※この作品はR-18です。

「先生!もっとあたしらに構って!」   作:アキラゼミ

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第27話:飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)、勢力拡大。

 

「姉さん、また統治委員会から修理依頼が来てる。今度は校門の爆破跡の修繕……だって。またか……」

 

「も〜、またぁ!? もうそんな予算は無いよぉ! 次からは統治委員会から予算を貰おうかなぁッ!? 最近は本当に修理修理修理で、ろくに好きな創作もできてないしさぁっ! やんなっちゃうよぉ!」

 

「姉さんと私──七天魔が2人居ても予算分配には限界がある。まさか、私が入学してたった半年しか余裕がもたないとは、思いもよらなかったけどね」

 

「しょーがないよ。なんか最近はやたらとドンパチ起きてるみたいだし。スズもクロン先輩も、なにをそんなにイタチごっこしてるんだか……」

 

 校門と聞いて、リンコは頭痛がする思いだった。学園内だったらまだ良かった。仮に作業を後回しにしたところで、何のお咎めも無いからだ。

 しかし校門とは、学園の顔。外に向けてのもの。生徒会から、校門や外壁などの「対外的な部分」は最速で修理に当たるよう要請されているのである。

 

 もちろん、作業に必要な予算は経費申請できる。しかし、必要となる金額を完全に賄える程の余裕はこの学園には無い。足りない分は自腹だし、自分の活動に使える時間まで確実に削られる。例えるならサービス残業にも近いような──そんな酷い状態が技術開発部にとって当たり前になりつつあった。

 

 部員に該当箇所の修理に行かせた後で、リンコとテンコが愚痴を言い合っていると──そこに生徒会副議長のルーシィが部室にやってきた。

 

「はろはろ〜。元気してます、先輩?」

 

「元気も何も無いよぉ。こんな状態で、どうやって元気を出せって言うの〜……?」

 

「げ、生徒会。なに? さっき修理依頼が来た所、もう修理は始めてるけど?」

 

「あはははっ、違うよテンコ。別に、修理の催促に来たワケじゃないよ」

 

「じゃあ何よ? 修理や書類の提出の催促以外で、生徒会が工場に来る事、これまでにあったっけ?」

 

「テンコが書類管理するようになってからは提出の遅れとかは一度も無いんだから、気にしないでよ」

 

「……だってさ、姉さん?」

 

「ぐすんぐすん……」

 

「それに、ここに来たのは生徒会としてじゃなく、普通に、個人的な用件で来たんだ」

 

「個人的な用件……?」

 

「────慢性的な資金不足に喘いでるんでしょ? それ、どうにかできると言われたら──信じる?」

 

「「ッ!?」」

 

 ハッと目を見開く。その反応を見たルーシィは、ニタリと、口元を三日月のように細めて笑う。

 

「生徒会が予算を削ってる──ワケじゃないよね。私が部を立ち上げた頃より、寧ろ増えてるんだし」

 

「姉さんの頃より予算が増えてても、支出が増えるばかりで、増えた予算もドンドン消えてくばかり。好きな研究や開発にも打ち込めない。これどうにかできるっての? ルーシィ?」

 

「できるよ。私の組織にさえ入ればね」

 

「組織……?」

 

「なーんか……ヤバ〜イ響きだねぇ?」

 

 そう言いつつ、リンコは笑っていた。ルーシィと初めて対峙した時の「興味」が、数ヶ月ぶりに酷く掻き立てられたような、そんな気がしていた。

 

「2人ってゲヘナ出身よね。どうして、ゲヘナ学園じゃなくハドマ学園に来たの?」

 

「ゲヘナ学園よりはうるさくなさそうだし、程よく自由そうだからねぇ。あ、それと勉強でも強さでも私が学園トップになれそーだし☆」

 

「委員会や部活動の予算配分がかなり渋いって話を聞いたからね。万魔殿が気分で決めるようだしさ。気分で何もかも決まるような学園に属したくない」

 

「それでハドマに来て──予算は確かにある程度は自由に貰えるものの、『上』から与えられた仕事でその自由も予算も消えて行く……って感じだよね」

 

「そーそー」

 

「それがどうにかなる? ルーシィの組織ってのに入って?」

 

「成功すれば、ね。私の組織の目的は──ハドマを足掛かりにして、ゲヘナを掌握すること」

 

「「ッ!?」」

 

「ハドマはかつてゲヘナと姉妹校だったってのは、2人も知ってるよね。かつて絶たれた『縁』を──向こうとの合意を以て、合法的に、復活させるの。それを元に今度はゲヘナを乗っ取る。広大な土地も豊富な予算も、好きにできるわ」

 

「……あはっ。外患誘致、的な?」

 

「何を言うかと思えば。呆れたよ。そんな野望が、上手く行くとでも思ってんの? 黙っててあげる、バカなこと考えんのやめな?」

 

「いいの? 時間と予算、もっと無くなるよ?」

 

「生徒会権限で予算を削ろうって? やってみな。そんな事をすれば、あんたを信じきってる議長に、あんたのそのアホな考えを教えてあげる」

 

「あははっ、違うよテンコ。そんなマヌケなこと、するつもりは無いよ。でもね、もっと時間と予算を削る方法、あるんだ。2人も気付かない方法でね。リンコ先輩なら気付けるかな?」

 

「…………組織、ね。ねぇ、今んとこその『組織』はどれくらいの規模なの?」

 

「ハドマ分は、まだ70人くらいだよ。半年後には、数百人は増える予定かな?」

 

(ハドマ分は? 他の学園にまで仲間が居るような言い方ね。まさか……そのまさかなの?)

 

「……」

 

 テンコもリンコもそれぞれ思考──そして彼女の言葉の意味を読み取り、結論を出した。

 

「────もしかして、最近起きてるドンパチってルーシィの『組織』の手によるものだったりする?」

 

「!」

 

「はぁ!? 姉さん、何を言って……」

 

「それだけ人数が居れば、ドンパチを演じて(・・・)私達の仕事を無駄に増やし、予算と時間を削って、私達や私達の組織(部)を疲弊させる事ができるかな〜、なんて思ったんだけど。流石に違うよね……」

 

「やっぱ、リンコ先輩って凄い。何で、これまでのやり取りだけでそこまで分かったの? 怖いよ?」

 

「クロン先輩やスズからたまたま聞いてたんだよ。最近ドンパチする連中は、何故か、やたら逃げ足が早いって。学園内でも、学園の外──自治区内でもそれは変わらない、って。でも──組織ぐるみだと仮定すれば、容易に逃げられるのも理解できるなと思ってさ☆」

 

「……まさか、マジなの? ルーシィ?」

 

「あははっ。ここまで読まれてちゃ誇張する意味も隠す意味も無いよね」

 

「……っ!」

 

「もしかしてだけどさ、逃走まで含めてルーシィが手引きしてるの? それなら、クロン先輩やスズを出し抜けるのも分かる気がするよ。2人の頭じゃ、ルーシィには絶対に敵わないからね。2人揃って、直情的というか……ねぇ?」

 

「そ。だから読み易いんだ。で、そうやって組織を動かし、生徒会やリンコ先輩達の仕事を増やした。どう? 現に今の技術開発部って、予算は去年より増えてるのに、増えたハズの予算、無いでしょ」

 

「うん、ルーシィの読み通りだよ。まんまと、ね。でもさ、ゲヘナを掌握して、どうするつもりなの? 一応、私達の故郷だし、その辺は聞いときたいな」

 

「言ったでしょ? 広大な土地を、豊富な予算を、手中に収める。学園併合という合法的手段を以て。誰にも文句を言わせない、完璧なカタチで……ね」

 

「そんな大それた事、できるとは思えないけどね」

 

「何よりも、それを私達がリエ議長に報告したら、どうなると思ってんの? 一瞬で御破算だけど?」

 

「報告? そんなのしないハズよ。だって2人共、自分で思ってる以上に──『豊富な予算と時間』に目が眩んでるんだもの♡」

 

「「ッ!!」」

 

「それに、考えてもみてよ。今起きてるドンパチが私の組織による出来レースだったら。そしてコレが技術開発部の予算と時間と力を削る為のものなら。2人が首を縦に振ったら──修理に次ぐ修理という山のような余計な仕事(・・・・・)、消えると思わない?」

 

「「あ……ッ!?」」

 

「そう。私の組織が、ゲヘナ併合という目的を達成しようがするまいが、2人が私の組織に来るだけで少なくとも仕事は減るし、予算を使う場面も減る。割と得しかないと思うけどな〜♪」

 

「「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ……!!!」」

 

「とりあえず、入ってくれたら入社祝い金みたいな感じで5000万円──ううん、1億円はあげるよ」

 

「1億ゥ!?」

 

「待って、それは流石に信じらんない。その1億、どこから来たお金なの? あんたの実家? 確か、あんたの実家ってトリニティにあるんだよね?」

 

「トリニティだよ。でも出処は違う。これは組織のお金。ライムがハドマ学園からチビチビと横領した事によってうまれた、私の組織の財産だよ」

 

「ライム先輩……ッ!? 会計だった、あの!?」

 

「ライムもルーシィの組織の一員だったの!?」

 

「一員どころか創設メンバーだよ。実はライムとは小学生の頃からの付き合いで……その繋がりでさ」

 

 2人は頭を悩ませた。自分が思っているよりも、ルーシィの組織はハドマ学園に深く根付いている。しかも、来年にまた更に人員が増えるのが確定済みという言い方をしていた──これはつまり、来年の新入生までも勧誘済み、という事なのだろう。

 

 ルーシィの組織に入れば出来レースのドンパチに伴う仕事が減り、予算も実質的に増え、研究や己の趣味などに費やせる自由な時間も増える。

 寧ろ「自由」が目的でハドマ学園に来たのに──今のまま、こうやって、仕事やお金の心配に無駄に追われていていいのだろうか? 

 そう思い至った2人が悩む事は、もう無かった。

 

「「入るよ、ルーシィの組織!」」

 

「良かった〜! じゃあ、ゲヘナ出身の2人には、今度新設するゲヘナ部隊の統括をお願い! 多分、顔見知りとかも居るんじゃないかな?」

 

「ゲヘナ部隊……?」

 

「他の学園にも仲間が居てね。他にはトリニティ、レッドウィンター。こっちはもう数百人単位で人員確保済み。トリニティなんて幼馴染が居るからね、楽勝だったよ。多分だけど、全部隊を合わせれば、今のハドマ学園の全校生徒の人数を上回ってるよ」

 

「「ッ!?」」

 

「だから──まぁ、なんていうかさ。良かったね、リンコ先輩、テンコ。私の組織に入って、さ♡」

 

 もし逆らったら、全ての部隊を率いてハドマ学園くらい数の利で潰せるから──そう言わんばかりのルーシィのわざとらしい笑顔に、2人はもう、笑うしかできなかった。

 

「何はともあれ……ようこそ、飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)へ!」

 

 こうしてルーシィは、ハドマ学園最強のリンコ、最硬のタンクであるテンコを飂熾冘巫髏に迎えて、特別待遇の2人にはゲヘナ部隊を任せる事にした。

 ルーシィはこのように、翌年のレイコ(真の最強)の入学までずっと、水面下で勢力を広げていった────。

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