※この作品はR-18です。

「先生!もっとあたしらに構って!」   作:アキラゼミ

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第7話:飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)、動く

 

「────へぇ。そっか、ナルホド?統治委員会は誰も捕らえてなかったんだ?」

 

「ええ。とりあえず牢は破壊しときましたし基礎も破損させたんで、再建は時間が掛かると思います。ですが、学園のどこにも、ハドマ部隊の吸血鬼達の姿はありませんでしたねぇ」

 

「……ふぅん」

 

 ハドマ学園を襲わせたマフユから報告を受けて、ルーシィは顎に指を当てて思考の海に飛び込んだ。

 吸血鬼の部下に連絡がつかないのは、スマホ等を没収されて物理的にスマホに触れない環境にある、つまり捕らえられているからであると考えられる。しかしそうではなかった。

 勿論ヴァルキューレに捕らえられている可能性もあったが、それについては、ヴァルキューレに潜入した部下が内部を視察して、その可能性を潰した。

 それを受けたルーシィは……。

 

「……原因不明の行方不明……?」

 

「心当たりは……無いんですか?総長?」

 

「無いわね。元々は、吸血鬼達にはレイコを通して指示してたし……。まさか、レイコが抜けたからって一緒になって飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)を辞めたってコト……?」

 

「あぁ。有り得そうですねぇ。そういうヤツの事をコウモリ野郎って言いますし?まさしく、吸血鬼にピッタリじゃあないですか」

 

「マフユ」

 

「……おっとすみません、余計な一言でしたかね」

 

「でもま、マフユの言う事も一理あるんじゃない?そもそも吸血鬼ってのは『強者に従う本能』があるようなものだし。レイコはルーシィの頭脳に惚れ、その他大勢の吸血鬼はレイコの強さに惚れた。で、それを利用して、飂熾冘巫髏という組織の体制へと組み込んで、レイコの部下、且つ組織の一員として扱ってきた」

 

「……なら、ライムは……吸血鬼連中は裏切ったって言いたいの?」

 

「んー、どうかなぁ?でも木っ端の雑魚も忠義心はあると思うしィ、裏切ってはないんじゃないの〜?だけど、探すにしても──方法を変えなくちゃね。ワンチャン、ヴァルキューレに捕まってるだろーと思ったけどなぁ……うーん……居ないとは……」

 

「ヴァルキューレでも統治委員会でもないのなら、一体、どこを探せばいいのやら皆目見当もつかないですけどね。どうするんです、総長?例のラブホやその周辺も探しましたけど、ダメでしたよ?」

 

「トリニティ部隊の力も借りるかあ。それしかないでしょ、もう。トリニティ部隊には、トリニティを隅々まで探してもらう。マフユのレッドウィンター部隊は……ハドマ自治区を探してもらおうかな。後でレティにも連絡取って、レティ達にはゲヘナ自治区探してもらおうか」

 

「大丈夫ですかねぇ?例の決戦の際、温泉開発部にゲヘナ部隊の人員、かなり引き抜かれましたよね?深刻な人手不足ですけど。レッドウィンター部隊とゲヘナ部隊、統合した方が良くないですか?せめて捜索する期間だけでも」

 

「……そうね。ハドマ自治区内で心当たりある場所は探し尽くしたようだしね。じゃ、その辺はマフユの判断に任せるわ」

 

「了解、ベストを尽くしますよ」

 

 本拠地からマフユが出て行った後で、ルーシィは机に突っ伏すように倒れ込んでしまった。

 人員が、あまりに少なすぎるのだ。飂熾冘巫髏のこれまでの活動の手際の良さは、それこそ、人員の豊富さとルーシィの作戦の相乗効果があってこそ。それなのに、前者が失われつつある。これまで通り鮮やかなまでの襲撃〜逃走はもうできないだろう。

 映画のエキストラの如く、飂熾冘巫髏を追跡する統治委員会の行く手を阻む一般通行人Aすら、全て飂熾冘巫髏の構成員だったりしたのだから。

 これらの手法は、構成員であると明かしていない人員が多いから成し得たことだ。

 レッドウィンター部隊の半数以上は事務局により

捕まり227号特別クラス送りにされており……更にはゲヘナ部隊の多くは温泉開発部に籍を移している。

 トリニティ部隊だって、停学が明けたばかりで、真面目に学校に通おうとしている者が多くなりつつあるようだ。こうなると、ルーシィも嫌でも現実を直視せざるを得なくなる。明確にルーシィの手足が失われつつあるからだ。

 

「……んで?どーすんのよォ、ルーシィ?」

 

「……もうアテが無いのよね。そもそも吸血鬼連中がトリニティやゲヘナに居ると思えないしね。もう……あの人に頼るかぁ……」

 

「まさか……あの子(・・・)?」

 

「もう、あの人の知恵を借りるしか無いかもね」

 

「私、あの子はあんま好きじゃないのよねぇ。腹の中で何を考えてるか、まるで分かんないんだもの。いつもニタニタしてるからかなぁ。気持ち悪いヤツなのよね、ホントにさ」

 

「とりあえず、私1人で行ってくる」

 

「いてらー。どうしてもってんなら止めないけど、アイツに丸め込まれるなよー♪」

 

「……善処するわ」

 

 マフユに次いで、ルーシィも本拠地を出る。その知恵者を求め……ハドマ学園へ足を運ぶ為に。

 ルーシィの外出を見送ると、副総長の座に着いた百鬼夜行所属の鬼の少女、賽鬼(さいき)ユウナは唯一残った幹部であるライムに、その者について尋ねる。

 

「ルーシィ、誰んトコ行ったのよ?」

 

「あぁ、ユウナちゃんは知らないんだっけ。ウチの学園にはね……居るのよ、キレ者が。頭の回転も早く知恵もあって、それなりに力もある。分かりやすく言えば『皆の相談役』みたいなポジションかな?」

 

「ふぅん?でも、大丈夫なの?ルーシィはハドマの学園を転覆しようとした、言わば裏切り者でしょ?そんなヤツに知恵なんか貸してくれるワケ?」

 

「ま、そこは大丈夫じゃなーい?だって、あの女も元は飂熾冘巫髏なんだもん♡」

 

 ◆

 

「──ふぅ。これで、ルビーとレイコ(先生の配下の生徒)以外の全員……だろうか?」

 

「そういう、こっ、たぁ……!!」

 

「お疲れ様ですマエストロ、デカルコマニー。私は身体が無いものですから、運搬をお手伝いできないのが心苦しいです」

 

「声が弾んでるように聞こえるのは気の所為か?」

 

「気の所為でしょう、フフフ……」

 

「デカルコマニー、ゴルコンダを軽く殴れ」

 

「そういうこったぁぁぁ!!!」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!壊れる壊れる、額縁を殴らないで!!」

 

 先生すらも知らない、水面下の更にその秘密裏で行われたマエストロとデカルコマニーの2人による襲撃──人工天使ヒエロニムスvs飂熾冘巫髏所属の吸血鬼というマッチアップはヒエロニムスの快勝で幕を下ろした。

 ヒエロニムスで彼女達を打ち倒したマエストロ達ゲマトリアは、気絶させた彼女達を複製(ミメシス)などを用い回収し、実験施設への搬入を速やかに完了させる。

 

「よし、睡眠学習版思想教育BDの設置も完了だ」

 

 机と椅子が用意された簡易的な「教室」が今回の実験室だ。空席に搬入した生徒を座らせて、まるで授業中に居眠りしているかのような状態にする。

 その状態の生徒に、ゴルコンダの新作「思想教育BD」を聞かせ、生徒を眠らせながら直接的に催眠状態に陥らせる。そうする事により目を覚ましても逃げようとも反抗しようともせず、実験に協力するようにと、意識に刷り込むのだ。

 その「意識に刷り込む」事を「思想教育」と呼びその教材(BD)を「思想教育BD」と名付けたのだった。

 

「奇妙な光景だ……総勢130人を超えるというのに、本当にヘイローがあの10種類しかないとは」

 

「現在は気絶しているこの生徒達も、きっと、あの10種のいずれかに該当しているのでしょう。遂に、本格的に実験を始める時が来ました」

 

「先に話した『グループ分け』はヘイローの種類で分けた方が良さそうだな」

 

「ええ。合計10グループになりますね。実質的に、マエストロとデカルコマニーに動いてもらうことになるかと思いますが……構いませんか?」

 

「構わん。新たな『芸術』の参考にするまでだ」

 

「ありがとうございます。それでは、先程搬入した生徒達が目を覚まし次第、ヘイローによるグループ分けを行い、そこからは各々、まずは種族に関する情報を集めていくとしましょう」

 

 ◆

 

「失礼します」

 

「およ?お客さんかな?」

 

「こんにちは。……リンコ先輩」

 

「その声……ルーシィ?」

 

「ええ。……聞きましたよ。七天魔に復帰されたそうですね。おめでとうございます」

 

「んっふふ〜。これで、ルーシィ達とバッチバチに前線でやり合えるよ〜☆……で?七天魔と知りながらわざわざ部室に来るだなんて……何の用かなぁ?」

 

 再び解放される「目」。無機質なピンクの瞳が、ルーシィを貫く────。

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