「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
「たっだいま~! 初めての総力戦から帰還だよ! 祝勝会しよ~っ!」
「『はじめてのおつかい』みたいに言うな。あと、祝勝会とかはどうでもいいから、感想を聞かせて。どうだったの? 『総力戦・ホド』ってのは」
「んー、これといった感想は特に無いかな。ただ、先生の選んだ生徒はクセが強い子ばっかりでさ〜」
「クセが強いって、それ、ブーメランブーメラン。姉さんが言うなって感じなんだけど……?」
「いやいや、とびきりクセ強いコが居たんだって! ナルシストというか、凄い自分に自信がある感じの子なんだけど、確かな実力があって不快にならないみたいな……」
「……つまり姉さんみたいな人だよね?」
「テンちゃんには私がどう見えてるの〜っ!?」
シャーレの先生からの招集を受け、技術開発部の部長こと砂田リンコは、「総力戦・ホド」に出陣。そこで華々しい活躍を果たした彼女は、シャーレで行われた祝勝会を経てハドマに帰還。
勝利という朗報を手土産に妹とも飲み交わそうとするが、テンコの反応はまさにいつも通り。祝勝会なんてどうでもいいという、極めてドライなものであった。
「それでさそれでさ! その子のセリフがね、もう面白くてしょうがないの!」
「セリフ?」
「その子の自称っていうか、名乗りが面白くてさ? なんでも──『ミレニアムが誇る超天才清楚系病弱美少女ハッカーであり、「全知」の学位を持つ眉目秀麗な乙女であり、そしてミレニアムに咲く一輪の高嶺の花』──なんて言うの! もうさぁッ、私、耐えらんなくて! 流石に笑っちゃったよね!」
「それは嘘だよ、姉さん。流石にそれは嘘。いくらナルシストでも自信たっぷりだとしても、初対面、しかも他校の生徒に言う奴が居るワケないでしょ。ミレニアムに風評被害が……」
「ネタじゃないよ!? マジなのよ、マジ〜っ!! しかも本人ちゃんと可愛くて強かったし頭良いし、最強みたいだったからね!? いやモチロン戦闘は私が強いけどさ、サポートは凄かったよ!?」
「はいはい、面白い面白い」
「うわーん、テンちゃんのバカァ!」
リンコの普段の「軽い」性格が災いしてか、妹のテンコさえリンコの発言を信じはしなかった。が、それがあまりにも不服だったリンコは、翌日から、その美少女ハッカーの真似をする事で実在する事を身をもって証明してやろうと画策。
──狂人の真似とて大路を走らば即ち狂人なり、という古い古い言葉がある。今日出会ったその自信たっぷりな天才美少女の真似をする事で、自分も、周囲に向けてそのように見えるように演出したいのかもしれない。
◆
「失礼します。リンコさん、いらっしゃいます?」
「んー? この声、リエかな? どったの~?」
「少々相談したい事がありまして。トリニティにて今度行われる、謝肉祭についてなのですけど。実は我が校の生徒にも声が掛かっているようでして……。しかも、ティーパーティー直々に……」
「あーその件か、それならレイコから聞いたよん。何人かと共同で試作品を完成させて、今、確認してもらってるトコ~」
「試作品というのは……衣装の事ですわよね?」
「そだよ?」
「だ、大丈夫でしょうか……?」
「何か心配な事でも?」
「その、あまりにも露出が多かったりするのは……。我が校の品格……品性を疑われると言いますか……」
「アハッ! 自治区イチのヤリマンが生徒会に居た時点で、品格とか死んでるようなものでしょ!」
「それはその……選挙の結果ですし……別に……」
「まぁ、アイドル衣装については任せときなって! この、超天才奉仕系盲目美少女敏腕経営者こと──砂田リンコ様にね!」
「!?」
(決まった……♪)
◆
「リンコせんぱーい。ちょっといい?」
「ルーシィかな? どしたの?」
「ちょっと相談に乗ってもらいたいんだけど……」
「いいよいいよ〜! この超天才奉仕系盲目美少女敏腕経営者、砂田リンコにドシッと任せて!」
「……? えっとねー、飂熾冘巫髏解散してちょっと経つけど、やっぱテロ組織の後釜だから、周囲からの視線がちょっとキツいと感じる時があるのよね」
「うんうん、なるほど?」
「そこで、先輩にちょっと助言というか──」
◆
「……」
「リンコー?」
「全くもう、先生ってば。『サタリン』って呼んでくれないと、反応してあげないよー?」
「わかったよ、サタリン……。──うん。どうにも、生徒をあだ名で呼ぶのは慣れないね」
「それでも、せめて先生にはそう呼んでほしいな? 自他共に認める超天才奉仕系盲目美少女敏腕経営者であるこの私がお願いしてるんだからね?」
「………………うん?? えっと……なんて??」
「だ! か! ら! 私は、自他共に認める超天才奉仕系盲目美少女敏腕経営者なんだからねって!」
リンコの口から飛び出す唐突な自画自賛ワード。困惑のあまり、聞こえていたにも関わらず、思わず難聴系主人公のように聞き返してしまった。
そしてこういう時は「何でもない!」と二度とは言わないのが大体テンプレだろうに、リンコはそのテンプレを無視してリピートしてくれた。
どこか聞き馴染みのある自画自賛ワードの羅列についつい口元がヒクついてしまう。
「……
「あったりーィ♡ なんかこれ、クセになるよね! 自己肯定感も自尊心も育つしさっ♪」
「そ、そうだね……」
超天才──確かに彼女もハドマにおいては天才の部類に入るだろう。列車砲の開発がまさにそうだがどう考えてもリンコは「普通」じゃない。天才故の謎の行動力……と言える場面もあるし。
奉仕系──メイド服に由来しているのだろうか。性的な意味でなら確かにリンコは「奉仕系」だが、他に「奉仕系」っぽい要素があっただろうか?
盲目──ヒマリの「病弱」の代わりに「盲目」がインしたらしい。そんなデリケートなこと、自分で言うのか……と少しだけ困惑してしまう。
美少女──これはそのままだ。
敏腕経営者──ホテルを複数経営、更に家事代行サービスの会社も運営して、主にハドマ自治区内を中心に部員達を派遣して、依頼された家々の家事を代行する仕事をしてるのだったか。「奉仕系」とはここにも掛かっているのだろうか……。
「自己肯定感が高いのは良い事だけど……その……」
「生徒によっては、不快に思ったりする子も居るんじゃないかな……とか思った?」
「ッ!」
「大丈夫っ! ハドマはトリニティともゲヘナとも違って基本的に実力主義な校風だからね! 不快に思ったら力で捻じ伏せようとしてくるし、文句とか言うような子なら私から捩じ伏せるからっ!」
「どこも大丈夫に思えないんだけど!?」
「元がそういう校風だからね〜。これを正したいと思うのなら、まずはトリニティの陰湿さ、ゲヘナの混沌を是正してみれば?」
「ッッッッッ」
できるワケない。
トリニティの陰湿さ──というより裏でドロドロしているのはエデン条約事件で私でさえ何となくは察せたし、アレを根本から直す方法など、思いつくハズもない。
ゲヘナも同様だ。まさに「自由と混沌」を具現化したようなあの荒れた校風を、どう是正するのか。きっと大人のカードの力も及ばない。
「そしてハドマは、トリニティの悪い所もゲヘナの悪い所も中途半端に引き継いでいる──その意味が分かるかな?」
「……
「そーゆーこと! そんな世界で心身共に健康に、そして平然と生き抜くには、私くらいの図太さと、強さと、自尊心! これが欠かせないよね〜♡」
「…………リンコが七天魔にまで上り詰めた理由が、何となく分かった気がしたよ」
「ふっふーん♪」
その後もしばらくの間、自尊心を丸出しにする、ヒマリメソッドは続いた……。