「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
ある日、飂熾冘巫髏の各部隊を率いる幹部達は、ハドマ学園第1校舎の屋上に全員が集合していた。リンコの列車砲の陰になっている箇所に7人全員で座り込み、まるで送別会のようにお菓子やジュースなんかを持ち寄って騒いでいた。
そろそろ秋に差し掛かる今日この頃──日差しの真下は少しだけ暑く、逆にずっと日陰になっているような場所はコンクリートが冷た過ぎて座れない。さっきまで日が当たっていたような場所だからこそこうして座れるようなものだった。
「いや〜。思ったより話はサクサク進んだんだね。特にレッドウィンター! 聞いたよマフユ、先生と話し合おうとした日には既に終わってて、話し合いするハズだったのに報告会になっちゃったって?」
「えぇ、まぁ。レッドウィンターは革命の日々──それを利用して、新たに立てた『新会長』さんに、私の懸賞金を取り下げさせた挙句、部活の設立まで無理矢理に承認させた、というだけの話ですがね」
「ハユに捕まったフリして、身売りしたんでしょ? 受け取った懸賞金はどこに行ったの?」
「3分の1は新会長に握らせて、残りは、爆薬やら戦車やらの購入費用として消えましたよ?」
「「えぇ〜〜〜〜〜ッッ!?」」
「うるさいですね……私の首に懸かった懸賞金です、私がどうしようと私の勝手でしょう?」
「うん、フツーはそれハユのセリフだからね?」
「ハユは物欲がありませんから。──というより、皆さんと違ってレッドウィンター部隊は逃亡生活がメインだったんですよ? アビドスでは変な機械の大蛇にも追い掛けられましたし、アビドスの生徒と衝突してあわや全滅の危機。これくらいの役得──享受したって、誰も文句は言えないと思いますが」
「「〜〜〜〜〜〜〜っっ」」
平常時における苦労話でマフユの右に出る生徒は飂熾冘巫髏に居ないだろう。少なくとも、逃亡生活ばかり送っていたマフユより生活に苦労した生徒は今ここには居ないはずだ。一度はヴァルキューレに捕まった経験のあるルーシィさえも、マフユほどの苦労をしたかと言われると、そうでもないだろう。
「ところで。私達レッドウィンター部隊は、私達が立てた新会長に強引に部活を承認させましたけど、皆さんはどうやったんです??」
「ハドマ部隊は知らなーい。ルーシィに任せたわ。私は、飂熾冘巫髏が解散するなら不良は辞めるし。女の子には苦労しなかったから、それでいいかな。卒業までテキトーに他の子でも食べてよっかな?」
「ハドマ部隊は、ライムが抜けることになったわ。後は、数人程度は辞めて一般生徒に戻る。大半は、私の指揮する組織『グリゴリ』に残るみたいだからライム以外はあまり変わりないかな」
「トリニティは、先生を交えつつ桐藤ナギサさんとやり取りして、正式に部活として発足する事に決定しました。ティーパーティー直轄っていうのが条件なんですけど……」
「条件はダルいけど、顧問が先生だから自由は保証されてるようなものかもしれないわねー。こっちの組織名は『プルウィアの使徒』。天使にピッタリな名前でしょ♪」
「ゲヘナは、二つ返事でオッケーもらっちゃった♪ 一応、部活──になるのかな? 私を総長にして、
「テロ組織の飂熾冘巫髏を
「大丈夫、ゲヘナの議長さんクルクルパーだから! 風紀委員会をイジめる事ばっか考えてるからねー。私のチームが、風紀委員会の仕事を増やすだろうと思ってるんじゃないかな? 実際は多分そんな事にならないと思うけど……どうせ
道が決まった事をそれぞれ報告する。幹部達は、お互いの顔を見合わせる。これからが楽しみ──と言わんばかりの、希望に溢れた明るい表情だ。
「にしても、ライムさんは不良を辞める、ですか。少しだけ寂しくなりますね。いつも、幹部会とか、遊びに行く時にもライムさんが居ましたし。もしも不良を辞めるんなら、私達とつるみにくいですね」
「いやぁん、もう♡ 嬉しいこと言ってくれるわ♡ だけど、解散してそれぞれの学園で部活として独立するなら、もうこうして集まる事は無いんじゃないかしら。寂しいのは、みんな一緒じゃない?」
「……? 私達で部活やら委員会を立ち上げた所で、真っ当な集まりになるワケなくないですか?」
「そーそー。それに、独立したって、私達はどうせまた集まる事になるわよ」
「今だって飂熾冘巫髏の幹部だから集まってる──というワケではないですからね」
「そんなのただの建前で、フツーに友達としてとかそんな感じで集まるんじゃない? 少なくとも私はそんな認識だったけど、ライムさんは違うの?」
「っ! ……ごめん、そうは考えてなかったかな……いや、思い付かなかった。うん、思い付かなかっただけ。まぁ良ければ呼んで。暇なら行くからさ?」
「もちっ! 大体の幹部陣の初エッチ相手だもの、絶対に呼んであげる!」
グッと親指を立ててウインクするクロノを見て、ライムはどこか救われたような、感動、いや感謝に似た、どこか奇妙な感情が湧いていた。
ルーシィとレイコとは実に小学生の頃からの長い付き合いである。しかしルーシィは、来る者拒まず去る者追わずのスタンス。それはアスカに対してもそうだったし、レイコに対してもそうだ。そして、ライムもまた同様に、例外なく、去るもの追わずの対象であった。
「……」
「?」
分かっていた。
幼馴染同士だからという半ば義務のような感覚で組織に加入し、不良生徒としての道を歩んだ。でもこれはライムが自ら望んだ事。組織が解散する今、不良生徒としての歩みをこれ以上続ける必要など、もう、何処にもない。
もう、戻っていい。不良生徒の萌山ライムから、優等生の萌山ライムに戻っていいのだ。
ライムはそれを理解している。ルーシィはそれを理解し、後押しまでしているくらいだ。
それでもどこか、ライムは寂しさのようなものを感じずにはいられなかった。
だからこそ、クロノの能天気な発言がライムには救いの言葉にも感じられたのだろう。
「あ、そうだ。ユウナ、だっけ。あんたはこれからどうするの? 私は一般生徒に戻るし、ハドマ部隊そのものはルーシィに委任するし……
「どうするも何も、これまで通り、ただの一匹狼に戻る──それだけよ。そもそも、飂熾冘巫髏として活動してる時だって、百鬼夜行からは私だけの参加だったせいで一匹狼だったしね」
「あ。そういえばそうよ? なんで百鬼夜行からはあんただけだったの? 百鬼夜行にだって不良生徒くらいは居るでしょ?」
「
「あ〜……そゆことね」
「スケバンが離反しなきゃ、今頃、ハドマ学園での抗争じゃなくて百鬼夜行との抗争ってことで話題になってたと思う。……ね、ルーシィ?」
「そうね。組織ってのは、新たに設立するよりも、外部から乗っ取るのが手っ取り早いし。スケバンはレイコが潰し回ったヤツを掻き集めただけだけど、伝説のスケバンとかいうヤツのカリスマに負けた、みたいな感じかな。だから魑魅一座の攻略は中止にしたの。取り込んでも、そいつらが丸ごと離反とかしちゃったら面倒な事になるからね」
言ってしまえば、スケバンさえ離反しなければ、こんな事にはならなかった。飂熾冘巫髏として更に組織を拡大し、キヴォトスのあちこちに勢力を広げやがては……。
そんな大それた野望さえ実現できそうなくらい、この組織には「夢」があった。
しかしスケバンという飂熾冘巫髏の一部が離反し牙を剥いた。よりによってルーシィの母校に。故にここはケジメとして組織を解散するしかなかった。
──それを改めて思い知らされ、ルーシィは勿論クロノやマトイなども唇をキュッと結ぶ。マフユやライムなど、一部を除いて……。
「……」
「……大丈夫、ライム? ボーッとしてるけど」
「ううん。何でもないわぁ、大丈夫よ。……そんで? ルーシィ。飂熾冘巫髏は、いつ解散すんのよ?」
「もう、この会議が最後よ。本日、この時この場を以て──我々『飂熾冘巫髏』は……解散よ」
「……そっか。今まで、ありがと。楽しかったわ」
「こっちこそ!」
少女達は一晩中、ジュースにお菓子にエッチに、とにかく、翌朝まで暴れ、貪り尽くした。
これからはもう飂熾冘巫髏としての
先生のメモ帳
ル・シュ・フェル組織一覧
吸血鬼部隊→吸血鬼調査隊ヴァンピール
ハドマ部隊→グリゴリ(ライム脱退)
ゲヘナ部隊→暴走師団・
トリニティ部隊→プルウィアの使徒
レッドウィンター部隊→デビルアンドリーパーズ
ライム→一般生徒に……?