「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
────スズやルーシィ、テンコなど次の世代がハドマ学園に入学して、どれくらい経っただろう。半年だとか、精々、それくらいだろうか。
秋には生徒会選挙が行われ、副議長だったリエは遂に議長へと上り詰めた。書記であったルーシィは選挙の結果、副議長に就任。会計はライムが続投、空席となった書記には1年生のアンナが立候補──他にまともに候補者も居なかった事から、そのままアンナが当選する事になった。
こうして遂に新たなメンバーで生徒会、失楽園が発足し、学園や自治区の運営に携わる事になった。
しかし、それから少し経ってからの事だった。
新生徒会が少しずつ軌道に乗りつつあった頃──ライムの女遊びが、あまりにも激しくなっていた。会議に遅刻するのは当たり前、なんなら遅れて来た会議の途中でさえも会議を抜け出し、近くの部屋でその辺の生徒と遊び出す始末。
流石に手に負えないと判断したリエは、アンナやルーシィにはやんわりと反対されつつも、ライムを生徒会からクビにする事を決断。
この、横暴とも思えるリエの判断にはそれなりに批判が起きたものの、リエに対して「実力行使」に出る程のライムのシンパ達を力で捻じ伏せた事で、リエには逆らえない空気が形成されていき──遂にライムのクビが現実のものとなってしまった。
それから更にしばらく経って、事態は急変した。
生徒間の諍いが増えたり、爆発事件が起きたり、教員ロボが傷付けられたり破壊されたりなど学園の空気が悪く──治安が悪くなってきたのだ。
それに辟易した生徒はポツポツと近隣の学校へと転校していくし、逆にそれを面白がって転校や編入してくる生徒も増え始めた。そして、それによって更に治安が悪化する──そんな、負のスパイラルに陥っていた。
「だーっ、クソッ! 逃げ足の早い連中ねぇ!!」
「スズや私でも全員を捕まえられないとは、最近の不良連中は中々やるなー」
「あたしらの動きを学習したのかしら? だけど、それにしたってヤケに逃走が鮮やかっつーか……」
「ある程度ならリンコ達が直せるとはいえ、こうも学園内の教員ロボを破壊されるのは少しまずいな。早く、あのアホ共を何とかしないと……」
「なんかまずい事でもあんの?」
「BDとかでの自主学習がデフォとはいえ、一応、教員ロボってのは『学校機能の象徴』みたいなものだからなぁ。ほら、校長先生もロボだろ?」
「あぁ、あのデブね。アレが象徴……?」
「『学園として機能してますよ』って意味で、な。最低限の治安はあるって事だ。あのゲヘナでさえ、教員に手を出すのはタブー扱いって聞いた事があるくらいだし」
「げッ。じゃ、今の
「下手したらゲヘナ以上の治安の悪さ──って事。対外的にというか、他所様から見たら、だけどな」
「うっわ、最悪。あのゲヘナ以上に治安悪いとか。生徒なんて9分の1〜5分の1程度しか居ないのに酷い話だわ。ま、お陰で暇してないけどさ♡」
「あのなー……」
学園内の治安を維持するという名目で、戦闘欲を発散できるスズは、ほんのちょっぴり、この治安の悪さに感謝していた。
しかし最近はどうもおかしい。生徒達の逃げ足が早いばかりか、追手を撒くのが巧妙になっている。
「こういうのがあまりに長く続いたり頻発すると、連邦生徒会から調査が入る。『おたくの学園、学校機能はどうなってんの?』って感じで。それももしダメだったら、廃校や、近隣の学園との併合を打診される」
「はァ!?」
「ま、それは噂だけどな。実際、廃校状態の学園はかなり多いのに噂のように併合されまくってない。連邦生徒会も手一杯なんだろうさ」
「なんだ、じゃあ気にする事ないじゃん」
「バカか? ウチは曲がりなりにもゲヘナと姉妹校だった学園だぞ? その他大勢みたいな学園とは、問題の質も立場も状況も、何もかも違うんだよ」
「あー? 何が違うのよ?」
「連邦生徒会のとある幹部の部下の1人が、ウチの学園の生徒なんだよ。つまり、連邦生徒会に生徒を輩出できないようなその他大勢の学園とは違って、もしハドマで何か問題があったら、連邦生徒会から目をつけられやすい──ってワケだ」
「うわ、めんどくさ。そんな状態なの? ていうかもし併合とか廃校とか打診されたらどうすんの?」
「さぁ〜てね。そんなの、知ったこっちゃないさ。それにな、それを考えるのは私らの仕事じゃない。生徒会の連中の仕事だ。そういう七面倒臭い事は、リエちゃんに投げりゃいい。それに、お前も私も、そういう難しいコト考えんの──嫌いだろ?」
「……あはっ! それもそーね!」
「私らはこれまで通りに、不良生徒をブチのめし、学園内に、自治区に平穏を齎す。それだけでいい。それが、私ら統治委員会の仕事だ。難しい事なんかリエちゃんら生徒会に任せる。それが役割分担──適材適所ってヤツさ」
「なんかクロンのクセに先輩っぽいコト言うわね」
「先輩だからな!?」
◆
その頃────生徒会室では、連邦生徒会からの通達が届き、失楽園の3人を混乱に陥れていた。
「『機能不全の疑い』って……」
「ここの所、教員ロボさん達が壊され続けるという事件が何度も起きていたからでしょうか。確かに、今現在も我々の頭を悩ませる頭痛の種でしたが──よもや、ここまで早く目を付けられるなんて……」
「どどどどっ、どうしましょう、議長……!?」
「このままでは、他校との併合や廃校が打診されるようになるのも時間の問題……でもそんなの……」
「分かりますわ、ルーシィさん。そんなの、我々は望みません。──アンナさん。統治委員会に警備と警戒を増強するように通達を。それから、この件に関する新たな対策委員会を臨時で設置しましょう。委員長は私が務めるとして────」
「話は聞かせてもらったぁっ!!」
「「「!?」」」
その時、生徒会室の扉が勢い良く開かれドヤ顔を披露しながら1人の生徒が現れた。一瞬、襲撃かと身構える3人だったが──その生徒を見たリエは、ホッと胸を撫で下ろす。
「心臓に悪いですわ……シエルさん」
「盗み聞きとは、趣味悪いですね……先輩?」
「あはっ、趣味悪いとは聞き捨てならないねェ〜? たまたま……そう、偶然通り掛かっただけだよ?」
「どうだか……」
「で、リエ。対策委員会だっけ? 設置するんなら私に委員長やらせてくんない?」
「えっ? し、しかし、こういう件に関しましては生徒会たる私達の仕事でもありますので……」
「しかしもカカシもないよ。リエさ、議長になって間も無いし、仕事も多いじゃん? そういう負担、私にも背負わせて。長いこと友達やってんじゃん」
「っ……」
「今はまだ七天魔にもなれない雑魚だけど、そんな私でも、リエばっかに抱えさせるつもりは無いよ」
「シエルさん……」
「私も、もうすぐ七天魔になるからさ。そしたら、委員長、やらせてくれる?」
「…………」
リエは悩みや仕事などは1人で抱え込みがちだ。しかしいつだって彼女のそばにはそれを奪っていく親友が居た。
これまで、彼女の厚意に甘え続けてきた。今またそれに甘えていいものか──そう頭を悩ませるが、悩むリエを見たルーシィは。
「……いいんじゃありません? 先輩に任せても」
「えっ?」
「議長を引き継ぎたてで、実際、忙しいですよね。まだまだ手探り状態の事だって幾つかあるワケで。そんな状態で仕事を更に抱えるのって、効率的にも最悪だと思いますよ」
「それは、そうですが……しかし……」
「シエル先輩も入学当時から優秀って聞きますし。七天魔じゃないとかそんなのは抜きにして、先輩に任せるのは普通にアリだと思いますけど」
「とはいえ、生徒会でなければ対処できない事柄も無きにしも非ず、だと思うので……」
「であれば、名目上はシエル先輩が委員長って事にしておいて、実際は、リエ議長が委員長も兼任ってカタチにしておけばいいのでは? それなら生徒会権限でしか手を出せない事にも手を出せますよね」
「それは……確かに、そう、ですが……うーん……」
「副議長もこう言ってるし? 生徒会じゃなくてもできそーなコトだったら私にやらせてよ。抱えても良い事なんて1つも無いからね?」
「……」
────長い長い沈黙の末、リエは遂にシエルに対策委員会の委員長を任せる事にした。
名目上とはいえ委員長に就任したシエルは、この委員会の名を「連邦生徒会対策委員会」と名付け、部員を募り、生徒会の補佐役の委員会として様々な仕事をこなすようになった。
なお、その際、連邦生徒会対策委員会に情報やら仕事を渡す時は大抵がルーシィを経由しており──嘘の情報を渡されたり、そもそも連邦生徒会からの通達をルーシィがシャットアウトしていたりなど、シエル達の活動が秘密裏に阻害されていた事実は、ルーシィの裏切りまで知る由も無かった────。