「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
黒服から座標を受け取り、シャーレのヘリを使い現場に急行する。持つべきは黒服だ、と思わず頬が緩む感覚がする。
私1人で乗り込むのもどうだろう、とは思うが、まぁ生徒を連れてくるワケにもいかないし、今回はこれでいいだろう。
『この先、障害物がある為、進めません』
「え……?」
何も無いただの空だ。ドローン1つ飛んでいないただの低空飛行だと言うのに何故かヘリは途中から進めなくなってしまった。ヘリのシステムは何故か何も無い空中に障害物を見出しているようだった。何言ってんだと台パンしたくなるのを堪える。
座標の地点まではそう遠くはない──となると、もう、ここから先は降りて歩くしかない。
「ん」
丘の上にスタジアムのような、市民会館のような大きな建物が見えた。そこに通じる道は階段1つ、ただそれだけらしい。
しかし階段の脇に1つの立て看板があった。
| この先 1人での通行を禁ず
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「1人での通行……?その土地ならではのルールとかそういうのかな」
その土地の慣習だとか、そういう物は色々とあるだろう。私は「郷に入っては郷に従え」を遵守するタイプの人間ではあるが、今は、急を要している。申し訳ないとは思いつつ、スルーさせてもらおう。
「イテッ」
しかし、階段に足を踏み入れようとすると、目に見えない、透明な壁に阻まれてしまった。まるで、ゲームでの「この先のエリアに進めません」というシステムか何かのよう。
「えぇ……透明なバリアだなんて、そんな無茶な」
だが私は知っている。そんな「無茶」をアッサリ実践できてしまう、トンデモナイ能力の持ち主を。
ゴルコンダの「テクスト」を付与する能力──、あれはある種の「概念付与」にも近い能力だ。私とハナコを閉じ込めた「セックスしないと出られない部屋」だってそうだ。
あれも、別に機械的な回路を扉に組み込んでいたワケではない。そういう「概念」を遠隔から部屋に付与したのだ。
つまり今回は……。
「『1人』での通行がダメなんだろ?じゃあせめてあと1人、居てくれればいいワケだな」
シッテムの箱は起動済み。しかしそれで通れないという事は、アロナもプラナも1人だとカウントはされないという事を意味している。
この先に居るのはゴルコンダとデカルコマニー、マエストロなのだし、黒服を呼んでもいいが……。
「────おいで、スズ」
「うわぁっ!ど、どこよココはっ!?」
「急にごめんね。ホントに急だけどちょっとばかり散歩に付き合ってもらうよ」
「はぁ!?さ、散歩!?……べ、別にいいけど……」
ハドマ学園における私の案内役を務めてくれる、鐘蟲スズを大人のカードで召喚してみた。今はまだ飂熾冘巫髏も大人しくしているだろうし大丈夫だと予想しての事だ。
召喚されたスズは周囲をキョロキョロと見回す。するとあの立て看板が目に入ったようで……。
「せ〜ん〜せ〜い〜ッ!?なぁにが散歩よ、ただの人数合わせでしょーが!!」
「はは……ごめんごめん。でも他に呼べる子と言えばルビーくらいかなって思ってさ。……スズとしては、その方が良かったかな?」
「っ!!……その言い方は……ズルじゃん……?」
「……ふふっ……」
ルビーよりスズを優先したんだ、と暗に伝えると面白いくらいに大人しくなった。それから、ただの先生と生徒としては近過ぎるくらいの距離感のまま階段を登っていく。
一段一段は低い、しかし階段が長い。しかもまた同じような立て看板らしき物体が幾つかある。全くふざけやがってゴルコンダめ……。
「待って」
「え──イタッ!?な、何!?何にぶつかったの、私っ!?」
「この立て看板がある所は見えないバリアがある。この立て看板のお題をクリアしないと先に進めない仕様なんだ」
「どーゆー仕様よ!?ゲームの世界か何か!?」
| この先 爆発属性の生徒を 2人以上編成せよ
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「爆発?何かしら、これ……?」
「折角だから、2部隊編成するつもりでいこうか。スズの第1部隊にリンコ、テンコを編成しようか」
「ゲッ。もしかして戦闘前提?」
「そう考えていた方が気は楽でしょ?」
「確かにそれはある。でもテンコと同じ部隊なのはイヤだなー、アイツ目付き悪いんだもん」
「目付き悪くて悪かったわねェ」
「わ゙っ、テン────」
「オラァッ!!」
「ぎゃふっ!?」
思い切りお尻を蹴り飛ばされたスズは前のめりに倒れてしまった。スズを蹴り飛ばした彼女は鼻息も荒く、見下すようにツンと胸を逸らしている。
そんなテンコを見て、姉のリンコは笑っている。少しは宥めるとかしないのだろうか……。
リンコ(1着目)とテンコ(1着目)は共に爆発属性なので、「七天魔」という肩書きで証明された戦闘力の高さに期待して、スズとの連携を組ませる目的で、スズをリーダーに、リンコとテンコを編成してみる。また爆発の生徒を要求された場合には、その時は2人の2着目とアンナを組ませてみよう。
「え、待って……?この階段登りきるまでに、看板、何個もあるじゃないのよ……」
「そんな難しくないお題だといいんだけどね……」
リンコ(1着目)とテンコ(1着目)をその場に召喚した後は、私達4人でリスタートだ。1着目のリンコは目隠し装備だが、彼女についてはテンコが補佐をしてくれているようだったので、ここは妹のテンコに甘える事にしよう。
そしてそれからもパーティ編成しながらの進軍は続いていく…………。
| この先 神秘属性の生徒を 2人以上編成せよ
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「神秘……?」
「属性って何なのよ、ゲームか何か?」
「攻撃とかの相性を指してるんじゃないかな☆」
「確かに、人によって通りやすい攻撃、通りにくい攻撃とかはあるけど……アレって属性なの……?」
「さぁ……まぁ姉さんの言うことだし」
「ひ、酷いなぁ〜、もうっ!」
「神秘なら失楽園のあの2人だね。第1部隊は既に3人埋まってるから、無理に編成し直すよりかは、あの2人はまとめて第2部隊にしようか」
| この先 軽装備を2人編成せよ
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「軽装備……?いよいよもって分からないわね、装備らしい装備してるヤツの方が珍しいと思うけど?」
「例えば〜の話だけど、爆発に弱い子は軽装備って言えるんじゃないかな?あっさり吹っ飛ぶしさ☆」
「姉さん……もう少しこう、言い方……」
| この先 特殊装甲を 1人以上編成せよ
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「特殊装甲?ますます分かんないわね……。リンコ、コレどういう事か分かる?私、もうずっとサッパリなんだけど……」
「ちょっとは考える素振りくらい見せましょうよ、スズ先輩……はぁ……」
「なによー、ルビーも分かんないクセにィ」
「う……」
「私にも分かんなーい☆……けど、
リンコの言う通りだ。生徒の属性くらいなら私は殆ど全て把握している。まぁ、分からなくてもすぐシッテムの箱で確認できるってのは大きいけれど。
| この先 白黒の姉妹を編成せよ
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「これは分かったわッ!アスカとアガリよ!」
「ですね。目立つ姉妹が少ない上、白黒というのは2人の翼の色を指しているのでしょうし」
「でもアスカとアガリって仲悪いって聞いたけど?まぁ、アガリからは『お姉ちゃんから一方的に私を避けてるだけ』とも聞いてるんだけどさ」
「アガリっての、飂熾冘巫髏の組織内でそんなこと言ってたの?なんか、ズケズケ言ってくるタイプのヤツらしいじゃない。アスカって、あぁ見えて割と繊細だし、妹だろうとそういうヤツは嫌いでしょ」
「ま……その辺の事は組織内でも誤解無く広まってた印象はあるかな。でしょ、姉さん?」
「そーだねぇ、アガリちゃんってちょっと頭のネジ緩んでるようなとこあるし……」
((
(リンコ先輩がそれを言うんですか……)
| この先 夢魔の末裔を編成せよ
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|---|
「夢魔の末裔……?」
「夢魔って?サキュバスとも言うんだっけ?」
「サキュバスにインキュバスなど、そういった者の総称ですね。しかしインキュバスはキヴォトスには存在しないので、必然的にサキュバスの事を指すと思われます。そうすると、今回は────」
「分かりました!ライム先輩ですよ、絶対!」
「……いやまぁ、そうだろうとは思ってたけど……。アンナ、テンション上がり過ぎ」
「はぅっ!?そそ、そんなつもりは……!」
「ねェ……。ホントにライムを
「シエルの知り合いにも、私以外に夢魔なんてのは居ないはずよ?もう皆『そうなった』から察して」
「てかシエルもさー、そう思うんなら1人で進めば良かったじゃん。見えない壁に邪魔されて、絶対に進めやしないんだし。てか、さっきあたし、オデコぶっつけてんだから!」
「あぁ、スズのそのデコ、その壁にぶつけたんだ?先生とかにデコピンされたものだと思ってたよ」
「どーしてあたしがデコピンされンのよ!アホ!?シエルはアホなの!?」
「スズよかマシだよ〜」
「むっかつくわねコイツ〜……!!」
「落ち着いてください、先輩達。ライムさんだって静かにしているじゃないですか。呉越同舟、それでいいじゃないですか」
「別に、私だって来たくて来てるワケじゃあないんですけどー?先生に
「えへへ……」
飂熾冘巫髏の幹部までも召喚されたとあっては、やはり生徒達が口々に文句を言うのも仕方がない。先を急ぐ事にして何度目か分からないリスタート。
すると、とうとう最後の立て看板が目に入った。しかしそこには、私ですら頭を抱えてしまう内容が記載されていたのである。
| この先 堕天使を編成せよ
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|---|
「……堕天使……って、誰よ?」
「吸血鬼ではなく堕天使、ですか。リンコ先輩達は元天使でしたっけ?」
「ンなワケ」
「私もテンちゃんも生まれながらの悪魔だよぉ」
「天使といえば、シエルさんですが……」
「そういうリエもね。翼は無いけど」
「そんなら、アンナ?だっけ?アンナはどうなの?失楽園に潜入してた頃のライムにズコバコ犯されて呆気なく百合堕ちしたんでしょ?組織に居た頃に、ライムからよくそう聞かされたけど?」
「しッ、失礼なっ!?身体は堕ちても、心は先生のモノです♡……ていうか、私は天使ですっ!!」
「えぇ〜?身体は私のものなんだー♡ 相変わらず可愛い後輩だねぇ、アンナ♡ この後、久しぶりにエッチしよっか♡」
ワイワイキャッキャッと騒がしい。今すぐ戦いが始まってもおかしくないメンバーだと言うのに──これではまるで、ピクニックだ。
まぁハドマの吸血鬼達の様子を見に行くだけで、危険がありそうなら連れ戻す──というだけだから私としては別にピクニックでも問題は殆ど無いが。
「────皆、ごめん。あの子、呼ぶね」
「え?」
「まさか先生、分かったんですか?『堕天使』が、一体、誰なのか。それとも、私達が知らないだけで先生のお知り合いに居るんですか?」
「ううん、皆も知ってる。──おいで、ルーシィ」
「「「「ッッッ!?!?」」」」
「「……ッ!!」」
彼女が
「おっ?
「ルーシィ……っ!!」
「……おぉ。今にもリンチされそうな雰囲気だね」
そうならない事はルーシィも分かってるだろう。私もいるし、ライムという幹部格に加え元副総長のレイコ、幹部補佐のアガリなどの、飂熾冘巫髏側の関係者がこの場には何人もいる。
「もしかして先生って、瞬間移動の能力者だったりするワケ?火山の時といい、今といい……」
「ふふ。それはどうだろうね?」
「まぁそんな事はないんだろーけど。……で?これ、どういう状況?なんでこんな大所帯なワケ?今すぐ戦闘開始──というワケでもないみたいだし」
ルーシィがそう事情を聞いてくるので、ライムやアガリのような「何となく」付いてきてくれた子に伝えるという意味で、ザックリとした概要を簡単に伝えた。
飂熾冘巫髏としては、仲間を取り戻しに行くにも近いような今回の進軍。事情さえ伝えれば、私達が思っていたよりも、ノリ気になってくれた。
「先生の助言はあったとはいえ、リエ達が部下達を研究者とかいうヤツに差し出したせいで、こーんなクソ面倒な事になってんのよ?分かってんの?」
「っ……」
「うっさいなー。裏切り者で邪魔者なんだから誰に差し出そうがどうでもいいじゃん」
「ンなコトばっか言ってるからこんな面倒な展開になってんだっての。自分で自分の首絞めて、ホントバカみたい。シエルセンパイの自業自得でワラ〜。マジ笑える〜」
「ウッッッッッザ……。てか自業自得だってんなら、そもそも恨まれるような事してる飂熾冘巫髏の方に問題があるンですけど?分かってないの??」
「なら、どうして私がこんな組織作ったかって話に遡ろうか?失楽園のせいですけど???」
「落ち着いてくださいシエルさん、ルーシィさん……今こんな所で言い合いしても解決にはなりません、ここはどうか収めてください」
「……ちっ。リエが言うから黙ってあげる」
「センパイが黙ってくれるなら黙ってあげる」
凄い悪態の応酬だ。聞いているだけで、頭も腹も痛くなってきてしまう。ルーシィ──そんな本音を隠して飂熾冘巫髏の総長として潜入していたのか。思っていたよりずっと我慢強い生徒だ。
「────よし。行こうか」
両部隊、共に人数ピッタリ。綺麗に満員である。これから始まるであろうゴルコンダ達との決戦は、きっと、高難易度の任務になるだろう。
限定された手札の中から最適解を選んで、彼らを落ち着かせてやろう。