「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
第25話:前代未聞!史上最強のロリコンビ
────4月。元議長である赤津ルカ達3年生が遂に学園を「卒業」し、僅か数週間後。3年生達が抜けた穴や寂しさを実感しつつ、リエ達は2年生に進級する。
それと同時に、今度は、桜が咲き乱れる学園にてもう何度目かになる入学式が執り行われた。今回、学園に入学してくるのは、リエ達にとって初めての後輩となる生徒である。
リエやライムは生徒会の幹部として忙しく働き、ヘトヘトになっているようだ。しかし、その疲れを隠しもしないライムと、表向きには疲れなどまるで感じさせないリエとでは、まるで対比の関係にあるように正反対に思える。
議長による挨拶と、新入生代表であるルーシィの挨拶、それ加えて式典ならではの下らない話などを幾つか上乗せして、ようやく入学式が終わる。
そして1年生にとっての放課後、つまり在校生の授業中。七天魔の生徒は授業を抜け出し、七天魔の催し物を開催する。
ただし今回は、去年のようなパターンではなく、単なる顔合わせや挨拶だけ──の予定である。
「ふむ──これで全員ですわね」
「5人しか居ないのに全員とか、めっずらしい〜。こんな事もあるんだねぇ」
もちろんこの場には、受験の際に
因みに、卒業するまで七天魔の地位を守り抜いた者が抜けた後の「七天魔の座」については、現在、空席になっている。
つまり今の七天魔は──2年生はリエ、リンコ、ライム。1年生はスズ、テンコ──そう、2人分の空席があるのである。
入れ替え戦が行われたものの、挑戦者が敗北したままで入れ替えが達成されず、七天魔の席に空席ができた場合、どうするか?
この場合、元七天魔や、挑戦者の中で有望な者を七天魔が独断と偏見によってピックアップし、仮に本人が望めば、七天魔入りを前提に再度、腕試しを行う。無論、少々手を抜くのは言わずもがな。
なお、7人全員が3年でそのまま卒業し七天魔が0人になった場合は──不明である。というのも、過去にそういった事例が起きた事が無く、想定すらされていないからだ。
何だかんだで、七天魔には常に1人や2人以上は1年生や2年生が居る。だから、そんなパターンを考慮する必要性を思い浮かぶ者など、そもそも存在しなかった。
七天魔という制度が始まって以来の「黄金期」は恐らく今。特に、リエ達の世代だ。1年生の時点で最高で5人も七天魔に名を連ねる事など前代未聞。
──が、その「黄金世代」でさえ、5人なのだ。7人全てが同学年など、起こり得ない。今この場に新入生が2人も居るのが、その証明だと言える。
世代は変わる。当事者が望めど、望まずともだ。否が応でも──時代は流れ、世代は交代する。
リエにとって存在感が大きかったルカの卒業で、彼女達は、その事を酷く痛感させられていた。
「────という事で。早急に七天魔としての数を揃えたい所なのですが、候補として選出すべき方に心当たりがある方はいらっしゃいますか?」
現在、七天魔筆頭はリエ。この話し合いの流れを仕切るのも、リエである。生徒会の副議長でもあり七天魔筆頭でもある今のリエは恐らく、学園内でもトップクラスで多忙を極めている。
「ナルミじゃない? テンちゃんよりは弱いけど、学期の途中で部を立ち上げたにも関わらず、早々に部員20人を抱えるようになる程のカリスマ持ちっ! しかも人間だけ! やっぱり、1組に来るだけある優秀さだよねぇ」
「ナルミ自体は優秀なのに思想がザンネンよね〜。剣道部と弓道部のアレさ、差別っぽくてキラ〜イ。人間しか入部できない、なんて、七天魔でもなきゃ許されない暴挙でしょ。他にそんな部活ある??」
「聞いた事ないわね!!」
「そりゃ
「──ではナルミさんを候補の1人にしましょう。他に誰か、めぼしい方は居ますか?」
「やっぱり生徒会希望のあの子達じゃないかしら? 天河アンナちゃん♡……と、ルーシィって子♪」
「針村ルーシィさんですわね。新入生代表挨拶も、素晴らしかったです。1年1組1番を背負うのに、相応しい方です。確かに、生徒会希望でしたわね」
「戦闘は面接で言ってた通りイマイチだったけど、先を見通す能力とか凄かったよねぇ。相手の動きを予想し行動を組み立てる──言ってしまえばたったこれだけなんだけど、あの子は、まるで予知してるような精度だった。受験の時に初対面で、関わりが皆無の私相手なのに……正直、ゾッとしたよねぇ」
「今後はさ、あの子みたいな『先を見通す能力』が必要になるんじゃなーい? ほら、私ら七天魔って起きた問題に対し後手に回って対処してんじゃん? いつまでもこんなザマじゃ、いつか、ヤバイ問題が起きそ〜な気がするのよねぇ。『気付いたときには手遅れでした』的なヤツがさ」
「パイデカギャルなのに、頭は良いのね、あんた。ギャルってバカばっかだと思ってたわ!」
「あら、なぁに? 先輩に対してその口の利き方」
「先輩だろうが関係ないわね、だってあたしの方があんたより強いんだから!」
「クロン先輩を倒したくらいで調子に乗ってちゃあダメよ、おチビさん?」
「誰がおチビさんよ!」
「ふふっ、身長も胸も成績も私未満で逆らうなんて可愛いわねェ。強さしか取り柄がないのかな?」
「ぐぬぬぬぬぬっ……見てなさいッ、いつか私だってボインボインのバインバインになるんだから!!」
「そこ? 普通、何とかできそうな成績じゃ?」
「んなモン、普通に授業とか受けてたら結果に反映されるわ。あたしがそれすらできないようなバカに見える?」
「見えるから言ってるんですけど〜」
「なっ、なんですってぇぇ!? 表に出なさいッ、ブッ潰してやる!!」
「やーん、虫に潰されちゃう♡」
「誰が虫よ、誰が!!」
「お黙りなさい……ッ!!」
「ギャンッ!?」
「きゃうっ……」
会議の場で騒ぎ始めたスズとライムは、リエから頭を撃たれ、涙を目尻に溜めながら黙り込む。隣でそれを見ていたテンコは、先が思いやられるな、と小さく溜め息をついていた。
結局、残り2人の七天魔の候補は────。
ライムの推薦により1年生のアンナとルーシィ。
テンコの推薦により2年生のナルミ。
スズの推薦により3年生のクロン。以上4人だ。この候補者達が七天魔入りを尚も望む場合は、残り2枠を希望者で取り合ってもらう事になる。
◆
その日の放課後。放送で呼び出しを受けた4人は七天魔5人の待つグラウンドへと集合する。やはり4人共、未だに七天魔の座は諦められないらしい。
クロンなどは特に殺気立っている。入学して間もない頃から去年ナルコに負けるまでずっと七天魔で在り続けたクロンだからこそ、その座にも強く強く執着してしまうのだろう。
「──と、いうワケでぇ。七天魔希望者の皆には、今から校庭で大乱闘してもらいまーっす♪」
「1vs1のリーグ戦形式なども考えましたが──それでは戦闘回数が余分に多くなってしまいます。負担も大きいですし、時間も掛かりますわ。そこで私達が考えましたのは、コチラ、『大乱闘形式』でございます……ふふっ♪」
「4人全員が同時に戦って、残った2人が七天魔に昇格するの。どう? 楽だし楽しそうじゃない?」
それらの言葉に対する反応は、バラバラだった。たったの1人すら反応が被っていない。ルーシィは口元をキュッと結び何か考え込み、ナルミは焦りを見せ、アンナは顔を青くさせる。
唯一、堂々とした態度を見せるのは、この場では唯一の3年生の──統治委員会委員長、平井クロンただ1人であった。
「ヘェ。いーじゃん、全員での大乱闘。手を組むも一匹狼を決め込むも自由。最終的に、ラスト2人に残ったらそれでいいワケだ。……そうでしょう?」
「そーゆーことっ! 委員長だけあって、理解力はそこそこ良いようね!」
「
「あぁ!? んなこと言うなら、統治委員長の座、奪ってやりましょーかァ!?」
「やってみな! できるもんならねっ!!」
「上等じゃねーのよコラァ!」
「スズさん、クロン先輩。──『今』はその時ではありませんことよ?」
「「…………はい…………」」
リエの「笑顔」の説得により、スズとクロンは、どうにか収まる。そして遂に、放課後のハドマにて4人の生徒による大乱闘が始まった。
「それでは────始めッ!!」
「まずはお前だ軟弱な1年生ェッ!!」
「ひぃっ!?」
開始の合図と同時に動くは、統治委員長クロン。狙いはアンナだ。彼女の武器はSR。しかも、移動砲台ではなく固定砲台タイプのスナイパー。小柄でそれ故に的が小さく、そして素早いクロンは、少し相性が悪い相手だ。
「フー……ッ……」
呼吸を整えて、撃つ。──ヒット、しかし大したダメージにならず彼女はギザ歯を晒す凶悪な笑みを浮かべてそのまま突き進んでくる。
「まずはお前からッ、落ちろォッ!!」
「ひぐっっ……」
SG2丁を向け、アンナを集中砲火──クロンはすっかりアンナに夢中だ。しかし2丁共アンナへの攻撃に使ってしまっているが故に、隙が生まれた。
「後ろガラ空きですよ、先輩」
「ッ!!」
「アンナ!」
「はいっ!」
「あっ!? おまっ馬鹿っ……」
「おーしまいっ♡」
ルーシィがクロンの背後に回り込みMGを向け、ルーシィの呼び掛けと同時にアンナは銃を手放し、クロンを羽交い締め。素早いクロンの動きを封じ、距離を詰めた上で、MGで弾丸の雨を浴びせる。
生徒会を狙う者同士──ルーシィとアンナによる見事なコンビネーションだった。
砂埃が立ち込め、その中にアンナとクロンだけが取り残され、仕方なくルーシィは数歩後退。それと同時に、ナルミがルーシィの背後を取るが。
「──私と同じ手を使われる可能性、この私が警戒してないとでも思いました? セ・ン・パ・イ♡」
「あぐっ……!?」
振り向く勢いを利用し銃身の長いMGでそのまま殴打する。MGの懐に入れば後はこっちのもの──そう思っていたナルミは思わぬ攻撃に不意を突かれ銃を手放してしまう。
ルーシィは、全てを読んでいた。アンナと自分がより厄介なクロンを2vs1で相手取る事になればフリーとなるナルミは隙を見せた方に向かってくるハズだ──と。
そしてそこまで読んだ上で、アンナにはナルミの相手は難しいと判断し、敢えて自分が隙を晒して、彼女を引き付けて仕留めてしまおうと。
殴打され吹っ飛ばされたナルミは、彼女のMGの射程に入ってしまう。しかしそこは同時にナルミのARの射程でもある。すぐに体勢を立て直して反撃してしまえば、目の前の黒き天使を打ち負かすのはそう難しい事ではない──と剣道でそうあるように一呼吸を整え、再度、攻勢に出ようとするが。
「何で一瞬、躊躇ったの?」
「え」
ナルミが呼吸を整えた瞬間──否、その直前の、呼吸を
MGはARよりも射程が長く、広い。それ故に、AR使いほどしっかり狙わずとも、方向さえ合えば適当に発砲しても割と簡単に当たってしまう。
銃火器としての特性の違いであると言うべきか。いや、仮にそれを考慮せずとも、当時のナルミは、
そこを突かれたことが原因で、ルーシィのMGの弾丸の雨を浴びることになり──ナルミは敗北。
ナルミのヘイローの消失を確認、意識を手放しているらしい事が目視で分かった。
さて、アンナの方を──と振り向くと、そこにはルーシィの戦いを見届けたらしいクロンが、堂々と胡座をかいていた。彼女の背後には、今のナルミと同じようにヘイローが消失したらしい
「お疲れさん!」
「……は?」
「おいおい、先輩に労ってもらったのに『は?』は無いだろー?」
「……すみません……ていうか、アンナは……?」
「あー……腹に肘鉄喰らわせたら一発で沈んだ」
「!?」
「コイツはダメだな。仮に七天魔になれたとしても前線には出すな。後衛──より更にその後衛かな。丁度スナイパーのようだし、援護させるのがいい。オドオドした性格も良くない。もし前線に出したら格好の標的になっちゃうだろ」
「そー……ですね」
────こうして、七天魔の残り2枠はクロンとルーシィの2人で埋まり、七天魔はリエ、リンコ、ライム、スズ、テンコ、クロン、ルーシィの7人に決したのであった。
そしてルーシィは
一方、2人も七天魔に在籍している統治委員会はというと。
「アッハッハッハ〜! やっぱあたし、最強ッ!! これで委員長の座はあたしのモノよッ!!」
「くっ、そ……ッ!!」
クロンとスズは再戦を果たし、クロンは委員長の座を防衛できず、「新入生副委員長」であるスズに下克上を許してしまった。
こうして統治委員会は、新入生が委員長を務め、元委員長──それも3年生が副委員長になるというハドマ学園史上初の委員会となった。