「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
◆
「という事で。学校が埋もれちゃう前に、ぶよの処理をしていくから。ゲーム開発部、頼んだわ」
「え〜っ!? なんで私達なのさ!?」
「なんで、って、こういうゲームチックな事は、ゲーム開発部に頼むべきでしょ? パズルゲームが得意っぽい一面もあるじゃない」
「そうかもしれないけど……」
「やだ! 強制されるゲームはつまんないよ!」
「ワガママ言わないの。予算減らすわよ?」
「それこそセミナーのワガママじゃんッ!」
「……どうあっても言うことを聞かないのね?」
「ムリヤリ言うこと聞かそうってんなら……!」
「レッツ?」
「「ぶよ勝負っ!!」」
◆◆◆
「っていう感じで、幾つかあるメインストーリーの各1話は大体チュートリアルを兼ねたザコ敵だね! 一番最初に解放されてるメインストーリーは私の! まずは先に私のストーリーをクリアしてもらって、次のキャラ、また次のキャラ──って感じで、順にキャラを解放するの!」
「アリスは4番目……ミドリとユズの次です!」
「このゲーム、ユウカさんの監修、なんですよね? そんなユウカさんをザコ敵にして怒られなかったんですか?」
「それは大丈夫だよ! 序盤のザコが、実は本当は強かったんです──っていう展開にしたから!」
「それ地味にネタバレになってません?」
「あっ? やっぱ今の忘れて!!」
「まぁ別にストーリーの核心に迫る部分でもないしいいんじゃない?」
「それもそっか!」
ルビーとレイコを登場させたゲームを作る──。
そんな話で合意して数日後。ベータ版が完成したという連絡を受け、遥々ハドマ学園からミレニアムサイエンススクールにやってきた2人。
到着早々、モモイ達に会う前に
なお、ルビーにサインをねだったのは、ユウカのロリコン魂に起因する行動……かもしれない。
「ふーん、落ちモノパズルゲームねェ。同じ色のを4つ繋げて消すとかいうクソ単調極まりないゲームだけど、こんなんホントに売れんの? 今かるーくモモイ編1話でユウカブッ倒したけど、これ売れる気しないんだけど?」
「単調だからこそ、テクニックが映えるんだよっ! 見てて、次はユズがお手本見せてくれるから!」
「ロッカー娘がァ?」
「ヒッ!?」
「大丈夫だよユズ!
「はうぅ……」
呻き声のような嘆くような妙な声を漏らしつつ、ユズは淡々とぶよを高く積み上げていく。やがて、触れるとゲームオーバーになることを示すバツ印にぶよが触れるが、そこからユズの攻撃が始まった。
「よしっ! いくよ! 締切厳守! 誤射注意! クリエイティブセンスッ!! 結果良ければ全て良し! やった! やった! ぜぜ絶好調〜!」
(とりあえず、これくらいかな……無駄ぷよも上手く配置できたハズ……)
「きゅ、9連鎖!? しかも敵ワンパン!?」
「凄いですね。さっきのレイコなんて、同じくらい積み上げても偶然を含めた5連鎖でギリギリだったくらいなのに」
「う、うっさいわ! アンタまだ未プレイでしょ、やってから言いなさい!」
「全8話ある内の2話目なので、まだザコ敵です。モモイでも楽勝ですから!」
「それどういう意味〜ッ!?」
「ふ、普通の盤面なら、理論上は19連鎖まで組めるけどね……」
「ちなみに、隠し仕様ですが、画面外の1マス分も使えるので、上手くやれば21連鎖まで作れます」
「ふむ。理論上可能な連鎖数は盤面に置けるぶよの数などから割り出せるんですね」
「その通りですルビーさん。この盤面は横6マス、縦13マス。画面外の隠しマスが横1列分なので単純計算で6×14個を置けるんです。なのでぶよを消す最小個数の4で割り、6×14÷4=21連鎖……と」
「しかしぶよが❌に触れると連鎖しない限り即座にゲームオーバーなので、❌を連鎖の
「そーゆーこと! さ、次はルビーやってみて!」
「では──」
「てかこれ、メインストーリーって基本全8話で、チマチマと全キャラ解放してく必要あるんでしょ? メインストーリーでキャラ解放しなきゃ、対戦でもそのキャラを使えないしさ。全キャラ解放させンのシンプルにダルくない……?」
「幾つかあるんですけど、条件を満たせば、メインストーリーをクリアした時に複数のキャラを同時に解放する事もできますよ」
「んなっ……じゃあ、その条件って何!?」
「ネタバレは、できればあんまりしたくないので。やっぱりそういうのは隠し要素として入れときたいというのがあるというか……」
「ほーん。じゃーいーわ、さっさとその条件ってのテキトーに暴いてやる! ルビー、それ終わったら次は私よッ! ちんたらストーリー見てる暇なんか無いんだからね!!」
「そんなぁ〜!? 頑張って考えたんだよー!?」
「私も色々と探ってるので邪魔しないでください。それからモモイさんに失礼なので一応ストーリーも読みます」
「じゃあ幾つか教えてやるわ。もう、幾つか候補はあるのよ。何色か同時消しするとか、めっちゃ連鎖繋げるとか、そういうね。具体的には、そうね──例えば10連鎖以上するとかね」
「「「「ッッッ!??」」」」
「へぇ。10連鎖ですか」
「さっきのユズのプレイ、どうにも変なのよねー。気持ち悪いの。私やルビーなんかは、そーやって、迷いながらぶよを置くでしょ。でもさっきのユズ、迷いなくソッコーでぶよを置いてくクセに、盤面の半分は余り物のぶよで埋まってた。あんなギリまで積み上げる必要は無かった。……わざとクサイわ」
「成程。開発者側である自分で条件を達成させては意味が無いから、
「そっ。だけどそれなら、あそこまでぶよを余らす必要は無い。短い連鎖を組めばいいしね。つまり、連鎖後の盤面がスッカラカンの状態も、解放条件の1つって予想できるワケよ!」
「ふむ。スッカラカンの状態──『全消し』とでも呼びましょうか。つまり、全消しすればいいと?」
「私はそうだろうと睨んでるワ。だから、さっさと条件満たすかテキトーに倒して私に替わりなさい! ユズのを見て連鎖を作るコツは掴んだわッ!」
「あ、4連鎖で全消ししました」
盤面に浮かぶ「全消し」の文字。全消しした事を称えるかのように、キンッキラキンに輝いている。しかも、その文字がいつまでも消えずに、画面内でフワフワと上下している。鬱陶しいくらいだ。
「でかしたわ! これで、多分、メインストーリークリアした時に何人か同時に解放されるハズよッ! 私の読みが正しければね!」
この「全消し」状態のまま連鎖をすれば、かなり大量のおじゃまぶよを相手に送れるらしく、たった1連鎖でも追加で連鎖するだけで、相手にトドメを刺せてしまった。
ちなみに、作中のストーリーとしては……。
ユウカを倒して、「ミレニアム中のぶよの処理」という依頼を跳ね除けたモモイは、ゲームソフトを買いに行くなどで街に出るが、スケバンに絡まれ、ぶよ勝負で対処するなど、ありがちなストーリーが展開されていた。
なお買い物から帰った後、ネルなどミレニアムの生徒ともぶよ勝負をする事になって、結果として、ミレニアムを埋めつくさんとするぶよは自然と処理されていき、モモイは知らず知らずの内にユウカの依頼を果たしていた、という流れに帰結していた。
そして、ユウカに良いように利用されていた事に気が付いたモモイは、ユウカをボコボコにする為にセミナーへと向かう。コユキを倒し、ノアを倒し、遂にラスボスであるユウカとの対決。
第1戦目のユウカとは違い、今度は強いらしい。仕事を邪魔された事に憤慨しているユウカは、何か特殊な能力を使って、ぶよの落下速度を上げる事でモモイ(プレイヤー)を苦戦させてくる。
モモイ曰く重さに関する能力らしいが詳しい事はユウカの検閲によってストーリー内で描写できないらしく、結局、ゲーム内でも「謎の能力」とボカす方向性に舵を切ったらしい。
とにかく、速く落ちてくる仕様のぶよをどうにか突破し、ぶよ処理に自分を利用しようとしたことを謝罪させ、モモイ編はエンドであった。
「おっしゃSランククリア! 実績解除ボーナスでキャラ3人同時解放よッ!」
「実績は『全消し』と『ノーコンクリア』の2つ、ですか。危うくコンティニューしそうになりましたけど、何とかクリアできましたね……」
実績を1つ解除する毎に、クリア後に解放されるキャラが1人増えるらしい。結局、モモイ編では、ルビーとレイコには10連鎖は組めず、仮説を証明はできなかった。
が、連鎖を組むチャンスはまだこれからもある。
「パンパカパーン! ルビーとレイコは、ミドリ、ユズ、アリスの3人が使えるようになりました!」
「おめでと〜!! まさか初のメインストーリーで実績解除するなんてスゴイよ! でもまぁ大連鎖は惜しかったね!」
「やり込み・隠し要素として設定したのに……」
「私のプレイをヒントにされるとは思わなかったです……」
「だって、明らかに異質だったし。連鎖がパッパと組める時点で、ユズ、このゲームめっちゃ上手い人でしょ。なのにあんなに無駄に余らせるの変だし。上手さアピの為に組むのは理解できるけど、あんな盤面汚い状態で終わらせる? 美しくないでしょ」
「レイコって頭良いんだね!!」
「そりゃあんたよか良いんじゃない? モモイ?」
「なにをー!?」
「なぁによォ〜?」
「「まぁまぁ、
ぐぬぬぬぬ、と相手を睨む相方を止めるルビーとミドリ。そのタイミングやら行動が、まさに双子のように息ピッタリで、2人は、フッと息を漏らす。
「お互い苦労しますね、ミドリさん」
「ですね、ルビーさん……」
「「はぁ……」」
「さぁて、次よ! 次は──ミドリ! ミドリ編にしましょ! 良いわよね!?」
「あれ? 結局、順番通りに進めていくんですか? 後に使用可能になるキャラの話を先に進めた方が、早くストーリーも進められるのでは?」
「あーそーか。それもそーね……あれ? そういや、キャラの選択画面、ゲーム開発部の4人分の欄しか無いケド? モモイ編の時どうだったっけ?」
「確か、モモイさんだけ選択可能で、あと3枠分は全て『?』マークの表示だけだったような。後からキャラが解放される仕様は聞いてましたし、クリアしていく毎に枠の数が増えてくんだろう、と勝手に思ってましたけど」
「そーそー、私もそう思ってたんだけど。『?』の枠すら増えないってどーゆー事よ、モモイ?」
「だってコレ、ベータ版だよ?」
「??? 完成したから呼んだんじゃあないの?」
「私達にプレイさせる為に呼んだのでは……?」
その場の全員が眉をひそめて首を傾げる、珍妙な空気が流れる。何が起きているんだ──とレイコが頭を抱えそうになったその時、アリスが何か閃く。
「! アリス、気付きましたっ! 多分、2人には
『ベータ版』が通じてません!」
「え?」
「あ」
「あぁっ……!」
「アルファだかガンマだかゼータだか知らんけど、ゲームとしては完成してんじゃないの???」
「えっと──『ベータ版』っていうのは、つまり、プレビュー版みたいな感じです。言ってしまえば、テストプレイ用の未完成品みたいな……」
「そうそう! 開発途中のソフトを試験的にプレイしてもらう事で、ユーザーの感想とかを開発陣──私達にフィードバックしてもらうのが目的だよっ! そうする事で完成版のクオリティも上がるから!」
「そもそも今日は、これプレイしてもらうついでに2人の連鎖ボイスの収録もしたかったですし……」
「ゲーム開発部員すら、あと1人実装できていないですし……」
「ん? 5人目なんて居るの?」
「はい! アリスの双子の妹、ケイです! 今日は少しメンテナンスを受けていて不在ですが……」
((メンテナンス……病院のこと……?))
「兎にも角にも! プレイは一旦休憩って事にして連鎖ボイスの収録に付き合ってもらうよ!」
「あー……技名とか、そんな感じィ?」
「そうそう! 好きな物の名前を叫ぶみたいなのもいいかもね?」
「少し、プレイしながら考えさせてくれませんか? 急に言われても思い付きませんし……」
「右に同じ〜。てか、ゲーム開発部とかミレニアム同士なら……イータ版? とか通じるかもだけどさ。私らハドマだしそういうの通じないと思ってよね」
「ご、ごめん……」
「いいえ、謝らないでください。聞き馴染みのない単語をそのまま放置していた私達に非があります。ゲーム開発部の皆さんは、気にしないでください。分からない事は調べる──当たり前のハズなのに、それを怠っていました。すみません」
「いえ、そんな……。寧ろそんなテキトーな連絡しかしていなかった私達…………に非があるというか……」
「『主にお姉ちゃんに非があるので』みたいな間があった気がするけど!?」
「ストーリーが早く仕上がったからって『連絡係は私がやる!』って言って聞かなかったでしょ……」
「言い訳ではありませんが、実際モモイのせいだと思います! 連絡はモモイ1人がしてました!」
「あーね、アレはモモイからの連絡だったワケね。そんならナルホド納得だワ」
「うわーん、あんまりだよー!」
────など様々なトラブル(?)を乗り越え、とうとう完成版が日の目を見る事になった。
そしてルビーとレイコは、ソフト発売日の前日にゲーム開発部の部室にて完成版をプレイできる事になったのである────。