「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
「ハロハロ〜、
「……貴様が『
「そーだよー?こんな可憐な乙女で意外かな?☆」
「思っていたより、普通だな。カリスマのカケラも無いように見える。本当に貴様があの荒くれ集団の首領なのか?」
「疑うんならそれでもいいんじゃない?それより、さっさと始めようよ、調印式さ。これからちょっと予定あんのよ」
「キキッ、たった2人だけで行う調印式というのも変な話だがな」
「アハッ、違いないね」
ゲヘナ自治区とハドマ自治区の境の某所にて──お忍びで学園を抜け出してきたらしい万魔殿議長の羽沼マコト、そしてレイコをハドマ学園制圧に派遣してきた飂熾冘巫髏の総長は、調印式を始めた。
それぞれ合意を示す為の「印」を所持している。しかし調印前にマコトはある事を総長に確認する。
「最後に確認したい。貴様らは本当にハドマ学園を手中に納めたのか?ハドマの統治委員長とやらは、並の強者では倒せやしないと耳にした事があるぞ。その『印』を盗むくらい、誰だってできるだろう。夜中に忍び込めば済むのだからな。なれば、学園を乗っ取った確固たる証拠が欲しいところだがな?」
「うっさいなぁ、制圧どころか学園の破壊だとか、生徒会長の我猛リエの無力化まで完了してるって。写真、見せたげよーか?さっき『制圧完了〜』って部下から送られてきた
「────翼の無い白ロリータファッションの女、透き通る翼に、黄色の長髪──成程、確かに、予めこちらで入手していた我猛リエ、鐘蟲スズの特徴と一致している……」
「ご覧の通り学園は崩壊してる。そして生徒会長は無力化済み。これはどの学校、学園もそうだけど、権力者のトップである生徒会長が機能しなくなった場合、その学園、及び周辺の自治区における全ての権限は……
「キキキキキッ!まさか、テロ組織の首領が生徒会副会長とはな!提案を聞いた時には目を剥いたぞ。しかし貴様──この罪、外患誘致では済まないぞ?とんでもない事を考えるものだなぁ……!」
「外患誘致もクソも無いわよ。それに私はただ──惚れ込んだヤツの望みを叶えてやりたいってだけ。ただ……それだけなんだから」
「ほう……?キキキッ、面白そうだな。聞かせろ」
「……。あんたに話す義理は無いわ。そんじゃあね。私、リエに買い物頼まれてんのよ」
「おい待て。何処へ行く。まだ調印していないぞ」
「え?……あ、そーね。んじゃ、あんたが押してよ、議長さん。はいこれ、『印』はあげるから」
「何だと?……貴様、どういうつもりだ」
「私が調印しようがあんたが勝手に調印しようが、どっちにしても同じ事よね?この場には2人きり、しかもハドマ学園はゲヘナ学園と併合するんだし、その『印』は最早あんたのモノよ、羽沼マコト」
「あァ、全くその通りだ。だが私は用心深いんだ。貴様が調印しろ、そして拇印と署名も頂く」
「ちっ。なんだ、あんた、しっかりしてんじゃん。どこの誰よ『羽沼マコトは付け入る隙がある』とかほざいたのは……」
「キキキキッ!残念だったな!さぁ貴様の拇印諸共調印しろ!朱肉ならばこちらにあるぞ!」
「……小指でいい?」
「バカを言うな。────全部の指だ」
「はぁ!?全部って……」
「なぁに、これは
「ッッ、これだから悪魔同士の取引は嫌なのよね。お互いに腹の探り合いになるから気持ちが悪いわ」
「キキッ、あァ、全くその通りだな。同意するよ、ハドマ学園
「────ほいほい、と。名前も書きましたっと。じゃあ、この『印』はそっちで保管してよね。私が持ってちゃ、向こうで身体検査とかあったら速攻でバレちゃうもの」
「何ッ?お前、まだ正体をバラしていないのか?」
「当たり前でしょバカなの?飂熾冘巫髏は『総長は勿論、幹部すら顔を見せない』正体不明の組織よ。ただ、スズを制圧できるのはレイコだけだからね。今回は私達にとって総力戦の一歩手前だったのよ」
「お互いに苦労するな、目の上のたんこぶには」
「ええ、本当にね。──じゃあ、後は連邦生徒会やクロノスにこの情報を流して……」
「『ハドマ学園併合を公のモノとする』────!キキキキッ、楽しみにしているがいい……!!」
「そして、ハドマ学園併合の情報の開示と同時に、
「
「そいつはレイコに言ってもらわないとねー」
「おっと、そうだったな。キキキッ……!」
◆
ハドマ学園崩壊から数日後────私はスッキリしない思いのまま、業務に向かっていた。
学園が崩壊したあの日、私は、大人のカードにて救護騎士団や救急医学部の生徒を召喚し、もしくは電話などで呼び、負傷者の治療をしてもらった。
その後は皆で瓦礫の撤去を行い、行方不明者など発生していないかを確認……。
しかし元から治安の悪い学校で、出席率も悪く、行方不明者なのか単にサボッているのか、はたまた飂熾冘巫髏の構成員で退散したままだったのかは、遂に、誰にも分からずじまいだった。
しかも何より最悪な事に、生徒会長であるリエ、更にはアスカが崩壊に巻き込まれ意識不明の重体に陥り、つい先日まで入院していた事でハドマ学園における学校機能が完全に停止してしまっていた。
その間、スズやルビーを始めとする統治委員会や生徒会の残りのメンバーが頑張ってくれていたが、それでもまだ、足りないと言わざるを得なかった。
────これらの、学園崩壊、生徒会長他数名の意識不明などについては、大々的に報道された。
「他に私に出来る事は無かったのかな……」
「負け戦だったのでしょう?なら仕方ないですよ。時には諦めも肝心です。私のようにね」
「……今、ハドマ学園の子達はプレハブ校舎だから、大変そうだし……差し入れでもするかな」
「無視しないでくださいよ」
そして、裏切り者の可能性があると
「ルーシィ」とは別の「ルージュ」といった名前が出ていた事などなどから、彼女への疑いは晴れた。
寧ろ、負傷者の救護やら瓦礫の撤去やら、かなり尽力してくれていた。そんな彼女を疑うなんてと、私を含めリエ以外の全員がルーシィに対し罪悪感を抱いていた。
「────はい、こちらシャーレの先生専属秘書、不知火カヤです。……ゲッ、リン行政官……。はい……え、緊急の会見?はい、はい。ええ分かりました、確実に伝えておきます。はい……失礼します……」
「……?リンちゃんから電話?」
「ええ。ハドマ学園について、緊急の会見を行うと言っていました」
「えっ?」
「とりあえずクロノスチャンネルつけましょうか、話はそれからです」
クロノスチャンネルの中継をつける。いつも通りリンちゃん他、連邦生徒会の幹部格が並んでいる。以前なら、あそこにカヤの姿もあったのに……。
◆
『────緊急の招集にも関わらず、お集まり頂きありがとうございます。今回の会見についてです。この度、とある1つの学園の併合が決定致しましたので、通達、及び広報が目的で会見を開きました』
『その学園とは一体どこの学園でしょう!?』
『ハドマ学園です』
『ハドマ学園と言うと、ゲヘナやトリニティ、更にヴァルキューレやらレッドウィンターからも程近い自治区が細長〜いあの学園ですね!?』
『はい。そのハドマ学園です。この度ハドマ学園とゲヘナ学園の首脳陣が『両校を併合する』と合意に至ったと、
『なんと!それにしても急ですね!?』
『実は、兼ねてよりハドマ学園には連邦生徒会からゲヘナ学園と併合する事等々を、何度も提案させて頂いていました。理由と致しましては、学校機能の維持が難しい事、及び機能の衰退──1つの学校の形を維持する事が少し前から難しくなっていた──というのが主な理由となります』
『その、度重なる連邦生徒会からの打診について、やっと頷いてくれた──という事でしょうか!?』
『先日報道されたハドマ学園崩壊の話題は、皆様の記憶に新しいと思います。事件の際に、生徒会長が意識不明の重体となってしまった事もまた、当時、報道されていたと思います。学校を運営する上での全権限が、その時、
『な、成程っ!確かに、副会長という役職は会長の補佐であり、会長の予備──という言い方は語弊があるでしょうが、実質的な予備の人員ですからね!副会長に全権限が移るのは当然の事ですし、規定の通りであるとは言えますが、しかし────学校の併合という何よりも大きな命運を、副会長が決めてしまっても、本当に良いのでしょうか?』
『
『しかしハドマ学園の生徒会長さんは既に目覚めていますよね?2日前には、その様に報道されていたはずです。その調印はいつ行われたのですか?』
『学園崩壊の日────およそ5日前の事です』
『決定があまりに早すぎませんか?これではまるで副会長が実権を握る為に自校を崩壊させたと見ても不自然はありませんよね?』
『極めて迅速な対応──と我々は受け取りました。そして副会長が自校の実権を握る為に崩壊させたと受け取るのは勝手ですが、仮にそうだったとしてもそれについては我々連邦生徒会の預かり知らぬ所の話です。我々連邦生徒会は「両校が遂に併合に合意した」という報せを受け取り、受諾したのみです』
『な、なる、ほど……確かに一部、連邦生徒会の仕事ではない事項ではありますが……』
『……他に質問はありますか?』
『先程、行政官は会見開始時に「通達及び広報」と仰っていました。これは我々のようなハドマ学園と無関係の者へ、という解釈で、宜しいのですよね?普段、行政官はこのような文言をお使いにならないハズなので……』
『いいえ。これは、ハドマ学園の皆さんも含めた、キヴォトス全域に向けて────の話です』
『……え?』
『ゲヘナ学園との併合について打診していた頃からずっと、ハドマ学園とは、音信不通だったのです。返送が必要となる書類の未提出の他、留守番電話を残しても折り返しの連絡も無く……』
『えぇ……それは、流石に……』
『ですので、ハドマ学園生徒会の方が自校の生徒の皆さんにお知らせしていない場合には────この会見で初めて既に自校がゲヘナ学園と併合している事実を知る事になるのでしょう』
『それ、は……生徒達からすれば、なんじゃそりゃ、という話になりますよね……?暴動モノでは?』
『そうなる事でしょう。しかし、もし併合するのが安易な決断だったとしても、それこそ「副会長」の責任なのです。既に併合されているとはいえ、元は副会長だったのですから、説明責任は果たしているだろうと我々は踏んでいます』
『そうですね、流石に説明くらいしますよね……』
『──他に質問は?』
『はいッ!もしも、生徒会長さんが併合に反対した場合はどうするおつもりですか?たとえば「自分が意識不明だった時の決定は無効だ」とか……!』
『どうもしません。生徒会長の不在時には副会長が全てを決定する権限を持つ。当然です。ですので、生徒会長が今になって「併合には反対だ、副会長の独断だ」と言い出したり、署名を集めてもそれらは完全に無意味です。これは、この件に限らず全てにおいて言えることですが、指揮系統というモノは、得てしてそういうものですから』
『どうしても!!と言い出した場合は!?』
『その場合はゲヘナ学園側と話し合ってください。何度も言いますが、これは連邦生徒会による勝手な決定ではありません。あくまで両校の合意によって成立しています。調印を破棄する際もまた、併合と同様に両校の合意によってのみ、成立します』
◆
「なん、だって…………?」
ハドマ学園とゲヘナ学園が、併合した?
会長であるリエが意識不明の重体で入院していて不在だった、それは分かる。送り出したのは私だ。救急医学部の救急車に乗せてアスカと一緒にリエを運んでもらったんだ。
他にも意識不明の子や重症の子も居たから他にも何台かの救急車に乗せて病院に……。
意識が戻らなかったから、そのまま入院させた。だから、私達は、学校の運営は副会長のルーシィに任せたんだ。併合は──その
「……カヤ」
「…………はい」
「ハドマ学園の、生徒会副会長……って……誰?」
「
「────────ッッッ!!!!」
……やられた。まんまと、してやられた。
◆
その頃、ハドマ学園プレハブ校舎内では────七天魔の生徒達が針村ルーシィの招集で集まって、連邦生徒会の記者会見を見ていた。
そして、私が「やられた」と感じたと同時に──全員の視線が、ただ1人に集中していた…………。
「…………うそ、ですわよね……?まさかそんな……」
「ルーシィ……あんたやっぱり……ッ!!」
「そんな……ルーシィ……先輩……?」
「どういう事?ルーシィが飂熾冘巫髏と協力して、学園を壊して、ゲヘナ学園に、ハドマ学園を丸ごと売ったってこと?」
「きっと違いますアスカ先輩、ルーシィさんこそが飂熾冘巫髏だと……そういう事でしょう」
「レイコが言ってた『ルージュ』は嘘か……ッ!」
会見中はずっと真顔を決め込んでいたルーシィ、しかし全員の目線が懐疑的なものに変わるや否や、口元をクッと釣り上げ、三日月より細く口を歪め、薄く笑う……。
「……クヒッ!やぁっと気付いたんだぁ?」
「「「「「っっっ!!!」」」」」
「そう──
「そんな……ルーシィさん……あなた……っ!!」
「……お前……よくも……お前ええええっっ!!!」
殴り掛かろうとするスズの手を、ルビーが無言で掴んで止める。ルーシィ以外全員がルビーを見た、まさかルビーまでもがルーシィ側なのかと。
しかし、ルビーの瞳に映る仄暗い怒りの炎を見て逆に察した、今ここで誰よりもブチギレているのはルビーだったのだと。
「……説明を、求めます」
「説明?いいけど、何から説明すればいいかな?」
「構うものか。洗いざらい、全てですよ……!!」
「──ったく、ホント吸血鬼ってのは揃いも揃って普通の悪魔より獰猛だよねぇ。分かりやすい明確な弱点がある分、普通じゃないっていうか──逆に、普通のヤツより強化されてるっていうか?」
「ンなことはどうでもいいんですよ、さっさと何か言ったらどうなんですか?」
「あァ────そっか。ルビーはハドマ自治区出身だったね。そりゃ、ハドマには思い入れもあるか。吸血鬼は、そういうモノへの執着が強いんだよね。多分、今のルビーは、スズやシエル、下手したら、リエよりもブチギレてるのかもね」
「……何なんですか?あなた。あなたは。それとも、ゲヘナ自治区出身だとでも言うのですか?だから、自らの古巣に、ハドマを明け渡したのですか?」
掴んでいたスズの手を離し逆に自分が拳を握る。対するルーシィは余裕な様子だ。机の上に足を乗せその上で足を組んで見せる程の余裕がある。
「んー。やっぱ、悪魔は悪魔でも『吸血鬼』なんて別にカテゴライズされる辺り、似通ってても私達、結局の所は別種なのかもね。夢魔──は、2人しか知らないけど、私の知らない何かが────」
「ゴチャゴチャとさっきからうるさい口ですね──私の質問に答えないなら、潰して差し上げますが。どうします?せ・ん・ぱ・い……?」
ルビーの趣味、そして特技はボクシングである。それも関連してなのか、殴る蹴るなどの単純な暴力行為であれば、レイコを除きハドマで最強と言える強さを持った、統治委員長のスズさえも遥かに凌ぐ強さを誇っている。
そんなルビーから「潰す」と脅されては、流石のルーシィも口元を引き攣らせてしまう……。
「ひひっ♡ ざぁんねん、それは私じゃないわね!こう見えて私、
「なっ」
「意外でしょ。でも幼稚園の時だけよ。お嬢様〜な雰囲気が気に入らなくて、ハドマ自治区に来てさ。小学生の時くらいだったか、ゲヘナとの境の辺りで遊んでた時に──年上のチンピラや不良相手にして無双する、
「……成程、レイコですね」
「そ。レイコはゲヘナ自治区出身よ、私と違って。それでもハドマで出会った私とレイコは幼馴染よ。あの子は私の1つ年下だけど関係ない、レイコとは肩を並べていたいって思ったの。だから、私、天に誓ったのよ。レイコのことを、キヴォトスで最強にしてみせるってね」
「──レイコを最強に仕立て上げる事と、ハドマをゲヘナに明け渡す事に、何の関係があるんですか?それとも時間稼ぎか何かですか?」
「レイコって意外と律儀なの。戦う為のステージを自ら用意する。正当な場で戦いたい────って。でも、私につられてハドマに来ちゃったレイコが、ゲヘナの風紀委員長と戦う為には──ゲヘナ学園に入学する必要があった。でも私には既に別の目的があったから、私はゲヘナに行けなくなっちゃった。だからレイコのその目的は果たせない。夢が、露と消えてしまった」
「普通に、ゲヘナ自治区の中で問題でも起こせば、風紀委員会が駆け付けて来るのでは?」
「あーあー、これだから獰猛なヤツは。それじゃあハドマ学園とゲヘナ学園の外交問題になるでしょ。しかも、ハドマ学園の生徒会『失楽園』は、過去にゲヘナ学園内で万魔殿との抗争に負けて、ハドマに逃げてきた『失楽殿』の後輩だかが設立した組織。万魔殿に対しては今でも頭が上がらないのよねぇ?そうでしょ、リエ
「ッ……」
「まっ、そんなこんなでさ。公の場って言っても、そういうやり方はレイコが好まないらしいからさ。私の目的と併せて行動する事にしたのよ。ハドマをゲヘナと併合させる……その為だけにね」
「併合させたらゲヘナ学園内での内紛で済むから?そう言いたいのですか?ですがよく万魔殿の議長を騙して併合にまで漕ぎつけましたね?」
「騙してなんか無いわ。万魔殿議長、羽沼マコトは元から飂熾冘巫髏と風紀委員会の衝突を望んでる。そして、レイコが風紀委員長、空崎ヒナを潰す事を望んでいるわ」
「……えっ」
「じゃあ、つまり、ゲヘナとの併合の話がトントン拍子に進んでたっぽいのは、ハナから飂熾冘巫髏と万魔殿の利害が一致してたからって言いたいの!?どんだけ腐ってんのよ、万魔殿は……ッ!!」
「そうよね、腐ってるわよねぇ。スズの言う通り。なら、こぉんな腐ってる生徒会、サクッと一新する必要があると思わない?」
「……待って。それじゃあ、ルーシィ……あんたの、目的ってのは……」
「わかったぁ?レイコが空崎ヒナを潰した暁には、飂熾冘巫髏がゲヘナ学園の生徒会に成り代わる!!悪魔の楽園、ゲヘナ学園の頂点に立つのはこの私!飂熾冘巫髏総長、針村ルーシィよッッ!!!」
「────分かりましたわ。ルーシィさん」
「……ヘェ?」
「……ッ!?リエッ!?」
「それが、あなたの目的であれば。リン行政官が、会見内で仰っていた通り、併合されてしまった以上もう遅いのでしょうが。それでも、あなたを倒し、矯正局に差し出せば──せめて──これから起こる悲劇だけは、避けられるという事ですわね」
「ええ、そう。その通り。でもねリエ。忘れないでもらいたいんだけどね。あんたをこの場で潰すのもこの私の計画の一部、いいや、
机を蹴り飛ばしルーシィが立ち上がる。同時に、近くの窓を突き破りレイコが侵入してきた。手にはマシンガンとスナイパーライフルを持っている。
「そろそろイイかなぁ、ルーちゃん?」
「うん、もういいよ、レーちゃん。……やろう」
自前のマシンガンを構えるルーシィ。それを見て七天魔の残り6人は、戦闘が始まると察知。6人も武器を取り、同時に構えた。
「失楽園──前身の失楽殿は、ゲヘナ学園で抗争を起こし、万魔殿に敗北した。これは皆が知る通りの事実。でもね、リエ。失楽殿はね、その抗争の中で何人もの人を殺してるのよ。あんた、知ってた?」
「……それは、前の議長から、伝え聞いていますわ。我々、歴代議長は、その
「なぁにが『業を背負う』よ!頭おかしいのッ!?そんな事で、こっちの気が済むと思ってるワケ!?実際に友達──
ハドマを乗っ取りゲヘナへ明け渡したルーシィもまた、誰かの命を背負っている──そんな気配を、リエは感じ取っていた。
しかし、それはそれとして、失楽園議長としての最後の仕事──裏切り者の副議長への制裁を、遂に始めることにした。
「────皆さん。私に力を貸してください。もう全て遅いのかもしれない。それでも足掻くのです。たとえ少しの間でも、たとえ仮初でも、上辺でも、仲間だった
涙ながらに語りかけるようなリエの呼び掛けに、全員が頷いた。こうして、決裂した七天魔の戦いが始まった……。
次回────想いの行方