※この作品はR-18です。

「先生!もっとあたしらに構って!」   作:アキラゼミ

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第6話:入れ替わり戦

 

 ────スズから七天魔の入れ替わり戦の存在を教えてもらい、それが行われる日時に合わせハドマ学園に向かうことにした……。

 

「お、来たね、先生!」

 

「や。なんか……またゴタゴタ起きてるって?」

 

「ゴタゴタ……まぁ、ゴタゴタかも?」

 

 校庭の真ん中で睨み合う2人……シエルとテンコ。それから、それを遠巻きに見ている、シエル以外の七天魔のメンバーとリンコ。

 そんな現場に到着した私を、スズはいつも通りのニパッとした笑顔で迎えてくれたものの……。

 私とスズの会話を聞いたルビーは、苦い顔をして割り込んできた。

 

「待ってください、先輩……先生になんて説明したんですか?」

 

「『シエルとアンナが七天魔から蹴落とされる事になるかもしんない』って」

 

「……説明能力が無いなら余計な事は言わないでおくべきでは?──まぁ、いいです。先生、この羽虫の言う事は無視してください」

 

「羽虫ってゆーなぁ!!」

 

「羽虫ですよ。入れ替わり戦について、そうやって無駄に悪い言い方をする必要は無いのでは?」

 

「こ、言葉足らずがデフォのアンタから、ンなこと言われる日が来るとは……ッ!」

 

「それがデフォだったからこそ、気を付けるようにしてるんですよ。だって私と先生は、アレ(・・)ですし?私の言動1つで、私の先生に恥をかかせるワケにはいきません。……ねぇ、先生?♡」

 

「今度は一言余計なのよ!!」

 

「そうですか?」

 

「絶対わざとでしょ!?」

 

「まぁまぁまぁ……」

 

 相変わらず仲が良いんだか悪いんだか分からない2人の口論を宥めつつ、ロリ──幼女体型な2人に両側から挟まれながら睨み合う2人に視線を戻す。

 百鬼夜行の風紀委員会的な存在である、百花繚乱紛争調整委員会の「継承戦」とも少し違うようだ。

 

「それで、この戦いは実際、どういう戦いなの?」

 

「七天魔と七天魔候補者が戦い、どちらが戦闘力で上か。つまりどちらが七天魔に相応しいかを決する為の戦いです。候補者は、七天魔の誰と戦うのかを決められます。七天魔は明確に序列がありません。しかしそのせいで実力がピンキリなのが外部に対し濁されていまして。そんな七天魔から候補者を指名するのは不平等──それならば運も実力の内という事で、指名の権利は候補者側に、もとい挑戦者側に委ねられています」

 

「やっぱり、七天魔は憧れの存在だったりする?」

 

「憧れ──というよりかは『七天魔』というネームバリュー、そして利権が目当てかもしれませんね。例えば私は統治委員会副委員長ですが、この肩書きだけだと、私の支配下に置けるのは『統治委員会の部員』だけですよね?しかし、私達七天魔は学園の上位7名なので、生徒会と同じように『生徒全体を支配下に置く』事ができます」

 

「政治的な仕事をしないだけで、実質的に生徒会と変わらない感じかな?」

 

「そうとも言います。しかし、有事の際は率先して前線に出る義務がありますけれど。他にも七天魔に課せられた役目はありますが、まぁ形骸化してないモノはこれくらいでしょうか」

 

 やはり、権利があるからには義務も背負う必要があるらしい。シャーレという超法規的機関の先生を務める私も、これは決して忘れてはならない事だ。

 レイコの言う「飂熾冘巫髏割引(ル・シュ・フェルわり)」と、似たようなモノなんだろう。レイコが組織を脱退しているにも関わらずその割引を使おうとしてた事については……今は触れないでおくか。

 

「──それで、今回はテンコがシエルと戦うつもりらしいよ。理系をバカにしてきたっていうムカつきポイントがあるらしいとはいえ、かなりつまんない戦いになるだろーね。同じ七天魔だからってアレを見守らなきゃいけないのダルいわ、ホントに……」

 

「どうして?」

 

「テンコ、私が知る限り歴代七天魔で唯一のタンクなのよ。んで、シエルの攻撃はしょっぱいでしょ?見栄えもクソも無いのよね、見ててつまんないわ」

 

「……」

 

 シエルのクラスはアタッカーのはずだが、確かにアタッカーらしいド派手な攻撃や、必殺技のようなものは無い。サポーターに近いかもしれない。

 スズが「しょっぱい」と言ってしまうのはきっとこの辺に起因しているのだろう、とは思うが……。

 

「テンコはタンクなのか……」

 

「盾を使うとか回避タイプだからとかじゃなくて、ただひたすらに、肉体の耐久が凄まじいんですよ。序盤のスズ先輩の攻撃なんて、微塵もダメージとか入らないくらいにはね」

 

「わざわざ私を引き合いに出すなっ!!」

 

「でも事実では?」

 

「うぐぅ!!ぐや゙じぃ゙っ!!」

 

「最終的な火力なら圧倒的にスズ先輩が上なので、仮に序列を作るのなら、総合的に見てもスズ先輩が上なのでしょう。しかし、それでも、圧倒的火力で一気に盤面をひっくり返す事ができるから、先輩が上なだけで──今のシエル先輩には、それが無い。つまるところ……この戦いの勝敗は────」

 

「実質、シエルの送別会に等しいわね〜」

 

「……そっか」

 

 それでもシエルが生徒会を務める生徒である事に変わりない。七天魔が「政治的な関わりは持たないだけで実質的に生徒会」ならば、それを抜けた所でシエルの生徒会としての利権は変わらないのだからシエルにとっては消化試合も良いところだろう。

 七天魔というネームバリュー以外に変わるものは殆ど無さそうだ。

 

「あ、そっか。テンコ、ヤケにアスカを庇うなって思ったけど、生徒会役員のシエルやアンナだったら七天魔じゃなくなっても地位的に変わりないのか。アスカはヒラの委員長に戻っちゃうからってのも、テンコ的には考えてんのかな?」

 

「……先輩、やっとそれに気付いたんですか?」

 

「え゙っ。アンタ気付いてたの!?」

 

「フツー気付きます。ヒーラー枠なんてのはただの方便。現生徒会の4人は『生徒会であり七天魔』。強い権限を持つ者の枠を4つも潰しているんです。テンコさんのみならず──生徒会以外の生徒達から見れば、面白くない現状ですよ。言わばこれは──

『生徒会による利権の独占』なんですから」

 

「なんで気付けんのよ……」

 

「アスカ先輩が入るまでは、ヒーラーなんて1人も居なかったんですよ?七天魔はそれで成立してた、つまりヒーラー枠なんて要らない。それだけです。必要無いモノを必要だと言うんです、何かしら理由だったり裏の意味があると思いません?」

 

「……確かに……?」

 

 思ったよりドロドロしてるな。

 だが、外部に向けて「戦闘力があれば強い権利を持てる、ただし人数制限アリ!」と謳っておいて、半数以上を「元から強い権利を有する者」で埋めていたのでは、枠が無駄になるというのは分かる。

 テンコは、アスカ(唯一のヒーラー)を庇うという建前を用意しつつそこに一石を投じたいワケか……。

 ヒーラーのアスカは、戦闘力という面で見るならまず間違いなく七天魔で最下位は確定だから。

 

「そろそろ初めよっか〜!リエ、合図お願い♡」

 

「……それでは、シエルさん対テンコさんの、七天魔入れ替わり戦────始めッ!!」

 

 シエルはアサルトライフルを、テンコはショットガンを構えて、そう遠く離れていないにも関わらずその場でドンパチを始める。

 銃器の関係なのか射程はシエルの方が上らしく、テンコと距離を離そうとゆっくり後退。が、射程で劣るテンコがそれを許すハズも無く、ジリジリと、同じような速度でシエルを追い縋る。

 

「あっはは!何それ!あんたの攻撃、半分程度しか効かないよ!」

 

「……だから……何?」

 

「っ!」

 

 シッテムの箱を通し2人の属性相性を確認する。

 シエルは神秘/特殊装甲、テンコは爆発/軽装備という組み合わせで、テンコの攻撃はシエルに対し半分程度のダメージにしかならない。

 一方、シエルはテンコに1倍のダメージ。つまりいつも通りの、数値通りのダメージを与えられる。それだけで言えばシエルが有利にも思えるが……。

 

「『フォビドゥン・インパクト(EXスキル)』」

 

「!?」

 

 テンコがEXスキルを使用した。しかも内容は、点と線の攻撃ではなく面の攻撃。扇形範囲内というそれなりの範囲内に結構なダメージを与えるもの。

 その予想外の攻撃にシエルはぐらつき、尻もちをついてしまう。

 

「きゃっ……」

 

「トドメだ……ッ!!」

 

「ふざけないで!!『天に弓引く愚か者(Sスキル)』!」

 

 25秒毎に発動するシエルのサブスキル。1回目は試合開始直後の撃ち合い中に発動したから、今ので2回目の発動、つまり現時点で試合開始から50秒が経過した事になる。

 サブスキルの効果にて彼女は手榴弾を投擲して、目の前に迫るテンコへ、範囲は狭いながらも威力はそこそこの、直接的なダメージを与える。

 しかし……。

 

「『こんな世界、燃え尽きろ!(EXスキル)』ッ!!」

 

「『クェーサー+(Pスキル)』」

 

 手榴弾を投擲すると同時にEXスキルを使用するシエル、更にそれに被せるようにテンコのパッシブスキルが発動。その内容は────3秒間だけ敵の行動を封じるというもの。

 

「ぎゃぁあっ!?」

 

 一瞬だけ凄まじく発光しシエルの視界を奪い行動不能にさせる、あまりに強力なスキル──しかし、テンコをガチャで迎えたハズの私は、あのスキルに見覚えが無い。

 

「……アロナ、プラナ?テンコのあのスキル、何?」

 

『アレは……先生が未獲得の方のテンコさんですね!だから、見覚えが無くても仕方ないですっ!』

 

「2着目みたいな?そのテンコの獲得条件は?」

 

『テンコさんの絆レベル15を達成することで先生の指揮下に迎えられます。現在、先生とテンコさんの絆レベルは3……。贈り物の用意をしましょう。天文図鑑がオススメです』

 

「マジか、もう2着目あったの」

 

『因みにですが、テンコさんがタンクというのは、正確な情報ではないですね!』

 

『タンクはあくまで表向き。実際のテンコさんは、お姉さん同様──ガッツリと、アタッカーですね』

 

「……!!」

 

 そうか。絆レベルを上げる事で、タンクではない素のテンコを迎えられるというワケか。タンクは、あくまで仮の姿……自分を偽った姿なのか。

 というか、それで七天魔まで登り詰めるって……。本当は利き足が左のサッカー選手が、それを封印し右足でプロサッカー選手まで上り詰めたようなものだろうに。凄まじいとしか言いようがない。

 

「くっ……『気分アゲてこ〜!+(Nスキル)』!!」

 

 試合開始、60秒経過。15秒毎に発動するシエルのノーマルスキルの四度目の発動。しかし、頑丈さに定評のある彼女にはあまり通じず……。

 

「……この程度で、よく七天魔になろうと思ったね。先輩?」

 

「っ……!!」

 

「先輩が弱いせいで満足にスキル使えなかったよ。今日からは────私が七天魔だ」

 

「そこま──」

 

 審判であるリエが止めようとした瞬間、テンコの恨みを乗せた弾丸は至近距離でシエルを撃ち抜き、彼女は気絶──ヘイローは消えてしまう。

 苦々しい表情のリエ。本当ならどうして撃ったとテンコを責めたいだろうが……それは入れ替わり戦を見守る「議長」には相応しくない事と判断したか、拳を握り、テンコに歩み寄る。

 

「……おめでとうございます、テンコさん。この日、この場を以て、あなたが新たな七天魔に──いえ、正式に七天魔に復帰を果たした、という事で」

 

「『おめでとう』?……思ってもないくせに」

 

「ッ!!」

 

「何なら、シエルじゃなくてアンタを蹴落としても良かったんだよ?我猛リエ議長?──直近で腹立つ事があったから、シエル先輩を選んだだけでね」

 

「……」

 

「……まっ、安心してよ。七天魔としての権利を行使するからには、義務は背負うよ。優先順位、最上位ではないけど」

 

「それは──」

 

 今にも口論が始まりそうなテンコとリエ、しかしそこに1人の少女が割り込む。さっきまで私のすぐ近くに居たのに、まさに目にも止まらぬ速さで現着していた。

 

「まあまあ、落ち着いてよ2人共っ☆」

 

「……姉さん」

 

「リンコさん……」

 

「失楽園に思う事はあれど、ここでリエを煽るのは違うんじゃないかな?ねぇ、テンちゃん?」

 

「……チッ」

 

「リエも!ドデカイ器が要求される議長なんだし、生意気な下級生の戯言くらい、スルーしなきゃっ!イマドキ、スルースキルが無いコはありとあらゆる場面で精神汚染されまくるよ〜?」

 

「……」

 

「んじゃ、アンナちゃん!準備はいいかな?気軽にサクッと、戦(ヤ)ッちゃおっか♡」

 

「あっ、は、はいっ……!」

 

「待ってください、その前にシエルさんを……」

 

 気絶させられたシエルに視線を戻す、しかし既にそこには彼女の姿は無く、一瞬だけ場がざわめく。するとあっけらかんとした様子でリンコが言う。

 

「あぁ、シエルの事ならさっき私のアンドロイドに運ばせたよ〜。保健室でいいでしょ?」

 

「……ありがとうございます」

 

 リンコのアンドロイド──まだ実物を拝んだ事は無いものの、覚えはあった。

 ガチャで迎えたリンコのEXスキルが、まさに、そのアンドロイドを召喚するというものだからだ。スキル強化やステータス確認の時に「アンドロイドリンコ」の文字を見た記憶がある。

 場合によってはこれから始まるアンナとの戦いで彼女のアンドロイドを見られるかもしれない。

 だがシエルを運ぶ為にアンドロイドを使ったのは見逃してしまった。テンコとリエのやり取りに気を取られ過ぎたのか、それともアンドロイドリンコのスペックが凄まじいのか……。

 

「リエ、合図お願い♪」

 

「それでは────始めッ!!」

 

 開始直後にシッテムの箱を開き、リアルタイムで2人の情報を確認する。アンナ──爆発/軽装備。屋外適正はAらしい。リンコ──神秘/弾力装甲。屋外適正はS。……弾力装甲だと?

 

「アロナ。リンコは爆発/重装甲じゃ?」

 

『それは1着目、通常版のリンコさんですねっ!』

 

『現在、戦場に立っているのは、本気のリンコさんだと思われます。そちらは──まだシッテムの箱に実装されていません。少々お待ちください』

 

『この戦いで、多少なりともリンコさんのデータが取れると思うので!少しは早くなると思います!』

 

『早急に、リンコさんのデータ及びデータの実装の準備を進めていきます』

 

「無理の無い範囲でお願いね、焦る事は無いよ」

 

『ゆっくりまったり、それでいて速やか!スーパーアロナちゃんと!』

 

『スーパープラナちゃんに……』

 

『『お任せ下さい!』』

 

 リンコ2着目は、テンコと違ってガチャだそう。あーあ、また私の石が消えるらしい。爆死させたら許さんぞ、アロナ。

 ──アロナへの想いを燃やしながら、戦場に目を戻す。距離を取ろうと移動するアンナを、リンコは口元に笑みを浮かべながら歩いて追う。射程は今のリンコよりアンナが上回っているらしい。

 

「『下克上のとき(EXスキル)』ッ……!!」

 

「おっとォ♪」

 

「え」

 

 アンナがEXスキルを使用する。数字だけ見れば爆発バージョンのイオリみたいだが、素の攻撃力や会心値だったりの数値が低いので、実は総合的にはイオリと変わらなかったりする。

 しかも、1発だけでもヒットしなかった時の事を考えればイオリが完全に上回る結果が出たりする。

 ──要は、アンナのEXはスナイパーライフルで3発、敵を撃ち抜くスキルなワケだが。リンコは、それをスイッ、スイッ、と軽く回避してしまった。

 

「────それじゃ、いくよ」

【挿絵表示】

 

 目隠しを下げた彼女は、ピンク色の瞳を覗かせ、アンナに向かって走り出す。

 

「えっ、きゃっ、きゃあああっっ!?」

 

「ごめんねぇ、アンナちゃん?あなたの七天魔歴はここまで。これからは、私が新たな七天魔だから」

 

 急激に距離を詰めた後、足が竦んだアンナを前にリロードする余裕を見せ付ける。そして今更ながら彼女の武器が1着目のスナイパーライフルではなくマシンガンである事に気が付いた。

 

「アロナ、あれはどういう事?」

 

『分かりません!』

 

「分からないって……」

 

『固有武器は生徒1人につき1つ。しかしこれは、ルールではありません。誰しも、使いやすいように武器を改造したり使い込んでいると、自然と武器は1つに絞られるものです』

 

『しかしリンコさんは、目隠し状態と解放状態で、武器を使い分けているみたいですね……!!』

 

『恐ろしく器用な生徒さんです。もしミレニアムに入学されていたらエンジニア部やヴェリタスなどの部活で凄まじい才覚を発揮していたハズです』

 

「……そっ、か……」

 

 マシンガンをアンナに向け引き金を引こうとするリンコ。無機質な瞳には、慈悲など映っていない。キュッと目を瞑り被弾を覚悟するアンナだが……。

 

「──『観察者より愛を込めて(Nスキル)』」

 

「ッ!?」

 

 時間経過によりアンナのノーマルスキルが発動、リンコにそこそこのダメージを与える。負ける気が満々だったアンナは勝手に発動したNスキルに対し慌てまくるが……。

 

「も、もぉ〜……やったなぁ〜っ!?」

 

「ちちち違いますっ!違うんですぅっ!!」

 

「全くもー、問答無用だよっ!これで終わりだっ☆

『バリキャリメイド(Nスキル)』&『全盛期のチカラ(EXスキル)』ッ!」

 

「きゃうっ……」

 

 どこからともなくドローンが召喚され、アンナに爆撃を叩き込む。

 次いで、アンナに防御力が大幅ダウンのデバフが掛かる。するとその直後、確定会心の大ダメージがアンナに叩き込まれ、彼女は倒れてしまった。

 

「……勝者、リンコさん……です」

 

「やったぁ♪ これで七天魔に返り咲きだね〜♪」

 

「……ところで、リンコさん。その目は……?」

 

「これ?私特製、見えるようになる義眼だよっ☆」

 

 ポロッと転げ落ちてきた2つの目玉を見て、現在校庭にいる私を含めた全員は、喉を八つ裂きにせんばかりの大絶叫を上げた────。

 

 ◆

 

「──マエストロ!あぁマエストロ、居ましたか。実験、いえ、まだその前の『確認』の段階ですが、その『確認』の中で、興味深いデータが出ました。是非とも早々に貴下と共有したく……!」

 

「ほう……?普段は冷静沈着なゴルコンダがそれ程に声を上ずらせるとは……珍しい事もあったものだ」

 

「フフ……。デカルコマニー、先程の表を」

 

「こういうこったっ!」

【挿絵表示】

 

「……ッ!コレは、一体……!?」

 

「さあ……如何でしょう、マエストロ?」

 

「コレは、生徒のヘイローだな?」

 

「ええ、ヘイロー(そう)です。……現時点で100人の生徒を実験に参加させていますが、この10パターンしか、ヘイローの存在を確認できませんでした。そして、同じヘイローの生徒は同じ物に対し恐怖している、または苦手意識を持っているようで。大半は左上のヘイローでしたね」

 

「あぁ、吸血鬼は日光が苦手という話は有名だな。この『信心深い』とは?十字架が苦手なのか?」

 

「『十字架が苦手』というワケではないようです。ただ、『神』や『教え』だの宗教的な話になると、途端に震え出し、言葉を紡げなくなる……」

 

「面白い!『神』と相反する『悪魔』でありながら敵対すべき『神』を恐れるか!それとも、神と敵対しているからこそ?いや己の内に潜む『神秘』への恐怖心だろうか……?神秘の器たる生徒が、一体何を恐れるというのか……?」

 

「その辺の事はまだ分かりかねます──が、左上のヘイローを通常状態(デフォルト)とし、そこからその者の有する体質や恐怖症により更に分岐していくようですね。まるで、神秘やヘイローをコピーペーストした上で後から改変しているように……ね」

 

「成程……凄まじいな、『吸血鬼』とは……」

 

「しかしながら──幾ら血筋での繋がりがあるとは言えど、姉妹のような直接的な繋がりが無いのにも関わらずこう同じようなヘイローになるというのは解(げ)せません。恐らくは、彼女達の生態や血などに、神秘に影響を与えうる何かしらのカラクリがある……という見立てで良いでしょう」

 

「ああ。……嗚呼、胸が躍るな。未知への探求とは、こんなにも心が躍るものだっただろうか?」

 

「久しく感じていませんでした、このような想い。何としてでも、解き明かしましょう」

 

「そういうこったぁ!!」

 

「そして願わくば、この研究を踏まえて完成させた『新作』を────先生にお披露目したいものだ。待っていろ先生。今度は最低でも5凸させてやる」

 

(……最終的に先生が勝つのは、マエストロの中でも既定路線なのでしょうね……)

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