※この作品はR-18です。

「先生!もっとあたしらに構って!」   作:アキラゼミ

118 / 185
第11話:混沌の戦場 〜Desperate Assault〜

 

 七天魔の7人による校庭での戦闘は、凡人ならば校庭に足を踏み入れたり、窓際に近付くことすらも憚られる程に熾烈を極めていた。

 七天魔──つまりは学内での最強順位が上位7人という事であるが、今回は暫定で特別枠のヒトデが参加しているので、彼女を除けば純粋に戦闘力での学内上位6人という事になる。

 

 そんな7人が3チームに分かれての戦闘──ただ一言で「激しい」と言ってしまえばそれまでだが、少女のものとは思えぬ雄叫び、地震の如き地響き、爆発音に発砲音などがそこら中で響き、それにより窓が震え、場所によっては被弾せずとも割れる程の激しさだった。

 

 7人で3チーム。可能な限り平等に分けても必ず1チームは人数が3人になってしまいかなり有利に働くだろうと思われたが、実際はそうでもない。

 

 チーム「特別枠不要派」ことレイコ&スズは──レイコは飂熾冘巫髏の元・副総長。更には、吸血鬼部隊、チンピラ部隊を率いていた、自他共に認めるハドマ最強の吸血鬼。そんな最強の自分に回復など不要と思っているが、テンコの説く「合理性」も、少しは視野に入れているようだ。

 スズは、ハドマでの風紀委員会こと統治委員会の委員長を務めている、超がつく程の武闘派。そんな自分に回復は不要であると、レイコとも似たような考えを有している。

 2人は、かつて思い切り敵対していたが、現在は和解に至り、しかもこの戦いにおいては互いの背を任せるまでになっている。

 

 チーム「中間論」ことルビー&リエ&リンコ──ルビーはスズの為にも必要と思っているが、本人が拒否している為に迷っているようだ。スズの率いる統治委員会の副委員長であり、実力は折り紙つき。

 議長こと生徒会長であるリエは、七天魔の中でも2位か3位の位置付けとされており、当然のように最強クラスの強さを誇っている。先日のハドマ学園篭城戦では、七囚人の1人・栗浜アケミとの激しいタイマンを繰り広げ、純粋なタイマンではアケミに引けを取らなかった程のタフ・ガールである。

 技術開発部の部長であり、幾つかの施設や会社を運営している社長でもあるリンコは、現在はとある事故により失明しているものの、特製の義眼にて、一時的に視力を取り戻している。戦闘力についても申し分なく上記のリエと同レベルまたはそれ以上の強さかもしれない。

 

 チーム「特別枠必要派」こと、ヒトデ&テンコ。ヒトデは健康保全部の副部長である。健康保全部はハドマ学園における保健係であるが予算は常に逼迫しており、その上で、人材まで不足している始末。故にヒトデは自分が七天魔に入り、七天魔としての特権を得ることで、自分達の部活に優先的に予算を回そうと奮闘している次第である。

 技術開発部副部長でリンコの妹であるテンコは、非常に合理的理由にて、回復役を置くという提案を押し通す為、ヒトデと手を取り合い奮闘している。元はアスカを予算的な意味で補助する為だったが、アスカの七天魔脱退が為された今、彼女を守る為に説いていた「合理的理由」を押し通す必要は無い。それでも、己の発言に筋を通すという意味で今回の戦闘にも必要派として参加している。

 

「ヤバいってヒトデ! 押されてるよ!? これ、アンタの回復、追いつくの!?」

 

「わかっ、わかってる! 追い付かせるから!!」

 

 ヒトデはヒーラー。今回、テンコはアタッカーで参加している。故に、ガンガン攻撃を仕掛けているものの、他チームのアタッカーは複数人、テンコのチームだけアタッカーが1人だとなると、回復役が1人だけでは、嫌でも押されてしまうらしい。

 とはいえテンコは素でタンクのように堅牢なのでどうにか耐えられている様である。ヒトデは彼女の回復に手一杯らしく、他の生徒への攻撃などは到底できそうになかった。

 

「アンドロイドリンコ! レイコは任せたよっ☆」

 

『アイアイサー☆』

 

「ルビーさんはスズさんを! 私は彼女以外(・・・・)を!」

 

「了解です!」

 

 現在、レイコとスズは別行動である。

 というのも、レイコのEXは味方をも巻き込み、甚大な被害を与えるものだからだ。そしてスズは、時間経過と共に攻撃力が上がる特殊なスキル持ち。故にリエは、自チームの中では素の攻撃力が高めのルビーに、スズの討伐を任せたのである。

 そして──アンドロイドを召喚し、誰にとっても厄介で面倒なレイコの相手を任せた(押し付けた)リンコは……。

 

「ほらほらほらほらほら〜〜〜☆」

 

「だぁぁぁぁっ、もうッ!! 射程外からチクチクチクチクと、うっざいなぁぁぁッ!?」

 

「この混戦の中で、タンク並みに堅いテンちゃんの相手をするほど、私はマヌケじゃないよ〜。相手の嫌がることをするのが戦闘だしね?」

 

「だからって! くっ、こンのッ……!!」

 

「射程に関しては、SGとMGの宿命だね〜」

 

 リンコは豪快にMGで薙ぎ払うようにして攻撃。素でタンクのように堅いテンコはどうにかして接近してから攻撃しようと足掻くも、そうもいかない。

 SGを使うテンコより射程が長いMGのリンコは射程外から仕留めようと的確に攻撃を続ける。その攻撃速度たるや、ヒトデの全力の回復でやっと場に留まれるくらいのもの。素で堅牢なテンコだから、ヒトデの回復でもギリギリ間に合うレベルだ。もしテンコでもなく、そして属性的な相性も悪ければ、とっくに戦線離脱していた。

 

『あーれー☆』

 

「あ。やっばぁ……」

 

 レイコの足止め役を押し付けていたアンドロイドリンコが、HPが尽きた事による自爆を実行。当然自爆によるレイコへのダメージは無に等しい。

 そして。

 アンドロイドリンコの捨て身の妨害が無くなった今、レイコを縛るものは、もう何も無い。

 

 ルビーはスズの、リンコはテンコの相手をして、ヒトデはテンコの回復に掛かり切り。そしてリエはちまちまとレイコに攻撃しながらスキルのコストを溜めて、一網打尽にしようと画策している。

 現在、唯一完全フリーになっているのは──最もこの場でフリーにしてはいけないはずの人物。

 

「私こそが最強よ……!」

 

「っ!? そんな……!?」

 

 リエは驚愕した。

 より早く力(コスト)を溜められるのは、1人だけとはいえチームメイトが多い自分達のハズだから。

 しかし同時に気付いた。リンコが、アンドロイドリンコを召喚するのにEXスキルを使用しコストを消費していたと。よって、既にこの時点でリエ側のコストは少し減っており、チームメイトは多くともコスト面の有利をレイコ側に与えてしまっていた。

 

「議長ッ!!」

 

「ルビーさんっ……」

 

 レイコがEXを使用しようとした、その瞬間──スズの相手を任せていたハズのルビーが、レイコとリエとの間に割り込むと、リエをEXの範囲外へと思い切り突き飛ばす。

 

「どうして──」

 

「私より議長の方が強いからですよ! その方が、私はダメージ受けても……結果的に有利です!!」

 

「ルビー、さん……ッ!!」

 

「『Desperate Assault(EXスキル)』ッッ!!」

 

 レイコの災害級のEXスキルが炸裂────窓が全て割れ校舎にもピシピシパキパキとヒビが入る。

 スズは範囲外に退避していた為、ノーダメージ。ルビー、ヒトデはHPの大半を喪失した。ヒトデの断続的な回復によりどうにか耐えていたテンコは、レイコのこの攻撃が決め手となり脱落。

 

 ルビーが範囲外に押し出してくれた事で、リエもスズと同様にノーダメージ。リンコは、ダメージを受け、特製の義眼にもダメージを負ったようだが、体力的、そして戦闘力的にも、少なくともヒトデやルビーに比べると、かなり余裕があるようだった。

 

「チッ。テンコしか直接『処理』できなかったか。まぁいいけど」

 

「ぐっ!?」

 

「あがっ……」

 

「さぁ出番よ、羽虫委員長ッ!」

 

「羽虫って言うな!!」

 

 ヒトデ、ルビーを「処理」し終えたレイコは遂に満を持してスズを呼び寄せる。庇われたとはいえ、先程のEXを無傷でやり過ごしたリエを屠ろうと、力を溜めたスズを差し向ける為に。

 

「リエッ!! アンタは今日、あたしが倒すッ!! 『あたしの邪魔をするヤツは喰ってやるわ(EXスキル)』ッ!」

 

 攻撃力666%分のダメージをリエに向けて放つ。

 数値で見れば決して高くないダメージ量、しかし戦闘開始から1分程度が経過した現在、スズは己のサブスキルの効果により、攻撃力が数倍に──星が弾けんばかりの勢いで膨れ上がっている。

 

 レイコがEXを使う直前までは、スズにルビーが襲い掛かってきていた。その時は後にサブスキルの効果を満足に発揮する為に、適当にいなしていた。

 ルビーではなくスズが統治委員会の委員長を担当している事からも分かるであろうが、スズは、本来ルビーを倒せる実力がある。にも関わらず、敢えてルビーを倒さぬよう、適当にあしらっていたのだ。

 

 全てはこの時の為。全ては、レイコが飂熾冘巫髏副総長として世に出現するまでずっとハドマ学園のトップを飾っていた、スズから見ても尚強者である生徒会長、我猛リエをこの一撃で葬り去る為に。

 

 スズが、リンコやリエの存在を知っていても尚、レイコの表舞台への登場まで「ハドマ学園最強」を名乗っていた理由が、まさにコレなのである。

 だって、スズにはコレがあるから。

 たった一撃で敵を屠る事ができるポテンシャルをその身に秘めているから────。

 

「『大紅蓮地獄(マカハドマ)』ッ!!」

 

 それとほぼ同時に、リエのEXが発動。大氷山を形成すると、自身にSMG2丁を向けてくるスズにそれを思い切り投擲。

 それにより、スズはまず大氷山を砕かねばリエに攻撃できず、押し潰される事になってしまう。

 

 戦闘不能になってしまえば元も子もない。回復役なんてものは不要であると声を上げても、説得力が欠片も無いではないか。

 瞬時にそこまで思い至ったスズは、SMG1丁を大氷山へ、もう1丁をリエに向けて攻撃を放つ事で普段の倍の攻撃範囲を実現した。

 

 スズは、極めてスロースターターだ。

 サブスキルにより(敵を倒さない限り)定期的に攻撃力が上がるとはいえ、素の攻撃力はルビーより低いとすら断言できるほどに。

 それ故に、2丁のSMGを常に同じ方向に向けて攻撃している。たとえ攻撃範囲が狭くなろうとも。

 1丁のSMGだけでは、攻撃範囲は確保できても肝心のダメージを確保するどころか、有効打すらも保証できないから。しかし────。

 

「ぎゃあっ……!!」

 

 砕かれた大氷山は氷塊となって降り注ぎ、スズの身体を強かに打ち据える。攻撃力を高めようとも、SMG1丁で対処できるサイズではないのだから。

 そして、もう1丁でリエを攻撃していたものの、そちらは……。

 

「なん、です……って……」

 

「盾に(こう)する為のアンドロイドだよ☆」

 

「──そういう事です」

 

 リエへの直接の攻撃はアンドロイドリンコが身を呈して受け止めていた。氷塊に押し潰されたスズはHPが尽き気絶……ヘイローは消失してしまった。

 場にはレイコ、リエ、リンコの3者だけが残り、そして遂に、レイコにとっては運命の時間である、

「戦闘開始から100秒」を迎えようとしていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。