「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
| 絆イベント クロノの絆ストーリーへ |
|---|
| 絆ストーリーを始める |
|---|
───────────────────────
飂熾冘巫髏トリニティ部隊第1幹部、時計クロノから連絡を貰った私は、あまり大きくない公園へと呼び出された。組織の幹部としてというよりかは、彼女個人での用事があるような雰囲気がしたので、すぐに会いに行ってみる事にした。
「あれ、ここって……」
座標に見覚えは無かったものの、いざ来てみると何度か来た事のある公園だと気が付く。確か、前にブラックマーケットでの買い物帰りに寄ったっけ。それも何となく寄ってみたワケではなく、ベンチでレイサが寝ていたからで……。
「レイサがよく寝てる公園……?」
「あっ。来たね、先生」
「や。元気そうだね」
「ボチボチだけどね。……はい、これ」
「うん?」
トリニティの校章が描かれた学校指定らしき学生カバンから取り出されたのは、小さな紙袋。中身を見てみると、小綺麗なクレープだった。ちょっぴりほろ苦そうなチョコソースの匂いがふんわり漂う。
「話聞いてもらうのに、なんも手土産が無いのは、その……申し訳ない、と……思って……?」
「そんなの気にしなくていいのに。でもまぁ、折角だから頂くね」
「うん。私はもう食べてきたから。とりあえず愚痴なんだけど聞いてくんない?」
「いいよ、ドンドン吐き出しちゃって」
「明日から学校、だからッ……ティーパーティーの、ヤツと……面談、してきたん、だけどっ……!」
「え」
「『あなたがテロ組織の幹部であるという事実は、可能な限り外部に漏れないよう尽くします。後は、あなたが普段通りの日常を求めさえすれば、全ては上手くいくでしょう』……って……」
「……ナギサ?」
「そう!!桐藤ナギサよッ!!アイツ、ほんっと、ふざけやがってっ!!」
「ふざけてる、かな……?」
「ふざけてる!私は誇りを持って幹部やってんの!それなのに──それなのに!まるで今の私の日常を
『上手くいってないだろう』と決め付けるみたいなあの言い方!腹立つわ!!」
「う、うーん……」
確かに、今の日常を「上手くいってない」とでも想定していなければ「〜さえすれば上手くいく」、なんて言葉は出ない……のか。
そこが地雷なのか?クロノ……?
「マトイが居なきゃ暴れてたっつーのよ!!全く、テロ組織の幹部2人まとめて呼ぶなんて舐められたものよね!!」
「時間が無かっただけじゃないかなー……」
「どーせ話し合いしかやることないんでしょーが!忙しいもクソも無いわよ!」
「生徒会はそれが仕事だから。落ち着いてクロノ」
「チッ!……ホンットにさぁ!何かをブッ壊さなきゃ気が済まない!どいつもこいつもッ、ホントは私を見下してんのよ……!子供扱いして、ワガママだとか
切り捨てる!壊したり戦ってないと気ぃ済まない!どうすればいいのよ、私は!こんなんで明日から、また学校に行くっての!?無理よ、絶対に!絶対にまた問題起こして停学やら何やらになるのよ!!」
「……いっそ、休むのも手だと思うよ」
「はぁ!?これ以上休んだりなんかしたらフツーに留年……」
「それも、1つの道さ。留年しないで進むのが普通なのかもしれない、だけど今のクロノに『普通』の道は毒でしかない。そしてそれは、きっとクロノのせいじゃない。それこそ、クロノがこうなったのは君の過去に起因しているんだろうし」
「でもッ……」
「クロノにはきっと、自分、そして過去と向き合う時間が必要なんだと思う。あと『戦い』と『破壊』以外にもストレス発散の方法を見つけられると更に良いと思うよ」
「ちっ……息をするよーに簡単に言ってくれるよね、他人事だと思ってさ……!」
「思ってないよ」
「……はあ?」
「簡単だなんて、これっぽっちも思っていないよ。簡単じゃないからこそ、時間が必要なんだ。君が、誇りを持ってテロ活動するのもいいとは思うけど。それも一つの選択だからね。でもきっと──他にも道はあるよ。誇りを持って活動できる、何かがさ」
「……何か……ね……」
夕焼けの空、夕日に向かって飛んでいくカラスの群れを目で追いながらどこか遠い目になるクロノ。物思いに耽るその様子は、さながら人形のよう。
「……ごちそうさま。美味しかったよ」
「ねっ!それ美味しいでしょ!私もそれ好きなの!友達っ…………だった子に……教えてもらって、さ……っ」
「……?喧嘩でもしちゃった……?」
「喧嘩……なら、まだ良かったかな。なんというか、決裂というか……。あの決戦の夜にさ……私が
「……」
「そいつも自警団なんだけどさ。声はバカでかいしうっさいし、名前通りウザいんだけどさ。でもさ、なんか、悪いヤツじゃないんだよね……アイツ。そのクレープ屋を教えてくれたのもアイツだし……」
自警団──声がバカでかい、名前の通りウザい……何故だろう、心当たりが1人だけ居るような気が。もしかしなくても、あの子なんだろうな……。
「もしかしてそれって────」
「あ!!!こんな所に居ましたか、クロノさん!!!!」
「ゲッ。あんたなんで……」
「あれ!?先生!!こんにちは!!」
「うん、こんにちは。レイサはどうしてここに?」
「クロノさんを探してました!!!停学が解けて、明日から学校だと聞いたので!!明日からは一緒に登校しようと思いまして!!!」
「!?」
「おぉ。それは……どうして?」
「クロノさん、テロ組織の幹部さんでしたから……!でも、生徒会の人が許しても他の人はクロノさんを許さないと思います!!そこで私です!!!私が、学校にいる間はクロノさんのボディーガードとして一緒に居ればいいんです!!!」
「ちょ……はぁ!?何それ意味わかんな……」
「そうすれば!クロノさんは他の人と喧嘩しなくて済みます!!私と居れば、いじめられることなんかありませんから!!!」
「っ……!」
「だから!学校辞めたりとか、また暴れたりとかはしないでください!!クロノさんも、私の、お友達なんですから!!!!」
「……レイサ……」
レイサはそう言い切ると、むんっ、と胸を張ってドヤ顔に。ドヤ顔……というより、単に誇らしげだ。
レイサが良い子過ぎて、溜め息が出そうだ。
「……ハッ。バッカじゃないの?私なんかと居たら、あんたもイジメられるよ?自警団を名乗るテロ組織幹部だとか、イチャモン付けられたり、変な因縁を付けられる事になる。学校内で私と居るなんてのはバカのする事だよ」
「それでも!!私は大丈夫です!!」
「だからなんでさ。あんたそんなバカだっけ?」
「あなたがまた悪い事をしてしまうよりマシです!クロノさんが暴れそうになっても、私ならあなたを止められます!!私なら大丈夫です!!なんたって伝説のスケバン、キャスパリーグ以外は負け知らずなんですからっ!!」
両手を腰に当て、またもやドヤ顔。大声で叫び、叫び……何度も叫んでいるからか、汗をかいている。しかしそんな所もレイサのいい所である。
クロノも、そんなレイサに毒気を抜かれたのか、呆れたように溜め息をつき……。
「はぁ……。分かったよ、レイサ」
「!」
「学校行くよ……サボんないでさ。だから、まぁ……あんたから言い出したんだからしっかりしてよね」
「はい!!!授業中だって守りますからね!!!」
「いやあんた1年でしょうが。私、2年ね」
「はうっ!?せせせ、先輩でしたかっっ!?!?」
「知らないで絡んできてたのかよ……いやまぁ、今更先輩ヅラする気は無いんだけど…………まぁいいや。よろしくね、レイサ」
「はい!!!!……後輩に自分を守らせる先輩って、なんだか良いですね!!偉い人みたいで!!!!」
「イヤミかお前」
「えぇっ!?イヤミだなんてとんでもない!!!」
「……はぁ。あんたと居ると、退屈はしなさそうね。とりまクレープでも食べに行く……?奢るよ」
「いいんですか!?やったぁ!!!」
レイサがいつもの走り方で公園を出ようとする。クロノもまた、そんな彼女を追い掛けて駆け足に。しかし入口辺りで足を止めると、未だベンチに座る私を振り返り、手を振ってきた。
「んじゃ、またね先生。なんか中途半端に終わった気ぃするけど……これもまぁ、悪くはない、よね?」
「うん。きっとね。──学校生活、楽しむんだよ。何かあったらまた相談に乗るからね」
「……うんっ!」
パッと花火のような明るい笑顔を咲かせる。私はそれを見てクロノは大丈夫だと──きっとそんなに遠くない未来、組織を抜けるかもしれないと、そう直感した。