「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
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ゲヘナ学園との併合問題も解決し、完全な独立を果たした事で、近隣の学園に挨拶巡りを行うことになったハドマ学園生徒会、
姉妹校とも言えるゲヘナ学園には、一番に再度の挨拶を済ませていた。だから、彼女達の挨拶巡りの次なるターゲットはトリニティ総合学園であった。
というのも、先日の飂熾冘巫髏との戦闘中に──とても好戦的な性格の、現在のハドマ学園首脳陣のレイコが、元ティーパーティーこと聖園ミカに対し戦闘を申し込んでいたからだった。
当時のレイコは「飂熾冘巫髏の元副総長」でしか無かった為に、ミカと戦闘する為には、彼女個人で動く必要があった。
しかし今は、生徒会の会計という、本人が望まぬ形とはいえ首脳陣としての席を確保している。いざ生徒会内で「挨拶巡りに向かう次の学園は」という話題になった時に、上記の「約束」を挙げたので、殆どレイコの鶴の一声で決まったようなものだったそうだ。
「──本日は私共の為にお時間を頂き、深く、感謝申し上げますわ、桐藤ナギサ様、百合園セイア様。後見人としてシャーレの先生にまでお越し頂けて……感謝の気持ちでいっぱいです」
「いえ。私達の方も、あなた方ハドマの方ともっとゆっくりお話がしたかったので……」
「そうだね。私からも、ハドマの議長殿には色々と聞きたい事がある。まぁ、気を張らないでくれ」
飂熾冘巫髏大決戦の前に、実働部隊の会議の他に首脳陣同士の会議もしていたお陰で、両者は既に、初対面ではない。
「ねー、リエ〜。私、ダルいからもう戦ってきてもいーい?」
「れ、レイコさん!?」
「戦いに来てるんですけどー。ねぇねぇ、あんたもそう思うでしょ?聖園ミカ……さん?」
「ふふっ、あなたってば素直な子だね?少しくらい我慢しようとか思わないのかな?♪」
「あんたが我慢するんなら、私もそうするよ?」
「……ねぇナギちゃーん。私、もうティーパーティーじゃないんだし、こんな会議なんて、出席しなくていいよね?」
「いやあの、ミカさん、ちょっと……」
「それに?あんまり放置しちゃうと、この子、戦闘求めて暴れ回りそうだし☆」
「いや別にそんな事はしな────」
ミカのセリフを否定しようとしたその刹那、逆にミカの意図を察知した事で口を噤む。ナギサやリエなどのメンバーがレイコを見やった瞬間──。
「そーねェ、うんうん。お嬢様の言う通りだわー。あんまし我慢させられたら、爆発しちゃうかも♡」
べッ、と赤い舌を見せてあくどい笑みを作った。リエは顔を青くさせながら大きな溜め息をついて、シエルは笑いが抑えられないという様子だ。そしてアンナは会議が止まっているので上の空である。
「それじゃナギちゃん☆ この子の不満、私が軽く解消させてくるから……テキトーに進めてて☆」
「…………はぁあああ〜〜〜〜〜〜〜…………」
「……やれやれだ。ミカは相変わらず勝手をするね。奔放な生徒にはお互い苦労するね……リエ議長殿」
「申し訳ございません、こちらの会計が……」
「なに……それでもミカよりずぅっとマシな方さ」
「えぇ……??」
私は会議の後見人として呼ばれた。これも一応はシャーレの先生としての仕事なので、レイコの方は行けなさそうだ。それについては後でレイコに謝る必要がありそうだ。
◆
「あれ?先生、来てないじゃん」
「先生が居ない方が、私やあなたも好きに戦えるんじゃない?流れ弾や跳弾で怪我させる事も無いし」
「んー。まぁ、それもそっかァ。うん、そうだね。配慮どーも、お嬢サマ♡」
「……生意気だね☆」
「生意気だよ。……つーかさァ……」
中庭へ移動するミカとレイコ、しかしその2人の周辺には監視と言わんばかりのティーパーティーの生徒がゾロゾロと何人もついてきている。
「なに、あんたら?」
「あなたは、ハドマ学園生徒会のお客様ですので。もしもの事が無いようにと予めナギサ様より言伝を賜っておりました」
「あ?もしもの事?……なに、私が負けるとでも?」
「失礼ながら────
「その先?……負けの先って……なに?死ぬの?」
「…………これ以上は、私からは何も」
「フンッ。……ねぇ、ミカさん?あんたさ、私のこと殺すつもりしてんの?」
「あなたが脆かったらそうなっちゃうんじゃない?知らないけど☆」
「……へぇ。あっそぉ。面白そーじゃん……♡」
ミカの言葉から、殺意は全く感じられなかった。しかし、そうする事もできそうな力量はひしひしと肌で感じる事ができた。
レイコは舌なめずりして、ミカとの戦闘に臨む。
「ねぇねぇ、そこのあなた?空砲でスタートの合図お願いできるかな?」
「……ええ、構いませんよ」
ミカに合図を頼まれたその生徒はニタリと口元を釣り上げて引き受けた。大ッ嫌いな、トリニティの裏切り者であるミカが、レイコにより倒されると、そう予想しているから。
レイコが飂熾冘巫髏の副総長だったという事は、もはや周知の事実。当時の映像記録は密かに出回り即ちそれは「レイコの強さの証明」になっていた。
だからこのティーパーティーの生徒を始め、他の数人は、レイコによりミカがボロボロにされる事を心から期待していたのである。
監視を任された生徒達の考えは、大体が、およそ二極化していた。
レイコがミカにコテンパンに倒されるか、ミカがレイコにコテンパンに倒されるか。いずれにせよ、大変な戦闘になるという予想だけは共通していた。
「それじゃ────始めよっか☆」
ミカの言葉を合図に、空砲を空に向けて撃つ。
運動会のピストルのように、その銃声を合図に、ミカとレイコは同時に動き出す。
「ハアッ!!」
「あっはははは!無理無理〜☆」
ミカは貫通、軽装備。レイコは攻撃タイプ不明、特殊装甲。少なくとも今は、両者の攻撃は共に強い効果を発揮する事は無く、チクチクとしたダメージだけが互いに入り続けていた。
「『
「おっ?……おあ゙っ!?」
戦闘開始後、もう何度目かになるミカのNスキル発動。その3回目に、ゴガンッと頭に隕石を喰らうレイコ。しかし血が流れるばかりで大したダメージなんかにはなっていない。
ミカのマシンガンの射程距離は450程度、対するレイコは今はアサルトライフルを使用しているのでおよそ650程度といったところだろうか。
しかしレイコは、敵の射程範囲外からチクチクとダメージを与えるような戦いは好まない。
「……40秒……」
「?」
「……私にとってね、戦闘ってェのは、100秒以内に終わらせなきゃいけないことなのよ」
「へぇ、体力無いんだ☆」
「体力無い……まぁそうかも。段々とハイになってくこの感覚に──アタマがまるで追い付かないッ♡」
両者共に、コストは10までカンスト済みである。それでもコスト6のミカがEXを使用しないのは、使うと敵をすぐに倒してしまうからだ。要はただの舐めプである。
しかし彼女がそう思ってしまうのも仕方がない。ミカのEXは、それだけ多くの者を打ち倒してきた実績もある。
それに加えて、ミカは、戦闘を楽しみたかった。自分に対し真っ向から牙を剥いて戦闘を挑んでくる者など初めてだったから。だからレイコに舐めプと思われようと、戦闘を長引かせる為だけに、敢えてEXを温存していた。
レイコの大体の強さは、飂熾冘巫髏との戦闘中にミカも目にしていた。それでも、ミカの天性の勘と言えるモノが「彼女の本気はこんなものではない」という警告をしていた。それも、ミカがEXを温存していた理由の1つでもある。
────しかしそれにも、終わりの時が来た。
「あんた頑丈過ぎ、石像とか撃ってるより酷い!」
「あなたもねっ!まさか、ハドマみたいな小さめの学校にあなたみたいなのが居たなんて……。あーあ、世界って広いなぁ……!!」
レイコは、ミカが嫌悪するゲヘナ出身であった。けれども、レイコに角は無い上に、ミカはレイコの出身地を知らない。だからなのか、アンチゲヘナの気持ちは、今だけは全く消え失せており、純粋に、彼女との戦闘にのみ集中できていた。
「はーっ……スッゴイ、まるで埒が明かない……!」
「っ!」
「クヒッ……
「……なーんか、ヤバそうな雰囲気じゃん?」
ミカがEXを温存していた、最後の理由────それは、レイコがEXを使おうと余裕で耐えられるだろうといった、根拠の無い自信があったからだ。
ミカは耐久も一級品である。下手すればタンクの生徒と変わらない働きさえできると言える。だからそれで言えば「何の根拠も無い」とまでは言えないだろうが、ともかくミカは、自分なら耐えられるとタカを括っていたのだ。
加えて飂熾冘巫髏との決戦の時、レイコがEXを使う際、ミカはレイコの近くに居なかったお陰で、それを目にする事ができなかったというのもある。
がしかし────実際にEXを使用すると決めた彼女からはとても「嫌な気配」がしていた。ミカが思わず、心の底から警戒してしまう程の。
「その身に刻めッ!破壊神の産声をッ!!」
「あなたの為に────祈るね」
「『荒ぶる破壊神の顕現』ッ!!」
「『Kyrie Eleison』ッ!!」
圧倒的破壊力を込めた破壊音波がレイコを中心に広がり、中庭に面している全ての窓ガラスが一斉に砕け散る。脆い箇所などは、壁にまでヒビが入る。宝石の類のピアスをしていた生徒はそれも砕ける。
レイコのEX──範囲内の者全員に対して攻撃力1340%分の確定会心ダメージ、追加で一定時間銃で攻撃できなくなる特殊効果を付与する。
ミカのEX──対象1人に対し攻撃力1540%分のダメージ──ただしその者の残りHPによっては、最大2倍にまでダメージは増加する。
「ッッ……!!」
「ハーッ、ハーッ……はは、中々やるじゃん……☆」
レイコの場合はまさに最悪のパターンであった。なまじ耐久が高いせいで、通常攻撃ではHPが殆ど減らなかった。そのせいで、ミカのEXを高火力でモロに喰らった。現在の残りHPは──ミカの方がレイコよりも多い。
「……あれ?撃てない……?」
「……♪」
しかしレイコは知っていた。トリニティ最強が、どれだけ化け物じみた強さを誇っているのかを。
レイコは自分の強さに自信を持っている。しかし決して
「勝てるかどうかは実際に戦ってみないと不明」と対外的にも、もしくは味方に対しても言える程に、実は謙虚な心の持ち主なのである。
────だから賭けた。自分がミカのEX攻撃を耐えられるかどうかを賭けた。負ければそれまで。賭けは負けで、勝負も負け。全ては、圧倒的火力を誇るミカを、自分の土俵へと──自分の得意とする戦いの中へと、引きずり下ろす為だけに……。
「あっはははは!!賭けには勝ったね……!!」
「!?」
「勝負はここからよォ、お嬢様ァッ!!」
銃を放り、地面を蹴ってミカに迫る。拳を握り、呆気にとられているミカの左頬を、右ストレートで思い切り殴り抜いた────。
「あぐっ……!ちょ……な、殴り合い!?」
「どうせ銃は使えないんだ。ならその間、ずーっと私にボコられてるつもりィ?トリニティ最強だとか聞いてたけど、大した事ないのかなぁ?」
「言うじゃん……でも顔はダメでしょ、顔はッ!」
「速────」
尻もちをついていたが腕の力も使いバネのように飛び起きた。その速度はまさに、優れた身体能力を有し、それと同時に極めて優れた動体視力を持ったレイコすらも、一瞬反応が遅れてしまう程の……。
「おげっ……!?」
ミカの拳が、レイコの腹に深く突き立てられる。メリメリと嫌な音が鳴り数m、否、数10m吹っ飛び中庭に生えている樹木の1つに、彼女の身体は強く叩き付けられる。
「全く、ヤンチャだなぁ〜。あのね、女の子の顔に傷を付けちゃダメなんだからね?」
「ゲホッ、ゲホッ……。あ゙ー?女の、子?こんな、ゴリラみたいなパワーして……
「あははっ!面白いね?先にゴリラみたいな
「まさか、素の力でここまでのゴリラパワーだとは思わなかったから、ねぇッ!」
パワーだけはミカが上回っていた。このままなら安定してミカが勝利を収めていたであろうことは、客観的に見ても主観的に見ても変わらないだろう。
しかし、今ミカと対峙しているのは、銃弾以外の物理攻撃にも慣れているレイコであった。
「あんたらの武器も寄越しなァ!!」
「きゃあっ!?」
「あっ、ちょっと!?」
2人の目付け役の為に来て周囲を取り囲むティーパーティーの生徒から武器を強奪。武器種は、そのどちらもがマシンガンだ。
そしてゲヘナ学園にてヒナと戦った時のように、マシンガン2丁を銃としてではなく近接武器として利用し、ミカの頭をブン殴る────!
「いった!?」
「……チッ」
「がッ────!?」
ミカの反応から大してダメージが入っていないと判断したレイコは、2丁ともミカの腹に当て発砲。流石に接射されれば、ミカもそれなりのダメージを受けるようで、目を見開いて一瞬──より少し長く数瞬だけ動きを停止した。
「もう、一丁ぉッ!!」
「きゃっ……!?」
鳩尾へパンチ、続けざまの顔面へのハイキック。ミカすらよろめきその場に尻もちをついてしまう。逆に言えば、これでも尻もちで済むから恐ろしい。
「な……なんで
「勝手な思い込み、乙でェーす♡」
「ッ…………!?」
レイコはEXの特殊効果の影響を受けない。だがあの時は敢えて自分から銃を手放したのだ。ミカに
「自分も特殊効果を受けて銃が使えなくなる」と、誤った思い込みをさせる為だけに。全ては、この、不意打ちの銃撃を成功させる為に。
──しかしミカは、ここにきてもう1つ、誤った解釈をしてしまった。
「そうか、もう
「……♪」
「『Kyrie Eleison』ッ!!」
「それはもう
「!?えっ、ちょっと……待」
「ッ!?なんですか急に──きゃああああッ!?」
EXの発動直前、彼女は逃走するかのように身を翻し、身近なティーパーティーモブに向かって全力疾走。そしてミカと自身の間にその生徒を捩じ込みミカのEXを何も知らぬその生徒で受け止める。
「アッハ、すんごい威力♡ やっぱし、素で耐久が無いとこんなもんかぁ。……あっ、盾になってくれてあんがとね♡」
「…………こッ……この……悪魔、め…………ッ!!」
「使えるモンなら何でも使うのが私流のやり方よ。聖園ミカという強者に挑んでいるのはこの私で──今更やり方なんざ選んでられないっつーのッ!!」
レイコの紅の瞳に再び鈍い光が灯る。また
「『荒ぶる破壊神の顕現』ッ!!」
「〜〜〜〜〜ッッッ……校舎にヒビ入ってんじゃん、どんな威力よ、あなたの
「これでも抑えてんのよ……これでもね……!!」
ミカはレイコのEXを素で耐える耐久力がある。しかしそれも無限ではない。数にしておよそ4回が限界といった所だろうか。
対するレイコは、ミカのEXを3回も喰らえば、恐らく、一旦は撃沈可能だろう。彼女は素の回復が早いからこそ逃げて時間を稼ぐ事で回復を図れる。
そして回復と同時に──レイコの破滅的なまでのサブスキルが、日の目を見る事になる。
「……100秒」
「?」
「────おめでとう聖園ミカ。この私をここまでガチに追い詰めたのは、多分、あなたくらいだよ」
「あははっ、よく分かんないけど……あの生徒を盾にしといて、アッサリと負けを認めさせるとでも?」
「あなたは負けを認める間も無く撃沈するけどね」
「……は?…………あはっ。よく分かんないや。じゃ、銃も使えないことだし?また拳で語り合おっか☆」
「拳でやり合うのは──しばらくはいいや」
「あなたが嫌がっても関係無いよ」
「……あっそう……」
ミカの拳が、レイコの顔面に突き刺さる刹那──再び瞳に光を宿るのを、ミカは見逃さなかった。
「『荒ぶる破壊神の顕現』ッ!!」
「え────」
先程のEXの使用でコストは尽きていたハズだ。しかも特殊効果付きのEXだ、そんなに連発できる道理が無い。
しかしレイコのサブスキルは、その無法を現実のモノとしてしまう。己の命中率を引き換えにして、コスト無視でEXを連発してしまう。味方も従えた集団戦なら、ただの自爆とも取れるスキル。しかし今回のレイコに味方は居ない、見事なまでに完全な1対1だからこそ、最後の最後に美しく花開いた。
「がッ…………く、このッ……!!『Kyrie……」
使用不可。一度レイコのEXを受けてしまえば、そこから10秒間、
「なんで使えないの、こんな時にッ──!!」
「こんな時、だからでしょ?」
「このッ……!!」
「『荒ぶる破壊神の顕現』ッ!!」
「きゃあああっ……!!」
「『荒ぶる破壊神の顕現』ッ!!」
「────ッッ……」
破壊的なまでのEXスキルの連発は、対戦相手のミカのみならず、周辺の生徒にも影響を及ぼした。そして何より、レイコ本人にも……。
「…………ゲプッ……!?」
共振破壊を誘発させる破壊音波を連発したのだ、レイコも無事では済まないのは自明の理だ。ミカが気絶しヘイローが消失、それを見届けた直後、気が抜けたらしいレイコもまた、血を吐いて、その場で気絶してしまったようだ。
◆
次回────反省会(またはアンナ編第1話)
多分だが、レイコはネル、ツルギには正面戦闘では勝てなさそう。レイコの厄介な所はどんな戦いにも適応可能な所だから、もしボロカスに負かされたらガチガチにガンメタ張る対策を練る。
手段を選ばないのは騎士道精神には反するけれど、そもそもレイコは自分を「最強を目指す者」としか認識してないので、どんなに泥臭くて汚い手段でも堂々と使えてしまう。
ある意味、無敵の人に近い精神構造をしている。