「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
第18話:幹部集結
ルーシィが8人目の脱獄囚・賽鬼ユウナの助力によってヴァルキューレから逃れた少し後のこと。
見事に脱獄を果たしたルーシィから脱獄と集合の連絡を受けた面々は、マコトの捜索を打ち切って、ハドマ自治区の某所にある本部へと帰還していた。
「あの……ライム先輩」
「ん〜?どったのアスカちゃん」
「えっと、私、幹部待遇で
「あー、他の幹部はどこ?ってこと?」
「あ、はい……」
「心配せずとももうすぐ会えるわ。私達はあくまでハドマ部隊の第1、第2幹部でしかないし、第2のアスカちゃんはしっかり末席よ?」
「そ、そうなんですね………………え?ハドマ部隊?」
「あっ、そーか、アスカちゃんこっち来たばっかでそういうの分かんないか。まぁ、ザックリとだけど教えといてあげるわ」
曰く、飂熾冘巫髏とはハドマの生徒が
曰く、飂熾冘巫髏の構成員はハドマのみならず、トリニティ、レッドウィンター、ゲヘナなど周辺の自治区の生徒にも存在している。
曰く、更に下部組織には、レイコの舎弟や傘下のチンピラ組織なども存在している為、全体で数えるならば総勢2500人を超えている。
「他の自治区にも……!?」
「そっ!ルーシィがトリニティ出身なのは知ってるでしょう?だから、向こうにも幼い頃からの友達は居るワケよ。私と出会うより前の友達がさ。後は、ゲヘナとの対立を煽るカタチで誘えば、トリニティだったら秒で集まるってワケね♪」
「トリニティはそうだとしてもレッドウィンターもそんなに居るなんて……」
「レッドウィンターは100人居るか居ないかくらい。だから、そんなに多くはないわ」
「──そっか。スズとか統治委員会が追い掛けてもすぐ行方をくらましてるのは、頭が良いルーシィの作戦があってこそだと思ってたけど……」
「他の自治区にも仲間が居るから──ってワケね。統治委員の子はこれについて知らないんでしょう?それなら、普段の戦いで飂熾冘巫髏を捕まえられるハズないわ。こういう他の自治区の協力者の存在を知らないんだもの」
「……」
トリニティやゲヘナは、人数を集めるのも簡単な話だった。歴史的な背景を鑑みれば察せる通りだがこの2校に関しては両校の対立を煽ればそれで済む話だからだ。
レッドウィンターはその点、因縁なども無いので人数を集めるのに苦労している。だから、ただ単に闘争を求めるバーサーカー気質な者ばかりが多めに集まっている。
「現代の戦争は情報戦よぉ、アスカちゃん。情報をより多く集めた方が、戦いを有利に進められるの。ルーシィは元より、私やアガリちゃんが諜報活動をしてるから、ここまでのし上がれたのよ」
「っ!アガリもですか……?」
「そっ!あの子、探偵ごっこしてるでしょぉ?」
「ま、まぁ、小さい頃から、推理小説の探偵とか、怪盗に憧れてるっぽい所はありましたけど……」
「アハッ、怪盗!?探偵と逆じゃん!アガリちゃん可愛いな〜♪」
それから程なくして、飂熾冘巫髏の本部に客人が4人、同時に到着した。
トリニティからは2人、レッドウィンターからは1人、そしてゲヘナからは1人──計4人である。それぞれの支部を任されている代表者として幹部が1人、または2人、こうして本部にやってくる。
「やぁやぁ、みんな久しぶり〜!元気してた!?」
「ライム姐さん程じゃないけどね!」
「それなりには、元気ですよ。それなりにはね」
「相変わらず大きい……」
(胸デッカ……太ももふっと……)
「おやおやぁ?あなたは見ない顔だねぇ?新人?」
「っ!は、初めまして……」
「ゲヘナ部隊の子だよね?前の子は?」
「あ、そのー……前任者は私より弱いので、今は私の部下をやってもらってます」
「!……へぇ、あなたそんなに強いんだ?」
「ええ、少なくとも前任者よりは強いですよ」
「ふぅん、面白いわ。んじゃ、ルーシィがそろそろ来るからさぁ、幹部同士だけでとりあえず自己紹介やっておこっかぁ!部下同士の繋がりを上に見せるみたいなのも大事よぉ」
ルーシィが来てからでも遅くない。そんなのは、誰しも分かっていた。しかし組織は上下関係が大事なのもまた誰しもが分かっていた。第1幹部であるライムの提案だからこそ、誰も反対せずに、彼女の意見を受け入れた。
「ほらレイコ、自己紹介くらいまともにしなさい」
「んぁ?……ごめん寝てた」
「ったくこの子は……。えーっと、このちっこいのは
「強いぞ〜ぅ。ふぁ〜ぁ……ねむ……」
「んで1年にして飂熾冘巫髏の副総長。No.2よ」
「「「「ッッ!!」」」」
「新人の子以外は、私の事は知ってくれてるわね。私は
「姐さんとするエッチってぇ、オナニーの数百倍は気持ち良くイケるから好きー♡」
「え〜?数百倍程度なのぉ?♡」
「ううん、数億倍〜っ!」
「足りないけど今はそれでいいわ。──あっ、私がハドマの第1幹部ね。──さ、アスカちゃん♡」
「え、と……
「幹部待遇で勧誘された、超優秀な子だからね〜?皆、アスカちゃんには逆らっちゃダメよ☆──あとこの子がハドマの第2幹部ね。実質的なNo.4♡」
「えっ。ライム先輩!?」
「当たり前でしょぉ?飂熾冘巫髏はハドマが主体の組織なんだから、複数の隊で比べるんなら、序列はハドマが最上位よ」
「え、えぇ……全然末席じゃないですよね……」
「ハドマでは末席よ、ハ・ド・マ・で・は♡」
騙されたのかとアスカはライムに対して恨めしく思う。しかし逆に、幹部として高い地位だからこそ美食研究会を打倒するのに、組織の力が使えると、そう考える事もできた。
そもそも、アスカが飂熾冘巫髏に加入したのは、ルーシィの思想に共感したからではない。ましてやレイコに賛同したり、レイコのサポートをしたくて加入したのでもない。
ハナから、組織の力を自分の野望の為に利用する事だけを考えていたからだ。
「これで残りは4人ね!じゃあね〜、トリニティ、レッドウィンター、ゲヘナの順で行こっか!」
「トリニティ部隊第1幹部、
「トリニティ部隊第2幹部、
「レッドウィンター部隊、第1幹部、
「ゲヘナ部隊第1幹部、
「あら?クロノ、学校通えるようになったの!?」
「うんっ!ライム姐さんとエッチしてから、自分に自信持てるようになって……///」
「そーなのね、それは良かったわぁ♡ あんたってイジメられっ子だったから、今年もまた補習授業部なんだろうなぁって思ってたわ」
トリニティにおける「補習授業部」とは不定期に設置されるものである。
今年の補習授業部は、エデン条約締結にむけての別の意味があって設置されたもの。シャーレの力を利用してまで急遽設置されたモノなので、むしろ、今年の補習授業部の方が
前回──エデン条約締結関係無く設置されていた補習授業部に所属していたクロノこそ、
「今年の補習授業部には超ド級のおバカが入ったんだって、ウケるよね!私の場合は不登校だったからだけどさ、素で補習授業部はエグい!」
「補習授業部って、退学手前の滑り止めみたいな、そんな救済措置だったわよね?素でそこに入るのはヤバイわね、確かに」
「ね〜!退学寸前って事だしね!」
「まぁあなたもそうだったんだけどね」
「わっ、私の場合は不登校だったもん!」
「自主勉自主勉♪ あったりまえよねぇ♪」
「うぐぐぅ……!」
再三になるが、ライム自身は女遊びが激しすぎて生徒会の会計をクビになったが、それでも、会計を素で任される程度には優秀な生徒だ。当然テストも最上位クラスであり、一体いつ勉強しているのかも不明瞭だった。
「マトイちゃんはどぉ?相変わらず元気らしいけど何か近況報告みたいなの無い?」
「クロノさんと一緒に居ると、嫌でも時間がわかるので、最近になって私の体内時計の誤差が大体2分くらいになりました」
「えっぐ!クロノセラピーの効果抜群じゃない!」
「セラピストちゃうわー!」
「す、凄いですね……!レッドウィンターに居ると、いつでもお腹空くので……。体内時計とか全くアテにならないので……あはは……」
「……へぇー、クロノさんのヘイロー、スゴイのね。まさか、ヘイローが時計になっているだなんて……。しかも秒針まで……」
「少し前までこれでよく虐められてたんだよねー。マジでトリニティのクソカス共……」
クロノが毒づくと、ライムが肩を揉んで窘める。マトイも口をつぐんでしまい、殆どの生徒は空気が悪くなった事を肌で感じ取る。
そんな中、静寂を破るようにして、よりによってトリニティと対立している、ゲヘナの部隊を率いる生徒が口を開く。
「もしかして、だけどさ。ゲヘナの私が言うのも、申し訳ないんだけどさ。クロノさんが飂熾冘巫髏に入ったのって、ゲヘナとの確執じゃなくて……」
「トリニティをブッ壊す為よ!カス共のおかげで、私の青春はメチャクチャよ!小学生の頃からずっとヘイローイジメに遭ってて、お嬢様校ならイジメも無いだろうって嫌いな勉強も頑張ってトリニティに入ったのに!1年生からガッツリイジメられて補習授業部で潰れるし、2年に上がっても今更友達とかデキやしないッ!!トリニティごとブッ壊さないと気が済まないっつーのよッ!!」
地団駄を踏んで怒鳴り散らすクロノ、しかしその過去を知るマトイは過去を知るからこそ彼女の事を止められず、黙り込むしか無かった。
ライムは彼女と直接的な関わりこそ薄かったが、ルーシィを通して知り合って、彼女の状況を知って勧誘に至ったので、大いに同情の意を示していた。
「────そっか。トリニティにも私と同じような子……居たんだ」
「えっと、あなた……レティ、だっけ?あなたも何かゲヘナでイジメられてたりしたの?」
「うん……そんなとこ。私ね、何故か、夜にしか本気出せないんだ。勉強にしても運動にしても。勿論、戦いにしたって、夜じゃないとダメなの。なのに、誰も信じてくれないし……」
「夜ならデキるって見せ付けてやればいいじゃん、そいつらの目の前でさ」
「何回もやってるよ。でも、ダメなの。というか、逆にそんな姿を見せたせいで『本当は優秀なクセに普段は手を抜いてバカを演じて、私達の事をバカにしてるんだ』とか言いがかりつけてきたり……」
「うわ……」
「別に人格が変わるワケでもないのに、多重人格を疑われて、酷い時には精神病院に入れられたこともあったよ。すぐ逃げてきたけど」
「……あなたも苦労してきたのね」
「まぁ、それなりにね。だけど、クロノさんよりはマシだと思う。小中はこんな事、無かったもの」
「どっちも大変ってことでいいじゃん。──私は、ゲヘナに恨みは無いけど。私と同じようにレティが苦労してたんなら……復讐、手伝ってあげるよ」
「ありがとう。私もトリニティに恨みは無いけど、クロノさんと同じような理由で、クロノさんの復讐手伝わせてほしいな」
「クロノでいーよ!
「じ、じゃあ……クロノ?」
「うん!レティ!」
「──良かったですね、クロノさん。ゲヘナ学園のお友達ができて」
「マトイも特にゲヘナに恨みは無いでしょ?なら、仲良くしよ?」
「私は──クロノさんとルーシィさんが居るから、飂熾冘巫髏に身を置いているだけですから。それに私は、他所の生徒と馴れ合うつもりはありません」
「あんたさァ、もう少しでルーシィが到着すんのにまだそんな事言ってんの!?」
「……下手に馴れ合ったなら、思い入れとか、できてしまいそうですから……」
「できていいじゃないのよ!マトイのわからず屋!マフユもレティも、マトイは頑固だから気にしちゃダメよ!根は悪いヤツじゃないんだけどね!」
「あはは、相変わらずですねマトイさん。何にせよ宜しくお願いしますね、皆さん」
「できるだけ仲良くしようね、マトイさん」
他の幹部からもそう声を掛けられるが、マトイは相変わらず目を反らしてばかり。
ライムはそんな幹部のやり取りを目を細めて観察していて、アスカは幹部同士のやり取りに馴染めずマゴマゴとしていた。
そして、脱獄の共犯を伴って、総長のルーシィが遂に、本部に降臨した────!