※この作品はR-18です。

「先生!もっとあたしらに構って!」   作:アキラゼミ

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第12話:ゲヘナ大戦争

 

「委員長!ヒナ委員長ーーーっ!!」

 

「……朝から何……?」

 

「たたっ大変ですっ!本部の前に、昨日攻めてきた白い髪の女の子が!ひっ……1人で来てます!」

 

「何ですって……?」

 

 飂熾冘巫髏が風紀委員会本部に強襲を仕掛けた、まさに次の日。飂熾冘巫髏の構成員など引き連れずレイコがただ1人で風紀委員会本部にやってきた。

 しかも末端の風紀委員に「空崎ヒナを呼んで」と堂々と告げる始末。

 

(モルモは、夕方から夜に攻めてくるハズって予想していたけれど……朝っぱらも良いところだわ……)

 

「ど、どうしますか!?委員長は不在だとか言って追い返しますか!?」

 

「バカね、それじゃあ本部(ここ)に攻め入る隙と思われるだけでしょ」

 

「委員長が待ち伏せする、とか……!?」

 

「沢山の敵がなだれ込んできたら対処は不可能よ。私でも多すぎる敵には対応できないわ」

 

「あう……」

 

「そいつの目的は?」

 

「『ヒナ委員長を呼んで』と、それだけでした!」

 

「…………」

 

「ど、どうしますか!?モルモ副委員長に連絡して呼び戻しますか!?」

 

「何時間も掛かるでしょ。私が対処する、チナツとアコに援護させるから、無線を繋げるよう言って。今すぐに」

 

「はいっっ!!」

 

 その生徒をアコ、チナツへの伝令役とし、ヒナは本部を出る。銃痕が生々しく残ったエントランスを一瞥し、眉間に皺を寄せながら、コツコツと靴音を鳴らしながら本部を出る。

 扉を開ける瞬間に狙撃される事まで想定していたヒナは銃弾から眼球を守る為に薄目で扉を開ける。しかし狙撃される気配は無い、そればかりか……。

 

「おはよーさん、空崎ヒナ」

 

 堂々と腰に手を当てて扉の前で仁王立ちしていた少女──レイコは、これから戦うヒナに向かって、軽く「おはよう」と口にする始末。ヒナの混乱は、言うまでもない。

 

「……あなた、何しに来たの」

 

「空崎ヒナ(あんた)と戦いに来た」

 

「それが目的?」

 

「そっ。飂熾冘巫髏っつーより、私個人の目的よ。だから仲間なんて連れて来てない。まずはあんたを倒す。それこそが私の『最強』への道の第一歩だと思ってるから」

 

「────……私の次は?」

 

「次?そーね、剣先ツルギと聖園ミカ、この2人を潰しにトリニティに行くつもり。顔も知らないけど有名人らしいから、とりあえずトリニティに行けば分かるでしょ。この2人は、どっちが強いのかすらよく分かんないし。────その点、ゲヘナ最強は分かりやすくって、本当に助かるわァ。あんた1人だけだもの」

 

「……」

 

「だから勝負よ、空崎ヒナッ!私が『最強』に至る踏み台になりなさい!!1対1(タイマン)よッ!!」

 

「……いいわ、ノッてあげる。私が勝ったら大人しく捕まりなさい」

 

「!……わかった。あんたも援護無しで戦(や)りなよ」

 

「勿論。──アコ、チナツ、援護は無用よ。じゃ」

 

 無線をパキッと軽く握り潰し破片を投げ捨てる。それを見たレイコは、獣のように牙を見せるようにニィッと口角を釣り上げ、ポキポキと指を鳴らす。

 

「タイマンにノッてくれるんだ?ありがと♡」

 

「あなた、まだ1年生なんでしょう?1年生たった1人の為に、援護まで受けながら戦う程、私はまだ落ちぶれちゃいない」

 

「──年下のガキ相手だろうと援護を受けるのは、決して『落ちぶれ』じゃないけどね。『獅子は虫を狩るのにも全力を尽くす』、それだけだからね」

 

(それを言うなら『兎』じゃないかしら……)

 

「じゃあ戦(ヤ)リ合おうかァ!!空崎ヒナァァッ!!」

 

 背中に備えていたマシンガン2丁を取り出して、同時にヒナに向ける。先日は乱戦だった為に上手く観察できなかったが、改めて見て、ヒナはレイコの銃が改造されている事に気付く。

 

「そのMG────ゲヘナ学園の支給品をそのまま使ってるんじゃないのね。見た目はそのまま性能を向上させている……」

 

「ええそーよ、片手で扱えるようにイジッてるし、左右どちらの手でも同じように扱えるようにした!私は両利きなのよッ!ハアァァァ〜〜ッ!!」

 

「それは随分と、器用なことで……!!」

 

 撃ち合い、距離を取り、撃ち合い、距離を取る。2人の動きは機敏で、並の生徒にはついていけないまさにトップレベルの戦いだった。リロードすらも隙らしい隙にはならない。

 

「『終幕:イシュ・ボシェテ(EXスキル)』」

 

「……あーはん?範囲、そんなに広くないね」

 

「ッ!」

 

「そんなにタメが無いからなのかな。いやそれでもルーちゃんよか、よっぽどある(・・)ね」

 

 ルーシィのEXに比べてしまえば誰のEXだって攻撃力があると言えてしまうだろう。しかしヒナのEXは攻撃がメインであり、特殊効果らしい効果は無いのが、余計にそう思わせてしまうのだろう。

 

「狙撃して思ったけど、あんた、マジで堅すぎっ!何よ、カァン!って!ヘッショキメたのにさぁ!」

 

「っ!……あの狙撃はあなただったの?」

 

「ええそーよ、それが何かァ!?」

 

「悪くないんじゃない?専業スナイパーと遜色ない腕前よ」

 

「あっそ、サンキュ!けど、武器なんか扱えても、倒せなきゃ……強くなれなきゃ意味無いのよッ!!」

 

 ドガガガガガガガガッッ!!と2人の撃ち合いは続く。互いにダメージは余り入らない、いやヒナが堅い分、レイコにダメージが蓄積して段々と劣勢に傾きつつある。

 

(確かに、昨日のこの子はMGの他にSRも持って攻めてきていた。適当な付け焼き刃だと思って軽視していたけれど……ひょっとしてこの子、自分の固有武器を持っていないんじゃ────?)

 

「戦闘中に考え事なんて、ヨユーあるじゃない!」

 

「!」

 

 レイコは引き金から指を離し、銃床を握る。銃を鈍器のように振りかぶりながら、左右にちょこまか移動し接近してくる。

 銃を構えているヒナと構えないレイコでは移動や反応の速度に大きめの差が出る。レイコの急接近に出遅れたヒナは大きな隙を見せてしまった。

 

「これで終わりよォッ!!!」

 

 思い切りMGを振り下ろす。銃を支え、引き金に指を置いている状態では腕で受け止めるのは絶対に間に合わない。かと言ってこのまま頭で受けるのはそのまま気絶(脳震盪)──敗北に繋がりかねない。

 瞬時に思考を巡らせたか、それとも反射なのか。ヒナは振り下ろされるMGを前に、僅か1歩、いや2歩分だけステップバックした。

 

「────ッ!!」

 

 彼女のMGは、ヒナという殴る対象が消えた事で空を切りそのままの勢いで地面を殴る。今だ──と咄嗟に銃を構え直したヒナは、頭を垂れるレイコに向かって大火力を放とうとするが。

 

「だりゃあッッ!!」

 

「がッ……!?」

 

 地面に突き立てたMGを起点にして空中で倒立、回転をキメたレイコは銃を振り下ろしたあの勢いのままで、ヒナの脳天に踵落とし────!

 

「ッ!?……ガヒュッ……」

 

「ふぅ。角に当たってたらヤバかったかもだけど、どうよ?中々の精度でしょう?私の蹴り♡」

 

「あ゙……ぅ……?」

 

「ふふ、焦点が合ってないわー?衝撃とか、その他物理攻撃に弱そうだとは思ってたけど、そのまさかだったなんてね」

 

「ぐ、ぅ……くっ……!!」

 

 堅い、硬い、固い────「カタい」とは同時に

「脆くて壊れやすい」である。ヒナの異常な堅さを思い知らされたレイコは作戦を練った。真っ向から撃ち合っていては、勝てやしないと知ったからだ。

 だから作戦を切り替えた。銃撃以外の「衝撃」を与える物理攻撃にシフトした。

 銃撃戦の最中にそんな事をされては、ヒナですら反応が遅れるだろうと、そこまで想定し、予測して起こされた行動だった。

 

「確かに銃撃戦においては、あんたは強かったわ。私の知る限り最強よ。モル姉より強いでしょうね、まず間違いなく……」

 

「…………ッ」

 

「惜しむらくは『それだけ』だったことね。近接、物理も含めた『何でもあり』なら、私の方が上よ。じゃあね空崎ヒナ──『荒ぶる破壊神の顕現(EXスキル)』!」

 

「……ッッッ!!!」

 

 その日、風紀委員長・空崎ヒナは、数ヶ月ぶりの敗北を喫した。

 ヒナを倒されたのを見ていた風紀委員達は慌てて助けに入り、または本部の防衛にあたる。彼女達のそんな行動を見つつ、レイコは、本部には何もせずフラリとどこかへ行ってしまった。

 勿論、向かう先はルーシィの居る万魔殿だが──ヒナがやられてしまった今の風紀委員会にレイコの向かう先を気にする余裕などあるはずもなく……。

 

 ◆

 

「マコトちゃ〜ん?お客さん来てるわよぉ?」

 

「何っ?今日、来客の予定なんかあったか……?おいイロハ、今日の予定を確認しろ」

 

「確認するまでもなく、予定なんかありませんよ」

 

「だろうな。サツキ、そんなヤツ追い返しとけ」

 

「え〜……なんか大所帯だからイヤなのよねェ」

 

「大所帯……?」

 

 レイコとヒナが戦い始めた頃、万魔殿でも1つのアクシデントが起きていた。偶然外に居た万魔殿の構成員サツキは、万魔殿前にやってくる謎の集団を見るなり、議長の羽沼マコトに「客」として報告。

 しかし当然そんな客の予定などあるはずもない。マコトは訝しんだ。

 

「イロハ、外を見てこい」

 

「これからイブキに読み聞かせの時間です」

 

「なら仕方ない。私が行くか」

 

 ゲヘナのアイドル的存在、イブキの為なら、他に用事など押し付けられないのも仕方ない。重い腰を上げたマコトが万魔殿前で目にしたソレは……。

 

「あ!やっと来たァ、議長さーん。お〜い♡」

 

「な……に…………ルーシィ……だと?」

 

 飂熾冘巫髏の構成員達を引き連れたルーシィが、万魔殿を包囲していた。マコトがそれを見て驚愕の表情になると、わざとらしいくらいの笑顔で、手を振って見せる。

 

「あの赤髪……ホームページで見た顔だと思ったら。あれ、ハドマ学園の副会長ですよね?」

 

「読み聞かせはどうした」

 

「それどころじゃなさそうなので。で、なんですかコレ。囲まれてません?」

 

「……コイツら、ルーシィの組織の構成員だぞ……」

 

「……やっぱり騙されてたんじゃないですか……」

 

 イロハは溜め息をつき、読んでいた本を閉じて、ひっそりとその場を離れた。マコトはそんな事にも気が付かず、にやけ顔のルーシィを見てワナワナと震えている。

 

「あっれぇ?どーしたのォ?」

 

「おい貴様!ルーシィ!風紀委員会をどうこうする話はどうした!」

 

「その相手は私じゃないよね?その話は、あくまでうちの副総長とあなたの契約。私には関係ないわ」

 

「なん……だと……!?」

 

「まぁ気にしなくともいいわ。今頃、風紀委員長と戦ってる頃だからさ」

 

「!そうか、では……」

 

「その間に私は万魔殿を潰すってワケ♡」

 

「…………は?」

 

「憐れ、羽沼マコト。万魔殿も今日でおしまいよ。これからは私達が──飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)が!ゲヘナ学園を統治するのよッ!!」

 

「何ィィィーーーーッッ!?!?」

 

 しかし、マコトの隣で話を聞いていたサツキは、ルーシィのその堂々たる宣言を聞いて「プッ」と、小さく吹き出してしまった。

 

「何かおかしい事でもあるかしら?ピンクさん?」

 

「いえね?お粗末な計画だなぁ〜って思ったのよ」

 

「……は?」

 

「ゲヘナ学園は、こう見えても選挙制なの。思わず笑っちゃいたくなるくらい、荒れているのにねぇ。でもマコトちゃんは、そんな中で最も票数を集めて万魔殿の、しかも議長として君臨してるの。そんなマコトちゃんに勝てるの?」

 

「あぁ、3%だっけ?」

 

「「ッ!?」」

 

「あ、違った。3.8%か♪」

 

「「!?!?」」

 

「まっ、どっちも似たようなもんか。ゲヘナ学園の生徒数が4000人だとしたら、4%で計算した所で、マコトへ投票したのは僅か160人。……カスね」

 

「何だと?」

 

「この飂熾冘巫髏はハドマ学園全生徒の6、7割を占めてるわ。数にして、およそ300人よッ!!」

 

「なッ……」

 

「なぁんと倍近くの差があるの!笑っちゃうわね、マコト議長!?アハハハハハハッ!!」

 

 昨日の風紀委員会との戦いで80人近くの構成員が拘束された。それでも220人。マコトへの投票数と比べるまでもない。

 ────とはいえ、%に直せば大した差は無い。そんな事、ルーシィは理解している。しかしそれはマコトも同様であった。

 

「キキキ……私は知っているぞ、ルーシィ。そちらの構成員が数十人、昨日、風紀委員に捕まったろう。もし今から選挙を行うとて、大した差は無いはず。いいや、知名度の差からして我々が勝つだろう」

 

「あんたバカァ?ノータリンじゃないでしょうよ、マコトさんはさァ。あの時の調印式で見せてくれた頭のキレはもう失われたの?」

 

「!?」

 

「────この私が、飂熾冘巫髏からの票数だけで私より有名なあんた相手に勝負すると思ってんの?そんな……場当たり的に行動すると思ってんの?」

 

「何だと……?」

 

「ゲヘナ学園との併合が完了したあの日のうちに、ゲヘナ学園に構成員達を送り込んでたわ。各所への挨拶回りも完了。選挙になったら、まず負けない。そういう『準備』を整えてるから、今、私はここに居るのよ……議長さん♪」

 

「くっ……!!ならば実力行使するまで!イロハァ!戦車隊の出番だ!!ヤツらを焼き払ってしまえ!!さぁ早く!…………イロハ?」

 

「とっくにどこかに行ってるわよ。というか、まだ気付いてなかったのね、マコトちゃんったら……」

 

「イロハァァ〜〜〜〜〜ッッ!!!!クソッならばサツキ、お前が指揮するんだッ!」

 

「うーん……」

 

「……サツキ?」

 

「……ごめんねぇ、マコトちゃん。この前、あの子の紹介でイイ感じの子に引き合わせてもらったのよ。受けも攻めもどちらもできる、スゴい子♡」

 

「?」

 

「だから──私は飂熾冘巫髏(あちらさん)に付くわ」

 

「何だと!?お前っ、そっちに付くだと!?」

 

「自称・夢魔──悪魔の学園であるゲヘナ学園にも存在しない、滅びた悪魔の末裔が居るだなんてね。あの子の事、もっと詳しく知りたいのよ。だから、ここはアッチを勝たせてみたいのよね、敢えて♡」

 

「……根回しは十分、か。針村ルーシィィィ!!」

 

「ええそうよ、羽沼マコトォ!!飂熾冘巫髏──」

 

「万魔殿────」

 

「「攻撃開始ィィッッ!!!」」

 

 リーダーの号令が放たれ、それぞれ指揮下にある生徒達が動き出し、戦闘を開始した。飂熾冘巫髏の構成員は万魔殿の下っ端達に比べて数倍もの人数が居る。

 個々の実力は拮抗している、しかし数が変わればその拮抗している状況は大きく変わる。それに加え万魔殿にとっては最悪な事に、飂熾冘巫髏の方には範囲型の回復役が揃っているという要素も加わる。

 幹部格が参戦してもしなくても────戦況は、着実に飂熾冘巫髏に傾いてきていた。

 

「クソッ、イロハさえ居ればこのような状況ッッ!どこに行ったんだイロハぁッ!!」

 

『────本当にうるさいですよマコト先輩……』

 

「ッ!?」

 

 ガァァァァッと戦車で突撃してきたのは、イロハ率いる戦車隊であった。当然、イロハの姿もある。そして彼女の運転する虎丸の中にはイブキも居る。戦車隊はイロハが合図するまでもなく一斉に砲撃を開始し、飂熾冘巫髏を蹴散らしていく。

 パカリと虎丸のハッチが開かれイロハとイブキが揃って顔を出す。マコトは口元を釣り上げて、牙を見せながら笑う。

 

「遅いぞッ!」

 

「参戦する気なんかありませんでしたよ」

 

「何ィッ!?」

 

「こうもドンパチうるさいと、昼寝も読み聞かせもできないんですよ。だから、うるさいヤツを戦車(これ)で黙らせます。それだけです」

 

「……フン!素直じゃないヤツめ!」

 

「何とでも言ってください」

 

 溜め息と共にハッチを閉め、イロハも参戦する。飂熾冘巫髏の構成員は、己の装備以外の攻撃手段を持たない。故に、歩兵多数のみならともかく戦車も現れた事で一気に形勢が逆転してしまった。

 

「ぎゃあああっ!?」

 

「いたたっ、いててててっ!?」

 

 飂熾冘巫髏の構成員の多くは対戦車の戦闘技術を持たない。相性などの問題は確かにある。けれどもそれ以上に、対戦車については、圧倒的な経験不足という事実が挙げられる。

 飂熾冘巫髏にだって、過去に何度も戦車との戦闘経験がある。スズ率いる統治委員会も数台とはいえ戦車を保有しているし、その他の委員会も、型式が古いとはいえ保有してはいる。飂熾冘巫髏だって、その他のチンピラとの戦闘経験もある。

 それでも──それはあくまで飂熾冘巫髏としての戦闘経験の話である。構成員1人1人はレイコ1人だけで蹂躙できる程度の実力だし、それより何より大きいのは、対戦車はレイコに任せっきりだった、というのがある。

 ご存知の通り、レイコのEXは、その攻撃範囲もさることながら、何よりも対物に特化している。

 故にルーシィ含め飂熾冘巫髏はレイコにそれらの攻撃を任せっきりにしてしまっていた。

 今回の予想外の戦車隊という助太刀は、まさに、ルーシィの誤算であった。

 

「くっ、そ……!アスカ!アガリ!!」

 

『はい……!』

 

『はいっ!!』

 

 ルーシィの指示で2人がEXを使用し、仲間達を癒していく。しかし範囲は限られている。戦車隊に蹴散らされ散り散りになりつつある混戦の中では、2人だけで回復してあげられる生徒の数は、かなり限られてしまっている。

 

「行け!行けェッ戦車隊!裏切り者の飂熾冘巫髏を蹴散らしてしまえッ!!やれ、イロハァッッ!!!キキキキ……ハハハハハハハッ!!万魔殿に逆らうとどうなるのか、見せ付けてやる良い機会だッ!!」

 

「クソッ、ゲヘナバカマコトのクセに……!!部下に任せまくって良い気になってんじゃあないわよッ!ブッ潰してや────」

 

「『荒ぶる破壊神の顕現(EXスキル)』────ッッ!!!」

 

「「「ッッッ!?!??!」」」

 

 瞬間、一定範囲内にある全ての戦車が爆発四散。イロハの搭乗している虎丸も例外ではなく、2人が脱出を果たす前に爆発……破壊されてしまった。

 

「なん…………だと…………?」

 

 ────ルーシィには、もう1つ誤算があった(・・・・・・・・・・)。

 それは、レイコが五体満足な状態のままでヒナを打ち倒し、尚且つ自分達の援護に来れる余力があるという事であった。

 勝てたとしてももっと拮抗し、ボロボロな状態と予測していたルーシィとしては、レイコの強さとはそれ程までなのかと、目の前に現れた彼女を見て、心の中から褒めちぎりたい程であった。

 

「お待たせ〜、ルーちゃん♡」

 

「レーちゃ……レイコ!?」

 

「戦車に囲まれちゃあ、弱いよねぇ。飂熾冘巫髏、戦車とか保有してないせいで演習もできやしない。対戦車の戦いに、全く慣れてないからねぇ」

 

「随分と……早かったわね……」

 

「ま……決着が早かったから」

 

「……そう……」

 

「空崎ヒナ──良い奴だった。ノる必要なんて無いタイマンにノッてくれてさ。銃撃戦だけだったら、私、フツーに負けてた」

 

「……てことは……使用(つか)ったのね?物理(あの手)を……」

 

「そうしなきゃ勝てなかったもん。無理無理絶対に負ける。ゲヘナ学園最強は、伊達じゃなかったよ」

 

「…………」

 

「できれば、私がそういう手も使うって情報はまだ出したくなかった。風紀委員会、バカじゃなさそうだから、対策されかねないからね。でも負けるのはもっと嫌だから、出し惜しみしなかったよ」

 

「……それでいいわ。お陰で助かった」

 

「で……私が居ない間にそれなりに追い込んでくれたワケだ♡ マ・コ・ト・さん♪」

 

「っ────!!」

 

「頼りの戦車もこのザマ。風紀委員会は空崎ヒナがやられて、てんてこ舞いよ。最速で連絡されてたと仮定しても、シャーレの先生やら風紀委員会支部の誰も助けには来れない。時間的に考えて無理よ」

 

「……まだだ!まだ終わらん!」

 

「あんたの時代は今日この場で終わり。これから、次のクーデターが達成されるまで──飂熾冘巫髏の暗黒時代が始まる事になるのよ────!!」

 

 主力部隊を失った万魔殿は陥落──飂熾冘巫髏が万魔殿の本拠地に六芒星の旗を立て、新たな生徒会として台頭する事になった。

 なお政治に興味の無い大多数の生徒達は、今回のクーデターについて知っても「ふぅん」程度の反応だったという……。




ツルギにやられたら「潰れた缶ジュース」みたいになるようです。でもこれ明らかに「ショットガンでやられた子の様子を表す描写」ではないですよね。
なのであの辺の子は銃撃だけじゃなく殴る蹴るなど普通にしてるんだろう、と解釈しています。
・奇声を上げて銃で敵を蹂躙するツルギ
・奇声を上げて撃つ殴る蹴るして敵を潰すツルギ
ツルギが暴れる様子を見てた人質の子がPTSDになるという事は、恐らく後者じゃないかなぁ、と。
解釈違いならごめんなさい。

巡航ミサイルだって、古聖堂に当たったのであってヒナに直撃はしてないハズですからね。
ヒナに当たったのは瓦礫です。それなのにあんなに血を流す程にダメージ受けてたんだから銃撃以外の物理攻撃なら効くんでしょう。
キヴォトス人はダイラタンシー流体か何かなの……?
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