「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
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元飂熾冘巫髏の吸血鬼部隊の少女、博愛レイアに呼ばれ、ハドマ自治区で唯一の神社であり、彼女の実家である博愛神社に向かう。
現場に着くと、巫女服を身に纏った彼女が境内を箒で掃き掃除をしていた。セリカが着ていたような普通の巫女服とは違い、何故か腋が露出した造形になっている。きっとアレをデザインした人は変態か腋フェチなのだろう。しかも巫女服本体と袖部分が繋がっていない……ように見える。
なんというか、セイアにも似合いそうだ。いや、他意は無いが……。
「あ、先生。遅かったから始めてたよ」
「ごめん、シャーレからだと時間掛かってね……」
「シャーレから来たんなら、そっか。じゃあさ、箒片付けてくるから先に裏に行ってて。神社の裏ね」
「分かった」
彼女にそう言われ神社の裏手へ向かう。そこには神社の本殿より一回り小さいくらいの大きめの蔵があった。前から見ると、本殿に覆い隠され存在すら分からない。しかも本殿を含め、蔵を隠すように、周囲に木が植わっていて、山を登ってきている時も蔵の存在は秘匿されているように見えた。
こうして実際に裏手に来ないと気付けない程に、不自然な程に秘匿されているように感じる。まるでこの蔵そのものに、認識を阻害する、魔法か何かが掛けられているかのような……。
「……スーツで来るんじゃなかった」
博愛神社は小高い山の上にある神社だ。歩く事が分かっていたから、上着はカバンの中に入れてただ歩いてきたのだが。冬にもかかわらず、じんわりと滲むように汗をかいてきてしまった。
蔵がある神社の裏に来るように言われたことから察するに、蔵の片付けなんかを頼まれるのだろう。スーツで来た事が悔やまれてしまう。
これが私の仕事着だから、仕方ないと言われれば仕方ないのだが……。
「お待たせー。多分もう察してると思うんだけど、蔵の整理がしたくてさ。レイラと交代でやってるんだけど、想像以上にキツくて……」
「分かった。手っ取り早く終わらせちゃおっか」
「助かる〜! あと、蔵ん中ホコリだらけだから、スーツ脱いだ方がいいよ。マスクもあげるね」
「ありがとう」
胴体部分から独立した謎の造形の袖の中から鍵を取り出すと、解錠し扉を開ける。コンサートホールよりも分厚い扉を開けると、一部だけが整理された暗い蔵が視界に飛び込む。
電灯などはなく、レイアからヘッドライト付きのヘルメットを渡された。入口からしか光が入らない空間では、作業が進みようがないからだ。
「あれ、レイアはライト要らないの?」
「ん……? そりゃあ、私は夜目が効くっていうか、吸血鬼だし、暗い所は平気だよ」
「そっか、そうだったね」
「なんなら、先生のこと吸血鬼にしたげよっか?」
「う、うーん、それはまたの機会に……」
「ははっ、分かってる分かってる。レイコみたいに上手く調整できないからね。先生のこと『ガチ』の吸血鬼にしたくないしさ。そのライト付きのメットだって、人間の先生に貸す為に部活の備品をパク、じゃなくてわざわざ借りてきたんだし。一応、私も技術開発部の一員だしね」
「パクっちゃダメだよ」
「借りてきたんだってば……。別に大丈夫だよ、私が死んだら返すから。死ぬまで借りるだけ。OK?」
「全くもう……私が帰る時に学園に返しておくよ」
「えー別にいいよ。明日か明後日にもまた手伝ってもらいたいし、帰る時にはその辺に置いといてよ。どうせ学園でも誰も使わないし。テンコやリンコが作業してる時、ライトはともかく、メットしてんの見た事ある?」
「…………………………」
そう考えると、安全意識の欠片も無いなぁ……。
◆
「ほら見てアレ。窓、頭しか通らないくらい小さいクセに高いとこに1つしか無くてさ。換気もクソも無いんだよね。お陰様でカビ臭くてしゃーないわ」
「隙間から光が漏れる事も無いくらい、ビッタリに閉まってるんだね。ライト当てるまで、窓があるの気付かなかった……」
「ね、凄い気密性でしょ? まるで、日光が苦手な吸血鬼を蔵に閉じ込める為の監禁部屋みたいで──本当に気持ち悪い」
「見るからに古い蔵だし、造りとか割とこんなものじゃないかな?」
「そうなのかな? でも、なんていうか、本能的な嫌悪感ってのかな。
「……そんな所を片付けする気になったのは、何か、思うところがあったの?」
「ん……それは、まぁ、ちょっと……色々と、さ」
「……?」
明らかに話を濁されてからは、ほんのちょっぴり気まずい空気になり、暫くは無言の時間が続いた。
やがて片付けが一段落してから、彼女の言う通りヘルメットは神社に預けて、博愛神社を後にした。