※この作品はR-18です。

「先生!もっとあたしらに構って!」   作:アキラゼミ

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第5話:論ずる少女たち

 

 ────七天魔(しちてんま)。

 ハドマ学園における、戦闘力上位7名の生徒達を指した通称である。

 ハドマ学園はゲヘナ学園の姉妹校であった過去があるが生徒の殆どはそれを知らないか忘れている。しかし、風潮や文化として、その過去が悪い意味で今でも尾を引いており、今のハドマ自治区の治安は恐らくキヴォトスでも最悪レベルに近いだろう。

 そんな治安の悪いハドマ学園においては、まさに強さこそが絶対と言わんばかりの「風潮」がある。ルールなんかではない、ただの「風潮」だ。従うも従わないも自由、しかし暗黙の了解的に誰もが頭に入れている事項だ。

 だからこそそこで過ごす生徒は無意識下で強さを求める。強者に従うばかりでなく、自分が強者側に立つのだと、上を目指す。

 そういった風潮が残り続けた結果として、七天魔という存在は、憧れの目で見られるようになった。

 そして自然と、有事の際には前線に立つような、そんな流れが生まれていた。

 実力がある者(・・・・・・)が上に立つ(・・・・・)ので、自然と各委員会や各部活の委員長や副委員長、部長、副部長なんかが七天魔になりやすいのは、まさに、そういう風潮が原因なのである。

 ──しかしそれはそれとして、七天魔以外の者も強さを求め力を磨くので、大抵は、七天魔と言えどその構成員は数ヶ月で入れ替わるものであった。

 そして、現在……。

 

 ◆

 

「────んで?急に七天魔(あたしら)を集めて、何の用よ?マフユに特別牢が破壊されて、始末書やら何やら、色々と申請とか仕事があるんですけど?」

 

 飂熾冘巫髏のレッドウィンター部隊からの襲撃を受けた次の日。

 議長であるリエは統治委員長のスズ、副委員長のルビーをはじめとする、七天魔に数えられる者達を会議室に招集した。

 あまりの急な招集にスズは不満を隠せない様子。

 しかしそこには、七天魔の生徒のみならず、技術開発部の姉妹の姿もあった。

 

「あははっ、申請書だとかそんなの要らないよー。だって技術開発部(わたしたち)としてもそんなの面倒だしさ?」

 

「お、マジで?リンコ、マジで話ワカる〜♡」

 

「スズ先輩ならともかく、リンコ先輩……はぁ……」

 

「姉さんは書類仕事とか何もやってないでしょ!?余計なこと言わないで、失楽園(生徒会)に請求できなくなるでしょーが!」

 

「えー?書類あったって大差無いしィ……?」

 

「それはそう、でも雀の涙でも無いよりマシなの!その辺の事とか私がやりくりしてるんだからね!?家事代行とか、メイドカフェとかでの収益を部活の活動費に宛ててさぁ……!!」

 

「うーん。統治委員会(そっち)は、ルビーちゃんのバックについてる事務所や出版社(かいしゃ)とかから、お金、これ以上引っ張れないのー?」

 

「無理ですね、限界まで稼がせてもらってますし。普通に委員会活動に必要な経費で消えます」

 

「そっかそっかー。統治委員会も世知辛いね〜」

 

「姉さんがそれを言うか……」

 

「ルビーが働きまくってんのも、その間の私が書類仕事に追われるのも、リンコやテンコが会社開いて色んな事業に手ェ伸ばしてんのも──それもこれも元はと言えばハドマ学園(ウチ)がビンボーなせいだしね。そうでしょ、リエ?」

 

 全員の視線が議長であるリエを貫く。そんな目で見られても、リエ達でどうにかできるハズもない。そもそもが、連邦生徒会との繋がりが希薄なせいで追い込まれた所がある、そんなハドマ学園はいつか財政難で苦しむ事になるのは自明の理だった。

 副議長のシエルは苦笑いしかできないリエを見てニヤニヤしている。返事に困ったリエは、サラッと話題を逸らす事にした。

 

「その話についてはまた後日、正式な場を設けるとします。今回は、また別の用件にて皆さんをお呼びしましたので。そろそろ本題に入りましょうか?」

 

「財政難の話じゃないんだ?」

 

「えぇ。今回は────新たな七天魔(・・・・・・)の話ですわ」

 

「「「「ッッ!?」」」」

 

 失楽園のメンバーは既に議題は聞かされている。それ以外のスズ、ルビー、アスカ、テンコは彼女の言葉を聞いて目を剥いた。唯一リンコだけは議題を察していたので、1人ほくそ笑んでいた。

 

「ルーシィと入れ替わりにレイコが入った事だけを除けば、私を含む4人は七天魔歴が長い方よねー。今更、新たに入れ替える必要ある?飂熾冘巫髏との決戦のゴタゴタも、まだ尾を引いてるっつーのに」

 

「おや……?スズさんともあろう者が、まさか、我々七天魔の規則をお忘れですか?」

 

「っ……!!」

 

 唯一明確に定められた七天魔のルール────。

 それは七天魔以外の者から「七天魔になりたい」という申し込みを受けた際は、入れ替わり戦を行うというものである。

 実力至上主義な側面がある七天魔。内部で序列が明確には決まっていないのがおかしいくらいだ。

 

「まさか……申し込みが来たの(・・・・・・・・)?」

 

「待ってください、議長。まさかそれって──」

 

「そう。砂田リンコさん、そして砂田テンコさん。お2人からの申し込みですわ」

 

「「「────ッッ!!!」」」

 

 同じく、ここまでの事は生徒会内での情報共有がされていたので、スズ、ルビー、アスカだけが酷く驚愕した。そして同時に、これを聞いたアスカは、焦りを隠せないといった様子であった。

 

「も、もし負けたら、七天魔脱退、ですよね……」

 

「ええ。七天魔として融通を利かせてきた事も色々あると思いますが、それもできなくなります」

 

「ッ……」

 

「しかしながら──逆に言えば、有事の際に前線に立つ『義務』は無くなると言えます。権利と義務は紐付けられるべき、というのが私の理想ですので。七天魔ですらない一般生徒さん(・・・・・・)に、トラブルの際に矢面に立て────とは口が裂けても言えません」

 

「っ、でも!ヒーラーは必要じゃないですか!?」

 

「あ、私、その気になればヒーラーできるよぉ?」

 

「っっ」

 

 リンコの何気無い言葉がアスカを貫く。

 回復特化型のアスカ、攻撃がメインでありながら回復もできるリンコ──どちらが役に立つのかは、シチュエーションにより変わりはするのだろうが、一般的な見方をするのであれば「より多い手段」を有しているリンコの方が圧倒的に有利であった。

 

「いや。姉さんの言う『その気になれば』は、もうアテにならない。姉さんがヒーラーもできたのは、盲目になる前のこと。妹の私でさえ、姉さんが今もあの頃と同じ活躍ができるとは思えないね」

 

「むー……テンちゃんは厳しいなぁ」

 

「客観的に見てるだけ。──ねえ、議長。アスカは唯一のヒーラーよ?七天魔として前線に立つのは、きっとこれからも変わらない。それなら1人くらい純粋なヒーラーを指定しておいていいんじゃない?その方が互いの為になるよ、絶対」

 

 アスカは他のメンバーと違い純粋なヒーラーで、

「戦闘力」という意味では、他の者に比べて大きなハンデを抱えている。そこも考慮し、アスカだけは除外しないようにしよう────リエにそのように進言するテンコだったが、リエは目を伏せながら、言葉少なに返事をする。

 

「────『七天魔』の定義は、戦闘力上位7名(・・・・・・・)。今更その伝統を崩そうとは……。できませんよ」

 

 リエの言う事は間違っていない。今までずっと、その定義で指名し、運用してきた7名なのだから。リエは正しい事を言っている。たとえアスカや他の生徒が下唇を噛む事になろうとも、理屈の上では、リエが正しかった。

 しかしリエの発言には、アスカ含む殆どの生徒がすっかり忘れていた、大きな穴があったのだ。

 

「伝統?おかしな事を言うのね?議長自ら、そんな伝統、とうにブチ破ってるでしょうに」

 

「え……?」

 

「あれ?なぁに?『心当たりありませんが……』ってカオしちゃって」

 

「……ありません」

 

「あ、そう。それじゃ聞くけど、なんでルーシィは今、七天魔としてここに居ないのかな?」

 

「?……ハドマ学園を裏切ったから、でしょう?」

 

「その時点で議長の唱える『戦闘力上位7名』って定義が破綻してんじゃん。ルーシィがハドマ学園をゲヘナ学園に売った──だから何なの(・・・・・・)?ルーシィがハドマ学園を裏切ろうが裏切るまいが、ルーシィは今もハドマ学園内で戦闘力上位7名に入るでしょ」

 

「…………それは、そうです。しかしルーシィさんは敵です。ハドマ学園の自治組織でもある七天魔に、わざわざ敵を入れておく必要はありませんわ」

 

「いや知らないよ。そんなのは『学園内戦闘力上位7名』の定義には関係無いから。七天魔の定義は、ただ1つ。『学園内での戦闘力上位7名』よ」

 

「…………」

 

「で、議長が自らその定義をブッ壊してるワケよ。ルーシィを『敵枠』として追放、ルーシィの欠員を埋める為にレイコを引き入れた。まぁそれはいい。実際レイコは余裕で七天魔に入れる強さだからね。でも、だったら『敵枠』みたいに別な枠を用意するべきじゃないのかな?リエ議長?」

 

「………………」

 

 反論できなかった。理屈ではリエが正しかった、そのハズなのに──「正しい」とリエ自身の理論を定義付けてくれる為の理屈を、定義を、リエ自らが破壊してしまっていた。

 そんな有様では自分が正しいなどと言えるハズも無ければ、反論できる余地なんてものは、欠片程も残されていない……ハズだった。

 

「でもさー。フツーに考えて、敵を自分の組織には置いておかないよね?」

 

「それはそう。だけど大元の定義からは外れてる。敵対してるかどうかなんて、そんなものは、議長の立場から見た場合の『思想の違い』でしかないよ。

『戦闘力上位7名』という明確な判断基準がある。そのハズなのに、議長は、明確な判断基準よりも、思想の違いというそのアヤフヤなラインで判断してルーシィを七天魔から追い出したよね」

 

「何事にも『柔軟な対応』ってのがあるでしょ」

 

「先の大決戦や、その前のレイコの襲撃とかだってアスカの援護が無きゃボロ負けだったワケだけど。

『柔軟な対応』とか言うなら、まさに、戦闘力だけじゃなくてそういう貢献度も視野に入れたらどう?それすらできないで『柔軟な対応』、ねぇ」

 

「ッ!……」

 

「いーい、副議長?『柔軟な対応』って言葉はね、あんたら生徒会役員の独善を許す言葉じゃないの。今のあんたらは『自分達は定義無視するけど、他のヤツらに突っかかられたら面倒だから、柔軟に対応したって事にして流しておこう』ってやってるのと何ら変わらないからね?それ、自覚してんの?」

 

「いいよテンちゃーん、言っちゃえ言っちゃえ♪」

 

 リンコが囃し立てようとテンコはそんなもの何も意に介さない様子。リエとシエルを理論と感情論の両方から追い込んでいく。

 その間、当事者であるアスカは豆のように小さく小さく身体を縮めていた。気の強くないアスカが、三者に割り込んで何か言えるハズなど無かった。

 

「────以上の事から、アスカを除外できる枠にカウントしてしまうのは非常に損失になるし普通に非効率極まりない事だと思うよ。私が退いたから、というのもあるとは思うけれど、純粋なヒーラーで七天魔入りしたの、アスカが初めてでしょ」

 

「あーもー分かったよ、執拗いなー。理屈っぽいのマジでウザイ……これだから理系は嫌なんだよね」

 

「ちょっ……シエルさんっ!!」

 

「……あ゙ぁ?理系が何だって?んなこと言うなら、作者サマの感情でも妄想してろよ、クソ文系がよ!感情でしかモノを考えられない畜生レベルの木偶の分際で、人並みにモノ語ってんじゃねーよッ!!」

 

 語気を荒らげたテンコは銃を構える。途端に場の全員が戦闘開始を危惧し、己の武器に手を掛けて、椅子を飛ばして立ち上がる。

 

「落ち着いてくださいテンコさん!シエルさんは、確かに余計な事を言いました!一先ず、会議室での戦闘行為はいけません!」

 

「……。表に出なよ。シエル先輩って、屋外戦が得意なんだよね?」

 

「そーよー?でもテンコは屋内戦が得意でしょう?屋内戦でいいよぉ?」

 

「フンッ。後輩に負けた時の為に言い訳の用意でもしてんの?」

 

「それはお互い様じゃーん?先輩に負けた時の為の言い訳の準備してるんでしょー?」

 

「私は、あんたみたいな卑怯者じゃない。あんたの尺度で私を測るな。ついでに、この入れ替わり戦はあんたに申し込む。堂々と叩き潰してやる……!!」

 

「お、イイねぇ。タンクのあんたが(・・・・・・・・)、アタッカーの私相手に何処まで粘れるかなぁ♡」

 

 入れ替わり戦自体は、規定で定められたものだ。

 しかし、リンコとテンコが自分の意思で抜けて、ルビーとアスカが加入した時といい──ルーシィを除名しレイコを加入させた時といい、ここ最近は、入れ替わり戦を行う機会自体そもそも無かった。

 こうして──後日また正式な場を設けて、七天魔入れ替わり戦が行われる事になった。

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