「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
| 絆イベント テンコ(デレ)の絆ストーリーへ |
|---|
| 絆ストーリーを始める |
|---|
───────────────────────
「──それじゃあ、始よっか。改めて、反重力浮遊機構『アストラル・ウィング』について話し合っていこう、と思うんだけど。どうにも煮詰まってて。話し合いとは名ばかりの、先生のご意見拝聴会よ。情けない事にね」
「えぇと確か、速度をある程度上げるまでに燃料を25%も消費しちゃうんだったよね」
「そう。でも、これでも燃料効率は今の私が持てる技術の最大効率まで上げてる。だから、これ以上の効率化は望めないわ。技術革新でも起きない限りは無理。何か、発想の転換が必要というかさ。構造的欠陥があるワケでもないのに、燃料効率はこんなに欠陥品そのものなのよね、悲しい事にさ」
「欠陥は言い過ぎじゃない? この前の抗争でも、凄く大活躍してたんだしさ……」
「あん時は欠陥をカバーする方法があったからね。アナログな手法だけど。でも、それを無くす為には何か別の方法が必要だなって思って。レンタル業を始めるのなら尚更、毎回頼るワケにいかないしね」
燃料代を上乗せしてレンタル料を設定するにも、速度を確保するのに時間が掛かれば客の不満は残るものだろう。根本的な解決には至らない。
とすればやはり、その「壁」を突破する方法を、どうにかして模索するしかないのだろう。
「……ところで、その『アナログな手法』って?」
「ん? レイコにブン投げてもらうってやり方よ」
「そ、そんな無茶な……」
「無茶でも、レイコくらいの怪力ならイケるのよ。ある程度の速度を出せて、角度の調整もある程度はできる。事実、速度確保するまでの『25%の壁』はレイコという発射台によってほぼ0%にできたわ」
レイコを発射台扱いするのは中々酷いと思うが、彼女本人も分かっていそうなので言わないでおく。
それにしたって、よく自分を投げてもらおうとか思えるものだ。レイコの手腕を信じたのだろうか? それとも、レイコのパワーなら「25%の壁」を突破できるという
……思わず、身震いしてしまった。
「発射台を作るのはどうだろう?」
「発射台? ……スキージャンプみたいな?」
「そうそう。スキージャンプや滑り台みたいな」
「無理ね。狭すぎて速度を確保できないわ。場所は屋上を想定してるんだし。滑り台で滑るくらいなら自分の足で走った方がまだ速いよ」
「それもそっか」
「ましてや今は、姉さんの列車砲の線路もあるし。あぁいやそれは考えなくていっか。第1校舎屋上は姉さんの列車砲置き場、第2校舎屋上を私が使えば場所の問題は解決か。どちらにせよ狭いけどね」
「うーん。狭い場所、それでいて速度を確保、か。難しいね。ランニングマシンで足を滑らせた時は、まるで発射されるように飛ばされるけど……」
「超高速ベルトコンベアで射出、って?」
「あはは……流石に無理だよね」
「案としては面白いけど、やっぱ速度が足りないと思う。どう足掻いても秒速10mすら無理よ」
「うーん。空気抵抗を計算に入れてもそんな速度を出す方法は────」
発想を変えて「速いモノ」を参考にしてみよう。ミサイル、新幹線、リニアモーターカー、戦闘機、銃弾、車、ジェットコースター。
それらを動かすのに必要なモノ、そして、運動を構成する要素は、火薬、電気、燃料による推進力、それから……位置エネルギーだろうか?
浮遊……高所……高速……運動エネルギー……?
「ジェットコースター、いや、フリーフォールだ」
「ん?」
「遊園地にあるフリーフォールみたいな感じでさ。高所から落とす形で運動エネルギーを溜めて、落下させる前に、発射台となる下部のレールを、転車台みたいに組み替えて前方に発射する角度にするの。フリーフォールというよりは、角度がスゴく急な、ウォータースライダーかもしれないけど……」
「────! 力学的エネルギー保存の法則!?」
「そ、そうなのかな……?」
「そうよッ! どーして思い付かなかったのっ!? 発射する、一気に速度だけ与える事ばかり考えて、エネルギーの変換なんて考えてなかったッ……!」
「い、いやでも、素人の発想だし整合性も何も無い突飛な案だから、あまり真に受けないでね……」
「それはそうよ。アストラル・ウィングは背負う、リュックタイプよ。ウォータースライダーみたいに飛行希望者を滑らせるとしたら、ウィングが擦れて壊れかねないでしょ?」
「あ……そうか……」
「でも位置エネルギーを運動エネルギーに変換して速度を与えるっていう発想! これはかなり正解に近いと思う! だって設置する場所は屋上だもの。
「……ッ!!」
「ようするに、こう考えればいいわ。『リュックを背負って滑り台を滑る事になったが、どう滑れば、リュックが壊れずに済むか』みたいに!」
成程。スライダーを滑る際に、背中はどうしても擦れる。濡れるのは構わないが、擦れる衝撃により壊れてしまう事だけは防ぎたい……と。
「結局、先に言ってた『滑り台』がほぼ正解だったかもしれないなんてね。なんていうか、私の視野の狭さを思い知らされたわ……」
視野の狭さとかそういう問題ではない気がする。いや、そういう問題なのだろうか。まぁ、その辺はどちらでもいい。問題を解決できればそれで……。
いや待て────
「「……緩
「よっしゃ私の方が早かったァッ!!」
「あはは……。でも、同じ結論だったね」
「そうよ、緩衝材よ!! アストラル・ウィングが擦れるのがダメだったら、逆に、その摩擦や衝撃に耐えられるように本体を保護してやればいいッ!! そうすれば、フリーフォールだかスライダーだか、そういう発射装置を用意しても大丈夫になる!!」
「うん。私も、まさにそう思ったところ」
「じゃあそれで試しに計算してみると……!」
紙にガリガリと計算式を書き込んでいく。複雑で私にはよく分からないが、物理学っぽい数式なのは何となく分かった。
それから第2校舎の屋上の広さ、発射台の土台の推定面積との照合……重量の計算と……。
「──。ただ、自由落下
「あ」
「かと言って発射台の最高高度を低くしちゃうと、やっぱり自由落下だけでは速度が足りなくなるわ、どうしてもね」
「そっかぁ……」
「やっぱり、スライダーみたいな滑る形式だとダメかもしれない。フリーフォールの機構──というかレールそのものに鉛直投げ下ろし方向の発射機構を設置する。そうすれば、重力加速度だけじゃなくて発射の速度も加わるから、速度の問題は解決よ!」
「おお……じゃあ、フリーフォール形式採用?」
「暫定だけどね。言わば、平仮名の『し』みたいな軌道で発射できるようにすればいいのよ。だから、発射される人は、椅子から投げ出される感覚になるハズよ、この想定だとね」
「あぁ、安全装置が無いからか……それは怖いね」
衝突事故の時、前に投げ出されるようなものか。いや、そう考えたら怖すぎる。私はちょっとご遠慮願いたい……かもしれない……。
しかし「空を飛ぶ」のはそれだけ魅力的だ。
「あったりまえでしょ? 人間発射装置を作ろうとしてるんだからね? 安全装置とはまるで真逆よ? 発射の前、上に釣り上げる時に落ちないようにする機構は作るけどさ」
「あはは……言われてみればそうだったね」
「後はアストラル・ウィングの翼の開放かしらね? だって開いた状態で飛ばされたら空気抵抗が無駄に大きくなって、折角の速度が殺されちゃうものね。閉じるのは遅くていいから、開くのは一瞬でできるように改良しなきゃ……」
「パラグライダーみたいに空中で開く想定だね?」
「まさにそれよ。一瞬で開放できるようにすれば、リュックの状態で発射されて空中で翼を展開させて起動できる。そうなれば速度を得たまま浮遊を開始できるワケだから、もう、速度が落ちすぎない限り自由に空を飛行できる……と思う!」
「だったら、集客を増やす為にさ。レンタルの際、飛行体験コースは2つ用意したらどうかな?」
「2つ?」
「『装置による加速アリ、ただし時間までミッチリ遊べるコース』と、『加速無しで安全、ただし空を飛べるまでに少し時間が掛かるコース』とか!」
「成程、それ良いわね! 前者は装置による補助と時間いっぱい遊べるってアドバンテージがあるから少し高めに設定して、後者はそれらが無い代わりに前者より安く設定する!」
「そうそう。高所は大丈夫でもジェットコースターみたいな『速い乗り物』が苦手な人は居るからね。そういう人も、自分のペースで動ける
「そうよね、確かにお客の目線に立てばそうよね! ありがと、先生っ! 先生のお陰で、問題の大半が消し飛んだわ!!」
「あとは材料とかそういう問題かな?」
「ううん、アストラル・ウィングの量産!」
「…………あっ」
発射装置について仮案がまとまったと喜んだのも束の間。最後にして最強、最凶、最高、最悪の壁が私とテンコの目の前に立ちはだかったのであった。