「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
| 絆イベント レイラの絆ストーリーへ |
|---|
| 絆ストーリーを始める |
|---|
───────────────────────
レイアに呼ばれて片付けを手伝った翌日、今度はその妹のレイラに呼ばれて博愛神社へと向かった。本当なら部外者を蔵に招くのは禁忌同然らしいが、彼女曰く、一度も二度も同じなので──という事で今日も片付けを手伝う事になった。
禁忌ってそう簡単に犯していいのかな、と疑問に思う所はあるが簡単に生徒を犯している私が疑問に思っていい事ではないだろう。
──そう開き直って、今日は、レイラの片付けを手伝う事にした。
今日のレイラは巫女服を着ていた。昨日レイアが着ていたのと同じ、腋をダイレクトに見せつける、大胆なデザインの巫女服だ。……えっちだ。
「え〜。全然片付け進んでない……本当に昨日も先生来たの?」
「ごめん、片付けあまり得意じゃなくて……」
「シャーレは綺麗なのに?」
「……シャーレはその、なんていうか、当番の生徒に手伝ってもらったりしてるんだ。だから、私1人の力ではないんだ……」
「当番の生徒が8割くらいやってそ〜」
「……」
「まぁいいや、2割くらいの力でも無いよりマシ。さっさと片付けちゃいたいから、先生は昨日の続きみたいな感じでお願いしまーす」
「よし、やるか」
大小様々な葛龍が目に入る。こんな葛龍、今日日中々お目にかかれない。見るからに古く、開けたら呪いが飛び出しそうな──いや神社の蔵にある物を相手にそれは失礼か。
「レイラ、葛龍が沢山あったけど、どうしよっか? 奥にもかなりの数が詰まってるみたいだけど」
「えー何それ、知らないんだけど。葛龍の数自体を少なくしたいから、衣類は衣類って感じで大雑把な分類で纏めてくれると嬉しいかも〜。余った葛龍は外にブン投げておいて、後で捨てとくから」
「じゃあ最低でも4つは残しとかないとね、上下や夏服冬服で分けないと……」
「どうでもいいよ。多分だけど、神事用の斎服とか普段着の装束とかがあちこちに入ってるんでしょ。どうせろくに着ないのにね」
「ホントだ。……そういえば、普段は制服なのに今は巫女服を着てるのはどうして?」
「そんなのわざわざ聞くこと? 先生さ、寝る時はパジャマでも、仕事する時にはスーツ着るでしょ。学生として動く時は学園の制服、神社の巫女として動く時は巫女服。そこに何の違いも無いでしょ?」
「成程……ご尤もだね」
そんな会話を重ねながら、数多い葛龍をドンドン処理していく。
軽く20個はあったであろう大小の葛龍は、やがて大きなもの2つ程度に収納され、最後の最後、脚立だったり手鉤棒を使わないと手が届かない程の奥に押し込められた、小さな葛龍を取り出す。
この1つだけやたら古く、あんまり強く握ると、ボロリと容易く崩れてしまいそうな危うさを手から感じる。麻糸のようなもので結ばれておりいかにも厳重に保管しています、という風貌だ。
まるで、入れ物が葛龍なだけの玉手箱。古き良き時代から現代に物だけタイムスリップしてきたかのように見える。
どう見ても「神社に伝わる何か」だ。これを私が勝手に開けるのは……どうにも、気が引ける。
「レイラ、ちょっといい?」
「ん〜? 終わった?」
「コレが最後の1つ──なんだけど、どうも様子が変というか。1つだけやたら古くて、縛られてて、勝手に開けちゃいけないような雰囲気のがあって。悪いんだけど、確認してもらってもいいかな?」
「うわ、ケバケバしてる。ほつれてきてるじゃん。下手にイジると崩れそうだし、開けないでそのまま捨てて──って言いたいけど、中身は気になるね。開けてみよっ♪」
「レイラがそう言うなら」
あまりにも古い入れ物は、縛るのに使われている麻糸でさえ、ほんのちょっと力を込めると、私でもプツンと容易く指で断ち切る事ができた。
そして入れ物本体も壊していいと彼女に言われ、言われるがままに、ちょっぴり強引に引き裂いた。
中には巻物のようなモノ──というより、巻物が1つだけ納められていた。
それなりに古い物のように見えるが、蔵の最奥で眠っていただけあり、入れ物自体は古さの為か劣化していても、中身はそれなりに綺麗であった。
「……これ、私が見ても良い物なのかな?」
「フツーに考えてダメだよ。こういうのもあるから神社の関係者以外は原則立ち入り禁止なんだよ?」
「だよね……」
「でも、モモトークで言った通り、禁忌なんか一度破っても二度破っても同じなんだから。いいから、気にしないで開けちゃいなって〜♪」
レイラの発言に、巫女さんがそれでいいのか──などとツッコミを入れたくなるものの、今更なのでそんな言葉は黙って飲み込む。
実際問題、こうして存在を知ってしまった以上は巻物の中身は気になるし、どうせなら生で見たい、というのが隠しきれぬ本音である。
自分の気持ちに嘘はつけないな、と半ば諦めにも似た感情が心の中で渦巻くのを感じながら、巻物を結ぶ紐を解き、紙を傷付けぬようゆっくり広げる。
「……何これ、読めないや。古代文字か何か?」
「所謂『古語』ってヤツだね。アビドスにあった、吸血鬼遺跡の名前に使われてた文字と同じ分類だと思うよ……この文字ならね」
「あ。先生が読めるって言ってたヤツ?」
「うん。この文字なら勉強済みだからちょっとだけ待って。すぐに解読するね」
モルモやウイに古語を習っておいて正解だった。おかげで簡易的ではあるものの、これくらいなら、私1人でも十分に解読できてしまう。
直訳文のように堅苦しい表現だろう。意訳などは難しいかもしれない。それでも「訳す」だけなら、今の私になら出来る。
「……読み上げるよ」
「「……」」
あまりにも予想外な巻物の内容に、私もレイラもしばらく言葉を紡ぐ事ができなかった。驚きの言葉すらも、口をついて出てくる事が無かったほどだ。
どうやら、この巻物は「言い伝え」を書き記した物らしい。
──「名も無き破壊の神」とは、恐らくは「名も無き神々」の1人、いや一柱なのだろうが……。
「……何でこういうの見つかるかなぁ……ッ」
「レイラ……?」
「ごめん先生、今日はもう終わり。ちょっとコレは予想外。焼くにも捨てるにも祀るにも封じるにも、とりあえず、お姉ちゃんに相談しないと……」
「……巻物の事は口外しないでおくね」
「うん。2人だけの、ううん、お姉ちゃん含めて、3人だけの秘密だよ」
ちょっぴり物騒な「秘密」を姉妹と共有しつつ、この日は解散する事にした────。