※この作品はR-18です。

「先生!もっとあたしらに構って!」   作:アキラゼミ

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第16話:無慈悲な現実

 

 マコラがハドマ学園に放った火は、とてつもなく激しく燃え上がった。戦闘意欲が強めの生徒達は、その火に踊らされ、着火した本人が萎えている事も知らずに、七天魔上位・または七天魔入りを目指す生徒同士でトコトンやり合っていた。

 トーナメントがあるワケでもないので、リベンジマッチすらも有りのリーグ戦のようなものだった。

 しかしそれも、数日も続けば良い方で。

 ハドマ学園は元より多くの種族が入り乱れており種族同士の差も顕著な学園だった。放たれた火は、スズやルビーなど統治委員会による鎮火を待たず、激しく燃え上がりすぎた弊害か、逆に急速に鎮まり始めていた……。

 

「……生徒会は参加しない方針……って、本当にそれでいいんですか? 酷く荒れてるんですよ?」

 

「どう考えてもその方が安泰だよ。生徒会のヤツが起こした争いに、生徒会のヤツが加担するっての? それこそダメでしょうよ」

 

「加担ではなく、鎮圧です!」

 

「今回のこの騒動においては、それは同じ事だよ。マコラが起こしたこの騒動はただひたすら『勝てばそれでいい』ってんだから。大人しく新生七天魔が決まるまで静観してましょ」

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ……」

 

「カナンだっけ。アンタはまだまだ青い。ハドマは元からこんな荒れ具合だよ。リエ先輩達のお陰で、曲がりなりにも平和を演出できていただけ。圧倒的暴力による圧政でもあったワケだけどね」

 

「ですからっ! せっかくリエ先輩達が築き上げた平和が、こうして乱されてるワケじゃないですか! 統治委員会だってろくに機能してないみたいだし、こうなったらもう、生徒会が自ら、事態の沈静化に動きましょう!」

 

 人間族の副議長のカナンは、自分達で騒動を鎮圧しようと提案する。対して悪魔族の議長のテンコは静観しようとする。

 騒動が起きたら鎮圧する──そんな当たり前だと思える発想すら否定するの、とカナンは有り得ないモノを見る目でテンコを見る。

 

「カナンは感情的になり過ぎだね。もう少し物事の流れってのを見てから発言してみようか」

 

「はい……?」

 

「……ルーシィ、無駄に煽るのはやめなさいよ?」

 

「わぁってるわ。──いい? この騒動は生徒会の副議長のマコラが元凶。そして『勝てばいい』って風潮、というかそういう流れを根付かせているの。そんな中で生徒会が参戦して鎮圧したらどうなる? 私達……つまり生徒会が七天魔になるだけでしょ」

 

「? それの何がダメなんですか?」

 

「ちょっと待って本気? 七天魔は『生徒会と殆ど同等の権限を持つ』のよ? 私達がそうなったら、二重に権力を持つ事になる。それ権力の独占だよ? 何の為に旧生徒会から私達の新生徒会にしたんだか分からなくなるでしょーが?」

 

「じゃあ、鎮圧した上で、正式に『七天魔決定戦を行います』と告知すれば良くないですか?」

 

「──これだから1年は。本気で分かってないの? 私達がこの騒動を鎮圧して実質的に頂点に立って、その上で『私達を除く生徒達で七天魔決定戦を開催します』なんて、そんなの、他の生徒達への侮辱に等しいんですけど??」

 

「えっ……?」

 

「マジで分かってないんだ? 七天魔ってのはね、学年も成績も普段の素行も、何もかもが関係ない、完全な実力主義で決められてんの。生徒会が頂点に立った上で『生徒会以外の生徒で決めます』つったところで、生徒達からすれば『でも実質的な頂点は生徒会の生徒達だって分かってるんだよなぁ』って萎えて呆れられるだけでしょーが。そんなザマじゃ生徒もろくに集まらないよ」

 

「だったらもういっその事、七天魔制度そのものを無くせばいいのでは……」

 

「本気でバカなん? 荒くれ者が集まってる学園を束ねるにはね、何かしらのデカイ象徴が必要なの。七天魔は有事の際に前に出る責任も背負ってるし、学園の防衛とかをするんなら『実力者』を前もって集めとくのが合理的でしょうが。それが七天魔よ。生徒会とほぼ同等とかいう強い権力は、それだけの責任を負う事への褒美なんだ。だからこそ、こんな荒れまくった自治区を自治できてるの。分かる?」

 

「……でも、それを決める為に学園が荒れてちゃあ、元も子もないですよね?」

 

「だから前にも言ったでしょ。この荒れ(・・)はあくまで一過性のものに過ぎない。もうじき治まるものよ」

 

「だからって……わざと争いを放置するって……」

 

「短期的に物事を見過ぎ。長期的に見据えなさい。そんな事言ってんの生徒会の中でアンタだけだよ、カナン?」

 

 そう言われて、カナンは周囲を見渡す。天使族の議長──アンナは、無言でカナンから目を逸らす。マコラは謹慎中で不在。テンコは、言わずもがな。ならばと、同じ人間族のナルミを見るが。

 

「な……ナルミ先輩は、どう、思いますか……?」

 

「私も、ルーシィちゃんに同意かな。というより、もう治まり始めてるのに今更参戦したところでね。漁夫の利だって、逆に騒がれそうだよ……」

 

「そんな、事は……」

 

「私達からは『そんな事ない』ように見えてもね、他の生徒からはどう見えるか、って話なんだよね。生徒会はそういう立場なんだ。周りからどう見られどう立ち回るか。それを、考えなくっちゃね……」

 

「っ……」

 

 唯一の人間族の先輩からもそう言われてしまい、カナンは俯き、黙り込んでしまった。

 カナンは部長や副部長、委員長や副委員長など、職務として人の上に立ったことがない人間である。そういった経験をする事も無く、生徒会の副会長の1人としてこの場に居る。それがこの場に居る他の生徒達との判断力の差にも繋がってしまっているのかもしれない。

 しかし、選挙とはそういうもの。良くも悪くも、平等に与えられた結果が反映されるものなのだ。

 

「……分かりました」

 

「そ。分かってくれたなら、いいんだけど」

 

「生徒会として騒動を鎮圧するのは、諦めます」

 

「……ん?」

 

 椅子に掛けている銃を手に取り、冷たい炎を瞳に宿して、カナンは立ち上がる。

 

「ここから先は、ただの統治委員会の部員として。スズ先輩に加勢してきます」

 

「なっ……カナンちゃん!」

 

「そういや統治委員会だったね。好きにすれば?」

 

「ま……何事も挑戦だよね」

 

「ルーシィちゃん、テンコちゃん!?」

 

「ありがとうございます。では、いってきます」

 

「えっ、ちょっ!? 止めないの!?」

 

「止めないよ。生徒会の立場を利用しないのなら、それはもうカナン個人の問題だしさ?」

 

「逆に、カナンの『統治委員会としての活動』を、生徒会権限で止める方が横暴でしょ」

 

「いやまぁそうだけど、理屈ではそうだけどさっ! ね、ねぇ、アンナちゃんからも何か言ってぇ!」

 

「……………………」

 

「あ、アンナちゃん……?」

 

 気の弱いアンナは胃を痛めすぎて気絶していた。新体制の生徒会──あまりにも、前途多難である。




今年1年、読んで頂きありがとうございました。
皆様、良いお年を。

ストック用意中です。
しばらくお待ちを。
なう(2026/01/09 21:08:22)
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