「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
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リエが私に相談したい事があるというので、出張ついでにハドマ学園に向かった。駅から学園までの短い道のりも、今ではもう、登校RTAのように、どれだけ短い時間で着けるか、軽く楽しめるようになりつつあった。
距離も丁度良く、こうするだけで、体力作りにも向いているかもしれない。
「やっ、来たよリエ」
「あ、こんにちは先せ……凄い汗ですわね!?」
「ちょっと走ってきたからね、気にしないで」
「あらあらまあまあ……。そんな、急ぐような事ではないんですのよ?」
「私がそうしたかっただけだから、気にしないで」
「そ、そうなんですのね……」
ちょっぴり顔を引き攣らせながら、いつも通り、温かな紅茶を出してくれた。ナギサくらいとまでは言えないが、やはり彼女もまた、紅茶を淹れるのが上手だ。私もこんなに上手く淹れられれば……。
「────それで、悩みっていうのは……?」
「っ……」
「もし言いにくかったなら、言葉じゃなくて文字にしてみるのもいいかもしれないね」
「それは……えっとその、文字に残ると、私がその、恥ずかしいので……。モモトークの際に、試そうとはしたのですが……すみません、却下ですわ……」
「なるほどね」
文字として残るのがイヤって事ね。まぁ、それは分からなくもない。後から見返して、うわあぁって自分でなってしまうというのもあるだろう。
夜に書いたラブレターを、朝になって読み返すと恥ずかし過ぎて悶絶するアレみたいな。……それとは少し違うか?
「実は私……自分の身体が大きいのが悩みでして」
「…………ふむ」
リエの身長、私と変わらないしな。女子の中ではというよりかは──普通に高い部類に入るだろう。ハスミよりちょっと低い程度ってのは、フツーに、身長デカい部類に入るんだよな。
ここは「リエより大きくて悩んでる子もいるよ」なんて言うのはダメだろう、他人を持ち出した所でリエにとっては根本的な解決になどならない。
これは少し難しい問題だ。その子の外見や身体に関する悩みだ、私にどうこうできる問題ではないと切り捨てるのは簡単だが、私は「先生」だ。可能な限り、手を尽くしてみよう。
「その──なんだろう。身体が大きくって、何か、困った事があったりしたのかな?」
「ロリータファッションが、どこか私に似合わない気がするのです」
「……ん?」
「私、こう見えて、白ロリータファッションが好きでしょう?ですが、ロリータファッションといった言葉の通り、本来コレは少女、幼女向け────。シエルさんのような小柄な体型ならばいざ知らず、私のこの体型でコレを着るのは無理があるのではと思い始めておりまして……」
「……無理は、別に、無いんじゃないかな?」
「そうでしょうか?確かに、先日のフェアにも私に合うサイズはありましたが、明らかに数が少なく、ロリータファッションの本来の客層ではないという見方もできますし……」
「……」
「それにコレ──胸元が少々キツイんですの。少しキツめのブラで締め付けてるのですけど……」
「それは良くない。胸の成長が阻害されるというかキツイのは血流だとか健康上も良くないと思う」
「たとえそうしてでも、白ロリに身を包みたい──そう思ってしまう私はいけない生徒なのでしょう。似合わないのではないか、と自問自答しながらも、それでも私の心は、白ロリを着た自分へと向かってしまうのです」
難しい問題だ。
身体が大きいが故に白ロリが似合わないのではと悩みながらも、無理をしてでもそれを着たい。だが似合わないのでは──といった無限ループの思考に陥ってしまっている。
悩むのは分かる。「ロリータファッション」って名前なら、そりゃ「ロリータ向けじゃん」となる。これは別に仕方の無いことだ。
身体が大きい今の自分に「ロリータ向け」の服が似合うのか、と悩んでしまうのも仕方ない。どうも解決が難しい問題だ……どうしたものか。
「リエの想いは別として、私のような第三者視点で見たら、似合わないなんて事は無いよ。少なくともそれは大丈夫、私が保証する。だから後は、リエの気持ちの問題だと思うんだ」
「私の、気持ち……」
「多分だけれど、リエには、自信が足りていないんじゃないかな?身体が大きいから似合わないって、自分によって、そう思い込まされてるんだよ」
「そんな事は……」
「確かに、身体に見合ったファッションってのも、あるとは思うよ。でも、少なくともリエに白ロリは似合ってるファッションだ。最初は『なんでこの子制服じゃないんだろう』って思ってたけど、今は、白ロリで見慣れてるからね。きっとリエが制服とか着ちゃったら、見慣れなさすぎて違和感しか無いと思うんだ」
「!」
「スズ達ですらも、リエの制服姿は見た事が無いんだっけね。そんなにも長い間、白ロリに身を包んでいるんだ。大丈夫、白ロリはリエの大事な個性だし身体の大きさなんて関係無く、よく似合ってるよ。自信を持っていい」
「……ありがとうございます。自信を持てるように、頑張りますわね♪」
その後、ちょっぴり晴れやかな顔になった彼女とお茶会を楽しんで、シャーレに帰還した。
多分だけど、リエは自分の悩みを解決できないのはもう嫌って程に分かってるから、ただただ、同意が欲しいだけなんだと思う。