「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
ハドマ学園改めゲヘナ学園第3校舎では、荒ぶる少女達が、弾丸のやり取りに興じていた。しかし、そこに笑顔を浮かべているのは────戦闘こそが生き甲斐、趣味である、レイコのみ。
裏切り者のルーシィを含めたそれ以外の全員が、相手のヘイローをも消さんばかりの勢いで、弾丸を打ち込み合っていた。
「どうして裏切ったのよ……ルーシィッ!!」
「いえ、ハナから仲間ではなかったとしても。共に苦難を乗り越えたり────苦労した仲ではあったハズです。それでもあなたは改心などしなかったし計画を変えるなんて事も無かった。全く残念です。残念でなりません」
「────苦難、ねぇ。ハドマ自治区って、やたらめったら細長いわよね。ゲヘナとトリニティの間にヴァルキューレあって、だけどそれらの隙間を縫うように確かに存在してさ。空が赤く染まった時は、自治区内に実質2つ3つのタワーが出現したようなものだったから、飛び抜けて大変だったわよねぇ。七天魔として、あちこちから助けを求められてさ」
「ええそうよッ!あの時は、飂熾冘巫髏も協力してバケモノ共をブッ飛ばしてたハズでしょッ!?私ら統治委員会とも、手ェ組んだっつーか、シンプルに同じ目的だったから、休戦状態だった!!」
「それなのに事態が終息した途端、また、学園への加害が目立つようになって。私もスズ先輩も、他の皆も……結構、落胆してたんですよ?」
「
「そーね。そんなの、あんたらが勝手に期待してただけでしょ?私達の目的は、昔っから変わらない。あんなバケモノなんかに学園を壊されたり、世界を滅茶苦茶にされちゃったらさ。ハドマやゲヘナで、この私が頂点に立てなくなっちゃうでしょ……?」
「「ッッ!!!」」
「私が頂点に立つには、それ以外を排除しなきゃ。さぁ、私達の計画も折り返し地点よ……!!」
「もうちょっと溜めたら全力ブッパ!アッハハハ、プレハブ校舎もブッ壊してやるわぁ!!」
SSにより時間経過と共に確実に下がる命中率。レイコはそれを、装弾数に優れるマシンガンで補い戦闘を継続していた。現在、戦闘開始から30秒──レイコの命中率は現在、通常時の70%だ。
「リエを泣かせやがってッ!生意気な後輩共ねッ!私も1発──『
「「ッッ!!」」
シエルのEXにより、2人に対し36秒の火傷持続ダメージ。続けざまにアスカによる
「
「「「「!?」」」」
レイコのEXを警戒していた6人、しかし相手が使用したのはレイコのEXではなくルーシィのEXだった。
地雷を取り出したルーシィは校舎内にも関わらずそれを設置し、爆発させる。攻撃力は高くはない。しかしその凄まじい轟音で、前線に出ている4人をスタンさせてしまった。
「あ、ぅ……!?」
「くっ……」
「ッ……クソォ……」
「失念、してましたわ…………!!」
ルーシィのEX────それは、対象へのほんの少しのダメージに加え、残り体力に応じたスタン。残り
だからこそ、ルーシィは待った。ある程度削ればアスカが
「今よ、レーちゃん!!」
「待って、あと3秒くらい……!!」
「よしきたッ!」
ルーシィのスタン時間は、最長5秒、最短3秒。前衛であるスズ、ルビー、更に中衛であるシエルは範囲内であった為にアスカの
しかし
故に────4人の中で誰よりも早くルーシィのスタンからの復帰を果たす事ができた。
「……これで終わりです。ルーシィさん」
「なッ……は…………リエ……あんたどうしてッ……!」
「
「ッッッ、レイコ逃げてぇッッ!!!」
「え」
「────『
リエがEXを発動したその刹那、プレハブ校舎の外が一気に暗くなる。直後、メキメキと音を立てて校舎が軋み、そして次の瞬間……。
「……全ての因縁を、消し去りますわ」
「ぎゃんっ!!」
「ふぎゃあっ!!」
リエの神秘により生み出された氷山は、的確に、敵2人のみを押し潰した。それによってルーシィは気絶、ヘイローの消失等からリエ達はそれを確信。しかし、レイコは……。
「『荒ぶる破壊神の顕現』ッ!!」
「しまっ……」
「く……っ」
「「ッッ!!」」
リエの落とした氷山を自らのEXで破壊するのと同時に、回復済みのハズの、前衛のスズとルビーを倒してしまった。次いで、氷山を破壊し自由の身となったことで、スタンから回復しそうになっていたシエルをも打ち倒してしまう。
レイコの敵はリエと後方支援のみ────そしてリエの敵は、既にレイコのみであった。
「く、そォ……!そんな力を隠してたのね……ッ!」
「……隠していたワケではありませんわ。私、戦いが好きではありませんの。最強だとか、最弱だとか、そんなもの、私にとっては何の価値もありません。ですからハドマ最強など、スズさんでもあなたでもどうでもよいのです。……私でなくとも、ね」
「ッ……!?」
「そろそろ、ヴァルキューレが駆け付ける頃です。逃げるなり隠れるなり、それとも最後に暴れるなりお好きにどうぞ?」
「ヴァルッ……なっ、い、いつの間に呼んだのよッ、そんなのッ……ッ!?」
「知れた事を────戦闘開始前に、アスカさんにお願いしておいたのです。
「……
「……?ええ、そうですけれど、それが何か?」
「…………………………」
項垂れ、黙り込んだレイコ。先程までは雄々しくバサバサと翼を動かしていたのに、今はもう、翼も萎れてしまっている。
しかし次の瞬間、これまで見せた事のないような凶悪な笑みを貼り付けながら顔を上げ、獰猛な獣のような笑い声を上げた。
「ヒヒヒヒャヒャヒャヒャヒャアッ!アッハハハハァッ!ヒャハハハッ、ハハハァッ!!」
「!?」
「あぁ、凄い、本ッ当に凄いよぉ、ルーちゃぁん♡ そう、あなたはいつも……いつも、先の先まで……!鼻で笑っちゃうくらい、バカみたいに用心深くて!だけど、いつも、その通りになるのよねぇ……!」
「何を言って──」
「ルーちゃんはねぇ!副会長としてあんたのそばで過ごしてる間、計画を練る事しかやってなかったと思った?飂熾冘巫髏への指示出しと
「……まさか」
「あんたの性格を、間近で調べてたんだよぉっ!!物事の流れだとか展開だとか!全て予測して計画を打ち立てて!それでも性格ってのは読めないから!間近で観察する事で、あんたの
「ッ!?まっ──まさか、樫田さんも飂熾冘巫髏の一員だとでも!?あんな……あんな……太陽のような明るさのサエさんが、まさか…………」
「あー、違う違う。飂熾冘巫髏の一員は、コッチ。おいで…………
レイコの呼び掛けに応じ、1人の生徒が、風穴の空いた天井から飛び降りてくる。その腕の中には、気絶してヘイローの消えたサエが抱えられている。
「アガリさん……ですって……?」
「……お久しぶりですリエ議長。……いえ、元議長」
三重アガリ────三重アスカの妹にして、姉と同じ美食研究会対策委員会の一員であり、そして、クラスメイトである樫田サエの、親友である。
ルーシィ達との戦闘開始前に、リエは後方支援を担うアスカに「同じ委員のサエにヴァルキューレに通報してもらうように」と指示を出した。
そして委員長のアスカから指示を受けたサエは、その場でヴァルキューレに通報……
「なん……で…………」
────
アスカからの連絡をもらったサエのすぐ傍には、クラスメイトであり親友であるアガリが居たのだ。
サエを、そして姉のアスカをも飂熾冘巫髏に勧誘する為にと、ルーシィから美食研究会対策委員会に送り込まれていたアスカの妹が。よりにもよって、アスカからの連絡を受けたサエの傍に居たのだ。
「もし、あんたが『サエ以外にも』頼んでたなら。多分、きっと──十中八九だけど、もしかしたら、ヴァルキューレに囲まれてたかもねぇ?」
「……っ!」
「でも残念。ルーちゃんは『リエならそうする』と読んでたから──連邦生徒会の記者会見が始まると知ってあんたら七天魔に招集をかけるのと同時に、アガリに、サエの傍に居るように指示し──更に、飂熾冘巫髏の構成員に『飂熾冘巫髏ではない友達の傍に居ろ、通報されそうなら堕とせ』って、事前に指示を出してたのよぉ♡♡」
「な……ッ」
「用意周到ってのはルーシィの事よね。うふふっ♡ 弱くたっていいの。こういうキレ者なルーちゃんのコトが……本ッ当に、大好きぃ……♡♡」
「…………」
「計画通りにコトが進んだ時の気持ち良さったら、どんな快感にも勝るモノ!この後も、勝利の快感に酔わせてあげるわ……ルーちゃぁん♡♡」
(口を大きく開けた、あの構えは────ッ!!)
戦闘開始から、既に100秒以上が経過していた。
レイコのSSによって、100秒以降は通常攻撃が全く機能しなくなってしまう代わりにノーコストでEXスキルが使用可能である。
リエ、そしてアンナの狙撃にアスカの回復などの奮闘も虚しく────レイコ、いや、ルーシィ達に改めて勝利を与えてしまった。
次回、離反。