※この作品はR-18です。

「先生!もっとあたしらに構って!」   作:アキラゼミ

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第12話:重ね合わせた神秘は黒く輝く

 

「我が『教室』へようこそ、先生……待っていたぞ」

 

「マエストロ……!どうしてマエストロが──」

 

 スポットライトに照らされていたのは頭が2つの動くマネキン、マエストロ。どこか気持ちが昂ったような声色で、如何にも楽しいと言わんばかりに、ギギギギと関節を鳴らしている。

 ゴルコンダとデカルコマニーだと思っていた私は拍子抜けした。すると、私の言葉を遮るように彼の隣にもう1つのスポットライトが。

 そこには黒服が位置を観測したデカルコマニー、そして彼に抱えられたゴルコンダが居た。

 

「ゴルコンダ……やっぱりここに居たのか」

 

「ええ。もう少しだけ実験を進めたら、こちらから先生に連絡するつもりだったのですがね。ふふっ、相変わらず貴方は私達を上回る……」

 

「御託はいい。……ハドマ学園の生徒に、危険な事はしてないだろうね?」

 

「お約束通り、丁重に扱いました。危険な事など、何一つしてはおりません。そこは断言しましょう」

 

「じゃあ……今回の実験ってのは何をしたの?」

 

「概ね、お話ししてある通りの事ですよ。吸血鬼の生態や能力、そして──神秘」

 

「神秘って────まさかッ!!」

 

「落ち着いてください。黒服が小鳥遊ホシノさんにしようとしていたような実験ではありませんから。単に、彼女達吸血鬼の共通点を洗い出し、そこから導き出される結論を考察したり──彼女達の能力の使い方やその結果など、そんな、至極単純な事しか実験していませんから」

 

「…………」

 

「怪しむのは分かります。ゲマトリアがこれまでに行ってきた事を考えれば、黒服やベアトリーチェの前例をご存知である先生だからこそ、今の私達にもそれだけの疑念を持つのでしょう。理解しますよ、先生のその思考はね」

 

「理解してくれてるのなら話は早いね。危険が無いなら文句は無い。それでいい。願わくばその実験の結果を私達に共有してほしい、とは思うけれども」

 

「嗚呼……そうでした。協力者へ向けて、感謝の意をお伝えせねばなりませんね。そして是非とも結果を共有しましょう。──最後の実験が終わったら、の話ですがね」

 

「……なんだと?さも終わってるような雰囲気だったじゃあないか」

 

「まずは概要から、改めてお話ししましょうかね。私達の此度の実験(最終目的)──それは『神秘の同居』です。他者を『吸血鬼』という名の『悪魔の一種』へ変貌させてしまう。つまり、神秘の器を、神秘を上書きしてしまうという、キヴォトスにおいてはまさしく最強最悪とも言える、二つと無い唯一の神秘──。私達は、そこに目を付けました」

 

「色彩に触れた神秘は恐怖に裏返る。そう、裏返るだけなのだ。神秘と恐怖は(・・・・・・)同時には(・・・・)観測できない(・・・・・・)。以前、私がこの話をコインの裏と表に例えたのを、先生は覚えているだろうか?」

 

「ああ……覚えてるさ」

 

「私は、この例え話を思い返していた中で、とある別の仮説を思いついた……!!」

 

「!?」

 

「即ち──神秘を有する器に更なる神秘を宿らせる事すらできる吸血鬼の神秘を利用すれば、その器の有する神秘と反転した神秘、つまりは、恐怖(テラー)を同居させることが出来るのではなかろうか、と──!」

 

「な……っ!?話が違う!どう考えても、それを実行なんかすれば生徒に危害を加える事になる!」

 

「そうなのです。しかしその約束を違えるワケにはいきません。──だからこそ、この実験の為には、マエストロの技術が必要不可欠でした。神秘の器を製造してしまう、マエストロの技術がね……」

 

「…………神秘の器を……製造……?」

 

「先生の元に4人も居るではないか。私の作品──人工天使擬人化シリーズ4姉妹が」

 

「────ッッ!!!」

 

「そうして生み出された神秘の器を、ハドマ学園の吸血鬼によって、吸血鬼化してもらった。そうして生まれたのがコレだ。刮目せよ!これが私の……私とゴルコンダ、デカルコマニーの新作だッ!!」

 

 指をパチンと鳴らすと同時に、天井を突き破り、1人の少女……のような人型の存在が落ちてきた。

 純白の雪原のような白い長髪に、白目までも赤く染まりきった赤い目。獣のように唸り、涎まで床に垂らし……力無く垂れ下がる翼からは筋肉質な厚さが見て取れる。

 その翼や長く伸びた犬歯からは、彼女は吸血鬼かそれに類する者なのだと嫌でも感じさせられる。

 それにしたって……。

 

「なんだ……あの……ドス黒いヘイローは……」

 

「────重ねられた色はやがて、天(そら)を覆い尽くす闇のように……宇宙のように、黒く染まりゆくのみ」

 

「……ははっ。妙に文学的じゃないか、マエストロ?芸術的な表現は風に吹かれて飛んでったのかな?」

 

「ああ、この実験結果を得た、興奮のあまりにな。あの者のヘイローを見たまえ、先生ッ!どうだね?あの者のヘイローは。……壊れているか?」

 

「………………いいや。見た限りでは……」

 

 シロコ*テラーのヘイローは、ヒビ割れていた。

 しかも色も黒く濁り、形状だって刺々しく変貌し元のシロコのヘイローとは、言われたら気付くが、言われなかったら気付きにくいであろうという程、見た目がかなり乖離していた。

 しかしあのヘイローは──ルビーのような形状を元にしたような、あのヘイローは……壊れてない。

 

「あの壊れぬヘイローこそが『神秘』と『恐怖』が同居した姿だったのだッ!1つの器に2つの神秘を保有し!その片方を反転させる事により、擬似的に神秘と恐怖の同時観測を可能としたのだッ!!」

 

「ッ!?」

 

「吸血鬼の神秘は、元からある神秘を強引に上書きしてしまう。『新たに与える』ではなかったのだ。だから、その仮説は外れた。なればこそ私の技術を使った。吸血鬼の神秘にて上書きした後、再度私が神秘を与え、その神秘を『色彩』の力で『恐怖』へ反転させた。それにより、本来ならば不可能であるハズの『神秘と恐怖の同居』が叶った!」

 

「要は、恐怖と神秘の同時観測には吸血鬼の神秘の上書きはあまり必要ではなかった。……仮説は外れたものの、そういう結果が得られたという意味では、実験も無意味ではありませんでしたね」

 

「な……なんで『色彩』の力が……ッ!?」

 

「新参者のベアトリーチェでさえも扱えたのだぞ?寧ろ……私達が扱えないとでも思ったか?」

 

「…………ッッ」

 

「憎き『色彩』だが、その能力は有用だな。黒服が

『無名の司祭』の技術を有するのと全く同じ事だ」

 

 そうだった。黒服も無名の司祭の技術を有して、それを扱えるんだ。全て有してる、全て扱えるワケではないのは黒服から聞いている。だが使える限り全てを何かに有効活用できるように備えているとは言っていた。

 マエストロもまた、色彩のチカラを、己の実験の為に有効活用したというのか────……。

 

「主な実験結果については、先生の端末の方に共有させて頂きます。実はこれから、最後の実験の本番なのです。少々予定より早かったですが──先生。おおよそ、丁度いいタイミングでしたよ?」

 

「ッ!!」

 

「実験の相手はあなたですよ、先生。そして先生の率いる生徒達です……!!」

 

「オオオオォォォッッッ!!!」

 

 雄叫びを上げるマエストロの人造吸血鬼。素体の肉体は、人工天使擬人化4姉妹と同じように、またマエストロが製作した肉体と見ていい。

 それだったら──生徒ではないのなら、容赦なく破壊できる。

 

「……全員、戦闘用意だ。アイツと……あの吸血鬼と戦うよ。何としても、ここで勝たなくちゃ」

 

 弾丸を確認し足りない者はリロード。手に持った銃は、いつに無く重く感じている事だろう。特に、リエ……そしてレイコ。

 彼女達を研究者に差し出す事に、本当の意味での乗り気ではなかった者達は、どこか焦燥に駆られているようにも見えなくもない。

 私はと言うと──テロ組織の子達は多少なりとも更生すべきだと思っているし、正直な所、罪悪感はあまり感じていないというのが本音だ。

 まぁ、相手が悪徳な業者じゃなくてゲマトリアで良かった……というのがかなり大きい。

 研究者の正体とやらを確認しなかったのは確実に私の落ち度だ、しかし結果論だろうと言われようと彼らゲマトリアが相手で安心したのは事実だ。

 

「ちっ……リエの尻拭いするつもりが……!」

 

「アレが同族だとは思えませんし、思いたくもないですね……。何なんですかあの禍々しい気配……ッ」

 

「……イケるよね、レイコ?」

 

「モーマンタイ!誰に言ってんのルーちゃん!私は最強になる吸血鬼だよッ!!」

 

「姉さんは後方支援に徹してよね」

 

「んー、もしテンちゃんやられたら参戦するね?」

 

「慈悲を以て────敵を貫きます」

 

「回復は私に任せて!甘いお菓子で援護するよ!」

 

「回復はお姉ちゃんに。敵のデバフは──この私にお任せください」

 

「アガリちゃんの援護はそんなに悪くないからぁ、期待しときなね♡ 私も援護するからね♡」

 

「ちぇ〜っ、メンドーな事になったな〜……」

 

「元はと言えば、私があの方々に委ねたせいです。なればこそ、今回は己の手で決着を。先生、指揮をお願い致します」

 

 頷いてリエに答え、シッテムの箱の画面をつけ、編成画面を開く。するとアロナとプラナが両脇からひょっこりと現れ、解説を開始してくれた。

 

『先生!今回は、2部隊同時指揮の「スイッチングシステム」と「制約解除決戦」を合わせたシステムです!』

 

『想定ですが、先日の「制約解除決戦」より格段に戦いやすくなるかと思います。しかし「シャーレの先生」は編成できませんので、ご注意ください』

 

「了解、それさえ分かれば……」

 

『また、総力戦のような複数回の出撃による打倒は不可能です』

 

『この1回の出撃で倒してくださいねっ!!』

 

 最後の最後にプレッシャーをかけてきやがった。フツーに今回も複数回で凸するつもりだったよ私。人工天使擬人化シリーズよりも強そうに見えるのにそれよりも凸数を減らせと。……鬼か?悪魔か?

 いや、敵は間違いなく悪魔だな。吸血鬼だもの。

 

「────よし、行こう!!」

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