※この作品はR-18です。

「先生!もっとあたしらに構って!」   作:アキラゼミ

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第22話:勢揃い

 その日──会議はトリニティ総合学園で、それもティーパーティーが会議等に使用している、中庭の見えるテラスで行われようとしていた────。

 

「………………皆、ちょっと表情が硬いね。もう少し、気を楽ゥ〜にして……ねッ?」

 

 などと言ってみるが効果は無し。そりゃそうだ。こんなメンツで、どう気を楽にできるというのか。

 まずはトリニティ総合学園からツルギ、ハスミ。

 アリウススクワッドからサオリ、ヒヨリ。

 ゲヘナ学園からヒナ、モルモ、カスミ、カヨコ。

 今は併合状態とはいえ一応ここでは別枠として、旧ハドマ学園からスズ、ルビー、レイコ、アスカ。

 本当はミネも連れてくるべきではあるのだろうが話が拗れかねないと判断し、今回は呼んでいない。トリニティやハドマの首脳陣については、今回とはまた別日に機会を設けるとして合意している。

 

「──まず、どうして戦争が起きかねないとかいう状況に陥ったのかを、改めて説明してもらいたい。先日、先生に説明して頂いたものの、やはり組織に属していたというその2人から直接、話を……」

 

「待ってくださいツルギ。それより謝罪が先では?副総長と幹部とやらが組織を裏切ったそうですが、部下であるあなた方が上を止めないからそんな事になるのではないのですか?──というよりも、そのテロ組織を裏切って脱退したからとこれまでの行いなどが許されるとでも思っているのですか?」

 

「ハドマのヤツになら謝るけど、トリニティ相手に謝る義理はないわ。飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)側として言うけど、まだトリニティに実害は与えてないワケだし」

 

「トリニティ(こちら)の生徒も数百人規模でそちらの組織に属していると聞きましたが?」

 

「それって実害?情報が抜かれてる事実があるかも不明だし、なんなら、トリニティに恨みがある子が飂熾冘巫髏に加入してきてるだけだよ?実害云々の話をするなら、そんなに恨まれるような事をしてるトリニティ側に問題があるんじゃない?あの組織が不良の受け皿になってるっつー現状も考えてね?」

 

「まぁまぁ落ち着いて、レイコ。多かれ少なかれ、誰しも不満ってモノはあるよ。トリニティだろうとハドマだろうとゲヘナだろうとそれは変わらない。それにアスカはともかくレイコは謝った方がいい」

 

「はぁ!?なんで先生まで……」

 

「副総長として、これまでルーシィを誰より近くで支えてきたワケだし。それに、トリニティが生徒に不満に感じるコトをしてきたとしても、その生徒がテロ組織に加入するかは別の問題だ。それが原因でこうなってるんだから、組織側として(・・・・・・)発言するなら(・・・・・・)ここは謝っておいた方がいいよ」

 

「ッッ……分かったよ…………ごめんなさい……」

 

「先程の『飂熾冘巫髏側として』という言葉といいまだ組織を裏切ってなさそうな感じがしますがね。まぁ、ここは先生のお顔を立てると考えて、不問にしたいと思いますが」

 

「いちいちそうやって口に出す辺り、不問にしたいなんて微塵も思ってなさそうね」

 

「分かります?その通りです。正直に言いますが、私は、あなたはこの場で話された事を組織とやらに報告するつもりだと睨んでいます。なのでハナから真面目に会議をするつもりはありません」

 

「妄想乙〜」

 

「なっ……」

 

「そりゃあさぁ、私はルーちゃんが好きだけどー?それはそれとして、好きな子の暴走は止めたいって思うのが自然じゃあないのかな?」

 

「……さて、どうだか」

 

「それに?ハスミ、だっけ?『部下であるあなたが上を止めないからそんな事になる』って私に対してイチャモン付けてくれたけどさァ?」

 

「それがどうかしましたか?」

 

「テメーも部下のクセに委員長サマの暴走、微塵も止められてねーだろーがよ……なァ〜んてツッコミを入れちゃうのは無粋かなぁ?」

 

「「!?」」

 

「飂熾冘巫髏の諜報員──つってもまぁ2人くらいしか居ないんだけど、それなりに優秀でさ?そこの委員長、剣先ツルギは暴れて建物破壊は当たり前、人質とかにまで精神的ダメージを与えまくる始末。そんなザマで、副委員長のあんたがこの私に説教をカマすつもりかっての。テメーを棚に上げてさァ。ウケるんですけど〜?」

 

「…………」

 

「金持ち学校だしどーせ修繕費とかも生徒会とかに任せっきりで、好き放題に暴れてるんだろーけど。実際に戦果も残してるみたいだし。──だからってこの私に説教タレんじゃねーよ?デカ女(・・・)ァ……!」

 

「────口に気を付けなさい。先生の前だから、敢えて武器を手にしないでいるだけだということ、努々忘れないで頂きたいものですね」

 

「だったら何だよ、アホくさ。先生の前だから猫を被ってるって自白してんのか?自分だって委員長の暴れっぷりを止められてもねークセに、いざそこをツッコミ入れられたら暴力で解決しようとするの?正義実現って……どこが正義だよエゴイストが」

 

 ギロリとキツイ目でハスミを睨み付けるレイコ。ツルギの暴れっぷりを知りながらも止めていない、または止めたい時があっても止められないハスミは返す言葉も無く、ほんの少し視線を外す。

 次いでレイコはツルギを睨みつける。が、対するツルギは真っ直ぐに彼女を見つめ返すのみだった。彼女は自らが戦略兵器的な立ち位置であると誰より理解している。そればかりか、自分がそうする事で事態が解決に向かう事も、理解していた。

 だから、言い返したい言葉は山のようにあるが、それでも唇を真一文字に結んで沈黙を貫き、自分の沈黙を以てレイコへの返答とした。

 

「統治委員会の方がその辺はスマートだよ、周辺に余計な被害とか出さないからね。まぁ飂熾冘巫髏が絡んでる分、検挙率はクッソ低いんだけどね☆」

 

「……やっぱレイコ(あんた)潰す!!」

 

「落ち着いてください先輩ッ、ここで身内同士での喧嘩ほど愚かしい事は無いですよ!」

 

「チッ……!やっぱレイコ(コイツ)が味方になったっての今も信じらんない……!!トリニティに迷惑掛けてんのはハドマが主体の組織なんだから、明らかにこっちの立場が弱いでしょッつーのに……!」

 

「先輩……立場とかそういうの考えられる頭をお持ちだったんですね……今世紀最大の驚きです」

 

「ルビーは私を何だと思ってんのよ!?」

 

「……ハドマの皆さんは見た目通り幼いですね……」

 

「「「あ゙?」」」

 

「抑えろハスミ。外見でイジられたくないお前が、何故同じ事をする。いい加減、抑えろ」

 

「ッ……はい……」

 

「まぁいいや、デカ女(こんなの)に付き合ってる時間がスゴくもったいないね。あのルーシィの事だから、今頃、ドデカイ作戦を立ててるハズだよん。裏をかいて、どうにか戦争勃発を食い止めないとね」

 

 あぁもう、胃が痛い。ツルギが居なかったら既に私の胃袋には大穴が空いていたと思う。というか、どうしてそんなに煽るかなあ。

 レイコがここまでトリニティに対してバチバチに煽るような子だと知ってたらレイコは留守番させて飂熾冘巫髏側からはアスカだけにしていたよ……。

 ヒナも瞑想状態というか。モルモさえどう2人を止めたものかと軽く戸惑っている……。

 

「ハーハッハッハッ!今日はあの糸目お嬢ちゃんは来ていないのか?なぁ先生!呼んでいないのか〜?今からでも呼ぼう、楽しい事になるぞ!」

 

「落ち着いてカスミ……落ち着いて……」

 

「そもそも、どうして先生は温泉開発部の部長など呼んだの?この件には関係無いでしょう?というか指名手配犯なのに風紀委員(わたしたち)の目の前に出てこられる鬼怒川カスミも大概ね。図太い性格してるわ……」

 

「あんなにイジめてやったのにまた暴れるなんて、まぁたお姉さんにエッチなお仕置き、シテほしいのかなぁ〜?カ・ス・ミ・ちゃん♡」

 

「図太い、か!褒め言葉として受け取っておこう、ヒナ委員長!そしてモルモ副委員長、あのお仕置き(・・・・・・)だけは勘弁してくれ!!嫁に行けなくなる!!」

 

 堂々としているように見せかけているが、実際、カスミの足はガクガクと震えている。腕も萌え袖がブレて見えるくらいに震えまくっている。明らかに虚勢を張っているのが分かるからこそ、ヒナも殆ど追求しないのだった。

 

「あっは!だったらもぉ〜っとイジめてやるわ♡」

 

「うん、この件には関係無いけれど、飂熾冘巫髏と戦闘する事になったら、カスミ率いる温泉開発部の協力があった方がコトを進ませやすいと思ってね」

 

「協力……?コイツらの?」

 

「レイコ。飂熾冘巫髏の抱える弱点について簡単に解説をお願い」

 

「あーうん。飂熾冘巫髏って、雑魚なのよ。数だけ多いから、その点で言えば厄介ではあるんだけど、戦車で一網打尽にできるくらいには弱いわ。確か、温泉開発部って、戦車だけじゃなく色んな珍兵器を保有してるわよね?爆発する系だったり、戦車とか改造したヘンテコなヤツとか」

 

「ふむふむ、確かにな!我が温泉開発部の開発は、爆破による掘削などが主な所がある!珍兵器という呼ばれ方は些か癇に障るが、傍から見ればその様に見えてしまうのもさもありなん!」

 

「あと、正義実現委員会も。この辺の組織にしては兵器は充実してるし、武器とかの整備もしっかりとしてるハズよ。ルーシィは、トリニティを壊すのと同時に、それらも全て強奪するつもりのハズだし」

 

「「!!」」

 

「なんせゲヘナ学園の戦車は、万魔殿所有のは私が壊したし、風紀委員会のは万魔殿のイジメによって安めの戦車、しかも台数も少ないでしょ?」

 

「っ!」

 

「確かにマコトちゃん、風紀委員会を嫌ってロクに予算を回してくれないからなー……」

 

「そんでハドマ学園は貧乏だから、戦車なんてのはロクに買えないワケよ。だもんで、飂熾冘巫髏って組織は、戦車との戦闘経験が殆ど皆無なの。戦車は私が相手してきたから私ばっか経験値を積んでる。だから戦車をある程度揃えられれば勝機はあるわ」

 

 強い確信を持ったレイコの言葉に、ハスミすらもゴクリと喉を鳴らした。

 

「──その組織が、戦車を苦手とするといった事は理解した。戦闘時は正義実現委員会(こちら)からも戦車隊も出そう。しかし未だに、トリニティがその組織から攻められるという話に現実味が無い……急すぎる」

 

「それについては同じ気持ちよ。ハドマとゲヘナを併合したら組織の目標達成〜、てな感じだったし。そもそもトリニティを潰したいってのはルーシィが言い出した事じゃなくて、トリニティ部隊の幹部が言い出したのよね。ルーシィは、それに組織の力を使ってやろうって決定しただけで。──とはいえ、組織として見れば総長の暴走に違いないワケだし、本当に困ったもんだわ」

 

「トリニティに在籍するというその幹部についても教えてもらいたいが」

 

「それについては先生、教えたげなよ。もう、捕捉済みなんでしょ?」

 

「うん。ティーパーティーの協力で、トリニティの幹部2人のうち1人──『時計クロノ』は昨日からティーパーティーの監視下にあるみたい。多分まだ監視されてる事はバレてないよ。だけどもう1人がイマイチ発見できないんだよね」

 

「マトイが見つからないってコト?アイツ、いつもクロノと一緒に居るはずだけど。紫髪の白い天使の翼の生徒よ、マジに見つかんないの?」

 

「見つからない。レイコからその子の特徴は事前に聞いてたから、ティーパーティーにも伝えてある。でも……うん。見つからないらしい」

 

「成程。人探しという名目であれば──ツルギ」

 

「ああ。正義実現委員会(こちら)の人員をその幹部の捜索に宛てよう。……そいつの写真か何か、あるか?」

 

「無いわ、申し訳ないけど。外見の特徴で言うと、白い翼に紫髪のポニーテール、白が多めの制服に、金色の眼、それとガーターベルト?っての見えてるハズよ。だけど、キャピキャピしてるっつー感じはしなくて、スゴく物静かな雰囲気の、私くらい背ぇ低い子よ」

 

「……せめて写真があれば探しやすくなるんだが」

 

「しかし、有翼人種が多いトリニティですが、白い翼にガーターベルト、金の眼、紫の髪というだけでかなり絞れますね。一先ずイチカやマシロに指示を出してきます」

 

「接触はさせずに、遠目からの監視を徹底させろ。ただし何か動きを見せたら連絡を。──念の為に、対象を発見したら、スナイパーも何人か監視の方に常駐させておくか……?」

 

「そうしましょう。先生はどう思われますか?」

 

「スナイパーを常駐させるのは良いと思う。でも、何か動きを見せたらすぐに撃つ──ってのはナシ。正義実現委員会の子がマトイに襲われてからとか、後手に回るなら大丈夫だと思う」

 

「……!?な、何故ですか?後手に回る意味が……」

 

「聞いての通り、その相手は敵組織の幹部だ。先にこちらが手を出してしまったら、報復という名目を敵に与える事になるだろう。だから、スナイパーを常駐させるにしても、こちらの攻撃は向こうからの手が回ってからだ。──先生が仰っているのは凡そこのような意図があっての事だ」

 

「な、成程……。彼女達を撒き餌にするようで、些かスッキリしませんが……そもそもが監視目的ですし、その相手が手を出してくるとも限らないですしね」

 

「……警戒は怠るなと、強く伝えておけ。そもそも、まずはその生徒を見付けてからだが……」

 

「ですね。では──」

 

 ハスミが部下への連絡の為に席を外す。しかして彼女を待つ事はせず、その最中も話し合いは進む。

 戦車などの兵器については温泉開発部と正義実現委員会から主に出してもらう事に。風紀委員会やら統治委員会などは歩兵として。

 カスミは、温泉開発部が参戦する事のメリットが無いと論理的な理屈を並べ立てていたが、レイコとヒナが強い口調で強引に言いくるめた。

 

「ったく……。大体、ゲヘナが壊滅したらあなた達が目指す温泉開発もできなくなるんじゃないの?」

 

「創造の前に破壊あり、だよ。ヒナ委員長。もしもその組織がゲヘナを壊滅させたとして我々の有する建築技術も失われるワケではない。──おやおや?寧ろ、向こうに加担し、壊滅させた方が温泉開発が進むのではないか?」

 

「…………」

 

「そう睨むな。現生徒会長殿の組織に歯向かう方が異端だと──無謀だと、そう言いたいだけさ。ただここで力を貸すのは、風紀委員会をはじめ、先生に恩を売る事にも繋がる。ならば理屈抜きで、たとえ異端だろうとも、喜んで力を貸すさ。──それに!邪魔者を消し去ってから悠々と温泉を開発した方が気持ちいいだろうしなぁ!ハーハッハッハァ!!」

 

「温泉開発部って、噂通りの狂人ね。何がそんなに楽しくてそんな事してンのよ……?」

 

「フッ。君には分かるまい、温泉のロマンは……」

 

「分かりたくもないけどね」

 

「ム」

 

 カスミは人心掌握術に長けている。飂熾冘巫髏の構成員をこちら側の陣営に引き込む事も、きっと、できなくはないだろう。

 そのように伝えると、含みのある笑みを浮かべ、私の案を快諾してくれた。

 

 ◆

 

「──で、流石に多少は街中に侵入とかもしてくるだろうから、そこをアリウススクワッドや便利屋に叩いてもらって、中枢に入り込まれないよう──」

 

 それにしてもヒヨリが静かだ。いつも通りなら、積極的に発言はしないだろうがネガティブな発言を連発しそうなものだが……それが全く無い。

 カヤ、シュロからネガティブ発言についてかなりキレられたから、もしそれを意識して癖を治そうとしているのなら良い傾向だ。褒めてあげたい。

 ただ、それにしては様子が変だ。ただ黙っているワケではなく、サオリの陰に隠れ、何故かビクビクしているように見える……。

 私からの視線に気付いたらしいサオリは軽く私に目配せ。私の代わりにヒヨリにツッコんでくれた。

 

「ヒヨリ。さっきから何をそんなに震えている?」

 

「はぅっ!?そそ、そんなに震えてましたか……?」

 

「真冬の屋外で寝ている時のように震えていた」

 

「えへ、えへへ、し、仕方ないですよね、だって、ここ、こんな所に、有名人の方が……えへへ、もう、ずっとニヤケ顔が止まらなくて……えへへへへ……」

 

「……?ゲヘナの風紀委員長か?」

 

「違いますよぉっ!確かに風紀委員長さんも有名人ですが、そうじゃなくて!私がよく読んでる雑誌によく載ってる、モデルの零得ルビーちゃんです!」

 

 スズ、ルビーは平然としている。しかしそれ以外全員の目がルビーに向けられた。ルビーがモデル?どういう事だ、同姓同名では──と思ったが本人は特に否定しないし平然としているし何が何やらだ。

 

「モデル……って、どういう事?」

 

「読モですね。バイトでやってまして」

 

「あ……バイトってそういう……」

 

「『近接戦闘系、格闘系ロリータ吸血鬼モデル』と銘打って大手雑誌『MyanMyan』などでモデル活動してるんですよねぇ!」

 

「そ!『ハドマイチカワイイ吸血鬼』っつーことで統治委員会からも公認で強く推してんのっ!雑誌の出版社が外部スポンサーになってくれてるから活動資金の確保にも繋がるし」

 

「私、ずっとずーっと前からルビーちゃんのファンなんですっ!まさか、先生にお呼ばれして来てみた作戦会議にルビーちゃんが居るだなんて、そんなの僥倖どころの話じゃないですよぉ!こ、この会議が終わったらルビーちゃんのサインください、それと私とのツーショット、先生とのスリーショットと、もし良かったら連絡先も……!!」

 

 多い多い、欲張り過ぎだ。サオリは固まってるしスズはドン引きしてる、ハスミは汚物を見るような目でヒヨリを見ているし、ツルギは──ツルギは、どんな感情の顔だろうか。なんとも形容し難い顔でルビーを凝視している。

 

「あまり返信できませんが、それでもいいですか?副委員長としての仕事が山積みなものでして……」

 

(嘘つけ、あんた私より仕事早いでしょーが)

 

「ひゃいいいいいっ!それでもいいので、是非ともお願いしますううぅぅ!!」

 

「ふふっ……。まさかこんな所でファンの方にお会い出来るなんて……嬉しいですっ♡」

 

「ひぃぃああぁぁあああ〜〜〜っっ!!?な、生の

『悪魔の天使スマイル』ぅぅうううっ!!」

 

「……ただのファンサなので悪しからず」

 

「あああああああああっっ!!!生きてて良かったですうぅっ!うわあぁぁぁん!!一生ルビーちゃん推し続けましゅううううっっ!!」

 

 す、スゴイ。人生を悲観してばかりのヒヨリに、ここまで言わせてしまうのか。モデル活動しているルビー……ヤバいな、気になってきた。

 ヒヨリの発言から察するに、本名で活動しているようだから、雑誌名からも探れるだろう。

 

「──あれっ?ルビーちゃんって、確か『来月号はチョットお休み!』……なんですよねっ……?」

 

「ええ」

 

「もしかして…………この、ルシュフェルとかいう、テロ組織のせいですか……?」

 

「言ってしまえば、そうなりますね。統治委員会の副委員長として、我がハドマ学園の恥を雪ぐ必要があります。……それでも力が及ばないので、こうして皆様に助力をお願いしていますけれど……」

 

「──許せない。そんなの許せないです!私達からルビーちゃんを奪うだなんて!ルシュフェルさんは潰さないといけないです、早めに潰さないと撮影や印刷に間に合わないんですよねっ?それなら今すぐ敵の本拠地に乗り込んで殲滅戦しませんか?サオリ姉さん率いる私達ならイケますよね、ねぇ先生っ!先生が指揮してくださったら、ただのテロ組織如き私達アリウススクワッドの敵じゃ──」

 

「落ち着けヒヨリ。飛躍し過ぎだ」

 

「はうっ……」

 

「折角ここまで──ゲヘナもトリニティも関係なく協力しようと話が出ているのに、私達がまたそれを乱すような真似をするのは良くない」

 

「で……でも……それだとルビーちゃんの撮影が……」

 

「来月はお休みだと雑誌で告知されてるのだろう?多少の不満はあれど……納得するさ」

 

「納得できませんっ!!ルシュフェルのせいだって知っちゃったら!だったらそいつら潰そうって!!私だけじゃないですリーダー!皆が知ったら、皆がこうなりますよぉ!だってルビーちゃんっ、愛されキャラですしっ……支持する人も多いですし……っ」

 

 確かに、理由はどうあれ、敵戦力が1ヶ所に集中していない今であれば、奇襲をしかけ一網打尽にもできるかもしれない……。ただ、そうするには、まだ情報が足りなさすぎる。

 

「アホくさ。何それ意味不明。カワイさなんかより強さでしょ。同じ吸血鬼として軽蔑するわ」

 

「レイコも良いところ行くと思いますよ」

 

「は?」

 

「そーそー!カワイさも自信持ちなよ、モル姉から見てもレイコは可愛いぞっ♪」

 

「う、うっさいなぁ!カワイかったらどーなのよ、それで稼げるの!?それで生きていけんの!?」

 

「まぁ私はそれを生業にできてますし」

 

「統治委員会でしょあんた!」

 

「副業ですね」

 

「いや逆ゥ!学生の本分は勉強に部活とか、それと委員会活動よ!」

 

「……意外に真面目なんですね」

 

「フツーよ、フツー!あんたがおかしいだけ!」

 

「いやいや、レイコは真面目なのよこう見えても。吸血鬼の技能とかを私が指導してるときだって反復練習したり分からない事は聞いてきて。それがまぁホンットに可愛くて♡」

 

「あああああもうっ、あんま余計な事言わないでよモル姉!ブッ飛ばすよ!?」

 

「やーん、助けてヒナちゃーん♡ 」

 

「はぁ……」

 

 こうして話は進み──私の有する人工天使擬人化シリーズ4姉妹も動員するという話にもなりつつ、作戦が練り上げられていく。

 しかしそれでも、副総長であったレイコの有する情報を交えても敵戦力については不明な事が未だに多く、飂熾冘巫髏が「正体不明」を守り続けていた事実が大きな障壁となっていた。

 

「まさかゲヘナの私達がトリニティを守る事になる日が来るとはね。人生って、本当に分からないね」

 

「……そうだね。カヨコとしては……どうなの?」

 

「どうって……トリニティとの確執、とか?」

 

「……うん」

 

「別に私は、なんともないよ。大丈夫。先生が私達便利屋の力を必要としているのなら、社長も皆も、喜んで力を貸すからさ。もう皆とは話もつけてるし何も問題は無いよ。……だから、気にしないで」

 

「……ありがとう」

 

「それより先生は、私や便利屋より……モルモさんとハドマのことを気にかけた方がいいと思う」

 

「えっ?」

 

「明らかにあのレイコ以外のハドマの生徒との間に壁がある。正義実現委員会とも凄くフランクなのに逆に身内(ゲヘナ)に近いハズのハドマとは……」

 

「……思う所があるのは、仕方ないさ」

 

「そだね……」

 

 復讐を果たしたと思っていたら、実はその後輩がお隣の自治区に逃げ延びていて、更には別の組織を立ち上げ、学校の頂点に君臨していた────。

 モルモの視点から見たら、こうなる。モルモからすれば、自分の復讐は果たせていなかったと思ってしまっても仕方ない流れだ。

 そんな時──復讐心に身を委ねた過去を持つ子はどのように考え、どのように行動するのだろうか。

 

「……モルモ、ちょっといい?話があるんだけど」

 

「ん?……うん、いーよ?」

 

 一旦会議を抜け出し部屋を離れ2人きりになる。エッチな事でもするのかな?──とでも思っていたらしいモルモは胸元のボタンを外すが、雰囲気からそうではないと感じたらしく、ボタンを留めた。

 

「……それで?話って、なぁに?」

 

「旧ハドマ学園の生徒会……失楽園について」

 

「!」

 

「モルモの復讐相手は失楽殿で、それは果たされたハズだ。……そうだよね?」

 

「……そーよ?」

 

「その後輩が立ち上げた失楽園は……復讐対象?」

 

「……さぁね。私、思い立ったら徹底的にヤるタイプだからさァ。復讐前は殺すヤツをリスト化したの。失楽殿の構成員達は私がこの手で皆殺しにしたわ、ヘイローが砕けるまで撃ち込んでね。だから、私の復讐はあの時、名実共に終わってんのよ」

 

「信じて……いいんだね?」

 

「さぁね?好きにすればいいんじゃなぁい?特に、信じてほしいとも思ってないけれど。──でもま、リストに載ってない『後輩』が居たんだなー、とは思ったわ、正直に言えばね」

 

「!!」

 

「でもハドマに逃げ延びたヤツはとうに卒業済み。結局『後輩』なんてのは、学校が残ってる限り続く枠組みでしかない。だから『後輩』相手に復讐するなんてのは、バカのする事よね。──だけど生憎、モルモちゃんはバカじゃないのよ。終わったものは終わった、蒸し返さないし再燃したりもしないわ」

 

「モルモ……」

 

「心配……してくれたんでしょ?私がまた、人殺しに手を染めるんじゃないかって」

 

「っ!」

 

「復讐はイイわ、最高よ。気分が晴れるんだもの。だけどもう、私の復讐対象は居ない。復讐心を抱く理由も無いわ。だから……安心してよ、先生?」

 

「……それが聞けて安心したよ。私も賛成派ではあるけれど、今この状況でするべき事ではないからね」

 

「それもそーよね。ま、そんな事より、あのバカを止めなきゃねぇ。ったく、ルーシィってば、どこで道を踏み外したんだか……」

 

 モルモの意思を確認できたあとは、揃って会議に戻り、敵に対してどのように対処するかの流れを、おおよそだが決めていくことに。

 しかしそんな会議の中でも、依然としてクロノの友人だというマトイの位置は掴めず、捜索は続けるとして一旦お開きに。

 他の自治区の幹部は4人。せめて4人の位置さえ掴めれば具体的な作戦の立てようもあるのだが今はそれさえ満足にできない。

 しかし、会議をお開きにした直後────。

 

「……アコから連絡が来た。ゲヘナ学園生徒会改め、飂熾冘巫髏が、モモッターで宣戦布告したそうよ」

 

「なっ!」

 

「バカな!」

 

「キヴォトス全域に!?」

 

「見られるの前提で!?」

 

「それで。その組織とやらは何と言ってるんだ?」

 

「…………見ての通りよ」

【挿絵表示】

 

「……『魔を祓う』だと?ふざけているな……」

 

「ルーシィのヤツ……ッ!!」

 

「敵からしたら私達が『魔』ですって。呆れたわ」

 

「ハスミ」

 

「はい。イチカからナギサ様へ連絡させます」

 

「ねぇ、先生。レッドウィンターの方の生徒会とも連携は取れないの?」

 

「チェリノだけど大丈夫?」

 

「ごめん、聞かなかった事にして」

 

 流石にチェリノ、マリナ、トモエは頼れないにも程がある。生徒会としてレッドウィンターほど私が頼りにできない学校も無い。ミノリの方が幾分かはマシかもしれない──それは無いか。

 

「────決戦は、2月3日。各自、そのつもりで備えよう。私も作戦は考えとく。ハドマ、ゲヘナ、トリニティ──それとレッドウィンター。これ以上他自治区を巻き込んで大変な事になる前に、全部、私達の手で終わらせよう」




ルーシィ登場時に「ハロハロ〜」言わせたらまさかブルアカ本家で「はろはろ〜」出てきて、腹抱えて笑ったんですよね。
似たような発想なのかもしれねぇ……。

次回更新は2月3日0時。
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