりの疑問を強引に紅茶と共に飲み下した。
そして、ルーシィが絆されたのも、リエのその、人並み外れた「お人好し」な性格が故なのだろうと密かに納得していた。
「──成程。和解し、手を組む事でスケバンを撃退したのですね。それは理解しました。しかしそれを私に報告する事に、一体何の意味が?」
「近々、飂熾冘巫髏は解散します」
「ッ!?」
「当然、私達も飂熾冘巫髏の所属ではなく一般的なトリニティの生徒に戻ります」
「そうですか。それは良かったですね。我が校からテロ組織の生徒が廃絶されるのであれば、それは、非常に喜ばしい事です」
「……
「……どういう意味でしょう?」
あからさまに含みのある彼女の言葉を耳にして、ナギサは眉をひそめながらカップを皿に戻す。が、またすぐにカップを手に取り、紅茶を口に含む。
「飂熾冘巫髏はテロ組織です。当然ながら、そんな組織に所属する生徒は、お世辞にも品行方正だとは言い難い、不良生徒です。──ではもし、このまま組織を解散すれば……果たして、どうなりますか?」
「…………」
「組織に加入することで辛うじて統率の取れていた不良生徒が、百人単位で一斉に、トリニティ内部に解き放たれる事になるのです」
「────ッ!!」
肩が震えると同時に、手に持ったカップも揺れ、雫がぱたぱた何滴か滴り落ちる。慌ててナプキンで拭くも、染み抜きしなければ跡が残るだろう。
「……何が、何が言いたいのですか? そして、何をお望みなのですか? 飂熾冘巫髏の解散に伴って、あなた方は、何を望むのですかっ?」
「私達を含め、現在『トリニティ部隊』として活動している生徒達を、そっくりそのまま1つの部活、または委員会として、運用させて頂きたいのです」
「な……ッ!?」
「無論、テロ行為などはしない、と誓いましょう。普通の部活や委員会と同様に『集まって』、『活動する』為だけの組織です」
「あなた方は以前、我が校に対し明確なテロ行為を働きましたね。そんなあなた方の唐突な申し出が、受理されるとでも思いましたか……?」
「そうですね、普通は受理されませんね。名前だけ変えた状態というだけで、中身は変わってません。疑われるのも承知の上です──が」
「?」
「そうなると、学園内に統率の取れない不良生徒が溢れかえる事になるでしょう。人数の多さに、正義実現委員会ですらも対応は難しいでしょう」
「…………脅しですか?」
「あぁ、そういえば。夏のある日、
「!!」
「たった2人でも、本気を出せば校舎1つを全壊に追い込めるのですね。凄いですよね。──ですが、こっちはその何十倍もの人数なんですね。正義実現委員会の対応が、追い付くといいですね」
「…………………………」
「もうお分かりですね。その気になれば、我が校の校舎なんてモノ──
「では、何故、飂熾冘巫髏大決戦ではわざわざ犯行声明のような予告文を出したのですか? それこそこうして何気無い日常の中ででも唐突に暴れた方が効率よく学園を破壊できるでしょうに」
「『ただ学園を壊す』のではなく『正面から戦闘に勝利した上で壊す』事に拘った。それだけですよ。その方が、学園を乗っ取ってからも、自分達の力を学園の内外に向けて誇示できるでしょう……?」
「……今度は停学、いえ退学ですよ……?」
「それどころか、矯正局行きになるのでしょうね。学園を『完全破壊』するのですから。まさか、今のように口にしただけとか、計画している証拠も無い今の状態で停学、退学になんてできませんしね?」
「っっっ」
マトイの目は一切笑っていない。全てが本気だ。
要求を飲め。さもなくば百人単位の人数を行使し学園を内部から壊す。停学、退学、矯正局送りすら覚悟の内である。
マトイらしくない物言いだろう。ナギサも以前に彼女と面談した事があるから、マトイらしくないと察してはいる。しかしその上で迷っているようだ。
「──それを許可するにあたり、こちら側にも何かメリットを提示して頂きたいところです。その話を飲むにしても突き返すにしても、メリット足り得る判断材料が無いと、頷きにくいですね」
「『学園を破壊しない』ではダメですかね?」
「ふざけるのも大概になさっては? 学園に危害を加えないなど、あまりに常識の範疇過ぎて、話にもなりませんね。そんなもの、改めてメリットとして提示するまでもなく極々普通、当たり前の事です。なんでしたら、ティーパーティーの権限において、あなた方を今ここで拘束してもいいのですよ」
「生徒会が『脅し』とは穏やかではないですね」
「『警告』です。残念ながらこの会話を録音などはしておりませんが、既にあなたは『脅し』と取れる発言をしています。故に『これ以上そうするなら』という警告ですよ」
「……」
ナギサの目を見つめたまま、しばらく黙り込む。口元もピクリとすら動きやしない。
「──では改めてメリットを上げさせて頂きます。まずは『飂熾冘巫髏残党の一括管理』。荒くれ者を束ねるノウハウは、飂熾冘巫髏で会得しています。次に『飂熾冘巫髏以外の不良生徒の受け皿』です。どこの部活、委員会にも属さず、補導程度だろうと問題を起こす生徒は後を絶ちません。そんな生徒の居場所となり、帰る場所となる事で、補導程度でも犯罪の抑止力として機能させます」
「……それだけですか?」
「ええ。──あぁ、あと『生の思想調査』が可能になります。学園の『アンケート』などには書けない学園や人への不満や要望。そういったリアルの声を調査結果としてティーパーティーに提出できます」
「要望の全てを叶えろと? ワガママ放題ですね」
「叶えろ、とは言いません。しかし──そういった他人には言いにくいような小さな不満や要望などが積もり積もった結果、不良へ身を落とす事にもなるという話です。要は『ストレス発散の場となる事で犯罪行為に走ってしまう理由を根本から無くそう』という提案ですよ」
「────ふむ。自警団が『対症療法』とすれば、あなた方は『原因療法』を行う、という事ですね」
「はい。犯罪とは、起きてしまっては遅いのです。未然に防ぐ為の法や校則ではありますが、それでは生徒達の鬱憤は溜まる一方。いつかは爆発します。なら、そもそもその鬱憤を溜めさせなければいい。起きてしまった犯罪は、正義実現委員会や自警団に任せましょう。ならば、
「あなた方にはそれができると……? 何故?」
「……? おかしな事を仰いますね。そんなのできて当然ですよ」
「何故です?」
「『不良生徒』の思考を誰より理解しているのは、他ならぬ『不良生徒』でしょう……?」
「────ッ!!」
「それ故に、正義実現委員会や自警団とは違って、真の意味で不良生徒の心に寄り添う事ができます。同じ視点の持ち主だからこそ成し得るというのは、実際に、あると思いますよ?」
ナギサは、飂熾冘巫髏大決戦についての、とある報告書を思い出していた。
正義実現委員会の委員長・剣先ツルギは主犯格の時計クロノへの説得を試みた。しかし彼女はそれを拒んだ。まさに両者の立場や視点の違いで生まれた認識、思考回路の齟齬だと言える。
……ではもし
「…………」
「────ナギサ様。今一度、お聞きいたします。飂熾冘巫髏解散後の私達トリニティ部隊を、1つの部活または委員会といった学園の公的組織として、許認可いただけますでしょうか?」
◆
「はあああああぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜…………」
「大きな溜め息ね、そんな緊張したの?」
「そりゃあ緊張するよ……。私との打ち合わせなんて無かったことのように進むんだもの」
「すみません……。実は、ナギサさんに言う内容は、事前にクロノと話し合って決めていたんです。でもクロノは私に比べたら口が上手くないから、私が、交渉人みたいな感じでナギサさんとやり取りする、みたいな感じの予定でした……」
「……で、どう? マトイ的に、手応えありそ?」
「うん、大丈夫じゃないかな。ティーパーティーも不良生徒を野放しにはしたくないだろうから。もし退学させるにしたって『元トリニティ生』っていう肩書きは必ずついてまわる。『元トリニティ生』に学園外で好き勝手させるくらいだったら、学園内で監視するという意味でも、組織の創立は認めざるを得なくなる」
「矯正局送りにされたら?」
「現時点では矯正局送りにするだけの理由が無い。だから無理だよ。あの大決戦の処罰は、一定期間の停学という事で既に終わってるから。もしあれから余計な罪を重ねてたらそれをつつかれただろうけど今の私達にはそれも無い。『ボランティア』で他の学園を助太刀したくらいだもの」
「じゃ、停学にされたら?」
「停学にする理由も無いかな。さっきの『脅迫』を罪状として挙げてくるのなら、録音みたいな証拠が必要だし。でも、私は録音には同意してないから、もし録音されていたらプライバシー侵害ってことで証拠能力は認められない、って反論できる、かも。可能性の話だけど」
「んー、よく分かんないけどさ。良くて組織設立、悪くて停学ってワケね?」
「うん。まぁアレくらいで停学なんて決定したら、ティーパーティーは横暴って事で騒げばいいかな。マフユさんにデモのやり方を教えてもらったから、それをやってみればいいよ」
「なるほどね〜」
停学──先程の「脅迫」を槍玉に挙げてマトイを攻撃するなら、これ一択になるだろう。
退学──退学に処す理由に欠けるので、生徒会が批判を受ける事になる。更に「元トリニティ生」の名目を持つ生徒を世に放つ事になる。そして学園の公的な監視などもできなくなり、制御不能になる。
矯正局送り──これは論外。飂熾冘巫髏大決戦の贖罪はあの時の停学で済んでいる。現在の彼女達は矯正局送りになるような事はしていない。
組織設立の許可──不良生徒に、今と変わらない秩序を齎す。そればかりか、同じ視点を持つ生徒が接することで、対症療法ではなく、自浄作用による原因療法を見込める。さらには、不良生徒を学園の権利が及ぶ範囲に留められるので、学園として監視なども可能になり、制御不能に陥る事がなくなる。
「一石二鳥……どころじゃないんだね」
「はい。一石三鳥、四鳥、五鳥くらいは見込めると私は考えています。少なくとも、停学や退学にするよりもずっと、学園にとっても有益な選択ですし。ナギサさんがそういった『利』を捨ててでも提案を無視したり、私を停学にするというなら、それまでですけど……」
「ナギサは、そんな事はしないよ」
「……はい。私も、そう願っていますよ」
後日────シャーレで仕事中の私にナギサから連絡が来た。
それによるとどうやら、マトイの提案を飲んで、マトイとクロノを頭に据えた「組織」の設立を公に認めることに決定したそうだ。
ただし、それに伴う条件が、4つ。
1、シャーレの先生が顧問として監視すること。
2、組織運用の権限を先生とティーパーティーで二分して有すること。
3、組織の名のもとに行われる公的な活動は全てティーパーティーの監視下であること。
4、その組織そのものには特別な権限などは一切持たせず、組織系統図としてはティーパーティーの直轄に据えること。
「──そっか。条件については了解したよ。かなり譲歩してくれたね。……ありがとう」
『いえ。因みにですが、運用の権限を二分する事に関しては、あまり気にしないでください』
「と、言うと?」
『あくまでも、監視の為であるという名目上──。実際の指揮権限は全て、先生。あなたにあります』
「!」
『ただし、属する生徒には、ティーパーティーとの分担であると重ねてお伝えください。これは牽制の意味もありますので、どうかお願いいたします』
「……成程ね。了解したよ」
『ありがとうございます。──組織の設立に伴う、先程お話しした4つの条件ですが、幹部の2人──桜庭マトイさん、時計クロノさんからは既に承認を得ています。ですので、あとは、顧問である先生。あなたの承認が下されれば、晴れて組織設立です』
「もう、そこまで話も準備も進んだんだね」
『飂熾冘巫髏の解散は目前だと聞いていますので。それであれば、こちらも
「賢明な判断だと思う。──じゃ、書類のサインに行くよ。今からでもいいかな?」
『今すぐでも、明日でも。我々ティーパーティーはいつでも先生をお待ちしております。……もちろん、桐藤ナギサとしても』
「ありがとう。……『顧問』として、すぐに行くよ」
『はい、お待ちしております』
彼女との連絡を終えた数時間後、トリニティにて私は書類に、顧問としてサインと調印を済ませた。
これにて、飂熾冘巫髏トリニティ部隊は、ティーパーティー直轄の委員会、プルウィアの使徒として生まれ変わったのであった……。
先生のメモ帳
ル・シュ・フェル組織一覧
吸血鬼部隊→吸血鬼調査隊ヴァンピール
ハドマ部隊→グリゴリ(ライム脱退)
ゲヘナ部隊→暴走師団・
トリニティ部隊→プルウィアの使徒
レッドウィンター部隊→?
マトイ達との面談後、ナギちゃんはまた胃を痛めて胃薬を飲んだそうな。