※この作品はR-18です。

「先生!もっとあたしらに構って!」   作:アキラゼミ

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第23話:燃え尽きろ!!波乱・狂乱・大混乱①

 

「──とうとう、私達が受験生達の相手をする側に回るのですね。なんというか……感無量ですわ」

 

「そーだねぇ。マニュアル覚えるのも大変だな〜」

 

 今回の受験は、これまでとは流れが異なる。

 これまでは面接と筆記試験、軽い戦闘試験を行いその合格者には入学手続きに必要な書類を送付し、付属の七天魔エントリーシートも提出してもらい、新入生の入学後に、正式に七天魔としてエントリーしてもらう。

 リエはその「戦闘試験」で先輩を倒したからこそ入学と同時に特例的に七天魔に成れたのだ。

 

 しかし今年は、ナルコのような不穏分子を早々に見抜く為という意味も込め、戦闘試験を廃止しつつ代わりに受験票や面接等で「七天魔に挑む意思」を確認し、希望する生徒に七天魔エントリーシートを提出させ、戦闘するというシステムにした。

 そうする事で自然と七天魔への負担も減る上に、それだけ相手を「見る」余裕が生まれるのだ。

 

 言葉や文字だけでは、「その人」は見抜けない。戦闘でこそ本人の本質が、本音が見える事もある。それを狙っての事であった。

 

「あ、そーだ。この前も言ったけど私の妹も受験に来るから、相手ヨロシクね☆」

 

「リンコの妹かぁ。同じようなピンク髪で、無駄にハイテンションなんだろうね〜」

 

「ううん、私と違ってテンちゃんは大人しめだよ! 少し短気というか、キレ症に近いとこあるけどね」

 

「何それウケる、ナルコっぽいの?」

 

「違う違う、あんな暴力的じゃないよぉ!」

 

「うぐっ……」

 

「り、リンコさんっ、ナルミさんがダメージ受けてますわ、あまりそういう事は言わないよう……」

 

「あははっ、ごめんごめーん!」

 

 校則というよりは、あくまで暗黙の了解的なモノだが──妹などの親族が入学する場合、その親族が面接や腕試しなどの相手をしてはならない。理由はわざわざ周知する必要も無いだろう、これくらいはあくまで一般常識の範囲内だ。

 

 そしてこの日は、リンコの妹である砂田テンコが受験に来る──しかも七天魔エントリーシートをも提出済みという事で、誰がテンコの相手をするか、適当に話し合っていた。

 

 面接は元生徒会幹部、それも元議長と元副議長が行いその後に筆記試験を行う。そして最後に七天魔希望者のみ腕試しという名の戦闘に及ぶのである。

 最後はあくまで七天魔希望者のみの試験なので、勝っても負けても「入学できるか否か」の入試には全く影響は無い。もし影響があるとすれば、リエと同じように入学と同時に七天魔になれるか、否か。ただそれだけである。

 

「それにしてもクロン先輩、遅いですわ。もうじき七天魔の仕事が始まりますのに……」

 

「あ、クロン先輩ならさっき受験生に絡まれてるの見たよ。御伽噺に出てくる妖精みたいな子なのに、気性が荒いっていうか、クロン先輩と似た感じの。背も結構ちっちゃかったな〜。先輩と同じくらいの目線だったよ?」

 

「リンコさん、そこは助けに入るべきですわ……」

 

「え〜、別に良くない? というかちっちゃい子がわちゃわちゃしてるの、見てて面白くって♡♡」

 

「ハッ、ウケる! コレ(・・)が七天魔であり社長であり学園最強ってンだから、おっかないわ〜」

 

「ライムさんも、飴を食べるのはそろそろ……」

 

「別にいーじゃん、受験生の前でもあるまいしさ。それに、まだセンパイ来ないしィ」

 

 するとそこに、面接の結果をまとめ終えたルカ、そして受験生に絡まれていたらしいクロンが、遂に七天魔の控え室にやってくる。ルカは、面接の後にデータを纏め上げたにしては妙に明るく元気そうな顔をしている。

 受験生300人近くの面接をしたと思えない程に。

 

「──とうとうこの日が来た。七天魔がこの7人で過ごせるのも、今日──正確には、受験生共(アイツら)の入学までかもしれないな」

 

「その前に3年の先輩が卒業して人数欠けるけど」

 

「リンコさん、多分そういう話ではありませんわ。それはそれとして、どういう事でしょう、先輩?」

 

「何人か、凄まじい原石を見つけたんだ。軽くだが情報を共有しよう。クロンに絡んだらしいヤツは、特徴を聞くに、クロンの統治委員会に加入するのを希望している『鐘蟲(かねむし)スズ』だろうな。翼が半透明、というかほぼ透明で、黄色くて長い髪の、特徴的なヤツだ。リンコ、お前も見たんだろ?」

 

「あ、多分その子だ! 妖精みたいな子でしょ?」

 

「あーそう、アレは妖精だな。中身は悪魔だが──そんでもってコイツ、じゃあなくて、スズの相手はクロン……お前に任せる」

 

「任せて! 羽虫を潰すように叩き潰してやる!」

 

「次にリンコの妹、テンコだ。筆記試験は、驚異の複数科目での満点だ。理数系が特に得意なんだな。コイツのことは、リンコ以外の誰かに任せるから、あとは七天魔の方で好きに話し合って決めてくれ。向こうがリンコを選んだ場合はな」

 

「私の手の内を知ってるからって、受験の場で対戦相手に私を選ぶ程バカじゃないよ、テンちゃんは。てなワケで、テンちゃんのこと、ヨロシクね〜!」

 

 リエは密かに焦りを覚えていた。リエ自身が優秀だからこそ、複数科目での満点という偉業がどれ程凄まじいのかが分かる。というより、試験の問題を製作するのは生徒会の仕事。つまり、リエも問題の製作に携わっている。

 そんな中で、満点を幾つも取られている。落とす為の試験という超・ハイレベルさではないにせよ、それ程に点数を奪われるのは全くの想定外だった。それこそ良くて8割程度だろうとすら思っていた。

 

 姉のリンコは、リエと学年首位を競い合うレベルである。そんな姉から勉強を教わっているのなら、妹もハイレベルなのは自明の理。砂田姉妹は揃って凄まじいレベルにあるのだと、リエは2人の凄さに舌を巻く。

 

「──で、次に、博愛神社の妹巫女、博愛(はくあ)レイラ。確か姉のレイアは技術開発部の副部長だったな?」

 

「そうそう。とはいえ、あくまでテンちゃんが来るまでの繋ぎなんだけどね〜」

 

「オイオイ、猫田姉妹のように姉妹で部を統括するつもりか?」

 

「私は元からそのつもりで部を立ち上げたんだよ? 親族経営ってヤツね。ま、何故かナルミとナルコに先を越されちゃったんだけどね。こればかりは妹の年齢の問題だからね、仕方ないね☆」

 

「ったく、お前は相変わらずだな。──で、次は、リエのように生徒会希望の生徒だ。天河(あまがわ)アンナ──成績は余裕の第3位、生徒会を目指す者として自己研鑽に励んでいるようだ」

 

「……え? 3位?」

 

「どうした?」

 

「テンちゃんは何位だったの? 複数科目での満点だったんだから、1位……だよね?」

 

「まぁ待て。最後の発表で分かる」

 

 含みを込めたそんな物言いに、七天魔の生徒達はリンコをはじめ、全員がざわつく。

 まさか──今年も(・・・)そうなのか? ……と。

 去年はリエがほぼ全科目満点、リンコも同様に。それが今年もまた起きているのではないか、と。

 

「今年の首席はコイツだ。針村(はりむら)ルーシィ──同じく生徒会希望。筆記試験は……全教科満点だ」

 

「「…………ッッ!?」」

 

 リエとリンコは同時に声にならない声を上げた。全教科満点、そんな漫画の登場人物みたいな優等生なんてこの世に居るのかと。

 そして、素行以外は優等生極まるリンコが勉強を教えていたであろうリンコの妹(テンコ)が負けるなど──と強すぎる衝撃を受けていた。

 

「ぶっちゃけ、ここまで来るとカンニングっぽい。学園に侵入して試験の問題を盗み見ていたとかさ。まぁ、カンニングを疑ったから、さっき少し個室に呼び出して再度問題を解かせてみたんだ」

 

「同じ問題じゃ意味無いでしょ。それとも予備用の問題とか用意してあるの?」

 

「うんにゃ、その場でアタシが即興で作った問題。レベルで言うなら、ミレニアムに首席合格できるかできないか、くらいの問題も混ぜ込んでみたんだ。そしたらアイツ、悩む素振りもなく解きやがった。本物だよ……アイツの頭は」

 

「ミレニアム首席レベルのも含めての全部なの?」

 

「全部だ」

 

「〜〜〜〜〜〜〜ッッ!?」

 

「ま、そういうワケだ。面接ん時には、戦闘の腕については『イマイチ』と自称していたが、果たして本当かどうか、疑わしいもんだよなぁ。なんせ──リエ、リンコ。お前らがこう(・・)なんだから……」

 

「頭も戦闘もバッチリでーす☆」

 

「文武両道、ですわ」

 

「という事で、そんなバケモノの受験生も居るから注意しておけ。赤髪のポニーテールで、黒い翼だ。天使っぽい造形のな。トリニティの正義実現委員会みたいだな。まぁ、見ればわかるだろう」

 

 今回、七天魔エントリーシートを提出したのは、受験生全体の20分の1程度しかいないらしかった。リエ達の世代に比べてみたらかなり少ない。今年は野心の無い生徒が多いのだろうか……。

 

 ◆

 

「────七天魔についての説明は以上だ、なにか質問があれば今のうちにな」

 

 いつも通りの説明に質疑応答を済ませ、とうとう受験生達による七天魔相手の腕試しが始まった。

 今回、試験官を務めるのは────。

 1年3組の萌山ライム。1年1組の猫田ナルミ、砂田リンコ、我猛リエ。2年1組から平井クロン、卒業間近の3年である副議長と書記だ。

 

 正確には、前年の秋頃に生徒会選挙を行い業務を引き継いだ事で、ルカはもう議長ではないし、他の3年の幹部達もその肩書きをもう持たないが。

 

 現在の議長はクロンのクラスメイトで、副議長はリエ。立候補者が居なかったせいで書記が居ない。故にリエが副議長と書記を兼任しており、会計には3組のライムが着任している。ライムについては、彼女が選挙に立候補し、他にライバルも殆ど居ない事で、票は自然と彼女に集まりスムーズに決まったのだ。

 

「じゃ、それぞれ戦いたいヤツの所に行くといい! ただしそれぞれの七天魔に挑む受験生の人数が大体平等になるようにな! つまり、早い者勝ちだぞ! では、健闘を祈る!」

 

 人数からして、七天魔1人につき平均4人ほどが挑める事になる。生徒達は、わぁわぁとそれぞれの七天魔が待ち構える所に向かう。

 その中で、ただ1人──異彩を放つ生徒が居た。

 

「おまっ……オイ、待て! 何だその格好は!?」

 

「? え、私……?」

 

「お前しか居ないだろ、メイド服なんて着てるの! 面接まで、いや、筆記試験までは普通に中学の制服だったハズだよな!?」

 

「そうだけど、何か? これ、勝負服ね」

 

「制服か学校のジャージ、または最低でも部活動のユニフォームでの登下校しか認めないぞ! 無論、受験もそうだ! ほら、さっさと着替えて来い!」

 

「……? 七天魔は、服装も自由なんでしょう?」

 

「──ッ! 予告ホームランってワケか……!」

 

 まるで「1+1の答えが2以外にあるのか?」と言わんばかりの、至極当然といった顔でシレッと、平然と言い放つ。

 その大胆不敵な振る舞い、そしてピンクの髪──そして何より、ハドマ学園の生徒なら誰でも一度は目にした事のある造形の白黒メイド服。それを見てリンコ、ルカ以外の七天魔、生徒会の生徒の全員が察した。コイツこそリンコの妹、砂田テンコだと。

 

「ふん……意地でも着替えない、と?」

 

「着替えたところで戦闘力が変わるワケじゃない。私以外の他人の機嫌なんか、知った事じゃないよ。七天魔にさえなればいいんだし。というか、それを決める為の戦いなんでしょう? 元・失楽園議長の赤津ルカ先輩?」

 

「だが受験は制服が大原則だ。それを破るからにはペナルティを用意しなくては割に合わない、いや、話にならない。お前の姉も受験の時は制服だった。ならば妹もそうするべきだと、そう思わないか?」

 

「思わない。私と姉さんは姉妹だけど、別の人間。グダグダ言うならあんたを倒すけど? でもあんた七天魔じゃない上に、議長も退任済みなんでしょ? 倒す価値も無いから、黙っててくれる?」

 

「んなっ……!?」

 

「ペナルティだっけ? それじゃあ、私が負けたら合格も取り消しでいいよ。これでどう?」

 

「!?」

 

「どうせ合格してるでしょ、私の成績なら。多分、トップかその次かその次に──まぁ、どれだけ悪く見積っても、全受験生の上位5名程度には入ってるハズだからね。制服を着ない私へのペナルティは、

『敗北したら合格の取り消し』くらいで丁度いいんじゃないかな?」

 

「面白い。受験時に七天魔を打倒できたのは歴代でたったの1人だぞ? お前は2人目になれるか?」

 

「なるからここに居るんでしょ。ホント、議長でも七天魔でもないクセにうるさいよ。いつまで無駄に時間を過ごせば気が済むの?」

 

「成績は優秀なのに、その尊大な態度だけは、全く気に食わないな。まぁ、いい。そこまで言うんだ、私達の目の前で七天魔に勝ってみせろ!」

 

「言われなくとも。……あんたにしようかな」

 

 そんな彼女が並んだのは、誰であろう、ナルミの前だった。自信たっぷりなテンコに目を付けられ、ナルミのアホ毛は既に枯れた草のようにヘナヘナに折れ曲がってしまっていた。

 

「はうぅぅ〜……」

 

「あははははっ! テンちゃんは中々手強いよ〜! 頑張って、ナルミ☆」

 

「ま、七天魔だしィ? 勝たなきゃ、ね……♪」

 

「応援してますわ!」

 

「大丈夫、七天魔が受験生に負けた例なんて過去にリエちゃんの例しか無いんだから!」

 

 などなど、口々にナルミを励ます七天魔の面々。それを目の前で見せられ、受験生の士気も上がる。歴代で1人しか居ない──それなら自分が2人目になってやるんだ、と。

 士気も上がった所で戦闘開始の合図を、とルカは口を開きかけるが、1発の銃声が静寂を呼び戻す。

 

「あー、ペナルティだの何だのと、な〜んか無駄に盛り上がってんじゃないの。ったく、アホらしい。バッカじゃないの?」

 

「お前は──鐘蟲スズか。何がアホらしいと?」

 

「中学生(ガキ)が高校生(としうえ)を相手に戦うって場なのにさぁ。お世辞にも受験生(あたしら)じゃなく、高校生(おともだち)の方を『応援』するとかさァ。つか高校生(あんたら)が中学生(あたしら)相手に勝つとか当たり前じゃない? そんなのを、さも『これまで1人にしか破られてない凄い記録です!』みたいに堂々と言うとか……恥ずかしくないワケ?」

 

「ッ!」

 

「ちょっ……黙って聞いてりゃ、アンタは!」

 

「あっ、さっきのチビ先輩じゃーん。統治委員会の委員長、あんただってね? ブッ倒してやんよッ! そして、統治委員会の委員長になってやる!」

 

「やれるもんならやってみなよ、クソガキ!」

 

「チビがガキとか言わないことね! ドチビ!!」

 

「なっ!? この、マメ! ゴマ! チビ羽虫!」

 

「なんですってぇぇぇっ!?」

 

「うるさいぞチビ共がァァッ!!」

 

「「!?」」

 

「アタシからすりゃ〜お前ら両方クソチビだッ!! 豆粒だッ! ゴマの分際で背比べするなァッ!!」

 

 背の低い者が、背の低い者に対し背が低い煽りをしていると、遂に堪忍袋の緒が切れたらしいルカが大声で叫ぶ。一瞬だけ反論しようとしたスズだが、流石に30cm近く身長の差があると説得力が違う。

 頭1つ抜けているなんてものではない「差」が、スズとルカの間にはあるのだ。仁王立ちするルカを見て、舌打ちして目を逸らす事しかできなかった。

 

 ◆

 

 こうして、紆余曲折あったものの、どうにか無事戦闘を開始することができた。注目すべき主な戦闘カードは、以下の通りである。

 

 我猛リエvs博愛レイラ

 萌山ライムvs天河アンナ

 砂田リンコvs針村ルーシィ

 猫田ナルミvs砂田テンコ

 平井クロンvs鐘蟲スズ

 

「アイツ、リエに挑むのか。しかも余ったからとかじゃなく、自分から進んでリエに挑むんだよな?」

 

「如何にも怖いもの知らずって感じィ〜」

 

「翼が無くなった事で、リエの外見から感じられる威厳の8割が損なわれたからねぇ。いや、ナルミのことは責めてないよ?」

 

「うぐぅ……」

 

 そして一斉に戦いが始まった。

 リエvsレイラ、こちらは銃撃戦よりも何故だか徒手格闘がメインになりつつある。

 というのも、レイラの属性とリエの属性の相性が悪く、わざわざ不利な属性で挑むのなら、無属性の拳で挑む方がまだ勝率が上がる──と早々に戦術の舵を切ったからである。

 

 リエは神秘/弾力装甲、レイラは爆発/弾力装甲なので、リエの攻撃はレイラに対して通常通り通るものの、レイラの攻撃はリエに対し半減するのだ。これではやるだけ無駄だ、と判断するのも仕方ない事であろう。

 

「はぁああっ……!」

 

「ッ!」

 

 飛び上がり、身体を捻って勢いをつけて真上から拳を振り下ろす。己の身体の落下速度をも利用したメテオ攻撃、しかしリエは頭上で腕をクロスさせてそれを真正面から受け止める。

 勢いを殺されレイラの身体が空中で静止した時、狙い澄ましたようにリエの鋭い前蹴りが彼女の腹に突き刺さる。

 

「げふぁっ!?」

 

「中々、痺れる攻撃でしたわ」

 

(地面が軽く陥没して……なのになんで平然と……)

 

「では──次はこちらから参りましょうか?」

 

「ぐっ……!」

 

 トンッと軽く地を蹴ると、ふわりと宙に浮かぶ。そんなリエの背に、白く大きい天使の翼を幻視したレイラは、ほんの少し反応が遅れ──くるりと宙で前転したリエは、その勢いを踵落としとして彼女の脳天に突き刺した。

 

「〜〜〜〜〜ッッ……」

 

「体幹。あなたにはこれが足りていませんわ」

 

「……降参します……」

 

「あら。うふふ、まだ相手して差し上げますのに」

 

「体幹が、なってないからさ。もっと鍛えてから、挑むことにしようかな〜」

 

「そうですか。しかし、潔いのは良い事ですわね。今後もそのままのあなたで居てくださいね」

 

「……。対戦、ありがとうございました」

 

「こちらこそ、ありがとうございました」

 

(これが七天魔──副議長、ね。リンコさんの方が強いような気がするけどなー。まぁ、リンコさんは生徒会なんて興味無いか)

 

 リエvsレイラは、特になんの問題も無くリエの圧勝で幕を下ろした。レイラは、頭頂部に刻まれた巨大なタンコブを癒しに、保健室へ向かうことに。

 

 ◆

 

「私の相手はあなた〜? うふふっ、純白のロングヘアーが眩しい♡ 可愛いわね、あなた♡」

 

「!? あ、あのっ、私は……っ」

 

「や〜ん、そのウブな感じも可愛い♡」

 

「ふぇっ!?」

 

「失楽園(ダイモニオン・ソサエティー)会計、萌山ライムで〜す。あなた、生徒会加入を希望してるんでしょう〜? どーぉ? 手っ取り早く生徒会に入っちゃってぇ、お姉さんとイケナイコト♡ 楽しみましょ♡♡」

 

「え、あっ、えっと、その、私、は……あぁっ……」

 

「んふふっ♡ 照準、合わせられてないゾ♡♡」

 

「!!」

 

「バキュン♡♡」

 

「ッ…………!?」

 

 会心ダメにて、アンナは一撃で沈む。「現在」もアンナは前線に出る事が無くSPECIAL(サポート)担当なのは、この打たれ弱さが主な原因である。

 そして、ゼェゼェと息を切らして地面に倒れ込み空を見るアンナの傍にライムはそっと腰を下ろす。

 

「今ねェ? リエが副議長と書記を兼任してんの。リエは順当に行けば次の議長だろうし、今は実質、書記が空席なの。……あなた、書記にならない?」

 

「私が……書記、に……?」

 

「そ。記録を付けるのが主な仕事になるだろーけどあなたには合ってるんじゃないかしら? 私が見た限りでは、今この場にいるどの受験生より──字、綺麗だったわよ♡」

 

「……! そ、そうなんですか……!」

 

「ええ、だから自信持って入学なさい? 入学して早めに七天魔に挑んで勝って、七天魔になるのよ。そしたら、希望すりゃあ生徒会にも幹部候補待遇でソッコー入れるからさ? OK?」

 

「はっ、はいっ!!」

 

「んふっ、良い返事ね♡ そんな子には、ご褒美♡ あげなくちゃね……♡」

 

 胸元からリボンを2本取り出したライム。惚けるアンナを抱き起こすとそれを使い彼女の髪を結う。完成すると手鏡を彼女に見せ、出来上がった髪型を教えてやる。それが更に彼女の赤面を加速させた。

 

「じゃーん! 私とお揃い、ツーサイドアップ♡」

 

「あっ……///」

 

「じゃ、入学と七天魔昇格、お待ちしてまぁす♡」

 

「はわわわわ……///」

 

「結ぶの、練習しときなさいよ? バランスが大事なんだから♡」

 

「は、はいっ! ありがとうございますっ!!」

 

(まぁ「この場にいるどの受験生よりも」ってのは嘘なんだけど。この子のしか見てないしネ。でも、ルーシィよか字ィ綺麗だし、この子が最高って事で別にイイっしょ。ルーシィも、字は綺麗だしネ☆)

 

「ライム……先輩……♡」

 

(それに、早めに生徒会に引き込んだ方がこの子を食べれる機会が増えそうだし♡ アハッ、私ってばルーシィに負けず劣らずの策士だわ〜♡♡)

 

 深々と頭を下げるアンナに手を振って、ライムは自陣に戻る。どうやら既に七天魔の半数はやる事を終えていて、後は他の七天魔の戦いを見守るのみになっているらしい。

 そしてここから、受験生達の快進撃が始まる事になるのであった────。

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