「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
「……?」
場の空気が凍りついた。特に鈍感ではない私は、自分が何か、この子達にとってマズイ事を言ったと直感的に理解した。
とはいえ──だ。そもそもハドマ学園併合問題の発端となったのは、教員ロボの喪失を始めとする、
「学校機能の喪失」が原因だ。
つまり、如何に地雷発言であろうと、この問題を乗り越えていく上で、避けては通れない道だった。
「それ、は────」
「…………ふふッ」
「ちょっと、スズ先輩っ……」
「ま、言えないよねリエは。自校の恥だもんねぇ。あんな奴らを野放しにしてさ。生徒会長──議長の面目、丸潰れだもの」
「私達の恥でもある気がするんですが……」
「ヤツらすばしっこいのよ、本当にさぁ。マジヤダ絶対潰したい」
「……それは、そうですけど」
リエ以外の大半のメンバーも俯き、黙り込む中、スズとルビーという統治委員会の2人だけが、他の生徒に比べて平然としていた。
どうやって聞き出そうかと考えている内に、私が疑問符を浮かべているのに気付いたスズは、派手に机に肘をついたまま、相変わらずのニヤケ顔で解説してくれた。
「ハドマ学園に、居るんだよね。ヤベーヤツがさ」
「……ヤベーヤツ、とは?」
「まぁ、一種のテロ組織みたいなモンかな。学校を潰そうと目論んでるヤツ。素性もよく分かんない、だけどソイツらは正体を隠してのうのうとハドマの学園に通ってんのよ」
「学校を潰すのが目的のテロ組織────」
参ったな。気に入らない店を爆破する程度で済む美食研究会が可愛く見えてきてしまった。
そんなの、ホンモノのテロ組織じゃないか。もしそんなのが紛れているともなれば、問題が起きてる程度では済まないだろうに……。
「ソイツら『
「そんな可愛いモンでもありませんけどね。実際、ヤツらはゲヘナ学園の
「統治委員会にとってもだけど、私達、連邦生徒会対策委員会にとっても敵なんだよね。連邦生徒会がゲヘナと併合に向けて動いてるって分かってから、丁度いいと言わんばかりに更に過激化してるしね」
その「飂熾冘巫髏」という組織は、連邦生徒会がハドマ学園とゲヘナ学園を併合しようとする
そして、遂に教員ロボを破壊するなど学校機能を喪失させるに至り、とうとう連邦生徒会がハドマに目を付け、ゲヘナとの併合に向けて動き出し……。
しかし、連邦生徒会は他に大きな問題がある為、ハドマ学園併合問題は凍結し────連邦生徒会の作った「併合」の流れに乗れないと判断したらしい飂熾冘巫髏は、連邦生徒会すらスルーし、併合先のゲヘナにその手を伸ばし始めている──というのがハドマ学園の生徒会が現時点で掴んでいる情報だ。
「────実際、問題はかなり深刻です。彼女らが教員ロボを破壊し、学校機能を停止させた事により連邦生徒会に目をつけられたのが事の発端ですし。以前から、ちょっかいを掛けられる程度のことならありましたけれど……最近はどうも……」
「
「明らかにしてますね。というか
「連中、何か焦ってるような様子があんのよねー。ゲヘナ学園との併合を急ぐ理由でもあんのかしら」
ゲヘナ学園との併合により得られるメリット──広い領土に、多量の人員などが挙げられるだろう。ゲヘナの自治区もかなり広大だ。三大校の1つだ、決して伊達ではない。
併合ともなれば、ハドマのみならず、両校の問題だと思うので……。
「ハドマの生徒会からゲヘナの生徒会に問い合わせしてみるのはダメかな?」
「私としては、それは、避けたいと考えています。ゲヘナ学園の生徒会──やはり万魔殿でしょうが、実はハドマ生徒会『
「!!」
「先生は、ゲヘナ学園内で起きていた抗争についてご存知ですか?」
「……うん」
知っている。だって私は、当時を過ごした生徒を知っている*1から。
数年前────ゲヘナ学園内では生徒同士による激しい抗争が起きていた。
あまりに過剰な攻撃の応酬は、死者すら出したと言われている。そしてその抗争は生徒の青春を奪い復讐鬼に変えてしまった忌まわしいものでもある。
「ご存知ならばお話は早いですわ。本校生徒会は、ゲヘナ学園での抗争に敗北した『失楽殿』の生徒の後輩がこちらで新たに立ち上げた生徒会なのです」
「────じゃあ、まさか。ハドマ学園の生徒会が失楽
「……ええ、恐らく失楽殿の先輩をリスペクトして、そして、
「そっか……」
「その後、元の生徒会より力もあるということで、実質的に成り代わったのだとか。しかしそんな事は万魔殿に負けて逃げてきたからできた事で……」
そんな成り立ちなら、万魔殿に手を出そうなどとできないのは当たり前だった。ハドマ学園生徒会、失楽園の成り立ちからしてそもそも万魔殿に負けて追いやられたようなもの。
それならば、尚更、ゲヘナ学園に接触を図るなどという行動には出られないだろう。
ハナから、両者は対等な立場ではないのだから。
「──飂熾冘巫髏の子達は、ハドマ学園を潰して、またはゲヘナ学園と併合させて、その先に一体何を見てるんだろう……」
「
「学校を1つ潰すなんてのは、到底、ノリと勢いでできる事じゃない。きっと何か、計画的に動いてるハズ。でもその『計画』は、ハドマ学園を潰すのが最終目的なのかな────って、ふと思ってさ」
「それ以外に目的があるようには思えませんが……」
リエをはじめ、うーん、と頭を悩ませる生徒達。しかし、ぶっきらぼうな口調で、スズがそんな重い沈黙を破った。
「いやいや……流石にそれは無いっしょ。リエ、それマジで言ってんの?」
「はい?」
「考えてもみなよ。ハドマ学園を潰したいんなら、学校のあちこちに爆弾でも仕掛けてドカーン!って爆破すりゃそれで済む話でしょうがよ。わざわざ、教員ロボ補給の道中を襲撃してきた事もあったし、建物だって1フロア毎しか破壊しない時点で学校を潰す以外に目的があんのは明白でしょ?」
「そう、でしょうか……?」
「学校を壊しても再建すりゃ済む話。教員ロボとか破壊されても、補給すりゃそれで済むわ。だけど、ヤツらはそれらの選択肢を徹底的に、しかも的確に潰しに来てるワケ。廃校じゃなく『併合』するのに意味があるような……そんなやり方よ」
「……言われてみればそーかも?さっすが、ヤツらと最前線で
「あんたは書類仕事ばっかやってっから頭の回転も鈍っちゃったのよ。ねぇ、シエル
「生意気ね……クソ後輩」
バチバチ睨み合うシエルとスズ。しかしルビーがグッと拳を握ると、両者はヒュッと息を飲み身体を縮ませて黙り込んでしまった。
そんな様子を見て苦笑いするアンナ、相変わらずのほほんとクッキーを頬張っているアスカ……。
「とっ、とにかく!ゲヘナと接触するわよ!ヤツらよりも早くゲヘナ、いや万魔殿と接触して、もしも飂熾冘巫髏の連中が接触してきても無視するように言っておかないと!」
「……大丈夫でしょうか?飂熾冘巫髏、既に向こうと接触済みって……。も、もしかしたら、飂熾冘巫髏の強化に、ゲヘナが関わっているんじゃ……?」
「既に接触してるって、そんなの、今んとこただの噂でしかないでしょ?というか、生徒会ともあろうものが、ただのテロ組織と取引すると思う!?」
「……そ、そうですよねっ……!飂熾冘巫髏なんて、ただのテロ組織ですもんね……」
「ええ、アンナさんの言う通りです。飂熾冘巫髏はただのテロ組織です。我々の先輩を下した万魔殿がただのテロ組織と懇意にするハズがありませんわ。ですが、今は、我々はその『ただのテロ組織』からここまで追い詰められているのもまた事実……」
「チッ、言いにくい事を言ってくれるじゃん」
「……事実ですから、仕方ありません」
「──ですから先生。どうか、お願いです。我々の代わりと言っては失礼ですが──万魔殿に、探りを入れて頂く事は……可能でしょうか?」
エデン条約事件に比べれば、これくらいの政治的問題、まだマシだと言えるだろう。問題は、両校の立場に圧倒的な差がある事。そこは「シャーレ」の立場を少しプラスしてやれば補えるハズだ。
◆
「────ねぇ?あんた、私に嘘ついてなぁい?」
「んん……?何の事だ?」
「併合に成功したら、ホントにゲヘナ最強のヤツと戦わせてくれんの?ってハナシだよ。忘れた、とは言わせないからね?」
「キキキ……!あぁ、その話か。勿論覚えているぞ。だからこそ我々も武器や弾薬を貴様ら
「フンッ。……風紀委員長、空崎ヒナ……ねェ」
「どうだ?潰せそうか?」
「愚問ね。────
「キキキッ!まぁいいさ、イマイチ頼りにならない外見だが、私は『見た目で判断してはならない』と既に学習しているんだ。現に、空崎ヒナは、あんな小学生みたいなナリでもゲヘナでは最強だからな。だからこそ、お前も
「ま、少なくともハドマ最強は私かな。七天魔とか雑魚の寄せ集め、烏合の衆よ。──議長さんさぁ、
『三本の矢』って逸話、知ってる?」
「唐突だな。『三本の矢』……確か……矢の話か?」
「そっ。1本の矢は簡単に折れるのよ。それでね、3本束ねると────」
「折れないって事か!」
「ブッブー、違う違う大ハズレ!」
「あれ……?」
「『3本束ねても簡単に折れる』が正解♡」
「んん……?そんな逸話だったか……?」
「そうだよ?だって『三本の矢』ってのは『雑魚は幾ら集まっても雑魚でしかないんだよね』っていう教訓を分かりやすくしたエピソードなんだしっ♪」
「………………」
「ま、楽しみにしてな。私ら
「あァ、楽しみにしているぞ。ハドマとの統一後、お前らが、風紀委員会をブッ潰してくれるのをな。統一した後でないと、外交問題に発展するのでね。両校を統一しないと、お話にすらならないんだ」
「あはははは!!あんたってヤバイ奴ねっ!」
「キキキキ……自ら故郷を差し出す売国奴め……!」
「売国奴?結構よ、私はただ強い奴と戦う為だけに動いてるんだから…………!!」
「お前のようなバーサーカー気質なヤツならヒナを消せるだろう!まぁ、いざ戦力が拮抗する可能性が出てきても、安心するがいいさ。既に、ある程度は手を回してあるからなァ。風紀委員会ナンバー2、ナンバー3の2人を一気に都市部に派遣している!シャーレのご近所さ、ゲヘナからはかなり遠いぞ!キキキッ……!」
「ふぅん?ナンバー2、ね。そいつ、強いの?」
「腕は立つ。まず確実にな。それでも、風紀委員長空崎ヒナよりかは弱い、とだけ言っておこうか」
「ふぅん?余計な事してくれやがって──と思ってキレそうだったけど……」
「えっ」
「空崎ヒナの方が強いってんならそれでいいかな。楽な方が、議長さんとの契約も遂行しやすいしね」
「……ホッ……」
(まっ──
次回────学園崩壊
ゲヘナ学園で起きた抗争などなどについて。
第2部「ハーレムルートを目指しましょう、先生」
第15話「Welcome Teacher ─心の無痛症─」
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