「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
「チェリノ会長。部下から、連絡が入りました」
「オイラにか? 何の連絡だ?」
「どうやら1年生の生徒が賞金首『寒崎マフユ』を拘束した──というものなのですが……」
「フンッ、当然だ。事務局の追っ手は優秀で……え? な、なんだと……?」
「ですから、我が校の1年生が捕まえたそうです。そして、懸賞金1,500万円を要求しています。身柄と交換での支払いで大丈夫でしょうか?」
「なっ、何ぃっ!? 1,500万円!? 高すぎるっ! 最高級プリンが何個買えると思ってる!?」
「しかし1,500万円は正当に設定された懸賞金です、支払わないと不義理を働く事に……」
「うぐぐ……で、でもそれは高すぎるだろ! なら、勲章を与えよう! 他校ならいざしらず、我が校の生徒だったら勲章を欲しがるハズだ、適当な勲章を与えよう!」
「寒崎マフユはどうしますか?」
「227号特別クラス送りだ! 任せたぞ、トモエ! 粛清中のマリナの分もしっかりな! オイラは昼寝してくるから、その間に終わらせるように!」
「はい、わかりました」
◆
昼寝に向かったチェリノの代わりとしてトモエが諸々の対応や手続きをする事になった。尤も、別に彼女が昼寝に向かわずとも似たような結果になっただろうが……。
ともかく、チェリノに仕事を任されたトモエは、事務局まで連れてくるよう部下に命じ、到着まで、その生徒に与える勲章など諸々の準備をする事に。
それから程なくして寒崎マフユと捕らえた生徒の両名が事務局に到着したと
「お待たせしました。秘書室長の佐城トモエです。寒崎マフユを捕らえたとの事ですが──おや」
「…………」
「借りてきた猫のように大人しいですね。本当に、これが噂に聞く寒崎マフユ──? いえ、確かに、本人のようですね……」
手配書にマフユの顔写真は載っていない。しかしトモエは事務局、つまり生徒会の人間である。故にマフユの学生証の撮影時の写真を入手することなど造作もなく、生徒に引っ捕らえられたマフユの本人確認も滞りなく完了できた。
「えぇと、あなたもレッドウィンターの生徒だとのことですが、学年とお名前、寒崎マフユを捕らえた経緯などをお伺いしても宜しいですか? 手配書に写真も載せていないのに、どうして特定できたのかという所も気になりますし」
「1年生、
「狙撃でダウンさせ、捕らえた──と。そして我々事務局に連絡を下さったのですね」
「えへ、えへへ……。そういうことです。それでは、懸賞金1,500万円と引き換えでお願いします……」
「あぁ、その件なのですが」
「……はぇ?」
「懸賞金代わりに『第一級髭勲章』を贈呈します。チェリノ会長からの直接の命令です。第一級髭勲章だなんて、大変、名誉な事ですね♪」
トモエを筆頭に、事務局の生徒達からパチパチと嵐のような拍手がワァッと沸き立つ。ちまっとした小さい箱の中心に据えられた勲章を見て、ハユは、口角をピクピクとヒクつかせた。
「懸賞金代わりってなんです? 1,500万は……?」
「チェリノ会長のご意向により、懸賞金はつい先程取り下げとなりました。が、
「…………」
「やれやれ。まぁ、そうくると思いましたよ。上がこんなザマだから、この学園は革命とやらがやたら起きるんじゃないですかね?」
「ふふ、否定はしませんが。さて、マフユさんは、これより227号特別クラス送りです……。しっかりと心を入れ替えてくるのですよ」
「……ですって。どうしますか、ハユ?」
「
「では。……部長ォーーッッ!!!」
「「「「話は聞かせてもらったッッ!!!」」」」
ハユは両手にSMGを構え、マフユは拘束を解き自身の武器を構え、そして事務局の入口が開かれ、安守ミノリの率いる工務部がなだれ込んできた。
「またまた本性を見せたな、邪悪な権力の犬め!」
「正当なる報酬を払わない事は即ちッ! 労働者の搾取である!!」
「報酬無きところに労働無し!!」
「無辜の一般生徒に労働させておきながら、事前に提示した報酬を支払わないなど許されるものか!」
「不当な搾取を平然と行う事務局を糾弾しろ!!! デモだデモだ、革命だーっ!!」
「事務局は全員、227号に連れていけー!!」
「あらあら……。昼寝中のチェリノちゃんもちゃんと連れて行かないと」
……こうして、マフユが呼び込んだ工務部、同時に乗り込んできたレッドウィンター部隊の活躍によりトモエやチェリノなどは227号特別クラスへ移送。
残された事務局にはレッドウィンター部隊の余り数人と、工務部だけが取り残された。
「……どもども。お久しぶりです、ミノリ部長」
「久しぶりだな! 工務部を辞めてしばらくして、お尋ね者になったと聞いた時は驚いたが! まぁ、元気そうで何より!」
「まさか、部を辞めた私にお力を貸してくれるとは思いませんでした。ありがとうございます」
「部を辞めても、マフユが私の後輩であることには変わりないからなっ! それに『権力者を糾弾するデモならいつでも大歓迎だ』と言ってるだろ?」
「ですね。まぁ、私の部隊はデモではなく実働部隊として動くんですけどね」
「ガラ空きになったこの事務局には誰が入るんだ? マフユの部隊か?」
「やだなぁ、そんな事したら先輩、またデモ始めるでしょ〜? しかも、今度は私に向けて!」
「否定はできない!」
「なので、今連れ出したアイツらを置いてくるのと同時に、池倉マリナを連れ戻させます。いつも通り227号特別クラスに居るでしょうからね」
「じゃあ今度はそっちだな!」
「いえ。デモするにしても、せめて、とある仕事を終わらせるまでは待っていてください」
「あっ、そうか。フイにされた懸賞金を、代わりに会長に据えた池倉マリナから受け取るんだな!」
「ハユが懸賞金を受け取り、3分の1程度をヤツの懐に納めさせます。そして金を握らせる『条件』に2つ仕事をさせます。一度『寒崎マフユ』を捕らえ懸賞金が支払われたという実績をもちまして、会長である池倉マリナの名を使い『懸賞金を取り下げ』させます。更にハユの名前で新しい部活を立ち上げ池倉マリナ新会長に『公的に承認』をもらいます。そして、一度は捕まった事になっている私は、部を立ち上げたハユと共にここを離れる。これにより、ほんの一時的でも……晴れて自由の身です」
「お前もブルジョワか〜っ!? このこのーっ!」
「そう言われても仕方ないですがね。でも、今は、そうするしかないんです」
「そうか。思想の違いはあれど、労働者は平等!! 何かあれば、また私を頼れ!」
「じゃ、その時は甘えさせてもらいます、先輩」
「ああ! 飂熾冘巫髏の思想には感動したからな! ある程度は共感すら覚える! 学園を併合、即ち、数ある学園の間に存在する格差を無くすことだッ! 平等を実現することだからなッ!!」
「総長という頂点が存在する時点で、平等ではないですがね」
「そう、だから
「それがいいです。……じゃ、池倉マリナ新会長様の到着まで、皆でプリンでも食べましょうか? あのヒゲガキのことです、プリンを溜め込んでるに違いありませんから」
「そうだな、そうしよう! おいみんな! デモの報酬だ、プリンを食べるぞ!!」
「「「「おおおおーーーーーっっ!!!!」」」」
この後、レッドウィンター部隊に連れてこられたマリナはハユ──というより、マフユの思い通りに仕事をさせられた。
マフユ&ハユは懸賞金を満額でゲットして、その3分の1をマリナに握らせる事でレッドウィンター連邦学園公式としてマフユの懸賞金を取り下げて、更にはハユの申請とマリナの認可にて新しい部活を正式に立ち上げるのに成功。
そのタイミングを見計らってミノリ率いる工務部という名のデモ隊が事務局に押し寄せ、そのデモのゴタゴタに便乗してマフユ、ハユは逃走────。
チェリノが会長に返り咲いた時の事など、考える必要は無い。こんな「革命」などレッドウィンター連邦学園では文字通り日常茶飯事なのだから……。
◆
「────なるほど、そっか。だから急にマフユの懸賞金が取り下げられたんだね」
「おや? 先生、私の懸賞金が取り下げられた事、既にご存知だったので?」
「うん。アビドスの子に懸賞金が掛かってる犯罪者なんかの紹介もしてて。その時にマフユの懸賞金が取り下げられてるのを見たから」
「あぁ〜。そういえば、アビドスの生徒は
「普通にバイトをしてもいるけれどね。ともかく、一度捕まった事で正式に取り下げたっていうのならやり方としてはアリっちゃアリ、なのかな……?」
「ええ。池倉マリナは会長になり、ハユは懸賞金を手にして私は自由の身に。Win-Winでしょう?」
「でも、チェリノが復権したら同じ事の繰り返しになるんじゃないかな?」
「大丈夫です。自分が復権する頃には私の事なんか綺麗さっぱり忘れているでしょうし、池倉マリナの名前だとしても、事務局の会長として正式に認可が下された以上はきちんと機能させなくては。もしもコレで取り下げたりしたら、それはそれで工務部にデモのネタとして提供するまでですよ」
サラッと言っているが、あのデモ隊にネタを提供するとは恐ろしい。マフユが元工務部だったことは知っていたが、そういう繋がりでミノリが活躍するなどとは思わなかった……。
「ところで先生。『話し合いたい事』とは……?」
「マフユはもう聞いてると思うけど、飂熾冘巫髏、近いうちに解散するでしょ。このままだったら全員バラケちゃうかお尋ね者になるから、今のうちに、学園内で正式な集団として確立させておかないと、なんて思ったんだけど……」
「私達の方で先に実行しちゃった、と。どうやら、考えることは同じのようですねぇ♪」
「そ、そうみたいだね……」
トリニティでクロノ、マトイについて話し合いが行われた数日後、今度はマフユだと思い話し合いを開いた所、既に思いつき実行していたと言うから、本当に驚きだ。
流石、飂熾冘巫髏の中でもルーシィに次ぐらしい切れ者とされるだけはある。
「えっと、名目上はハユが部長なのかな?」
「あ、は、はい、書類上はそうです! 私が部長で副部長の席が空いてるんですが……」
「実際の所は私が部長で、ハユが副部長という形で収まっていますね。まぁ私は部長という職にあまり興味が無いので、ハユに任せていいのですが……」
「い、いえ、私はそんな……」
「部活名みたいなのは決まってるの? 参考がてらメモにまとめてるんだけど、良かったら、マフユの部の名前も教えてくれないかな?」
「私は『寒空の悪魔』と呼ばれています。全く──悪魔呼ばわりは心外ですけど、それはそれとして。そしてハユは『青い死神』などと呼ばれています。そんな私とハユの組織ですからね、2人分の異名を合わせた組織名にしようかと。厨二クサイのは一旦置いといて──名付けて『
「そのまんまだね」
「そのまんまです。ネーミングセンスが無いのは、私の技名からも分かるでしょう?」
「……ノーコメントで」
目を逸らしながら一言返すと、頬を膨らませて、ポスッポスッと私の腹を殴ってくる。
「現在のレッドウィンター部隊は、初期とは中身がまるで違います。実力の無い部下は事務局の追手に捕らえられ自由を制限される生活に陥っています。しかし今も私に従っているレッドウィンター部隊は私の作戦にもついてこられる強者──精鋭ですよ」
「私のような狙撃スキルこそ無いものの、その他の能力は大体、私よりもかなり上です。私よりも長くマフユさんに従ってるだけあります、本当に……」
「そんなあなたもあなたで、他の誰にも無いようなスキルがあるのですから、それでいいんですよ」
「えへへ……」
「……ともあれレッドウィンター部隊も大体の問題は片付いたワケだね」
「ええ。後は飂熾冘巫髏が正式に解散するのを待つだけですね」
「わかった。了解したよ」
先生のメモ帳
ル・シュ・フェル組織一覧
吸血鬼部隊→吸血鬼調査隊ヴァンピール
ハドマ部隊→グリゴリ(ライム脱退)
ゲヘナ部隊→暴走師団・
トリニティ部隊→プルウィアの使徒
レッドウィンター部隊→デビルアンドリーパーズ