「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
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テンコからの誘いもとい相談を受け、数日ぶりにハドマの地に降り立つ。何だか最近はよくハドマに出張に来ているような気がするがそんなのはただの気のせいだろう。
指定された通り技術開発部の部室に行くと、足を組んで、机の上の発明品と向き合うテンコが居た。彼女の視線の先には、彼女の発明品──反重力浮遊機構「アストラル・ウィング」が安置されている。
「来たよ、テンコ」
「うわ、早っ。先生って、ほんとにフッ軽だよね。誇らしくないの?」
「たまたまだよ。時間があったからね」
「とか言って、いつもそんな感じな気がするけど。まぁいいや、適当に座ってよ」
テンコの隣のイスに腰を下ろすと、ジト目で暫く睨んだ後、腹いっぱいの息を吐くかのような大きな溜め息をつく。
「で、相談ってのは……コレについてなんだけど」
「反重力浮遊機構『アストラル・ウィング』?」
「なんでフルネーム覚えてんのよ……。姉さんですら前半しか覚えてなかったのに」
「先生だからね」
「理由になってない! ──ってそんなのいいや。そんでコレなんだけどさ。速度が出るまでに結構な時間が掛かるのよね。コレはあくまでも
「そうだね。浮かぶ為だけのシステムなら、速度は出せないよね」
「急激な方向転換も難しいしね。ある程度の速度を出すまでに燃料をかなり消費しちゃうのよ。大体、25%くらいかな……?」
25%と聞いて思わず目を剥く。速度を出すまでにそんなに消費していたのでは、実質、燃料は75%分くらいしか使えないという事になるのだ。あまりに燃費が悪すぎる。
車で例えるのなら、エンジンを温める為だけに、ガソリンを全体の25%分も消費するようなものだ。そんな車を開発、販売なんかしてしまえば、会社はバッシングの嵐に見舞われるに違いない。最初期の車でさえ、ここまで燃費は悪くないハズだ。
「それは…………燃費が悪いね」
「でしょ? だからどうにかしたいの。コレ使って小遣い稼ぎもしたいしさ……」
「小遣い稼ぎ……?」
「そう。空を飛ぶのは全人類の夢よ?」
「あぁ……確かに」
そ〜らを自由に、飛びたいな♪
はい、アストラル・ウィング〜。
──そういうのを狙ってるという事か。成程。
ゲーム開発部の子達みたいに、大失敗しなければいいが。まぁ失敗から覚える事などもあるだろう。それにテンコはモモイと違ってかなりの慎重派だ、その辺はあまり心配しなくても良さそうだ。
「あと、レンタル代の相場も決めたいの。ラブホの部屋の料金とはまるで別物だし、そもそも空を飛ぶ機構が飛行船とか以外に無い以上『相場』が無い。参考元が無いから、値段設定すらできなくて……」
「……」
「どれくらいの値段なら納得してもらえると思う? 安過ぎるのは勘弁よ? 私の技術の結晶を、安価で買い叩かれてる気がして不快だから。量産できる物じゃないしね」
「……。参考になるか分からないけれど。テンコは、
『フライボード』ってマリンスポーツ知ってる?」
「聞いた事も無いわね」
「水を噴射するその水圧で空を飛ぶ。そんな装置を扱うマリンスポーツがあってね」
「へー。水圧で人体を浮かすって、結構な水圧ね。でもそんな危険でも無さそう」
「うん。初心者でも、10〜20分もあれば大体の人は好きに動けるようになるみたい」
「そりゃイイわね。まぁ、アストラル・ウィングは姿勢制御装置も組み込んであって、乗りこなす為の訓練なんか1分も必要無いけど?」
「……。えっと、その水のフライボードなんだけど、大体1時間1万円から2万円で貸し出しされるのが通例なんだ。ボート体験とかと併せて、だけどね」
「ふぅん? 乗りこなすのに15分だとして、45分の自由行動で1、2万円だとすれば、妥当っちゃ妥当かもしれないわね。水圧での飛行なら、それくらい安くてもいいかもね。安過ぎる気はするけど……」
「このフライボードを参考にしてみてさ、テンコのアストラル・ウィングのレンタル代金の値段設定、できないかな?」
「んー。暫定だけど、1時間3万円かな。そのさ、フライボードってのは一般販売価格はどんなモン? それも参考にしたいんだけど」
「確か、フルセットで130万円くらいかな」
税込とはいえ、一般庶民には少し手が出しにくい値段である。しかしテンコのは反重力システムだ、一般販売価格を設定するならこんなモノとは比較にならないくらい高いだろう。
「水で飛ぶんならそんなモンか。まぁ、私のは一般販売はしないつもりだからさ、ホントに参考程度に聞いただけなんだけどね。販売できるほど量産体制整ってるワケじゃないから」
「そうだね。そんな状態で値段の設定なんかしても誰も買えない値段になっちゃう」
「そーゆーこと。でも確かにフライボードってのは参考になったかも。ありがとね」
「どういたしまして」
「じゃ、レンタル料は後でゆっくり考えるとして。そろそろ最初の話に戻そっか。『速度を出すまでの燃費が悪すぎるのをどうにかしたい』って話ね」
「難しい問題だね、それは。反重力での『飛行』は流石に難しいでしょ」
「難しいというか無理。けど、ミレニアムの生徒はこんな問題もどうにかしちゃうのかな?」
「流石に反重力云々は聞いた事ないけどね……」
その後もあれこれ意見交換して時間を過ごした。