※この作品はR-18です。

「先生!もっとあたしらに構って!」   作:アキラゼミ

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 ──飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)・副総長、博愛(はくあ)レイコとの戦闘が始まった。彼女は「最強を目指す者」を称するだけあって、かなりの手練だった。

 統治委員長でありハドマ最強を自称するスズと、付き従うルビーの2人を同時に相手して、負けてる様子をまるで見せない。

 

「……今です、先輩ッ!」

 

「せぇぇーーーのッ!!」

 

「……!」

 

 前後からの挟撃だ、アサルトライフルを1丁しか所持していないレイコは対応できない。

 彼女はまず、一撃一撃の攻撃力に優れるルビーへ攻撃を加える。被弾し後退するルビーに対し更なる追撃をと肉薄するレイコだが……。

 

「はぁぁああっっ!!」

 

「!!」

 

 ガガガガガガガッ!とスズの凄まじい攻撃の雨がレイコを一身に襲う。スズのSSが「空腹状態」をスズ自身に付与する事によって、レイコが倒れずに戦闘が継続される事により、30秒が経つ毎にスズの攻撃力は2.9倍される。

 

「ふふ……ケッコーやるじゃない、センパイ……♡」

 

「〜〜〜〜〜っっ……何でまだ倒れないのよ……!」

 

「さぁ?先輩の攻撃が地味なんじゃない?まぁでもセンパイよりも総長の攻撃の方が地味だけどねー。チクチクチクチクと、針(・)でも刺すみたいにダメージ与えてくんのよ」

 

「んなこた、どーでも、いいのよぉぉっ!!!」

 

「!」

 

 戦闘開始から1分。スズの攻撃力が更に2.9倍に。今回の敵はレイコ1人だけであるせいで複数の敵が居ることが前提のNSによる恩恵は受けられない。しかし、SSの「空腹状態」とPSとを併用すれば十分に攻撃力は上がる。

 

「80、秒ぉ……ッ」

 

(敵がカウントしてる?)

 

(……何か……マズイ……!)

 

「ルビー、仕留めるよッ!!」

 

「ハイッ!!」

 

 戦闘開始から、1分と20秒が経過。疲労からか、レイコの攻撃がめっきり2人に当たらなくなった。流石に腕利き2人が相手ではキツイらしい。

 好機と見たスズはルビーに合図を出し、再度共に攻撃を仕掛ける。コストは7溜まっている、ここでトドメとしてルビー(コスト5)とスズ(コスト2)のEXを同時に発動し、ジ・エンドだ。

 

「「これで…………終わりよォ(トドメです)ッ!!!」」

 

 ──勝てる。何本もあったレイコのHPバーが、残り1本目の半分しかない。これくらいであれば、今のスズの攻撃力なら、通常攻撃でも倒せる。いやここは万全を期してコスト2溜まったらEXを使い彼女を倒した方が確実だろうか────。

 

「『荒ぶる破壊神の顕現(EXスキル)』」

 

「「え」」

 

 キィィン──と聞こえるか聞こえないかくらいの甲高い音が鳴り響く。紅色に眼を輝かせたレイコは大きく口を開け、聞こえない叫び(・・・・・・・)を上げた。

 

「ッ……!?」

 

 するとレイコを中心に爆発でも起きたかのように瓦礫やら壁やらが吹き飛ばされ、窓ガラスなんか、窓枠すら残さずに吹き飛んでしまった。

 私は──私だけでなくスズにシエル、リエも特に何ともない様子だったが、唯一、ルビーだけが耳を塞いでその場に倒れ込んでしまった。

 スズはそんなルビーに駆け寄ろうとするも、未だ戦闘は継続中である。さっさとトドメを──と銃を構えるが、何故か、攻撃が不発に終わってしまう。

 

「え……な、なんでよ……!?攻撃、できない……」

 

「単純に、そーゆースキルだから、よ……。この私のEXスキルは敵も味方も関係ない(・・・・・・・・・)……機械も構造物も全てを破壊する…………!!」

 

「じ、じゃあ、私の銃は……ッ」

 

「あァ……武器に関しちゃ、例外よ……。10(・)秒だけ(・・・)、銃で攻撃できなくなる、だけだからさ……」

 

「何よそれ……メチャクチャじゃない……!!」

 

 声を震わせながら、ズ、ズッ、と後退る。そんなスズに反して、耳と膝を押さえながらも、ルビーが立ち上がる。

 

「あなた……私と同族(・・)でしたか……」

 

「────ヘェ?じゃあ、あなたのそれ(・・)って、別に演技じゃなかったんだ?」

 

「ええ、お陰様で特に大ダメージ受けました。でも幾ら同族だからって……こんな強烈なのは有り得ないはずなのに……」

 

「有り得るんだな〜、これが……♪」

 

 同族、演技じゃない──、2人にしか分からない会話が続く。すると、遂に我慢できなくなったか、怯えきった様子で、声を震わせながらスズが叫ぶ。

 

「何よ、何なのよっ!?同族?何言ってんのよ!?まさかルビー、飂熾冘巫髏(そいつ)の仲間なんじゃ……」

 

「違いますよ……。えっと、簡単に言うと、レイコは私と同じ、吸血鬼です……」

 

「……えっ」

 

「日焼け止めが欠かせない私と違って、どうやら、素で太陽を克服していそうですが……。恐らく彼女は私などとは違う────『突然変異個体』……!!」

 

「突然変異……?」

 

「ええ、そうでないと今の攻撃(EX)は──今の超音波の威力は有り得ない。遮蔽物(瓦礫)すら破壊する威力なんてそんなの、御伽噺ですらない……ッ!!」

 

「……そっ。変幻自在の超音波(・・・・・・・・)による『共振破壊』、これが私の神秘(のうりょく)。ホントはこんなとこで見せる予定無かったんだけど、思ってたよりもずっとあんたら強かったからさ」

 

「「……」」

 

「私のSS、ガチでクソでさ。私にとって戦闘は、100秒以内に終わらせなきゃいけない事なの。所謂短期決戦型ってヤツ。だからね、悪いけどリミットだからさ。使用(つか)わせてもらうわ……!!」

 

 瞬間、レイコの眼が再び紅く光る。またさっきのアレが来る。その前にスズのEXスキルでレイコを倒せばいけると思いEXの指示を飛ばすが……。

 

「なんでっ……まだ、使えないのよぉっ……!!」

 

「先輩、伏せてっ……」

 

「──────ッ!!」

 

 スズのEXはやはり封じられたままで──私達は為す術なくレイコによって蹂躙されてしまった。

 画面に表示される赤い「DEFEAT」の文字……もう打つ手無しなのかと思った、その時。

 

「お待たせしました、シエル先輩っ!!」

 

「うわー……ぐっちゃぐちゃですねー……。校長室が吹き飛んで部屋と廊下が繋がってる……広い……」

 

 レイコの背後に現れたのは、七天魔に数えられる2人の少女。失楽園書記、天河アンナ──そして、美食研究会対策委員長、三重アスカだった。

 

「あんたら遅い!スズ達、負けちゃったでしょ!?コンティニューさせんのも心苦しいってのにっ!」

 

「はわわわ……あっ、アスカちゃん、早く2人のこと回復させないとっ……!」

 

「うん、そーだね。とりあえず先輩、激甘クッキーどうぞ〜。ルビーちゃんも、ほら食べて食べて♪」

 

「くっ……今はこの甘さに助けられてるわね……」

 

「……ありがとうございます、アスカ先輩……」

 

 七天魔唯一のヒーラーであるアスカの手により、傷付いたスズとルビーは回復を果たす。それを見てレイコは、ニタリと口角を釣り上げる。

 

「へぇ?コンティニューするつもりなの?ここまでボロクソにやられておいて?私はもう回復してるし別に構わないけど……」

 

「そうよ!まだやれるわよね、ルビー!?」

 

「ええ、少し難聴気味ではありますが……」

 

「その辺は私達でカバーするから安心しな!ねっ、アスカ!アンナ!」

 

「「はい!」」

 

「シエル先輩が参戦……!?」

 

「まァ、リエを守りながらにはなるけど、イけないコトは無いかなって。リエが居れば助かるけど今のリエには酷(こく)でしょ?」

 

「……ま……誰よりこの場に思い入れあるしね」

 

「そーゆーことっ!んじゃ先生、指揮任せたよ☆」

 

"うん、任された"

 

"絶対にここであの子を止めよう"

 

「「「「「了解(はい)ッッ!!!」」」」」

 

『編成された生徒さんの確認をお願いします!』

 

『STRIKERが3人、SPECIALが2人の編成です』

 

 今回は回復済みのスズとルビーに加えて、新たにシエル、アスカ、アンナが参戦した。コスト回復力だけでなく、スズ以外のアタッカーが増えた辺り、スズの「空腹」を維持しやすくなった。かなり高い水準で彼女の攻撃力を維持できるようになった、と言えるだろう。

 しかも、スキルの関係からか、今回のリーダーはスズではなくシエルに切り替わっている。アロナ、これは名采配が過ぎる。シンプルに有難い。

 

 

 

 弖使魔(てしま)シエル

 STRIKER(MIDDLE)

 レア度:☆3

 クラス:アタッカー

 射程距離:650

 攻撃タイプ:神秘

 防御タイプ:特殊装甲

 屋内戦:B

 屋外戦:SS

 市街地戦:B

 

 EX:こんな世界、燃え尽きろ!(コスト5)

 敵全体に攻撃力365%分の火傷持続ダメージ(36秒間)

 

 NS+:気分アゲてこ〜!+(強化時)

 15秒毎に一番近い敵1人に対し攻撃力115%分のダメージ

 

 PS+:私についてきな!+(強化時)

 攻撃力を11.5%増加

 自分がリーダーの時、追加で8.5%増加

 

 SS:天に弓引く愚か者

 25秒毎に手榴弾を投擲して、一番HPが低い敵を中心にして円形範囲内の敵全体に攻撃力514%分のダメージ

 

 固有武器:アサルトライフル

 

 

 

 三重(みえ)アスカ

 SPECIAL(BACK)

 レア度:☆3

 クラス:ヒーラー

 射程距離:450

 攻撃タイプ:神秘

 防御タイプ:重装甲

 屋内戦:A

 屋外戦:C

 市街地戦:A

 

 EX:オヤツの時間だよ!(コスト3)

 範囲内の味方全体に対し治癒力の145%分の回復

 

 NS+:過去と未来を視る悪魔+(強化時)

 15秒毎に、残りHPが一番少ない味方の防御力を33.4%増加(重複可)

 

 PS+:最高の癒し手+(強化時)

 治癒力を25.5%増加

 

 SS:頑張れば勝てるよ!……多分ね

 HPが半分未満の味方が2人以上の時、攻撃力を35.5%増加/50秒毎に最も残りHPが多い味方1人のHPを治癒力の130%分回復

 

 固有武器:ショットガン

 

 

 

 天河(あまがわ)アンナ

 SPECIAL(BACK)

 レア度:☆3

 クラス:アタッカー

 射程距離:1000

 攻撃タイプ:爆発

 防御タイプ:軽装備

 屋内戦:D

 屋外戦:A

 市街地戦:S

 

 EX:下克上のとき(コスト4)

 攻撃力の990%分のダメージで敵3体を撃ち抜く

 

 NS+:観察者より愛を込めて+(強化時)

 25秒毎にHPが最も低い敵に対し攻撃力800%分のダメージ

 

 PS+:神を見る者+(強化時)

 命中率15.5%増加

 

 SS:神の栄光

 爆発タイプの味方全員の攻撃力を20%増加

 

 固有武器:スナイパーライフル

 

 

 

「…………」

 

 アンナのSSだけあまりにも──あまりにもだ。嘘だろオイ、とツッコミを入れてしまいたくなる。

 だってこのパーティの攻撃タイプで言うのなら、スズは貫通で、ルビーは振動で、シエルとアスカは神秘。……爆発は、アンナだけだ。

 なんという噛み合わなさ。まるで、トリニティのティーパーティー。ミカ達のような噛み合わなさと言わざるを得ない。

 

「……アロナ、レイコのスキルも見れるかな?」

 

『はいっ!』

 

『一部、不明な情報あり。警戒してください』

 

 

 

 博愛(はくあ)レイコ

 STRIKER(FRONT)

 レア度:☆3

 クラス:アタッカー

 射程距離:?

 攻撃タイプ:?

 防御タイプ:特殊装甲

 屋内戦:A

 屋外戦:SS

 市街地戦:S

 

 EX:荒ぶる破壊神の顕現(コスト10)

 自分を中心とする特大円形範囲内の生徒に、敵や味方を問わず攻撃力1340%分の確定会心ダメージと10秒間銃での攻撃ができなくなる効果を与える

 戦車、ドローン含む機械系、遮蔽物、構造物等は問答無用で破壊

 EX使用後は攻撃力が10%増加

 

 NS+:幼き破壊神+(強化時)

 敵を倒す毎に攻撃力が15%増加

 20秒毎に一番近い敵に攻撃力850%分のダメージ

 

 PS+:強者との戦いを求めて+(強化時)

 ハドマ学園に所属している生徒の攻撃力が18.5%増加

 ただし「飂熾冘巫髏」に所属している生徒のみ、攻撃力が30.5%増加

 

 SS:眠りのとき

 10秒毎に命中率が10%減少する

 100秒経過で命中率が100%減少した後はノーコストでEXを連発する

 

 固有武器:?

 

 

 

 待て待て待て待て。屋内適正Sのスズとルビーが圧倒されているのに、レイコの屋内適正はAだと?スズとルビーよりも下回っているじゃないか。

 適正ではこちらが既に下なのに、レイコには更に市街地、屋外といった、2段階ものパワーアップが残ってるというのか。シエルの「屋外:SS」しか釣り合っていない。

 

「いやちょっと待って、射程は?固有武器は?攻撃タイプすら分からない……のかな?」

 

『少なくとも今はアサルトライフルを装備しているみたいですが……』

 

『不明。彼女の「適正武器」が、割り出せません。どの生徒にも、適正の武器種があり、合法や違法を問わず銃火器が流通している今のキヴォトスでは、誰もが固有の武器を所有しているハズですが……』

 

『もしかしてレイコさんは、先生と同じ────』

 

『適正らしい(・・・・・)適正を持たず(・・・・・・)、ありとあらゆる武器を(・・・・・・・・・・)

扱う事が可能(・・・・・・)……と見た方が良さそうです』

 

「…………ッ!!」

 

 完全に盲点だった。私自身が前に検査した時は、スナイパーライフルが最も適正アリだった。ただしこれは、あくまでどの武器も扱える中で(・・・・・・・・・・)最もコレが使いこなせるであろう、という話だった。

 だからこそ私は、サオリとの訓練の中であらゆる武器を扱えるように鍛えているんだから。

 でもこれは、神秘を持たない私だからこそだと、心の中で、そうタカを括っていた。それがまさか、生徒の中でそんな子が出てくるだなんて。

 

「ッ……全員、警戒ッ!!距離を保つんだッ!!」

 

「えっ」

 

「AR(アサルトライフル)だし別にそんな……」

 

「……やっぱ気付いちゃうかァ♪」

 

「「「ッ!?」」」

 

 ポイッとARを放るレイコ。すると飂熾冘巫髏の構成員が逃げる際に捨てて行ったであろうSRと、更にはGLを拾い上げて構えた。

 

「……ッ!?なんでそんなもの……」

 

「ARは弾切れな上に、どちらも付け焼き刃よッ!全員で掛かれば勝てる!!」

 

 ダメだ──生徒達は「自分の武器しか使えない」という常識に慣れ過ぎている。慣れ過ぎているから警戒させようとも心から受け入れてもらえない。

 けれども、もう遅い。戦闘は既に始まっている。どうにか、最善の結果で終われるように、生徒達を指揮しなくては。

 

「最初のスキル3枚は────」

 

 最初に選択可能なスキル3つはアスカ、シエル、ルビーのモノ。回復のアスカが居るのなら有難い、この盤面で一発クリアしなくては。コンティニューなんか、したくない。

 

「ちっ、威力無いなぁGL(これ)。MG(コイツ)ならどうッ!?」

 

 GLを投げたかと思うと、今度はMGを引っ掴みSRとは別の方向に構える。重心が大きく変わったことによってフラついたと判断したスズとルビーは一気に畳み掛けようとするが────。

 

「オラオラオラオラァァァッ!!」

 

「〜〜〜〜〜ッッ!?」

 

「キャアアアッ!?」

 

 接近したスズとルビーをMG、そこから少しだけ離れたシエルをSRで的確に狙撃し蹂躙していく。フラつくも何もあったものではない。というより、ハナからそんなモノは無かった。ただひたすらに、一方的に蹂躙されていく……。

 

「スズは、もっと攻撃力を上げてからスキルブッパしていくとして……。アスカ、回復お願い!!」

 

「はーい」

 

 それぞれのHPを、アスカのEXで癒していく。続いてルビーのEXで大きめにHPを削る。ここでコストは8も消費しているので次にスキルが使えるようになるまで少し耐える必要がある。

 次のスキルはスズ、シエル、アンナのどれかだ。やはりここは、アンナで削って、シエルでスリップダメージを与えつつ、ルビーで大ダメージを与え、アスカで回復────そこでやっと時間的には1分手前辺りに到達するだろうか。

 そうするとレイコの命中率は60%減る事になる、目標としてこの辺りの時間に設定しておこう。

 1分40秒でレイコのEX連発ゾーンに入るので、こうなれば負け確定。最悪でも、1分30秒でスズの攻撃の倍率が×2.9³になった瞬間に倒さなければ。

 

「────にしても、凄い攻撃力の上がり方だね。最大効率でバフを掛けたミカよりもエゲツナイよ、数字だけ見れば……」

 

『そうですね、90秒敵を倒さないだけで約24倍もの攻撃力に達する生徒さんなんて見た事も……』

 

『流石は暴食の王────と言った所でしょうか。常識に囚われませんね』

 

『そもそもスズさんは、スロースターターみたいな所がありますからね!素の攻撃力が低めなところを他のスキルで補っている、といいますか。だから、数字の跳ね上がり方だけで言うならキヴォトスでも最高かも……』

 

『逆に言うなら、今スズさんが戦っている相手とは人生最悪レベルで相性が悪い……という事です』

 

 大器晩成型のスズ、超短期決戦型のレイコ──。トコトン、タイムアタックに向いていない性能だ。平均的なパワーの方が、編成しやすいというもの。

 しかもスキルの内容的に、スズは味方が多い方が真価を発揮しやすく、単騎だと殆ど強みが薄れる。

 しかしレイコはその反対で、彼女のEXは味方も巻き込むので、単騎の方が真価を発揮するという。本当に、対称的な2人だ。

 

「あーあッ、ホントに困るわ!どぉして腕ってのは2本しかないのかしらァ!?もっと腕がありゃあ、武器だって選り取りみどりだってぇのにさァッ!!ハァァアアアアッッ!!」

 

「くぁっ……あああ゙あぁあっ……!!」

 

「アスカ先輩、回復をっ……」

 

「待ってルビーちゃん、まだ……」

 

「し、支援します!」

 

「くっ、こんなの……こんなのってぇ……!!」

 

 今度はSRすら放り、MGを拾う。最悪な事に、MG2丁になってしまい一気に前線の3人の体力を削りにかかる。やがて3人の中で一番体力が削れてしまっていたルビーがダウン──次いでシエルまでダウンし、最後にはボロボロのスズだけが残る。

 

「もうHPもスッカラカンでしょう?センパイ♡」

 

「……そー、かも、ね……ゲホッ、ゲホッ……」

 

「戦闘開始から70秒……ってとこかな?どぉ?まだ、私に勝てるつもりしてる?」

 

「…………勝たなきゃ、ダメなのよ……!」

 

「それは、ゲヘナとの併合が嫌だから?」

 

「そうに決まってんでしょーが……!!」

 

「ふぅん、そっか。でも、もう遅いよ。私なんか、陽動に過ぎないんだから」

 

「……え?」

 

「今頃、総長が万魔殿の議長と会談に臨んでるよ。そこで正式に、調印式が行われるの。ハドマ学園をゲヘナ学園の一部とします────ってね♡」

 

 この場の全員が、絶望の表情を浮かべる。しかしこの言葉を聞いてずっと絶望に打ちひしがれていたリエがハッと顔を上げる。

 

「────いや!それは、不可能ですわ!他校とのやり取りには印が必要です!『調印式』の名の通りハドマ学園生徒会として、失楽園としての『印』が必要になる!!そして、その印は────」

 

「『私が金庫に入れて保管している』、でしょ?」

 

「な……んで……っ……まさか……まさか(・・・)ッ!?」

 

「お察しの通り♡ もう学園(ここ)にはありませーん♡」

 

「────っ!!」

 

 ベッと紅い舌を出して笑うレイコ。それを聞いて弾かれたように飛び出したリエは、すっかり瓦礫に埋まってしまったかつて自分が座っていた席の下の床を開け────がらんどうの空間を目の当たりにしてしまった。

 

「埋め込んだ金庫ごと持っていかれてる……!?」

 

「なんか苦労したっぽいよ、引き抜くの。流石に、床を丸ごとくり抜くワケにもいかないらしくって。くり抜いた方が早いんじゃないのって言ったのに、労力がどうのって却下されてさ」

 

「誰、が……こんな事を……!!」

 

「総長に決まってんじゃん。私は陽動っていうか、学園の制圧を任されただけだから」

 

 壁ではなく床に埋め込んでたのか。しかも自分の足元の床板の下という徹底した隠しっぷり。もしやここまで酷く部屋が荒らされてるのは金庫を探した名残りなのだろうか。

 

「なんで、どうして!?印の隠し場所を知るのは、生徒会長の私と、副会長の(・・・・)ルーシィさんだけ(・・・・・・・・)のハズだというのに……っ!!」

 

 その場の全員がその名にハッとした。そして場の全員が察してしまった。ルーシィが、ハドマ学園を裏切っていたのだと。

 

「ま、待ってよっ?ルーシィは何処よっ!?スズとルビーだけで戦ってた時から連絡もつかないのよ!ヘルプに来てくれたのはアスカとアンナだけだし、ルーシィ、まさか学校に来てないっての!?」

 

「────まさか、ルーシィさんが……?」

 

「リエ!ルーシィ何処に居んのか知らないっ!?」

 

「きょ、今日は、足りなくなった備品の買い出しをお願いしていまして……。ですから今日は、元から、午後からの登校の予定ですし……」

 

「午後登校って、もう、1時を過ぎてんだけど!?ルーシィがあたしらを裏切ったっつーの!?」

 

「そんなハズありませんっ!ルーシィさんが私達を裏切るハズなど、決して!」

 

「っっ……おい、あんた!レイコ、だっけ!?」

 

「どしたの?……連邦生徒会対策委員長さん?」

 

「あんたら飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)のアタマは──総長はッ!!針村ルーシィ……なのっ……!?」

 

 シエルの叫ぶような問いかけに副総長のレイコがどう答えるのか。全員の視線が、レイコに集まる。リエはルーシィを信じたい。それ以外はルーシィが裏切り者なのだと殆ど確信していた。

 私も──エデン条約事件のミカの事があったから首脳陣さえ疑える思考回路は、持ち合わせている。ミカという前例があるのだから、絶対に無いなどと口が裂けても言えない。しかしレイコはそんな私の予想を見事に裏切った。

 

「え、全然違うけど。総長は『ルージュ』よ」

 

「「「「「えっ」」」」」

 

「……そ……そう、でしたか……!」

 

「てか身内疑うとか、無いわー。針村?ってそれ、確か、うちの学園の副会長さんだよね?……副会長、かわいそー……」

 

「「「「「…………」」」」」

 

「そっかぁ、副会長、お買い物に行ってるんだね。じゃあ、お買い物から帰ってきたら、学校潰れててびっくり仰天だ♡」

 

「あ?」

 

「えっ」

 

「なっ」

 

「は?」

 

「はい……?」

 

 スゥゥゥゥゥ────と大きく息を吸うレイコ。その瞬間、私は、何が起きるのか察してしまった。同じく察したらしいルビー、スズは武器を捨て耳を塞いでしゃがみ、そして……。

 

「「「みんな伏せてっっ!!!」」」

 

「『荒ぶる破壊神の顕現』ッ!!」

 

 私とスズ、ルビーは、同時に皆に警告を飛ばす。その直後にレイコはEXスキルを発動し、今度は、周辺の壁や床の破壊だけでなく、ヒビの入っていた天井を崩落させ────学校そのものも、やがて、ダイナマイトでも爆発させたかのように物の見事に崩壊してしまった────。

 

 ◆

 

「……」

 

 学校の崩落に巻き込まれたものの、例によって、私自身はアロナのバリアにて事なきを得た。しかし私の近くではスズが、ルビーが、シエルが、リエ、アスカ、アンナが……血を流して倒れていた……。

 しかし、レイコ本人の姿は何処にもない。しかも一部とはいえ、飂熾冘巫髏の構成員も学校の崩落に巻き込まれているようだった。どこまでも、味方も敵も気にしない子だ。

 

「……アロナ」

 

『……はい』

 

「これは……負けイベ……ってヤツなのかな……?」

 

『それは……私には、何とも……』

 

「アバンギャルド君とエリドゥで戦った時みたいな感じが……するんだよね……」

 

『敵の体力もそれなりに削れているからこそ、負けイベントなのかどうか、判断に困りますね……』

 

『────演算終了。先生、演算結果が出ました』

 

「え……?」

 

『私の演算によると──、シエルさん、スズさん、ルビーさん、アスカさん、アンナさん、以上5人のパーティでレイコさんに勝てる見込みは、0です』

 

「…………じゃあ、これは…………」

 

『はい。恐らくは……先生の、ご想像の通りです』

 

「ッ…………なんだよ、それ……ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第4話

 

負けイベント

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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