※この作品はR-18です。

「先生!もっとあたしらに構って!」   作:アキラゼミ

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第27話:後日談(エピローグ)

 

 飂熾冘巫髏との戦争が終わって僅か数日後──。複数の学園や自治区を巻き込んだ戦争騒ぎも世間の記憶に新しいうちに、失楽園と万魔殿による会談が正式に執り行われた。

 結果的には、両校は再び分かたれるとして騒動に終止符が打たれることとなった。

 ルーシィとマコトの調印式により、ゲヘナ学園に吸収される形で併合したハドマ学園。ルーシィは、決してバカではない。寧ろ、かなり頭が働く方で、強かな生徒なので、調印式そのものは正(まさ)しく法規に則ったものだった。

 だから今更その調印式を無かった事にできるかと多くの生徒達が疑問に思っていた。が、兼ねてより連邦生徒会が「両校の合意により」と強調していたお陰で、マコトやリエによる圧政などではないと、世間的にもすぐに受け入れられたようだ。

 

「──それで、ルーシィの事はどうするつもりだ?今の所はまだ風紀委員会の特別牢に入れているが」

 

「ルーシィさんの事は──我々(ハドマ)が引き取りますわ。色々ありましたが、ルーシィさんも、我々ハドマの生徒ですもの。生徒会は、残念ながらクビですが。次こそ、ルーシィさんにも楽しい学園生活を送って頂きたいものです」

 

「キキッ。分かった、ではそのように手配しよう。日時については、護送の都合もあるのでシャーレの先生を通して改めて連絡するつもりだが、それでも構わないか?」

 

「ええ、それでお願いしますわ」

 

「それと、萌山ライムについてだが……」

 

「!」

 

「サツキ──うちの議員の催眠が思ったより強力に効いてしまってな。正常に戻したらすぐにハドマに帰すつもりだ」

 

「ふふっ、分かりましたわ。何なら、催眠とやらで少しくらい品行方正に正して欲しいものですわね。全く、ライムさんはいつもいつも、色んな方に手を出して……」

 

「──らしいな。うちの議員も奴の手に堕ちかけたそうだし、中々に厄介だったそうだ」

 

「あらまぁ……」

 

 そんなこんなで、ハドマ学園は、ゲヘナ学園から分離される形で、再び独立を果たした。

 リエはマコトに「思っていたよりかは話が通じる議長」という印象を抱いたようだったが、マコトは逆に、リエに対し「腹の底が読めない女」といった印象を抱いたそうだ。

 お嬢様っぽく振る舞ってはいるが、どこか飄々としていて、彼女という人間像に、薄らとだがモヤが掛かったようにも思える、と。

 更に、この会談を以て、万魔殿と失楽園の立場は対等であると暗に示され、過去の遺恨は全て忘れるという事で話は纏まった。

 

「────さぁ、これで公的な会談は終わりだ」

 

「?」

 

「ここからは、ただの個人として言葉を交わそう」

 

「……!」

 

「先程、ハドマ学園とは対等な関係を結ぶ──とは言ったものの。正直、ハドマ学園は、それに見合う学園だとは到底思えん!!」

 

「────……」

 

 当然だった。今のゲヘナ学園は4000人規模の巨大学園であるのに対し、ハドマ学園は1000人未満。

 姉妹校だった過去こそあれど、対等な関係なんて結べそうもない。マコトでなくともそう判断を下すだろう。そこに思い至ったリエは俯いて、キュッと拳を握り下唇を噛み締める。

 マコトの言う「対等な関係」というのは表向きの方便というもので、実際のところは、対等どころかお互いに不可侵、ノータッチな、元の関係に戻るのだろう。

 迂闊に喜んだ自分が憎い──と、リエが恨めしく思っていると、マコトはまるでイブキに向けるかのような優しい目をリエに向ける。

 

「──だから、我がゲヘナ学園と見合うくらいに、大きい校舎を持て!!」

 

「…………え?」

 

「校舎がちゃっちぃから(・・・・・・・・・・)生徒が来ないんだ(・・・・・・・・)!ろくに使われない第2校舎なんぞ別館扱いにしてしまえ、本館に力を入れろ!……なぁに、倒壊しているからと別に気にする事など無い。ゲヘナ学園が常日頃から世話になっている業者を紹介してやる。だからまず校舎をさっさと建て直せ!」

 

「っ……そう言って頂けるのは嬉しいのですが……」

 

「領収証の名義は、我が万魔殿にしておくがいい。どうせ紹介料で安くなるだろうしな。今更、校舎の1つや2つを新たに建築した所で、こちらにとって大した痛手にもならんさ」

 

「え、いや、しかし」

 

「あぁあぁ、皆まで言うな。分かっているぞ。金を借りるようなものだろう、と思っているだろう?」

 

「っ!」

 

「そうだな、校舎1つ分の金を貸すようなものだ。無論、ただで貸すとは言わない、万魔殿は慈善事業じゃあないんだ。──そこで、だ。ちょっとばかり業務提携のようなものを組みたいと思う。なんだ、例えばだが、学校の運営についての協議だとか──色々とあるだろう?我々には……悩みの種が!」

 

「それ、は……はい……」

 

「今後は定期的に、意見交換会やら交流会のようなものを開きたいと思っていてな。折角、こうやって繋がりを復活させたのだから、そうでもしなくては勿体ないと思わないか?」

 

「……はい……」

 

「互いの抱える治安維持組織の交流会を経て2校の繋がりを強化するのもいいだろう。少し前になるがコチラはトリニティと合同訓練を開いた事がある。お陰で向こうの正義実現委員会とそれなりに良好な関係を築けているようだぞ?」

 

「!……成程、そういう運営方針もアリですわね」

 

「だろう?特に、そちらの統治委員会は──今回の戦争でもトップの2人は特に活躍したそうだしな。うちの風紀委員会にもかなりの手練れが居るから、手合わせには持ってこいだろう」

 

「──分かりました。考えておきますわね」

 

「前向きな答えを期待しているぞ」

 

「ええ、是非ともそう在りたいものですわ」

 

 ◆

 

「というコトで、ハドマ学園及び生徒会・失楽園が復活したワケですけれど。副会長と会計の穴が未だ埋まっておりません。誰か、これらに立候補されるつもりの方はいらっしゃいませんか?」

 

 全校集会で、生徒会長のリエは皆に呼びかける。しかし手は上がらない。横領していたり一部書類を勝手に破棄などしていても、それを差し引いても、ルーシィは確かに仕事がデキる女だった。

 誰が、そんなルーシィの後釜になりたいと、自ら立候補できてしまうのだろうか?

 長い沈黙がハドマの体育館を包む。すると大きな溜め息と共に色白な細い腕が、しかし力強くピンと真っ直ぐに立てられた。

 

「ハドマの併合問題が無くなって暇だし、生徒会の仕事、手伝ったげるわ」

 

「シエルさん……」

 

 七天魔の1人、シエルが議長であるリエの補佐の副議長もとい副会長に立候補した。他に立候補者が居なかった為、シエルについてはこれで決定。

 連邦生徒会対策委員会から一転、生徒会になり、新たな役目をその小さな背中に背負う事となった。

 そして会計についてだが……。

 

「レイコちゃんやっちゃいなよ♪」

「誰が生徒会なんかやるかっての!」

「でも、皆で活動するの楽しいよ?」

「あんたがやればいいでしょ!?」

「私は美食研究会対策委員会の委員長だもん?」

「兼任すりゃイイでしょうがよ!」

「ダーメ、ダメダメ〜。そんなんじゃ集中できないもん」

「ンじゃ他の奴に擦り付ければいいよ、私はやらない!」

「まぁまぁ、そう言わずに♪」

 

「そこ。今は集会中ですよ、私語は慎むように」

 

「はいはーい。リエ議長、レイコちゃんが生徒会の仕事に興味があるそうでーすっ!」

 

「んなぁっ!?ちょっ……あ、アスカ!?余計なこと言わないでよっ!」

 

「では会計はレイコさんという事で宜しいですね」

 

「待って待って!宜しくない!全然宜しくないっ!アスカが勝手に言っただけだから!」

 

「自薦も他薦も不問ですからね。ですが──ああ、レイコさんは、会計は未経験でしたでしょうか?」

 

「……会計どころか、そういう役職すら……」

 

「でしたら、書記のアンナさんを補佐にしますよ。大丈夫ですね、アンナさん?」

 

「あ、はい。会計の仕事でしたら、平常時から傍で見ていましたし記録してますから、大丈夫ですよ」

 

「──そういう事ですので、まずはお試し程度で、どうでしょう?」

 

「ッ……」

 

 レイコは今でもルーシィを想っている。しかし、それはそれとして一定期間停学となったルーシィの代わりにと、生徒会の何かの役割に就く事も色々と考えていた。

 それらを感じ取ったアスカだからこそ、そんな、奥手なレイコの背中を押してやったのだった。

 

「……分かったよ、お試し程度ね!深入りはしない!バックれる前提で考えときなよ!?」

 

「ふふっ、覚えておきますわ」

 

 こうして七天魔や生徒会の欠員にレイコが入り、欠員が補充される事となった。

 七天魔の最新メンバーは、レイコ、リエ、スズ、ルビー、シエル、アンナ、アスカ。生徒会の方はと言うと──議長(リエ)、副議長(シエル)、書記兼会計補佐(アンナ)、会計(レイコ)である。

 少々歪な形ではあるが、こうしてゲヘナ学園との併合から脱却したハドマ学園は明るい再スタートを切ることとなったのであった。

 

 ◆

 

「────何ですって?ルーシィが脱獄した?」

 

「は、はい!牢を何者かが外から破壊し、それで、針村ルーシィを連れ出したようで……!見張りの者も全滅でした!今は保健室で治療中ですが……」

 

「……そう。分かった」

 

「申し訳ありませんっ!!」

 

「警戒が甘かったのは私も同じ。仕方ない。それに元々はマコトから押し付けられていただけだから、あんまり気負う必要は無いわ。それより、今日も、校内校外問わずまた問題児達は暴れてる。そっちに行こう」

 

「はいっ!!」

 

 ◆

 

「──ふぃ〜ッ、ここまで来ればもう安心でしょ。ゲヘナ自治区は出たし、風紀委員会ならそこまでは深くは追ってこないハズ……」

 

「……どうして私を助けたの?…………ユウナ」

 

「別に……深い理由は無いわ。ただ……あの戦争で、殆ど役に立てなかったから。償いみたいなモンよ」

 

「そんな理由?バカね。そもそも、あんたに破壊を愉しませるっつったのもヴァルキューレから逃げる為にあんたを利用したいが為の言葉なのよ?」

 

「ンなの知ってるわよ。でも、あたしが負けたからそれが実現しなかっただけでしょう?もしあの時、あたしが勝ってたら──フツーに楽しませてくれたでしょ、トリニティの破壊をさ」

 

「そりゃあ、まぁ……口約束とはいえ約束だしね」

 

「そんなら、あの時に楽しめなかったのはあたしの実力不足が原因でしかない。それで話はおしまい」

 

「……ユウナ……」

 

「んで?これからどーすんのよ、総長?」

 

「っ!」

 

「レッドウィンター部隊、逃げ回ってるそうよ〜?マフユだっけ?アイツ割と冷酷よね。レティの事も放ったらかしにして逃げたそうよ?」

 

「──幹部でマフユだけが無事なのも、ある意味、仲間すら切り捨てられる非情さを持ち合わせているお陰──なのかもしれないわね」

 

「かも、ね。あいつ、一番静かなようで、仲間すら値踏みしてるような雰囲気あったし。ちょっと苦手かもしんないわ、あたしは……」

 

「ねぇ、ユウナ。あんた──飂熾冘巫髏に来なよ。副総長ポジ、空いてるわよ?」

 

「停学中とはいえ、まだ百鬼夜行に籍置いてるけどイイの?」

 

「ンなもん気にしないわ。ヘルメット団よろしく、このキヴォトスに巨大組織としてのさばってやろうじゃないの!私について来れば、実力次第で好きに破壊を楽しめるわよ?捕まる心配も殆ど(・・)無く、ね」

 

「────ノッた!このあたしを楽しませなさい、ルーシィ!ヘルメット団はこのあたしを金なんかで雇おうとするけど、あたしを雇いたいなら『破壊』させろっつー話よ!」

 

「ははっ……そーね、あんたにはそれが合ってる」

 

 敗北を果たした飂熾冘巫髏だったが、ルーシィが総長なのは変わらず、副総長には新たに百鬼夜行の生徒である賽鬼ユウナを迎え入れ、更には逃走中のレッドウィンター部隊とも程なくして合流して──トリニティでは停学処分を受けたクロノとマトイ、ゲヘナからはレティを迎え入れ、更にその他多数の生徒と合流を果たした。

 それを受けて連邦生徒会は、カイテンジャー等と同じく飂熾冘巫髏を指名手配として指定する事に。しかし、かねてより正体不明としてやってきていた飂熾冘巫髏という組織は、あの戦争を経ても未だに全貌が明らかになっているとは言い難い状況であり指名手配されても事態はあまり変わらなかった。

 

 ◆

 

 そして、クロノとマトイが飂熾冘巫髏の本隊へと合流を果たす、少し前のこと────。

 

「無期限の停学……か」

 

「私達は幹部ですし、妥当かと」

 

「ま、それもそーね。あーあ!これでもう、留年は確定かぁ。補習授業部で頑張ってた去年の1年間はなんだったんだろ」

 

「…………すみませんでした」

 

「あん?」

 

「私が……私が、クロノさんへのイジメを、見て見ぬフリしてたから……だからクロノさんは、不登校にもなって、成績不振で補習授業部に入らされた上に、復讐として飂熾冘巫髏に入って……」

 

「……」

 

「全部、全部全部っ、私が悪────」

 

「自惚れんな、バーカ」

 

「っ!?」

 

 ペシッとマトイの後頭部を平手打ちする。すると意外なくらいに目をぱっちりと見開いたマトイが、瞳を潤ませてクロノを見る。

 

「クラスの全員が、私にとっちゃあ敵だったのよ。イジメてくるカスに傍観者を決め込むクズ、だけどあんたは補習授業部でヤサグレてた私にあんたから声を掛けてくれた。確かにあんたもクズだったわ、でも結果的にはマシなクズよ。私からすればね」

 

「……でも、それじゃ遅かった……!」

 

「遅くはないわよ。私はルーシィとガキの頃からの付き合いなのよ?遅かれ早かれ、飂熾冘巫髏として勧誘されたらノッてたわ」

 

「ッ……」

 

「私の方こそ──ごめんね。私についてきたから、あんたも、無期限の停学になったんだからさ」

 

「いえ。それは、私への罰だと思ってますので」

 

「ったく……」

 

 そんな会話をしつつ、トリニティ総合学園を出る2人の前に──1人の生徒が立ちはだかる。紫系のカラフルな髪を風に揺らし、星型のヘイローが頭に追従する、あの生徒。

 

「聞きましたよ、クロノさん!幹部さんだからと、停学になったそうですね!!」

 

「レイサ……!」

 

「騒動が終わった記念に、じゃないですけど!何か甘いものでも食べに行きませんか!?」

 

「はぁ??言っとくけど、飂熾冘巫髏の幹部なのはまだ変わんないからね……?」

 

「それでも今は悪いことしてませんからっ!!隣のお友達の方も!一緒に、どうですか!!!」

 

「え……いや、私は──」

 

「クロノさん!!悪いあなたとは決別しましたが、前に私とお友達だった良いクロノさんとは、やはりお友達なので!い、一緒に、食べ歩きしませんか!良いお店、知ってますよ!!」

 

 レイサのどこか必死さの籠る訴え掛けに、思わずクロノは小さく吹き出してしまう。あの戦争の時、呆気なく崩れ去ったと思った関係が、まさか、まだ続いていたのかと、レイサの言葉に、優しさに心を打たれてしまったのだ。

 

「……そーね、またクレープでも食べに行きましょ!ほら、マトイ!あんたも行くわよ!」

 

「え、でも」

 

「いーからいーから!ほらレイサ、案内して!」

 

「はいっ!!あ、でも!また悪いことしたら、私が止めますからねっ!!なんたってこの私は自警団のスーパーヒーローですから!!」

 

「やれるもんならやってみなさいっ!」

 

 ────こうして無事に和解(?)したクロノとレイサ、更にマトイはトリニティの自治区内にあるスイーツ店を夕方まで食べ歩きし続けた……。

 

 ◆

 

「ハーハッハッハッハーッ!愉快愉快!増えたぞ、新たな戦力が!部員が!人手がッ!!飂熾冘巫髏のゲヘナ部隊とやらの、その大半の吸収に成功だ!」

 

「これからもっともーっと忙しくなるね、部長♪」

 

 なお、参戦していたはずの温泉開発部は、戦闘は殆ど行わず、カスミの超人的な話術と人心掌握術によって、飂熾冘巫髏のゲヘナ部隊の人員の多くを、温泉開発部に取り込んでいた。

 鬼怒川カスミがヒナとモルモへのトラウマを克服する日も、そう遠くはない────かもしれない。




というワケで、遂に次回のプロフ開示後にグループストーリー、絆ストーリーです。
絆では先生との絡みも本格的になるかと思います。実質、次からが第3部の本番と言えるかも。
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