※この作品はR-18です。

「先生!もっとあたしらに構って!」   作:アキラゼミ

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第21話:作戦会議

 

「忙しい所ありがとう、ナギサ──セイア、ミカ。急になってしまって本当に申し訳ないと思ってる。この埋め合わせは、近い内に必ず……」

 

「先生の為です。時間くらい、いつでも空けます。私だって、先生の彼女……なのですから」

 

「そうだとも。水臭い事を言うな。私だって先生の婚約者なのだからね。先生はいつも私達の為だけに時間を空けてくれる、ならば私達だって先生の為に時間を空けるというものさ」

 

「そうそう!それでこそ恋人関係だもんね☆」

 

「……ありがとう、みんな」

 

 曲がりなりにもハドマの生徒達が一致団結できた今、懸念するべきは、飂熾冘巫髏の侵攻対象であるトリニティ、ゲヘナ、レッドウィンターの3校だ。

 レイコとアスカによるとルーシィはトリニティを優先して潰そうと目論んでいるようなので、私も、真っ先にトリニティに連絡にやってきた。

 トリニティが標的である意味助かったと言える。生徒会のティーパーティーは、3人揃って私の彼女または婚約者。普通の生徒より時間を作りやすく、その上で、荒唐無稽な話でも理解してもらいやすい柔軟さを持っているから。

 

「──それで、先生の言っていた『大問題』とは、一体どういうものなのかな?」

 

「うん、早速本題に入ろう──と言いたいんだけどまずは背景から説明させてくれるかな?」

 

「「「?」」」

 

「だいぶ、込み入った話なんだ。結論から言ってもきっと『何言ってんだコイツ』みたいになるんだ、まず間違いなく。私でさえそう思っちゃうくらい、滅茶苦茶な結論になる。だから、長話になるけど、概要というか──大まかな流れの方から説明させてほしいんだけど……大丈夫……かな?」

 

「ええ、まぁ、私は構いませんが……」

 

「そーだね、先生がそこまで言うってメチャクチャ珍しいもんね?」

 

「ふむ。先生がそれ程までに念を押すのであれば、そうした方が良さそうだ。是非、最初から最後までゆっくり話を聞かせてもらおう」

 

「ありがとう。──じゃあ、ハドマ学園崩壊事件、ハドマ学園併合について、どれぐらい知ってるかをまず教えてくれるかな?知ってる事を改めてここで言っても、話が進まないだけだからね」

 

「ハドマ学園ですか。自治区が隣接しているという事もありますから、普段の事件より積極的に情報を仕入れるよう心掛けております。ですので、一般に報道され、出回っているような情報であれば、殆ど全て頭に入っているかと思います」

 

「私もナギサに同じだね。副会長による独断の調印強行及び学園の併合、お隣のハドマ学園でなくとも興味が湧くというものさ。これでも生徒会だから、特にね」

 

「…………」

 

「……ミカ?」

 

「えっ!?あ、うん!ハドマ学園ね!うーん……」

 

 頑張ってハドマ学園に纏わる情報を引き出そうと頭を悩ませるミカ、しかしそれだけで知りもしない情報が出せるハズも無く、彼女の両翼がシナシナになってしまった。

 

「──ハドマ学園では内部抗争が起きていたんだ。ハドマ学園とゲヘナ学園の併合を目論むテロ組織と生徒会やそれらに付随する組織との、ね。そして、あの学園崩壊事件はその組織によって起こされた。直後の、学園併合の調印式も、組織のボスによって行われてしまったんだ。飂熾冘巫髏って名前の組織なんだけどね」

 

「一旦ちょっと待ってくれ、先生。それだと、私の知っている情報と照らし合わせると、調印したのは生徒会副会長でありテロ組織のボス──という事になるのだけど、これはどうなるんだ?」

 

「テロ組織のボスが、生徒会に潜入していたんだ。だから一見矛盾しているように見える『テロ組織のボスが調印した』と『生徒会副会長が調印した』の2つの情報は、ものの見事に、イコールで結ばれてしまっているんだ」

 

「「……!!」」

 

「なんて事だ。副会長と言えば学園のナンバー2、テロ組織の長だなんて誰が思うだろう?ましてや、テロ組織と敵対していた生徒会を裏切っていたとは思わないだろうに。上手く漬け込んだものだな」

 

「………………」

 

「あ。……すまない、ミカに言ったワケではない」

 

「う、うん、知ってる知ってる……あはは……」

 

 ナギサとセイアは、ニュースのお陰でルーシィの名前やハドマ学園における役職までは知っていた。ただし、学園併合の犯人のルーシィは、現在は一旦逮捕された上で次の日に脱獄した──という事実は知らなさそうだった。

 ルーシィの逮捕と脱獄は、未だ報道されていない情報。寧ろ、私のような関係者以外にも知っている者がいたら、そいつは怪しいという事にもなる。

 

「いよいよ本題に入ろうか。そのルーシィだけど、ルーシィの目的は、殆ど果たしてしまったんだよ。じゃあ組織を解散するのかな──って一部の幹部は考えたそうだけど、なんとルーシィは、幹部達に、

『やりたい事』を聞いたそうなんだ」

 

「やりたい事?」

 

「テロ組織に属しているんだ、そんな子が望む事がどんな事なのか、おおよそでも想像はつくと思う。恨みを晴らそうとか、そんな事だね。今その組織はトリニティ、ゲヘナ、更にレッドウィンターという3校を相手にして戦争を起こそうとしているんだ」

 

「ゲヘナにレッドウィンターまで……!」

 

「つまり、何だ?そのルシフェル?とやらの幹部がトリニティに恨みを抱いているから、戦争を始めるつもりだ、と?──確かに、こんな結論を真っ先に聞かされては『何を言っているんだ』と思いたくもなってしまうよ。ここに至るまでの長い前置きにもきちんと意味はあったワケだ」

 

「まぁ、アリウスを初め、他にも恨まれる事柄にはある程度の心当たりはありますけれど……」

 

 総合学園と成立する時に色々ゴタゴタがあったのだろう。今はそれが主題ではないので特に深堀りはしないでおくし、なんならレイコ達の話を聞くに、そういう意味の恨みではなく単に私怨のようだが。

 

「飂熾冘巫髏はハドマの内部組織、ではあるんだ。でも実は、主体がハドマ学園の生徒というだけで、組織の構成員だけで言うのなら──他の自治区にも数多く存在しているんだ」

 

「────!まさかトリニティにも……!?」

 

「判明しているだけでトリニティには2人の幹部が在籍してるそうだよ。単なる構成員は数百人単位」

 

「……ッ!!」

 

「そうなると些かマズイ事になったな。内部情報も漏れている可能性が無きにしも非ずだ」

 

「こんな目に遭うのは私だけで十分だよ。その子の事も、止めなくちゃ……」

 

 迫害され、今も尚、満足に学生らしい学生生活が送れないミカは、その生徒には私のようにはなってほしくないと言葉を漏らす。相変わらず優しい。

 ミカは、ゲヘナ以外に関して言うのなら、普通に優しい子なんだ。ゲヘナさえ絡まなければ……。

 

「その幹部2人のうち1人については、少し多めに情報を得てる。ナギサ、悪いけれど……」

 

「拘束とまではいかずとも、監視くらいであれば、その生徒につけられるでしょう」

 

「……ありがとう。それでいこう」

 

 それから具体的にどうやって監視をつけるか等を話し合った。街中の監視カメラとドローンの併用、更にはティーパーティー傘下の組織の生徒に任せるという結論に至った。

 

「──で、その1人についてなんだけれど。去年は補習授業部、今年は帰宅部もしくは自警団に所属、名前は『時計クロノ』。残念ながら、写真はゲットできなかった。もう1人は帰宅部らしいけど」

 

「補習授業部……ですか?」

 

「そう、去年のね。だからそこからその子に関するデータを探せると思う」

 

「────であれば、そこまで躍起になって該当のデータを探す必要は無さそうですね」

 

「えっ?」

 

「去年、補習授業部に所属していたのですよね?」

 

「うん、そうらしい」

 

「でしたら既に、ある程度のデータはあります」

 

「!?」

 

「以前にもお話しましたが、補習授業部とは、常設ではなく特設の部活です。それも退学寸前になった生徒の救済の為の組織。退学寸前の生徒となれば、私達生徒会の者であるならば、最低限の情報は頭に入れておく必要があります」

 

 そういえばそうだったか。エデン条約事件の前に設置したヒフミ、アズサ、ハナコ、コハルの4人の補習授業部は裏切り者を炙り出す為のものであり、しかもシャーレの力を利用して急遽設立したもの。

 言わば「補習授業部の名前こそ使ってはいるが、いつも通りの補習授業部ではない」ようなものだ。

 名目もその内情も、普段の補習授業部とは違う。だから補習授業部に所属していた過去があるなら、通例通りの補習授業部のデータを探せばいい。

 ────にも関わらず、そのデータは、ナギサの頭に入っている──と。流石はティーパーティーのホスト、凄まじい。

 

「特にここ2、3年程度のデータでしたら、身近に保管しているはずです。恐らくですが補習授業部の記録を遡るよりかは、生徒会としての記録の方が、より詳細にその生徒について記録が成されていると思われます」

 

「そっか……じゃあそれでお願いできる?」

 

「お任せ下さい。──にしても、自警団、ですか。こちらについては、やはり、正確な人数などは特定できかねますね。あくまでも『自警団』ですから。ましてや帰宅部など、多すぎて……」

 

「うん。それについては、覚悟してるよ。だから、もう1人の幹部でクロノの友人の、桜庭マトイって生徒については──クロノを補足してから、地道に追っていくしかないね」

 

「クロノを捉えたが最後、彼女を基準にして残りも芋蔓式に補足し、トリニティに潜伏している組織の構成員の全貌を把握してしまおう、というワケだ。中々、一筋縄ではいかないね」

 

「そういうこった。いやー、骨が折れるねぇ……」

 

「ナギサの双肩に懸かっているよ。私も手伝うから頑張ろう」

 

「私も手伝うよー☆」

 

「…………ありがとうございます、皆さん」

 

 ◆

 

「どりゃあっ!!」

 

「「「ぎゃあああああっ!?」」」

 

「ナイスッ!……これで、トドメぇっ!!」

 

「「ぐあああーーーっ!!」」

 

 トリニティ自治区内の某所では──自警団の少女2人とチンピラ集団が銃撃戦を繰り広げていた。

 圧倒的な人数差、けれども2人はその人数差などものともせず、チンピラ集団を撃退してしまった。絵に描いたような捨て台詞を残し、チンピラは場を去っていく。

 

「ふぅ、やったわね!」

 

「はいっ!!!お疲れ様でしたっ!!!」

 

「そっちこそお疲れ。えっと、ごめん、なにちゃんだっけ……?」

 

「まだ名乗ってませんでしたね!!!そう私こそは自警団のスーパースター!宇沢レイサ!!です!!よろしくお願いします!!!」

 

「レイサちゃん、覚えた覚えた。──えっと、私は時計クロノ。自警団同士、よろしくね」

 

「はい!!こちらこそよろしくお願いします!!」

 

 クロノは、やたらハイテンションな子だなぁ、と思いながらレイサと握手を交わす。自警団同士だが自警団の全員が全員、お互いの人相を把握しているワケではない。

 ましてやクロノのように、他者によって虐められ孤立した過去があれば、尚更であった。

 今回はたまたま、クロノが苦戦していたところにレイサが割って入ったからというだけで、これは、クロノにとっては全くの誤算で、偶然であった。

 

「あんたタンクっぽいのによく攻めるねー……」

 

「はわっ!?分かりますか!?私タンクなんです!でも攻めるんです!!」

 

「タンクって仲間を守るイメージしかなかったわ。でもまぁ、そういうのも面白いよね」

 

「ですね!!」

 

「──ね、レイサ。あんた時間ある?」

 

「はい!!時間なら幾らでも!!」

 

「そ、良かった。じゃ甘い物でも食べに行こうよ、助けてくれたお礼に奢るよ?」

 

「え、ええっ!?いいんですか!?やったぁ!」

 

 戦闘後、助太刀の礼としてクレープなど屋台でも食べられるような甘味を奢る。ハムハムと、リスのようにぷっくりと頬を膨らませてクレープを食べるレイサを見て、クロノはやんわりと目を細める。

 

「……なんでレイサみたいなのが自警団やってんの?私みたいな鬱憤晴らし……には見えないけど」

 

「悪事は見過ごせませんからね!」

 

「あー、正義感(そういうヤツ)ね……成程ね」

 

「クロノさんはどうして自警団やってらっしゃるんです?鬱憤晴らし?との事ですが!」

 

「まぁね。鬱憤晴らしというか好き勝手にボコせる八つ当たりの的を探してるというか、そんな感じ。でもさ、正義実現委員会だと、しっかり委員として活動しなきゃダメだからさ。なんかダルいんだよ。それなら自警団の方が気が楽じゃん?」

 

「あはは……ま、まぁ、分かります!」

 

 嘘だとクロノは勘づく。レイサのような正義感が強い者は、寧ろ、八つ当たりのような理由で他者に暴力を振るう事を嫌悪するハズだ。

 レイサの「分かる」というあの言葉は、あくまで表面上だけの相槌だと、クロノには分かっていた。そして次に、レイサが紡ぐであろう言葉も。

 

「でも────」

 

 ほら来た、と呆れるような目をレイサに向ける。レイサのような──この手(・・・)の者が言う言葉は相場が決まっているのだ。

 やれ「最低な理由だ」だの、やれ「お前なんかが自警団を名乗るな」だの……。

 イジメられっ子を脱却した今の彼女には、ハドマ自治区が由来の飂熾冘巫髏という後ろ盾があった。だからこそ、今は、良くも悪くも、常に本音で話すようにしている。いつか真に腹を割って話せる友に巡り会えることを信じて。

 本音で話すからこそのバッシング、そんなものはもう呆れるくらいに聞いてきた。だからクロノは、

「コイツもそのパターンか」と、一気にレイサへの興味を失った。

 

「私が言うのもアレですが!──愚痴とかあるなら聞きますよ!!」

 

「…………え?」

 

「鬱憤を晴らす為とはいえ、クロノさんが手を出す相手は悪人だけでしたからね!まぁ理由はあんまり褒められたものではないと思いますけど!ですが、もし嫌な事があったり愚痴を言いたい時があれば!暴れる前に、遠慮なく!私を頼ってください!!」

 

「…………」

 

「────あうっ!?も、もしかして私、また何か変な事を言ってしまいましたか……!?」

 

「……ううん。ありがと、レイサ。あんた、やっぱり良い奴ね」

 

「えっ!?……えへへ、ありがとーございます!」

 

 自分が褒められた理由も、よく分かっていない。それでも褒められた気がするというレイサの感覚は間違ってはいないし、クロノもまた、上記の言葉を皮肉で言っているつもりも無く、これも紛れもなく彼女の本心であった。

 

「それで……クロノさんはどうして八つ当たりなんてしてるんです?」

 

「あ、もう聞いちゃうカンジ?」

 

「気になるので!それに、自警団の仲間の事ですしもし話せるのであれば知っておきたいなぁって!」

 

(……仲間、ね)

 

 本当は、トリニティを潰そうとしてるテロ組織の幹部なんだけどね────と、ついポロッと言ってしまいそうになる。

 レイサがあまりにも目を輝かせるので、話す気も無かった自分の事を、適当に、概要だけ掻い摘んで話すことにした。

 

「私、さ。小学生の頃から去年まで、ずーーーっとイジめられてたんだよね」

 

「!」

 

「積もりに積もったこんな鬱憤を晴らすのにはさ、やっぱ、暴力しかないじゃん。でもそうするにも、理由無く他人を襲うのは──気が引けてさ。だから悪い事をしてる奴なら、気兼ねなくブッ飛ばせる。要は、良心の呵責?に苛まれないよーにする為に、わざと不良やチンピラを狙って、その上で自警団を名乗ってるってワケ」

 

「そーだったんですね……。ちなみに、原因とかって聞いても……?」

 

「あんた、なんかスゴイ踏み込んでくるね……アガリ(知り合い)思い出すわ」

 

「あ゙っ!ごめんなさい!!悪気は無くて!!」

 

「あったら困るわよ」

 

「あうっ」

 

「────見て、私のヘイロー」

 

「ッ……!?ヘイローが動いて……え゙っ!?」

 

 声を上げるのも仕方なかった。レイサにしては、寧ろ声を抑えた方だと言える。

 クロノのヘイローは、時計だった。短針と長針で時間を表示している上に秒針までが備わっている、所謂、アナログ時計だった。文字盤は無いものの、代わりに12分割された目盛りがあり、それを見れば現在の時刻が分かる──というものだった。

 

「うわぁ!スゴイ!スゴイですよクロノさんっ!!ヘイローが時計になってるんですね!珍しいですしカッコイイですよ!!」

 

「──ってさ。そんな反応を貰えたのは幼稚園までだった。でも、小学校に上がってからは『動くとか変だ』とか『気持ち悪い』とか……」

 

「っ!!『ヘイローイジメ』ですか……!」

 

「流石に知ってるよね」

 

「まぁ、はい。私もそれを聞いた事はありますし、その現場を見た事も……ありますから」

 

「そっか。……ヘイローと言えばやっぱアレだよね」

 

「アレですね!!」

 

「「『キヴォトスで名を挙げる人物は大なり小なり異端なヘイローをしているものだ』!!」」

 

 2人の声は不意に重なった。それが可笑しくて、ケラケラと涙が出るまで笑い合う。

 キヴォトスには、有名な都市伝説のようなものがあった。それがこの「名を挙げる人物のヘイローは異端な形状をしている」というもの。多少表記揺れだったり言葉に違いはあれど、大体同じ意味の事が都市伝説的に囁かれている。

 大多数の生徒のヘイローは、色に違いはあれど、ただの輪っかの形をしている。しかし稀に、輪とは呼べないような────図形だったり、幾何学模様だったり、何かを簡易的に表したようなヘイローの生徒が現れる。

 そして、精神の成長と共に(・・・・・・・・)変化する者も(・・・・・・)────。

 そういった生徒達は、良くも悪くも──そして、どういった形であれ、キヴォトスで名を挙げると、有名になるとされている。

 ヘイローは、その者の神秘、精神などの具現化。異端なヘイローというのは、異端な精神性を表す。所謂「天才」や「超人」と称される者達は得てして

「普通」とは違っているものである。

 キヴォトスの民においては、それが、ヘイローに分かりやすく出ているのだった。

 ────しかし「普通とは違う」とは「少数派」という事であり、イジメや排斥にも多かれ少なかれ繋がりやすい事でもあるのだった。

 

「私のような単なる図形や模様みたいなヘイローはそれなりに見かけますけど──クロノさんみたいな動くヘイローは、レア中のレアですよねぇ……」

 

「ね。有名どころだと、正義実現委員会の委員長、剣先ツルギだよね」

 

「あの人は有名ですね!見た目はシンプルながら、液体のようなものが垂れ落ちてくるという……」

 

「アレも『動くヘイロー』だよね」

 

「間違いなくそうですね!……成程、そうでしたか。クロノさんは『ヘイローイジメ』に……」

 

「鬱憤も溜まるってもんでしょう?」

 

「まぁ正直……理解はできます……」

 

「そりゃー良かった良かった」

 

「でも……他の人に八つ当たりは、ダメですからね!お話だったら私が聞きますから!!」

 

「でもねー。やっぱね、人々の目が私のヘイローに向く度にさ、思い出しちゃうワケ。あの時の事を。お嬢様学校として有名なトリニティなら──って、嫌いな勉強を頑張って入学したのに。トリニティが一番、いっっっっっちばん、酷かった!小中の頃のイジメすら笑ってスルーできるくらいね……!!」

 

「そ、そんなにですか!?」

 

「ええ!陰湿だし気持ち悪いイジメ方よ!『時間が分からないから前を向くな』なんて言ってくる事がザラにあるし『何故アナログ時計なの、パッと見ですぐに時間が分かるようにデジタル表示にしろ』、なんてムチャクチャを言いやがる!!ふざけんな!苗字がたまたま『時計』ってだけで苗字まで絡めてイジメてくるし!ほんっとヤダブッ殺したいよぉ!マジでガチでムカついてきたぁ〜〜〜っ!!」

 

「おっおち、落ち着いてくださいっ!」

 

「フーッ。……フンッ。ま、そんな感じよ。だけど、あんたがそう言うんなら……あんたと会った日にゃ、八つ当たりで自警団ゴッコすんのはやめたげるわ」

 

「!!」

 

「なんか、また助けられちゃったね。ありがとね、レイサ。……なんだっけ?自警団のス────」

 

「自警団のスーパーヒーローッッ!!!宇沢レイサッ!!仲間をも助け出す、正真正銘のヒーローっっ!!!ですっっっ!!!!」

 

「……ははっ。スターから(さっきと)変わってるじゃんよ」

 

「ハーッハッハッハッ!!!」

 

 無邪気に笑うレイサを見て、何故か、シスターに懺悔をしたように、どこか救われたような気がしたクロノであった……。

 

 ◆

 

「もうすぐ夜だっていうのに、ごめんね、ヒナ……。この埋め合わせは必ず……」

 

「私の事はいいから。それより先生、どうしたの?そんな疲れた顔で……大事な話があるって事だけど」

 

「うん、とりあえずだけどハドマ学園関連と言えば分かるかな?」

 

「!!」

 

 ヒナは、如何にも心当たりアリという顔をする。キリッとした、仕事人の顔だ。今すぐ抱き締めて、髪をモッフモッフと弄んで頬をムニムニイジりたい欲求に駆られるが、今は我慢だ、我慢しなくては。頭皮を嗅ぐのも我慢だ、角を舐めたいのも我慢だ。

 

「また、何か起きたの?風の噂で、ルーシィは既に逮捕されたと聞いたけれど」

 

「……脱獄した」

 

「ッ!?」

 

「今は行方知れずさ。引率して、ヴァルキューレに出頭させたんだけど。その次の日に、他の脱獄囚のサポートを受けて脱獄したんだって」

 

「他の脱獄囚ですって?飂熾冘巫髏は、七囚人とも繋がりがあるとでも言うの?」

 

「七囚人じゃないよ。この前脱獄したばかりの──8人目の脱獄囚、賽鬼(さいき)ユウナさ」

 

「私の代わりに副委員長(モルモ)が出撃した、トリニティで行われた総力戦のボスだったかしら」

 

「そう。一匹狼のユウナが誰かと手を組むなんて、絶対に有り得ないハズ──って、サオ、じゃなくてヘルメット団の子が言っていたんだけどね。現に、ユウナがヘルメット団からの誘いを跳ね除けた事が発端で、あの総力戦が発生したんだし……」

 

「飂熾冘巫髏は、ユウナが望む報酬を提示した?」

 

「──だと思うんだ。ただ、私が疑問に思うのは、飂熾冘巫髏よりもヘルメット団の方が規模が大きい組織って事なんだ。これは最近判明した事だけど、飂熾冘巫髏の構成員はハドマだけじゃなくゲヘナ、トリニティ、レッドウィンターにも存在している。幾つもの自治区を跨いで存在してるんだよ。だけどヘルメット団ってさ、それこそキヴォトス全域とも言えるくらいにその辺に居るよね?」

 

「確かにね。飂熾冘巫髏以上に、倒しても倒しても湧いてくるわ。なのにユウナが、そんな弱小組織に手を貸すハズが無い……と」

 

「そう。もっと言うなら、飂熾冘巫髏が用意できる報酬くらいだったら、ヘルメット団に用意できないハズがないんだ」

 

「資金力も段違いだしね。飂熾冘巫髏、戦車すらもロクに保有してないから、万魔殿の戦車隊に危うく全滅させられる所だったって聞くし」

 

「ハハハッ……。だから私としては、どうにかして、ユウナとの繋がりを切れればいいなって思ってる」

 

「それは確かにいいとは思うけど、さっきサラッと流した『各自治区にも構成員が居る』って本当?」

 

「うん。ゲヘナ、トリニティは数百人程度の規模、レッドウィンターは100人前後とか」

 

「数百人規模……風紀委員とどちらが多いかしら」

 

「数は問題じゃないよ。量より質さ。質ならヒナの風紀委員会が上回ってる。大丈夫だよ。もし戦争になっても、ヒナ達なら勝てるさ」

 

「戦争……?」

 

「飂熾冘巫髏、戦争を起こそうとしてるらしくて。しかも、トリニティ、ゲヘナ、レッドウィンターの順で……」

 

「!?──いや、待って。どうして先生がそんなに飂熾冘巫髏の内部事情に詳しいの?」

 

「レイコとアスカ──飂熾冘巫髏の副総長と幹部が組織を脱退して、投降してきた」

 

「ッ……!?レイコって、確か……あの白い髪の?」

 

「ヒナはもうレイコと交戦済みだっけ?」

 

「……久々に負けたわ」

 

「!?」

 

「近接戦も得意らしくてね。不意討ちだったけれど負けは負けよ。アイツは強いわ、かなりね」

 

 七天魔の大半がレイコとルーシィコンビに負けたという話は聞いていた、そしてその大半がレイコの活躍によるものだという事も。

 ヒナが負けるなんてそんな事……。

 

「……ヒナ。力を貸して」

 

「え?」

 

「トリニティが戦争に巻き込まれるとしても、正義実現委員会だけじゃ、到底、戦力として心許ない。だけど、既に正義実現委員会との繋がりがある風紀委員会なら、助太刀に参戦しても不自然は無い」

 

「……見方によっては、飂熾冘巫髏の助力に現れたと受け取られかねないわ。飂熾冘巫髏による万魔殿の転覆は成功し、今も尚、ゲヘナ学園の生徒会長は、ルーシィのままよ」

 

「逮捕されたのに?」

 

「それも私達にとっては噂程度だからね。生徒会長だからと言って、常に万魔殿に居なくてはいけないワケでもないし、逮捕された証拠も無い。そもそもゲヘナの生徒は、自分達の生徒会長が誰だろうとも興味無いのよ。だけど、トリニティは違うでしょ。もし、ルーシィがゲヘナの生徒会を乗っ取った話が向こうで浸透すれば、私達風紀委員会が参戦しても疑われるか参戦を妨害されて終わりよ」

 

「そうか……。風紀委員会と言えど生徒会より立場が下の組織だから……」

 

「そういう事。──その辺、誤解が起きないように先生が間を取り持ってくれるなら──私は、喜んでトリニティに力を貸す」

 

「!!」

 

「だから……お願い。私だって、トリニティだからと見捨てるつもりは無いわ。条約は破談になっても、交流が途絶えたワケじゃない。寧ろ、全てこれからなんだから……」

 

「ヒナ…………ありがとう」

 

「……乗っ取られた形とはいえ、現在の生徒会に背く事になるから……準備は綿密に進めないとね」

 

「そうだね。──正義実現委員会や、他に助力してくれる組織や生徒については、私が間を取り持つ。学園の垣根を越えて飂熾冘巫髏という1つの組織に立ち向かう事になると思うけど……頑張ろう」

 

「了解よ。指揮はお願いね、先生」

 

「勿論。全て終わったらゆっくりデートしようね」

 

「……先生、それ死亡フラグじゃ……」

 

「え」

 

 ◆

 

「や、おはようスズ、ルビー」

 

「はよー」

 

「おはようございます。どうしたんですか、『次の戦いに向けて話したい事がある』なんて……」

 

「他の自治区の風紀委員会的な組織にも話して力を貸してもらえる事になった。ルーシィが起こそうとしている戦争は──3校の実力派の組織によって、食い止める事になる。だからまぁ、とりあえず近い内に顔合わせだけはしようと思ってね。各組織から委員長と副委員長、計6人に加えて、飂熾冘巫髏の事情に詳しいレイコ、あとアスカ。最後に纏め役の私の、合計9人で話し合いを行う事にした。いや、もっと多くなる可能性もあると思ってもらいたい」

 

「「!?」」

 

 戦闘に対する話し合いと、戦争そのものに対する話し合いは枠が別だ。後者の方には各校の生徒会のメンバーも参戦するのだから、人数は増えるはず。

 プチエデン条約みたいにならないかコレ。何だか荒れそうな気配しかしないのだが。

 

「急になったけれど、2人共、明日から数日間は、予定を空けておいてね。ルーシィ──飂熾冘巫髏はいつ動くか分からないから、いつでも動けるよう、備えておかなくちゃ」

 

 私も、いつ来るか分からない宣戦布告に備えて、シャーレの仕事は最速も最速で終わらせなくては。カヤと寝る前のエッチ〜なんてシテる余裕など今の私には無いと思った方がいいだろう。

 

「……うん、わかった。纏め役はお願いね、先生」

 

「分かりました。バイト先の方には、休みの連絡をしておきますね」

 

「ルビー、バイトしてたんだ。知らなかった……」

 

「あ、そうなの?ルビーね、こう見えても──」

 

「先輩。それは、今は関係無いですよね。……先生、それについては追々……」

 

「うん。分かった。じゃあ、2人共、よろしくね」

 

 数的に足りないだろうから、サオリを通して再びヘルメット団の力を借りる事になりそうだ。

 そして向こうにはヘルメット団キラーのユウナが居るのだから、ユウナの引きつけ役としてどうにか頑張ってもらおう。

 サオリの土俵に持ち込む事ができれば、ユウナが相手でもサオリが単騎討伐できそうだが──そんな幻想をブチ壊してくれるのがユウナだ、あまりにもサオリ頼りになるのだけはやめておこう。

 

「……絶対に勝たないとね。次は絶対負けないわ」

 

 そんなスズの呟きに、私とルビーは力強く頷いて答えた。

 そして迎えた、顔合わせの日────。




レイサの事は、モモイやヒフミ、ユカリのような、圧倒的光属性キャラとして書きたいですね。
それはそれとしてモジモジしてたり陰キャボッチのムーブをしてるとそれはそれで愛おしいですけど。
名誉放課後スイーツ部のレイサ、本当に好き。
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