「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
ヴァンパイア・ロードのスキルによる、凄まじいデバフをどうにか対処しつつ、永遠にも感じられた30秒をギリギリでやりすごす。
時間通り、30秒が経てばスズ、ルビー、シエル、リンコのデバフは解消されて、元の状態へと戻る。スズのサブスキルによる攻撃力アップも、いよいよ佳境に入る。もう1回、確実性を求めるなら2回。つまりあと1分程度でまず確実にロードを倒せる。
敵を倒さなければ、30秒毎に×2.9倍──やはり、かなりのブッ壊れスキルであると言える。
「ぐ……っ、当た、らないィィ……ッ!!」
しかし……スズでキメきる前に、戦闘開始100秒を迎え、レイコの命中率に
「『「「「了解っ!!」」」』」
シッテムの箱でレイコのEXの範囲を確認して、範囲ギリギリ入らない程度に離脱させる。レイコのEXは一度喰らえば10秒間だけとはいえ銃で攻撃ができなくなる。かなりの損失だ。
「『
「ゲギャッ……!?」
「ッ────!?なんだ、先生ッ!?それは!?」
「お、おのれ……ッ!他の吸血鬼の事は敢えて視界に入れないようにしていたのが
「……ッ!マエストロ……あの白髪の吸血鬼の生徒……もしやヴァンパイア・ロードと同類なのでは?」
「そういうこった!」
「?吸血鬼なのだろう?ならば同類だろう?今は、それよりも──」
「違います!放つ超音波の質や、飛び散った血から得られる情報からしても……。特にヘイローなんて、どうしてあの生徒だけ他の誰とも違うのか……ッ!」
「ッ!!」
「あの生徒は他の誰とも違う。特異、いや、異常と言うべきです。これは──」
「『
「────ッ!?」
やはり凄まじい威力だ。論理などで説明できない超級の音波はあらゆる周波数の音を含み、やがては共振破壊まで起こすに至る。聞こえる音も出ているはずが、逆位相の音まで放たれているから部分的にノイズキャンセラーの役割も担っている。
その中で攻撃的な音波だけを逆位相で打ち消さず敵へとぶつける。なんて器用な芸当。マエストロのマネキンの身体にヒビが走るのが見える。
そして、レイコのEXにはもう1つ効果がある。使用する度に攻撃力が10%上昇するのだ。
「『荒ぶる破壊神の顕現』ッッ!」
ダメだ、私の声が届かない。あまりにも続けると次はレイコの肉体もダメージを受けるようになる。
本人曰く──喉が裂け、血を吐き、気絶するまで決して終わる事はない。それでもやめられないのはこうして連発している最中は
無反動で使えるのはせいぜい3連発までらしい。以降は、記憶に残らない程に暴走する……らしい。
「……レイコは、こういうパターン……なんですね」
「私達……吸血鬼の大半は、暴走癖を持っています。日光や火、流水、銀などなどの弱点と同じくこれも種族特有の発作みたいなものだと思っていますが」
「……そ。ルビーの言う通り。でもって吸血鬼はその大半が野蛮というか、乱暴者だからさ。飂熾冘巫髏という組織に身を置かせて、好きに暴れさせるのが発作を抑えるのにも一役買ってたっぽいんだよね。少しは私の組織の有用性も理解できた?統治委員のナンバー2……ルビーちゃん?」
「それは置いといて。まぁ、レイコは戦闘狂らしいですしね。戦闘中、あまりにハイになり過ぎると、ああやって、暴走のトリガーが……。ルーシィさんはアレの止め方、知りませんか?」
「知らないし、そもそも止めらんないよ。スタンもCCも効かないからね、ああなると」
「あぁ……」
ルーシィのEXはスタン効果がある。その彼女がスタンも効かないと断言してしまうなら──恐らく試した経験があるのだろう。少なくとも今の段階で私達はそれを試した事は無いし。
「────やれ、ヴァンパイア・ロードッ!」
「『荒ぶる破壊神の顕現』ッッ!」
「『
もう何度目かになるレイコによるEX。すると、マエストロの指示にて、ロードもまたEXを放つ!
ロードもレイコのように大口を開け、息を吸い、そして目には見えない、耳にも聞こえない超音波を放ったのである。
2人のEXはぶつかり合い相殺────などしたワケではなく、ロードの方が上回っていたようで、逆にレイコの方が吹き飛ばされてしまった。
「レイコッ!レイコ、しっかりして!」
「了解ですっ!」
「う……うぅっ…………あ゙ぁッ!!」
レイコの暴走は治まったようだ。しかしロードの強力な一撃によって、レイコは、一撃で撤退寸前に追い込まれてしまう。
アスカの回復を要請するも、今の攻撃はスリップダメージが付与されているようで、アスカの回復が間に合わずに撤退。アスカの回復はルーシィに適用されたようだ。
「ルビー!ルビー!あんたやられてどーすんの!」
「……ダメ、です……先輩……。今の……吸血鬼特効……耐えられそうに……な…………っ」
小さく呻くとルビーのヘイローも消失。撤退だ。
スキルコストが溜まるのも段々遅くなってきた。士気も下がってきている。
素でダメージを入れにくい敵が、HPも多くて、その上で攻撃力も高く──メインアタッカーだとも言えるレイコ、スズ、ルビー、リエのうちの吸血鬼2人が抜けてしまっているのがかなりの痛手だ。
「畳み掛けろ!ヴァンパイア・ロードッッ!!」
「『
グッと腰を落とし足に力を込めるロード。直後、ロードの姿が消える。髪の毛が吹き飛びそうな程の突風に次いで、遅れて、銃声が四方八方から響く。
「あグッ……クソッ、ルビー……なんで落ちてんのよバカぁ……!!」
「姉さ────ッッ!!」
「アンドロイドリンコ!私を守って!」
『んー、これは無理だ☆
鼓膜がビリビリと酷く震える程の爆音を上げて、アンドロイドリンコが破裂した。しかしそれでも、見えない所からの銃撃は収まらない。
「アイツ……!見えないし、アイツ!マジどこから、狙って、きてんの……よォッッ……!!」
「闇雲に撃っても弾の無駄だよ、スズ。コイツは、とにかく高速で飛び回ってる。レイコもこうやって飛ぶのを練習してたっけ。……多分これ、終わるまで耐えるしかないよ」
「ッッ、テンコ!カバーお願い!!」
「無理っつってんでしょーが、姉さんロイドがァ!どーしてアンドロイドでもなくて機動力が劣る私にカバーできると思った!?少しは頭ァ使え!てか、何なのさアイツ!あまりにも無法過ぎるッ!!」
テンコのEXスキルを何回か使った影響が言動に出ているのだろう。EXの影響で「鬱憤」を溜めてもらっているからなのか、かなり粗雑な言葉遣いになってしまっている。……私は責められない。
「そーだね。移動されてるからヤマカンになるかもだけど、うまくいったなら、私の地雷で……もっかいダメージ与えられるかも……!」
そしてルーシィのEXを使用するも目論見は外れロードを地雷の爆発に巻き込む事はできなかった。そればかりか、リンコとタンクのテンコまで撤退に追い込まれてしまい、フィールドに残ったのは3人だけになってしまった。
第1部隊はスズ。第2部隊はリエ、ルーシィだ。やはり回復役がアスカ1人はマズかった。ライムは実質的に
アンナはアタッカー、アガリもサポーター。回復1人は無謀過ぎた。あまりにも。
戦闘終了まで、残り1分半。スズのEXでもまだ倒せないだろうがある程度のダメージは見込める。だからとスズのEXでダメージを与えHPゲージを一気に何本も吹き飛ばす事に成功したが……。
「オ゙ォアア゙ァ゙ァ……!!」
「『
『ヴァンパイア・ロードのスキルが発動しました!自己バフですっ……注意してください!』
『効果は──自身の防御力を85%、召喚する仲間の防御力を35%アップ。そして──
スキル名の通りとも言うべきか。レイコのような純白の髪が、墨汁に浸けたかのように根元から黒く染まっていく……。
「…………あ」
「あっ、いや。単に気になったんだけどさ。私達がここに来るまでに、透明なバリア?的なのが何枚もあったんでしょ?私は最後の1枚しか知らないけどそうらしい話はスズ達が話してたし」
「そのバリアってどうなったの?私達はどうやってバリアの向こう側に来れたの?通り抜けた?それかバリアは破壊された?」
「……ッ!!」
ルーシィが何かに気付いた顔になる。ルーシィはキレ者だ、スズやルビー、リエやシエルなどなどの思考を上回り追撃を回避してきた。
そんなルーシィが、どんな考えを思いついたか。聞き逃すワケにはいかない。
「……先生。この不利な状況、ひっくり返せるかも」
「スズ、リエ。悪いわね。……仲間、呼ぶわ」
「「…………ッッ!?」」
ルーシィは