※この作品はR-18です。

「先生!もっとあたしらに構って!」   作:アキラゼミ

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第18話:ダークホース

 

「クッ、ソ……! お前、動ける(・・・)タイプか!!」

 

「ふふっ、固定砲台かと思った? 残念♡」

 

 軽やかに移動しながら狙撃をする。ルカの武器は近接寄りのARで、リンコは遠距離戦を得意とするSRであった。

 故にまず、ルカは射程圏内にリンコを収めようと距離を詰める──が、彼女はその軽やかな足取りで後退し、中々ルカに距離を詰めさせてくれない。

 

 2年後──つまり「現在」では、とある事情からその軽やかさが失われて、移動砲台から固定砲台になりつつあるのだが、入学当初はまさに移動砲台。

 具体例を挙げて例えるなら、1年後ゲヘナ学園に入学し風紀委員会に加入する事になる銀鏡イオリのような「動けるタイプ」だった。

 

「ッッ、ウオオォォッッ!!」

 

(苦し紛れの特攻? いや、議長ともあろう者が、そんな安易な手を使う? ……一応逃げとこっと)

 

 リンコは入試の際にルカと戦っている。それでもルカが惑わされている事には、ある理由があった。入試の際、彼女は自分の戦術を偽っていた。前回は固定砲台に徹し、それでもルカをそれなりには苦戦させた。だからこその1年1組である。

 しかし今回は移動砲台に方針を転換する事によりルカが認識済みの「砂田リンコの戦術」を根底から覆そうとしており、何より────。

 

「一気に距離を詰め、超大火力で一撃必殺。先輩の戦法はもう、学習(みせ)てもらったよ」

 

「──入試(あの時)か! だがまだ浅いな! それで全てを学べたと思うな!」

 

「ふふ、もちろん。先輩だって雑魚じゃないしね。だから────他の戦術を出される前に倒すよ」

 

 リンコの銃身に「神秘」が集う。もしこの攻撃を受ければ、大ダメージを受ける──それを、ルカは言いようのない雰囲気から察知した。

 

 ならば放たせない、あの一撃を撃たせはしない。派手な動きで照準を合わせられないよう撹乱しつつ距離を縮める事で、こちらの射程圏内に収めるか、リンコを更に後退させる(・・・・・・・)。

 リンコが選択可能な選択肢は2つに1つ。彼女が選んだ答えは……。

 

「ちぇっ────ほぇっ?」

 

 後退。しかし、その答えは誤りだった。

 ルカが仕掛けた地雷によってリンコはモロに爆発ダメージを受け、銃を取り落としその場に倒れる。ルカではない他の生徒が落とした地雷ではないかと錯覚してしまう程に、さりげなく設置されていた。それ故に回避が難しく、直撃を食らっていた。

 

 フラつく様子のリンコを真っ直ぐに見据えつつ、警戒を崩さない様子で距離を詰める。構える暇すら与えずに距離を詰めたルカは、彼女のSRの銃身を掴み、自身に狙いを定められない位置で固定。

 

「んぐっ、んっ、力強いなぁっ……んぎっ……」

 

 ルカの素手による拘束から逃れようと足掻くが、万力で固定したかのように動かない。ルカはARをリンコの顔面に突き付け、降参を促す。

 

「チェックメイト。無駄に痛い目に遭う前に、潔く降参する事を勧める。──銃、動かせないだろう? 握力には、ちょっとばかし自信があるんだ」

 

「……」

 

「残念だったな。今回も私の勝ちだ」

 

「……本当にそう思う?」

 

「この状態からどう逆転するんだ? 自爆特攻か? なんなら徒手格闘でも構わないぞ? 銃撃戦の強さだけが『強さ』ではないからな。だが、これだけの衆目の前だ。さっさと降参する方が身のためだぞ。それが理解できない程のバカではないだろう?」

 

「そうだね。でも、その衆目の前(・・・・)で恥を掻くことになるのは先輩だけど♡」

 

「何を言っ──」

 

 銃から手を離すリンコ。瞬時に背中に手を入れ、別の銃を取り出し、ルカに接射。その火力たるや、シエルとは親子にも見えてしまうほどに長身であるルカが数m吹っ飛ばされるくらいだった。

 しかも、その着地点が更に爆発して、ルカは更に吹っ飛ばされてしまう。

 それを見た周囲の生徒は、ルカが自分で仕掛けた地雷に誘導されたんだと慌てふためくが、当の本人はそこに地雷を仕掛けた覚えは無く……。

 

「げはっ……!? なにィ!?」

 

「ざんね〜ん。戦術を何個も持ってるのは、なにも先輩だけじゃないんだよ〜」

 

「2丁持ち、だと……ッ!?」

 

 しかも、もう片方は火力が高く範囲が広いMG。ルカが吹っ飛ばされるのも納得の結果であった。

 

「んふっ。しかも爆発(爆弾使い)ね♪」

 

「……!?」

 

 MGで吹っ飛ばされた瞬間、掴んでいたリンコのSRを手放してしまっていた。リンコはそれを再び手に取り、MGとSRの2丁持ちを実現する。

 

「お前まさか、狙ってたのか? アタシが近寄り、正面から堂々と不意討ちできる瞬間を! SMGの2丁持ちなら見るが、まさか、SRとMGだなんてそんな組み合わせ、見た事も聞いた事も無いッ!」

 

「そ。そして、ルカ先輩がそうやって無駄な長文で話し掛けて、回復を狙ってるのも知ってる。だって先輩、自動回復スキル(オートリジェネ)持ちだもんねぇ?」

 

「!?」

 

「だから終わらせるよ。ソッコーでね」

 

「待っ」

 

 今度はルカがリンコから距離を取ろうとステップバック。しかし移動砲台であるリンコがそれを許すハズも無く、ペロリと舌を出しながら追撃する。

 

「あっ、そっちは……」

 

「また爆弾かッ!?」

 

「……あはっ♡」

 

「ぎゃあッ!?」

 

 爆弾があると勘違いしたルカはリンコから意識を逸らし、MGでの追撃を許してしまう。

 ──そこからはもう酷かった。ルカが一度体勢を崩すとMG、手榴弾での追撃を、少しでも離れればSRで狙い撃ちし、回復の隙を全く与えなかった。

 それでなくとも、遠距離から広範囲を薙ぎ払えるタイプのリンコのMGは、それ以降、ルカの接近を全く許さず……。

 

「く、そ……分かった、私の負けだ……」

 

「あ、そう? じゃ、私も七天魔ね♡」

 

「あ、あぁ……」

 

「それなら良かったぁ。他の先輩方も見てたよね? 私が議長に勝つとこ♡」

 

「「「「「………………」」」」」

 

「じゃ、内覧の時間だから、お先に失礼しまーす」

 

「あ、おい……!」

 

「会議とかあるのかな? あはっ、リエちゃん達を帰らせたんだから私も帰っていいよね〜って事で、バイバーイ♪」

 

 ヒラヒラと手を振り、まるでショッピングにでも行くかのような軽い足取りで帰って行った。

 七天魔の最強が議長を務めるという制約は無い。だからリンコの推測が当たっているかは不明だし、そもそも「七天魔の中に序列は無い」というのが、学園内向け、つまり表向きの設定である。だから、最強と思われる者を倒した所で、その者と交代して七天魔になるだけなのは何にも変わらない。

 

 が、今回の七天魔に限ってはまさに、「失楽園の議長」と「七天魔の最強」が同一人物であり、その

「七天魔の最強」が新入生に倒された。

 学園が良くも悪くも激しく沸き立つ事になるのは時間の問題であった。

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