「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
「──や、やって参りました、ハドマ学園恒例──七天魔入れ替わり戦っ……!」
「進行は
「同じく書記、
自薦・他薦を問わず、出場者の了承さえあれば、いつでも実施可能な七天魔入れ替わり戦。つい先日トリニティで行われた
事の発端は、先日のトリニティ謝肉祭の数日前に遡る────。
◆
「……はぁ? アイドル活動で献血を募集??」
「そーそー。シャーレの先生が言うにはさ、組織のイメージアップの為とか、宣伝の為として参戦する生徒も結構居るみたいでさー? そんな空気に便乗しようぜってルビーと話してるとこなの。アンタ、健康保全部の副部長よね? 手ェ貸しなさいよ」
「宣伝って……別に
「それはそう。でもさぁ、いい加減、新鮮な血ィ……飲みたくない?」
「っ……!」
「私やルビーとかは『先生』との
「……まぁ」
「空気を循環させる為に換気するみてーなモンよ。結局さ、今の私達の血液サイクルって、ハドマ内のヤツらで飲んで・飲まれてを繰り返してるだけで、新鮮味もクソも無いでしょうよ??」
「!」
レイコの指摘に、少女はピクリと
「そこに、たとえ一時的でも新しい風を招こうって思ってンの。三ツ星レストランの料理でも、毎日は飽きるっしょ? お菓子もジャンクフードも中華もクソみたいな栄養食も、たまには悪くない。だから献血を募るわ。健康保全部として手ェ貸しなさい」
唐突。あまりに唐突な話だった。彼女はあくまで健康保全部。言わば「保健室担当」の生徒。献血を主に公的な活動をした経験など当然のように皆無。
レイコは元から、こういった思い付きで動く事があったが、今回は度が過ぎている。なんなら校舎を破壊したあの時よりも唐突に思えた程だった。
健康保全部として──つまりは部活単位での活動だろう。当然だ、外部に宣伝するのだから。ならば彼女の独断では決められなくなる。副部長は決して部長ではないし、決定権など無い。最終決定権は、あくまで部長にある。つまりは、ここで彼女が頷くワケにはいかない。
強者に流される性質を持つ吸血鬼である彼女も、ヴァンパイア・ロードの一件を経て、そのように、強く学習したのである。
それから僅かばかりの沈黙を経て、彼女は
「レイコさ──いや、レイコ。それって生徒会役員としての指示? それとも元・飂熾冘巫髏の副総長としての指示? ……どっちなの?」
「どっちでもないわ」
「!」
「飂熾冘巫髏だった頃はさぁ、スケバン部隊の血ィ頂いたりした事も何回かあったよね。だから普段の代わり映えの無いダルい生活にも耐えられた。でも飂熾冘巫髏も解散したから、今後はずっと、こんな代わり映えの無い毎日が卒業まで続くのよ」
「……思ったんだけどさ。スケバン共が離反したの、アンタのせいじゃないの?」
「え、今更? そもそもアイツらボコして支配下に置いたの私なんだし、こうして言われるまでもなく私のせいでしょ?」
「…………」
「とにかく。献血に力貸せって件は私個人の頼み。別に生徒会としての権限を行使するワケでもないし解散した組織の威光に縋るつもりも無いわよ」
「──あ、そ」
「で、答えは?」
「無論、断る。当然でしょ? 吸血鬼、ハドマに何人居ると思ってんの? 例え嗜好品程度の量だけでも集めるのにどれだけ時間と人手が要るのやら。部長の許可が取れるかも分かんないしね」
「な、は……えぇっ!? 了承する流れでは!?」
「生徒会権限なら了承した、というか部長に相談をもちかけたけどね。今更訂正しても、遅いからね。そんじゃ、また」
「ぐぎぎぎ……余計なこと言わなきゃ良かった……」
──と、献血は断る流れで話は切り上げられた。しかし、次に彼女が部長であるサラと合流した時、予想外の言葉が彼女に投げられた。
「あ、そうです。今度のトリニティ謝肉祭の日は、予定、空けといてくださいです。副部長なので一応強制参加という事でヨロです」
「え。……あ、部の皆で遊びに行くんですか?」
「仕事です。実はさっき生徒会の方から『謝肉祭の場を借りて献血してくれ』と指示が来ましたです。まぁ、吸血鬼用の飲料用としてらしいですけどね。献血バスのレンタルの手続きなんかも済ませているそうなので、絶対遵守でお願いしますです」
「は?」
「いやー、まさか、
「はぁああああ〜〜〜〜〜っっ!?!?」
「わっ!? どうしましたですか!? Gブリでも出ましたか!?」
「そういう問題じゃなああああああいっっ!!!」
◆
「──こうして、折角トリニティ内で堂々と遊べるハズだった休日が、献血作業で潰れたのよ。マジで許さん、クソレイコ……クソ生徒会ッ……!」
「雑魚のクセに良い度胸じゃない! それでぇ!? 私を倒して七天魔になってやろうって!?」
「……いいや。私なんかじゃ、例え100人居たって、アンタには勝てない」
「1万人居ても勝てねーわ」
「……。だからァ!! 進行してる、白い方!!」
「「!?」」
「えっと、スナイパーじゃない方よっ! さっさとブチ倒して、引きずり下ろしてやるッ……!」
進行を担当しているシエルを指さす。しかし既に七天魔ではなく純粋に生徒会でしかないシエルは、彼女の言っている事がよく分からず一瞬フリーズ。
数秒そうして目を合わせている内に彼女が勘違いしている事にようやく思い至った。
「あぁ、そういう事。私、もう七天魔じゃないよ。技術開発部の副部長……テンコに負けたからね」
「んなっ……なんっ、で……!? 七天魔のクセに、技術畑のヤツに負けたっての!?」
「まぁ……ああ見えて結構強いよ〜?」
「ぐぬぬぬっ……じゃあスナイパーの方でもいいよ。生徒会の書記だっけ? 勝負しなさい!」
「私ですか? 私も、とうに七天魔じゃないです……リンコさんに負けたので……」
「!?」
少女は目を剥いて驚きを露わにした。七天魔は、元から入れ替わりが激しいものだったが、まさか、ここまで短期間のうちに変わっているなどと夢にも思っていなかったからである。
少女の記憶は砂田姉妹が七天魔に再加入する前、つまり、シエルやアンナがまだ七天魔だった頃で、記憶の更新は終わっている。
「じゃ……じゃあ、生徒会兼七天魔なのって……」
「レイコとリエだよ??」
シエルのその答えに、少女は膝から崩れ落ちた。
レイコ──楯突く気持ちすらも封殺される程の、ハドマにおける圧倒的超最強。彼女以外の、残りの七天魔6人とさえ同時に互角に戦えそうなレベルの戦闘力を有している。当然だが勝てるハズが無い。飂熾冘巫髏時代だって、副総長のレイコが圧倒的な最強だったのだから。
リエも同様。レイコのような圧倒的最強ではないものの、七天魔に加入した時からこれまで、一度も七天魔から抜けた試しがない。つまり、常に学園内上位7名に名を連ねているのである。そんなリエに勝てるハズが無いのは、火を見るより明らかだ。
「そんな……そんなの、勝てるわけ……」
「えー? じゃあ入れ替わり戦はナシ?」
「ッッ……ていうか、今の七天魔って誰よ……?」
「私とアンナが抜けたから……」
現在の七天魔及びその序列は以下の通りである。ただし、序列については明確に定められているものではなく、あくまで暗黙の了解のようなものである一点だけは注意である。
1、失楽園会計・博愛レイコ
2、技術開発部部長・砂田リンコ
3、失楽園議長・我猛リエ
4、統治委員会委員長・鐘蟲スズ
5、統治委員会副委員長・零得ルビー
6、技術開発部副部長・砂田テンコ
7、料理研究会・三重アスカ(
「……って感じかな?」
「ファッ!? 失楽園と技術開発部と統治委員会は2人ずつ所属してる!? そんなのズルよ!!」
「えー? でも『戦闘力上位7名』が七天魔の定義だもんねぇ……」
「弱いヤツは支配されろっての!? 予算も少ない中でチマチマバイトしながら補ってんだけど!」
「いや知らんし。それ全校生徒みんなそうだから」
「はあ!? 技術開発部とか見てみなよ! 屋上にあんなアトラクションみたいなの作って! 無駄に予算が流れてる、いい証拠でしょ!?*1」
「? あ〜、あれ? アレは技術開発部が自分達のビジネスで稼いだお金で建設した物だからセーフ。生徒会は一切、アレに予算出してないよ」
「なん……ですって……?」
「……で? 文句があるなら力で示すのがハドマ流。これだけ無駄に待たせておいて『やっぱキャンセルします〜』なんてワガママは許されないよ」
少女は黙った。
七天魔の7人中4人が生徒会で、その下位2人のうちのどちらかを狙えばそれで済む計算だから。
しかし現実はそうではなかった。アスカを除けば3つの部活・委員会が七天魔の座につき権限を分割している状態だった。
少女は考えた。
自分の力量で七天魔に勝てるとすれば──勝てる見込みがあるのは下位メンバーのみだ、と。つまりアスカ、テンコ、そして同族のルビー。ここまでがせいぜいだろうと考えた。
中位とも言えるスズでさえも、実力派組織である統治委員会の委員長。勝てる見込みは皆無だった。飂熾冘巫髏だった頃に、深く強く思い知らされた。統治委員会からは、逃げるしかないということを。
少女は閃いた。
正当なメンバー相手に正面から勝てないのなら、特別枠を奪えば良いのだと。つまりテンコやルビーではなく、アスカを倒しその地位に就けばいいと。
「──三重アスカッ! あんたに、入れ替わり戦を申し込むわッ!」
「……え、私?」
「待って。アスカは特例のヒーラー枠だよ。つまりヒーラーであり戦えもする人材が求められるワケ。有事の際は前に出て戦うのが七天魔の存在意義だ。アスカはよく働いてくれてるけど、あんたにそれができるっての?」
七天魔における「ヒーラー枠」を提案しアスカを庇った当人であるテンコは、彼女を庇うようにして前に立ち、少女を問い詰める。
すると、本人はヂッと重く舌を鳴らすと、怒りに表情を歪め、中指を立てる。
「
──少女はキレた。