「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
謎の生徒の介入にてルーシィを取り逃して、暫くしてから、私やカンナ、ヴァルキューレの生徒達は正気を取り戻した。
彼女の姿が完全に見えなくなってやっと回復だ、追い掛けたとして追い付けるかどうか分からない。それでもカンナはヴァルキューレの生徒達に指示を飛ばして、ルーシィ確保に戻るようだった。
「申し訳ありません、我々が不甲斐ないばかりに」
「今のは仕方ない。あの子の事は情報に無かった。完全に、警戒すべきはレイコだけだと思っていた。そうだったな──そもそも飂熾冘巫髏は幹部すらも不明な組織なんだった……警戒のしようが……」
「恐らく先程の生徒は……」
「うん。きっと幹部だ。ルーシィとのやり取りや、幼馴染という発言からしてもそんな感じがするね」
「それと、会計がどうのと言っていましたね」
「ッ!」
会計、生徒会、失楽園、ハドマ学園────。
これまで薄らとしか感じていなかった「疑問」が浮き彫りになったと同時に解決、ずっと欠けていたピースが綺麗に隙間にハマッた感覚があった。
「カンナは引き続きルーシィの捜索をお願い」
「えっ?……それはそうですが、先生は?」
「旧ハドマ学園──現ゲヘナ学園第3校舎に行く。もし仮に私の予想が正しければ、あの幹部の事なら特定できそうだ。それがルーシィ発見に繋がるかはまだ分からないけれど……何もしないよりマシさ」
「分かりました。お気を付けて」
「カンナもね」
カンナに別れを告げて解散、モモトークでスズに
「これからハドマ学園に行くよ」と連絡を飛ばす。
今は「ゲヘナ学園第3校舎」だがスズ達の手前、あちらの学園について「旧ハドマ学園」や「ゲヘナ学園第3校舎」などという呼び方はできない。
それから暫くして、ハドマ学園のプレハブ校舎の一室で、ルーシィとアスカ以外の七天魔の5人が、一堂に会していた。
「数日ぶりだね。少し皆に聞きたい事があってね。忙しいところ悪いんだけれど、集まってもらった」
「構いませんわ。先生に比べれば私など。ましてや今はもう、生徒会長ですらありませんもの」
「お、同じくです……私も書記の仕事をする機会すら無くて……いつも暇で……」
「私も。私の連邦生徒会対策委員会も解散したわ。もう全てが遅い。もう全員、諦めてるし。私もね。てか敵視する相手を間違ってたわ、完全にね」
ハドマ学園がゲヘナ学園と併合したことにより、リエとアンナは生徒会という役職を追われて、連邦生徒会対策委員会の委員長のシエルは、遂に学園が併合した事により存在意義を失い、委員会としては既に解散してしまったそうだ。
「この前の子……サエは?元気にしてるかな?」
「ええ。アガリさんが飂熾冘巫髏だと判明し、姉のアスカさんがあちらに行ってしまっても、あの子は今も、ハドマの家庭科室でお2人を待っています」
「……」
あの子は良い子だ。掛け値なしに純粋に良い子と褒められる子は、私の生徒の中でもそうは多くないだろうに……。ヒフミさえファウストだし、コハルは知っての通り脳内ピンクのエ駄死だし。
「ところで、本日は何用で……?」
「うん。そろそろ本題に入ろうか。ハドマ生徒会の失楽園って、会計の生徒は居ないの?」
「っ!それ、は……」
「言いにくそうだね。──多分だけれど、その子も飂熾冘巫髏の一員、しかも十中八九、幹部だよ」
「「!?」」
「そんな!ライム先輩まで……っ」
アンナが悲痛な声と共にペンを落とした。今にも泣き出しそうな顔になるが、それをグッと耐えて、書記の仕事を続ける。
「ライム──それがその生徒の名前なんだね?」
「……はい。
「その子が写ってる写真とかあるかな?」
「ええ、確か私が議長に就任した時に撮影した物があったハズですけれど……」
そう言ってスマホのカメラロールを遡っていく。彼女が見せてくれた写真には、確かに、私達の前に現れたあのムチムチな太ももの少女が写っていた。
「会計でなくなったのは何故?辞めたの?それともクビになったの?」
「……私が、クビにしました。彼女はその、女遊びがあまりに激しかったと言いますか、気品を落とすと再三注意しても……、あちらこちらで他の生徒さんとその……交わったりして……」
「わーお……レズなのかな?」
「さぁ……それは分かりかねますが……」
(私もライム先輩とエッチしてたなんて言えない……言えない雰囲気だよぉ……///)
アンナは顔を真っ赤にして、ペンを走らせる手を止めてしまう。そのライムという子がエッチしてる様子でも想像してしまったのだろうか。
私も、彼女が乱れる様を妄想して──ピクンと、ペニスが反応してしまうのを薄らと感じた。
「レズは見てて癒されるからいいけど、生徒会ともあろう者が誰彼構わずってのはね……確かにね……」
「……はい。そういう事で、会計は、ルーシィさんに任せておりました」
「ルーシィは副会長と会計の兼任だったんだ、中々大変だったんじゃない?」
「そうですね……」
「でもまぁ、ルーシィは対外的な仕事はサボってたみたいじゃん。連邦生徒会からの書類なんてリエは存在すら知らなかったんだよ?この前の会見まで。全部ルーシィが処分してたから……!」
「ですがルーシィさんて、それ以外であれば普通に仕事していましたよ……。書記として、仕事の現場はいつもそばで見てましたし……」
「
「その強硬手段の、手段の執り方を誤ってしまったような感じに思えますね……ルーシィさんは」
「そうですわね……。こんな事なら、スズさんが以前言っていたように、連邦生徒会の本部に殴り込みに行く方がまだ良かったです……」
リエの発言にスズ本人含め皆が苦笑した。こんな大きな問題に発展するくらいならそうされてた方が幾分かマシだった、というのはあるだろう。
たとえその問題によって自分が議長を辞める事になったとしても。学園がこんな事になるのなら、とリエは思っている。
「……誰か、ライムの居そうな場所、知らないかな?ここに来る前にスズに伝えた通りだけど、ライムがルーシィを連れ去った以上、ルーシィよりライムの居そうな所を探すべきだと思うんだ」
「ライムだし、ホテル街じゃない?」
「パトロールでもよくホテル街で見掛けるわよ」
「ホテル街……でしょうね」
「……だと思いますわ……」
「ハドマ自治区6-9にあるラブホテルですかね、ライム先輩はよくそこでナンパを────」
「「「「「………………」」」」」
「……皆さん?先生まで……どうして私を見て……」
「いや……具体的過ぎないかなって」
「アンナさん、あなたも……?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!ちちち違います!私っ、飂熾冘巫髏なんかじゃありません!ただその、前にライム先輩とエッチした事あるホテルだからっ!!しかも先輩は、他の生徒もそこに連れ込んでエッチしてるから……────ッ!??違うんです今のは!違うのぉっ!あうっ……はうぅぅ……///」
「……き、聞かなかった事にしてあげるわ……///」
「それが良さそうです」
「アイツ、アンナの事も食ってたのね」
「アンナさんまで……全くライムさんは……」
焦り過ぎて自爆してしまったアンナは遂にペンを置いて泣き出してしまった。そりゃ泣く。私だってこんな流れでそんな事を言ってしまったら泣くさ。自爆にも程があるもの。
「あ、そーだ。そういえば、アンナが髪型をそれにしたのって生徒会に入って少ししてからじゃない?ほら、さっきのリエが見せてくれた写真に写ってるアンナは、スズみたいなフツーのストレートだし」
「はぅっ!?」
「そういえばアンナさん、いつからかライムさんと同じツーサイドアップにしてましたわね……」
「髪型まで真似るとか、どこまで慕ってんのよ……。憧れ過ぎて飂熾冘巫髏に入らないでよ?アンナまであたしら統治委員会の敵にしたくないし」
「全くですね」
「入らないですよぅっ!ライム先輩が
ハドマ学園は百合の花園なのだろうか。そうなら私はさっさとここからお暇したいところだ。百合に割り込む趣味は無いし、というか遠くから眺めたいまであるし。
「ともかく──ライムはハドマ自治区6─9にあるラブホテルに居る可能性が高い……そうだね?」
「は、はい……先輩はよくそこに女の子を連れ込んでいますので……。あ、座標を送りますねっ!」
「ありがとう、じゃあモモトーク交換して、と」
「っ!えへへ……先生の連絡先、ゲットです♪」
「ム。……何だか嫌な予感がしました。先生、私とも連絡先を交換しましょう」
「私も私も〜!!スズみたいにエッチな自撮りとか送ってあげるよ〜♡」
「シエルあんたねぇ!ありもしないこと言ってるんじゃないわよ!1歳だけとはいえあたしより先輩のクセに、リテラシーもデリカシーも無いな!!」
「い、一応、元生徒会長として、シャーレの先生と懇意にする事もあると思うので、念の為にですね、ええ、念の為に
「え、えぇ〜ッ!?どうして急に、皆してこぞって連絡先交換してんのよ〜……。ハドマ学園での先生の案内役はこの私なのにィ……」
「あはは……スズの事は頼りにしてるよ」
「っ!へへんっ、そうでしょそうでしょ!じゃっ、そのラブホテルの方も、あたしが案内するからね!ついてきて、先生!」
「えっえっ、ええっっ!?」
「抜け駆けしちゃダメだよ〜スズ〜♪」
「うっさい!いつまでも処女腐らせてろってんだ!シエルのロリババア!」
「な、なんですって!?1歳しか違わないクセに!待ちなさいよスズ〜ッ!!」
「ま、まぁまぁ、シエルさんっ……!」
べッ!と舌を出したスズは私の手を引いて部屋、校舎を後にする。大股でズンズンと早く歩くスズはやがてその歩みを緩め……。
「……ね、先生。もしライムが居たらどうするの?」
「ルーシィの居場所を教えてもらうよ」
「教えてくれなかったら?」
「教えてもらえるまで頼み込む。もしくは、何かを条件にして教えてもらうかな」
「……そもそも居なかったら?」
「その時は帰るよ。でもスズの事はハドマ学園まで送り届けるから、そこについては安心して」
「じゃ……じゃあさっ!もしライムが居なかったり、すぐ用事が終わったりしたらさっ……」
歩みを止め、顔を真っ赤に染めて私を見上げる。どこか潤んだ瞳には私しか映ってはいない。こんな目を潤ませる彼女からは、さっきまでの、ちょっとガサツで勝気なスズの面影は感じられない。
この後に続くであろう彼女のセリフを予感して、軽くピクリとペニスが反応したのを感じる。
「そのまま……ホテルでえっち、シちゃわない?」
「……流石にそれはちょっと」
「何でよ、別にいいでしょ?ゲヘナ学園で噂程度で聞いたけど、先生って実はハーレム作ってるらしいじゃん。あたしらの前じゃ、全ッ然そんな素振りは見せないけど!」
「そりゃあ……」
「それとも先生は……『ハドマの子とは仕事上だけの付き合いだから』……なんて言うの……?」
「っ!」
「違う……よねっ……?」
やめろ。そんな潤んだ目で上目遣いをするのは、本当にやめてくれ。見てると胸が痛くなってくる。
そうだ、まさにスズの言う通りなんだ。
彼女達の事を好きにならない為に、敢えて距離を取っていたのだ。ただの「生徒」の1人としてしか見ないようにする為に。
「……違うさ。そうは思っていないよ」
「それならっ……」
「それでも。……それでも、
「っ!」
「分かってくれると嬉しいな」
「……仕事が終わったらいいの?仕事って何なの?」
「難しい問題だね。そうだね──強いて言うなら、ハドマ学園とゲヘナ学園を取り巻くこの騒動を全て引っ括めて『私の仕事』……かな」
「────っ!」
「だからこそ、早くこの騒動を終わらせなくちゃ。スズも、手伝ってくれると嬉しいんだけれど」
指を絡ませて、地面を見つめて黙り込む。強気なスズらしくもない──と思っていると、キッと強い決意をその瞳に込めて、私を見上げる。
「分かった!さっさと終わらせる為だから、全力で手伝うし!だから、全部終わったら!──ハドマの誰より早く、私とデートして!エッチもしてっ!!先生のハーレムに私も混ぜてっ!!」
「……分かった。ハドマの誰より早く、ね」
「うんっ!!」
これまでの私は大体の生徒と早々に連絡先を交換していた。それは何故なのか?理由は実に単純だ。私は────ガチャ禁していなかったからだ。
これまでずっと女の子と知り合うとすぐ
実装された子があまりに多く、課金するのに少し躊躇っていたから。
それなのにどうしてあの時、アンナを始めとする他の生徒と連絡先を交換した、いや、
そう──アロナとプラナによって実装されていた特別中の特別な
今回の実装キャラはまさかの11人。地獄も地獄、超大地獄の11PUガチャ。大人のカードを消費したというのは最早言うまでもないだろう。
〈七つ目の白い地獄〉PUキャラ
【儚き元生徒会長】☆3
【ムッツリ書記長】☆3
【イタズラっこあくま天使】☆3
【誇り高き暴食の女王】☆3
【良心の吸血鬼】☆3
【幼き太陽】☆3
〈反翼の悪魔軍〉PUキャラ
【堕天の女王】☆3
【無垢なる狂戦士】☆3
【純粋な遊び人】☆3
【甘美な時間】☆3
【女子高生迷探偵】☆3
────以上11人のうち〈七つ目の白い地獄〉に実装された6人は、既にコンプリートできている。
対して〈反翼の悪魔軍〉に実装された5人だが、ルーシィとライムしか迎えられていない。因みに、目玉キャラとも言えるルーシィは2回も被った。
つまり、だ。
そんなこんなで
ライムをガチャで迎えていなければ、こうして、彼女を探しに出発できなかったかもしれない。素で会える確率は低そうだから。
◆
「凄いな、学生も堂々と入れるラブホか……」
「というかコレ運営してるのハドマの学生だしね」
「え゙ッ!?」
学生が施設を運営か──とは思ったが、梅花園と似たような位置付けだろうか。いや、流石にそれは無理があるか。
普通にラブホの外見なのに、外の看板には「学生料金」なんてのも書かれている。頭がバグる感覚がしてきてしまう。ここは映画館じゃないんだぞ。
しかしこれで、統治委員長のスズが私をホテルに誘った理由が分かった。堂々と入れるからだ。
「ハドマの雑務や物作り担当に技術開発部ってのがあるんだけどさ。このホテルは、その部の資金源の1つなんだよ。トリニティやミレニアムみたいな、金持ちばっかじゃないし」
「取り締まらなくていいの?統治委員って風紀委員みたいなものなんでしょ?」
「そりゃあ、取り締まり対象ではあるんだけどさ。ぶっちゃけ無理。技術開発部にはハドマの誰しもが世話になってる。学生も一般人も等しくね。だものそんな部活の資金源ともなれば見逃すしかないよ、あたしらの戦闘の後処理も技術開発部の仕事だし」
「あらー……頭が上がらないね」
「そーなのよねー。先代とかの過去の委員長がさ、後処理は自分達でやるから、技術を分けてくれって向こうの部長に言ったらしいんだけど、にべもなく断られたとか。技術を独占して儲ける気なのよ」
「特許料……みたいなのを設定すればいいのに」
「ヤツらにそんなの教えたらダメよ、バカみたいな料金請求されて予算がパァになるわ」
「あら……。まぁホテルだしね、黙認でもまぁ……」
ラブホとはいえホテルはホテル。スルーしよう。それに、私とハドマの生徒達との逢瀬の場としてはお誂え向きじゃないか。
ハドマの学生も潤い、私は楽しめる。恐らくは、完全なるWin-Winの関係。デメリットの無い関係は最高だ。
「じゃ……ライムを探しに行こっか。万が一の時は、スズ、頼んだよ」
「うん、もちろんよ」
「────その必要は無いわぁ」
カロッと棒付きの飴を舌で転がしながら、電柱に寄り掛かったライムが、背後から声を掛けてきた。
思わず身構えるスズと、シッテムの箱を取り出す私。しかし、戦闘開始らしい雰囲気にはならない。
「さっきぶりねェ、せ〜んせっ♡」
「……君が、萌山ライムだね?」
「そぉよ?ふふっ、さっきはどーもぉ♡ あの犬のおまわりさん達とエッチでもシてきたの〜?やけにスッキリした顔してるわね♡」
「シてないよ」
「あら。じゃあ、オナニーだけで発散させたとか?我慢は良くないわよぉ、せんせ♡」
「……」
私を襲おうとしている──ようには見えないな。かと言ってスルーする様子も無いし、恐らく何かを企んでいる。スズは今にも飛び掛かりそうな雰囲気だから、さっさと話を進めなくては……。
「ルーシィはどこ?」
「随分と単刀直入に来たわね。まぁいいわ。私も、あの子の動向と伝言を伝えにここに来たからさ〜」
「ッ!私がここに居ると知って?」
「そぉよ?私の部下にねぇ、優秀な探偵が居るの♡ その子に尾行させたわ♡」
「……!?」
「ルーシィは多分、今日で全てを終わらせる気よ。だから先生、覚悟してよね」
「……ルーシィについて、教えて」
「ルーシィは────」
ライムから伝えられるこの伝言を皮切りとして、ルーシィとの最後の戦いが始まろうとしていた。