※この作品はR-18です。

「先生!もっとあたしらに構って!」   作:アキラゼミ

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第26話:終戦 〜万魔殿の反撃〜

 

「う……ん……?ここは……」

 

「おはよう、針村ルーシィ。ぐっすりだったことを考えると、特別牢の床の寝心地も、そんなに悪くはなさそうだなァ?キキキキッ!」

 

 聞き覚えのある、嫌味が込められている笑いに、ルーシィの意識は一気に覚醒する。

 無機質極まりない牢屋の中に閉じ込められていることに気付く。そして、逃げたハズのマコトが牢の前でルーシィを見下ろしている事も。

 

「……飂熾冘巫髏との戦闘に負けて、このゲヘナから逃げたんじゃなかったの?」

 

「フン、見くびるなよ。戦略的撤退というヤツだ。うちの議員に取り入っている飂熾冘巫髏の構成員の存在を確認したのでね。そいつから情報を搾り取る為にも、ある程度の纏まった時間が欲しかった──逃げたのは逃げたがまさに戦略的撤退だったのさ」

 

「チッ。……ライムのヤツ、しくったの……?いや、偽の情報を掴まされてたのかな」

 

「いいや本当の情報さ。その、ライム──とやらの認識では、間違いなく、な」

 

「は?」

 

「我が万魔殿の中には優秀な催眠術師が居てなァ。この私ですら、催眠術を使用されたら、アイツには逆らえなくなる。性格が変わるのだそうだ」

 

「!?」

 

「不運な事に、お前の部下のライムが取り入ろうとしたのは、その催眠術師だったのさ。だから、逆に利用してやったんだ。あの女に堕とされたフリまで演じてな。そして今日まで作戦を進めさせてきた。シャーレの先生がお前を倒した後で、お前の身元を引き受けたのも、このマコト様に他ならない。故にシャーレの先生にも助けは求められんぞ?」

 

「ッ……ちぇっ。やっぱり、レイコに抜けられたのは何よりも痛かったな……」

 

「聞けば、そのレイコも、お前に振り回されていただけだったんだろう?ならば、タラレバは無いさ。遅かれ早かれあの女も飂熾冘巫髏を脱退していた」

 

 手足に拘束などはされていないらしかった。牢に入れられた以上、もうルーシィは逃げられないと、タカをくくっているのだろう。

 身体を起こしたルーシィは、適当に座り直して、いつもの余裕そうな表情を作る。

 

「────トリニティはどうなったの?」

 

「トリニティで部隊を率いていた幹部は、地下へと続く道で逃走したと聞いている。部下も幹部も全て見捨てて、だと。レッドウィンターの気候のように冷たい女だそうだなァ……キキキッ!」

 

「まぁ、マフユなら、そうするか。するってーと、結局トリニティは壊せずじまい、クロノもマトイもレティもそれぞれ捕まったって感じかな」

 

「本件を受けて、レッドウィンター事務局も幹部の捜索に乗り出したそうだ。恐らくは、殲滅も時間の問題だろうなぁ。シャーレの先生はチェリノ会長を巻き込むのを避けていたが、どこかの誰かさんが(・・・・・・・・・)、事務局に伝えてしまったのだそうだ」

 

「……」

 

「それからここは、ゲヘナ風紀委員会の特別牢さ。あの空崎ヒナも通うから、覚悟しておくがいいぞ!キャハハハハ!」

 

「なんで……風紀委員会の施設にあんたが居んのよ。仲悪いんでしょ……?」

 

「──自覚してないのか?誰の地雷を踏んだのか」

 

「あ……?マコトの地雷なんか知らないわよ」

 

「マコト様のじゃあない。……お前、万魔殿に攻めてきたときに……イロハの戦車(虎丸)を壊した挙句、イロハを保健室送りにしただろう」

 

「?それが何よ、戦闘なんだから当たり前でしょ」

 

「それが理由だ」

 

「はぁ?」

 

「飂熾冘巫髏──いいや、針村ルーシィの敗因は、たったひとつだ。たったひとつの単純(シンプル)な答えだ」

 

「……?」

 

「────『お前はイブキを(・・・・・・・)泣かせた(・・・・)』」

 

 ◆◆◆

 

 飂熾冘巫髏──ルーシィの起こしたこの事件は、未然には防げなかったものの、各校の生徒の協力もあって、被害は最小限に抑えることができた。

 正義実現委員会が捕らえたトリニティ部隊の幹部2人は無期限の停学、ゲヘナ学園に籍を置いているレティは送致されて、ルーシィが起きる数時間前に風紀委員会の尋問を受けた後に釈放……。

 レッドウィンター自治区に帰って行ったマフユやマフユ率いるレッドウィンター部隊の一部などは、逃走中に事務局に捕まりそうになったものの、常に携帯している爆弾を使用し逃げ果せたようだった。

 その他、幹部ではない下っ端についてになるが、トリニティの生徒については、期限付きではあるが停学処分が下された。ゲヘナの生徒については殆どお察し状態。数時間の拘留と尋問で釈放である。

 そして──この事件の後始末について、万魔殿が本格的に顔を出すようになったのはシャーレの先生率いる部隊がルーシィを倒してからであった。

 ルーシィが目覚めた現在より、半日程前────ルーシィが倒された頃にまで遡る。

 

「これで終わりだね、先生!」

 

「流石はミカ、相変わらずの超火力だ。君を選んで正解だったよ……本当にね」

 

「従姉妹だろうと、敵は敵だもん。敵に回ったなら容赦はしないよ☆」

 

「従姉妹……だったんだね。知らなかったよ」

 

 そういえばルーシィのヘイローは六芒星、ミカは銀河っぽいけれど──宇宙モチーフなのだろうか。いや、そういうのは無いかな。それで言うのなら、レイサも星型だし……。

 

「私も今の今まで忘れてたよ、なんでだろ?」

 

「……」

 

 そんな折に、よく見覚えのある戦車が、ほんのりぎこちない駆動音を奏でて私達の前にやってくる。万魔殿の文字があるその戦車は、私がよく戦闘中に見ている、イロハの虎丸であった。

 するとイロハと、その隣のハッチからは4本角の生徒会長──羽沼マコトがニョキッと顔を出した。

 

「キキキキッ!ご苦労であった、シャーレの先生!主犯である針村ルーシィの身柄は我々万魔殿の方で預からせてもらう!」

 

「やぁ、マコト。元気そうで何よりだよ。──で、ルーシィの身柄を預かりたいって……どうして?」

 

「今はまだコイツがゲヘナ学園の生徒会長なんだ。ハドマ学園との併合をも無かった事にする以上は、ハドマの生徒であるルーシィにゲヘナ学園の頂点にいつまでも居座られてもらっちゃあ困るんだ」

 

「あ……併合、無かった事にするんだね」

 

「もちろん!全てがコイツの策謀であると判明した現在、リセットできるのならばそうするさ。そしてハドマ学園の生徒会長、我猛リエとの協議も正式に行いたいと思っている。姿が見えないから、戦闘でダウンしてしまっているのだろうが──。先生よ。私の代わりに、我猛リエ議長への伝言を頼んだぞ。詳細は後ほど、イロハに連絡させる」

 

「うん……分かった。任されたよ」

 

「クックック……あぁ、助かるよ。もうじき、戦闘を切り上げた風紀委員会が到着する頃だ。そうしたらルーシィを引き渡してやってくれ」

 

「あ……そこは風紀委員会に任せるのね」

 

「虎丸はもう満員どころかキャパオーバーだから、仕方なくだ。そこは、勘違いしないでもらおうか。イロハ、イブキ、私、チアキ、サツキ、ライム──流石に満員さ」

 

「……んっ?ライムって、飂熾冘巫髏の幹部だよね?ライムがそこに居るの?」

 

「あぁ。スパイとしてサツキに接触してきたから、催眠術で、二重スパイとして使ってやったのさ」

 

「……ひぇ……」

 

「スパイを利用してやるだなんて、なんッて斬新なアイデア!流石はマコト様だァあはははは!」

 

「言うほど斬新でもありませんけどね」

 

「んなっ……」

 

 イロハのツッコミに軽く吹き出しそうになるが、そこをどうにか堪える。

 程なくして、マコトの言う通り、ヒナ率いる風紀委員会が現着した。アコを通してマコトから指示を受けていたようで、溜め息をつきながら、渋々だが引き受けたのだそう。

 ルーシィの事はモルモが見張りとして着くことになって、迎えの車が来るまでは、私も風紀委員会の皆と談笑しつつ、今後の事を話し合って過ごした。

 

 ◆

 

「────了解。倒した構成員の事は風紀委員会に引き渡す……で良いんだな。……そうか、分かった。陸八魔社長にも伝えておく。じゃ、また──」

 

「さ、サオリ……さん?何かあった……?」

 

「あぁ、社長。先生から連絡をもらった」

 

「先生から!?」

 

「現時刻を以て戦闘終了。先生達が、飂熾冘巫髏のボスを討ち取ったそうだ」

 

「……そう……良かった……っ!!」

 

 便利屋68、そしてアリウススクワッド────。互いの部下を組ませて広範囲への攻撃を任せ、上に立つ2人は、部下が取り逃した、または逃げ果せた敵をそれぞれが討ち取っていた。

 そんな中で互いの呼び方は「サオリさん」またはシンプルに「サオリ」と名前呼び、更にサオリからアルには「社長」や「陸八魔社長」と社長としての彼女を敬った呼び方で呼んでいたようだ。

 

「私達や部下達が倒したコイツらは、風紀委員会や正義実現委員会に引き渡してくれればいいそうだ。もしくは目立つ所に捕縛しておいてほしい、と」

 

「!」

 

「風紀委員会やら正義実現委員会から逃げる立場の私を気遣っての事なんだろうな。手間を掛けさせる事になってしまうが……それに甘えたい私が居る」

 

「……良いのよ、甘えちゃえば」

 

「っ!」

 

「先生がそれでいいって言ってくれてるんだから、そうしちゃえばいいのよ。サオリさ……サオリが悪い人じゃないのは、一緒に戦った私はよく分かるわ!だけど世間的にはそうもいかないんでしょうから、逃げる立場に在るってのは仕方ないの。私達もね、ゲヘナ学園きってのアウトローだから?割と常に、風紀委員会からは逃げてるもの!」

 

「しかし……甘えてばかりでは、な……」

 

「それでもそう思っちゃうんなら、先生に、何かをお返しすればいいんだわ!それで万事OK!何にも気負うことなんか無いの!対等なパートナーとして仲良くやっていくのが、私達自身にとっても相手にとっても、いっちばん、気が楽なんだから!」

 

「……お返し……」

 

「私なんかは、先生とビジネスパートナーだから、常にそう心掛けているわ。パートナーなら、対等であってこそ!サオリも、先生にこんな大事な任務を任されてるんだもの、立派なパートナーよ!もっと自分に自信を持ちなさいなっ!」

 

「っ……ああ」

 

 ずっと厳しい顔つきだったサオリ、しかしアルの言葉に励まされ、やっと頬を緩めることができた。

 

「──あなた、確か自分探し中?なんだっけ?」

 

「あぁ。やりたい事も、何をしたいのかも、まだ、よく分からない。追っ手から逃げながらアチコチを転々としている」

 

「なら、便利屋に来なさい!」

 

「……え」

 

「戦闘の腕はかなりのものだし!それに戦闘以外も色々とこなすから、普通のバイトよりも良い経験になると思うのよ」

 

「っ!!」

 

「どう?まずは体験入社みたいな感じで♪」

 

「アリウス分校中退、アリウススクワッドリーダー錠前サオリだ。よろしく頼む、陸八魔社長」

 

「こちらこそよろしく!じゃ、この後、アイツらを分かりやすい所に捕縛したら、部下達と合流ね!」

 

「ああ……!」

 

 ◆

 

「ツルギ。先生より戦闘終了の連絡が入りました。敵の総長を討ち取ったとの事で、現時刻を以て戦闘終了……と」

 

「ッ!………………フーッッ……そうか……。それなら、これ以上の深追いは、やめておいた方が懸命か」

 

「はい。拘束した者達については────」

 

「ゲヘナの者はゲヘナに送致しろ、そう多くは無いハズだ。その辺の事柄は、既に、ヒナ委員長と話がついている。トリニティの者については牢に。後はナギサ様とセイア様の裁量にお任せする」

 

「はい。……それで、レッドウィンターの者は……」

 

「一旦、我々の牢に。前以てその話ができなかった以上、レッドウィンターの者については先生からの指示を仰ぐしかない」

 

「ですね。では、マシロ達も呼び戻して、後処理の補佐をさせます」

 

「任せた」

 

 そして────やがて、それぞれが安穏とした、平和な日常へと戻っていく…………。




次回────その後

後日談(エピローグ)で第3部のメインストーリーは終わりです。
次はいよいよ、プロフ開示を挟んで絆ストーリー、グループストーリー。エロもちょこちょこ。

ハドマ学園側も飂熾冘巫髏側も書いていきますよ。
だって「先生」だものね。アリウススクワッドとも仲良くしちゃうくらいだから、飂熾冘巫髏とも絶対仲良くできるなら仲良くするでしょ。
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