「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
第1話:わからせ
「──失礼します。居ますか、レイコ。居ますね。仕事中にすみませんがちょっと来てもらえますか」
「あん?珍しいわねェ、ルビー。あんたがこの私に用だなんて」
「いいから、来てもらいます」
「はいはーいっと。会計の仕事もクソダルかったしあとはお願いね〜、アンナ先輩♡」
「えっ、ちょっと……!?」
「いえ仕事はやってもらいますよ。話が終わったらですけど」
「ふーん……?クッソ真面目なあんたが、仕事を中途半端にしてまでツラ貸せって……ふふ、明日は槍でも降るのかなぁ?」
ルビーの行動を茶化すレイコ、しかしそんな声を無視して、ルビーはレイコの前に立ってツカツカと歩を進める。向かった先は屋上。「話をしに屋上に来る」といった漫画のような展開に、初めて屋上に来たらしいレイコはキョロキョロと周囲を見回す。
あまり整備などされていないようで、所々、泥のような汚れのようなものが溜まっている。
「てか、ウチの学園って、屋上って入ってもイイんだったっけ……?これまで鍵を壊さずに入れた試しが無い……ハズなんだけど」
「ダメですよ。しかし私は統治委員会なので」
「……なので、何よ?」
「?見回りという名目で入れるってだけですが?」
「いや職権濫用ォッ!!」
「まさか、あなたにそれを言われる日が来るとは。役職というものは人を変えますね」
ふふ、と口元だけの笑みを浮かべて、おずおずと屋上へと足を踏み入れるレイコを誘導する。慣れた手つきで鍵を閉めると、扉から距離を取り、会話を聞かれないようにと警戒する。
そのあまりの徹底ぶりに、レイコも「これは只事じゃない」と察知し、周囲を見るよりルビーだけを注視するよう意識を集中させる。
「……んで?話ってのぁ何よ」
「──先日の『ヴァンパイア・ロード』との戦いを経て──そしてゴルコンダさん達の研究結果を先生から聞いて、思った事があるんです」
「!」
「私達『吸血鬼』の正体。『生まれながら』に
「……で?」
「少なくとも私の主観では、生まれた時から吸血鬼でしたから、そう信じたいです。しかし彼らのあの研究結果は──『ヴァンパイア・ロードは、自らを生まれながらの吸血鬼であると自認している』──クローンのように造られた存在である彼女ですら、己を生まれながらの吸血鬼だと自認しているというこの事実は、私自身やレイコ、あなたにも関わる事なのだと思います」
「だからァ?」
「同じ『仲間』が、欲しいんです。きっとこれは、私1人の力では解き明かせない。仮に先生の助力があったとしても……難しいでしょう。ゲマトリア?の方々でも、結局は『正体』までは掴めなかった」
「私が居た所で変わんないと思うけどォ?」
「それは分かっています。私がレイコに求めるのはあなた自身と、あなたの持つ、
「……飂熾冘巫髏の吸血鬼を引き抜けと?」
「ええ。……私の仲間に、なってくれませんか?」
「────アンタさ。虫がいいとは思わないの?」
「えっ……」
ルビーより僅かに身長が高いレイコ、しかし当のルビーは圧倒的に「上」から見下ろされているかのような錯覚すら覚えてしまった。大差の無い身長のはずが、1mも2mも差があるかのような圧倒的なまでの威圧感があった。
まさに蛇に睨まれた蛙。第1校舎が壊された際に圧倒的な敗北を喫したトラウマすら抜きにしても、同じ紅色の瞳から放たれる威圧感の前に、ルビーは後退りするしかなかった。
「散々これまで飂熾冘巫髏の誘いを蹴っておいて。今度は『自分のルーツを知りたいから同じ吸血鬼のよしみで力を貸してくれ』だァ?」
「っ、そんな、つもりじゃ」
「……舐めんのも大概にしときなよ?」
「っ!」
「……ま、今の私は飂熾冘巫髏じゃあないけどさぁ。飂熾冘巫髏の吸血鬼部隊を引き抜くっつーんなら、また話は別だよ。勿論、武力行使のつもりでしょ?説得なんか、できっこないよ。私を以てしてもね。飂熾冘巫髏からすりゃ、私も裏切り者なんだもん。裏切り者の話を聞くほど、ヤツらは甘くないしね」
バドミントンのスマッシュのように、ピシャリと綺麗に言い返されてしまい、ルビーは黙るより他に無かった。事実、ルビーは飂熾冘巫髏からの勧誘を何度も何度も受けていた。それを何度も何度も拒否していたのだから、ルビーがいざ同じ事をされても文句など言えない立場である。
「でもまァ……そーねェ。もしもアンタが私に根性を見せてくれたら、少しは考えてあげよっかなぁ♪」
「根性……ですか?」
「そっ。言わなくても分かんでしょ?」
「……私と戦って力を示せと……そういう事ですね」
「分かってんじゃん♡」
その場で銃を構え、屋上にて戦闘を開始。
屋上の戦いは屋外戦判定らしい。ルビーの屋外戦適正は最悪のD。対するレイコは最高であるSS。結果は言わずもがな、ルビーの惨敗であった。
尤も──仮に地形適正が逆だったとしても、素のステータスの違いでルビーが押し負けていた事は、まず間違いないのだ。ルビー1人で、飂熾冘巫髏の元副総長であるレイコに敵うハズがないのだから。
スズやシエル、更にアスカともチームを組んでも地形適正が不利なレイコに押し負けた事がある程に両者の「強さ」には格差がある。埋めようのない、絶対的なまでの差が。
「がはっ……!!」
「はーぁ。統治委員会の副委員長もこんなもんか。まっ、ハドマ最強は私だって知ってたけど。改めてこうして戦うと、
「ッ……待っ、て……!!」
「悪いけど、この後は先生とデートの予定あんの。会計の仕事さっさと終わらせなきゃあ、
「っっ…………」
「じゃーね。
「!!」
「屋上の施錠だけヨロ〜」
手をヒラヒラさせて、倒れ込むルビーを放置して校舎内へと戻っていく。
圧倒的な完敗を叩き付けられてしまい、ルビーはその場から動く事ができなかった。前述した通り、レイコに完全な敗北を喫する事自体はこれが初めてではない。
しかし、己の意志を貫く為の戦いで、こんなにも力が発揮できないというのは──こんなにも悔しく辛いものなのかと、涙を滲ませた。
「それでも私は──レイコ──あなたをこっち側に引き込まなくっちゃあ、ならないんです……ッ」
レイコの強さは、カリスマは圧倒的だ。それこそゲマトリア製の「ヴァンパイア・ロード」を除けば吸血鬼の中では一番だろう。
だからこそレイコを引き込み飂熾冘巫髏の吸血鬼部隊を引き抜く為には、手段なんてものは、選んでいられなかった。
◆
数時間後──保健室にて、簡易的ではあるものの自分で手当てを済ませたルビーの目の前には、先程ルビーをボコボコにしたレイコの他に、シャーレの先生が居た。
「ほらレイコ、ルビーに言う事があるんでしょ?」
「わっ、わかってるッ、てばぁっ♡ そ、そのッ、えっと……ルビー!」
「は、はい」
「私もッ……♡ そ、その、仲間に、なってやるわ♡ じ、自分の
「うんうん。よく言えました」
「いっ、言ったでしょっ!さっさと止めなさいよ♡ 早く止め、てぇっ♡ ひぁ゙っ♡ あっ、んぁっ♡ 待っ、いやぁ♡ 強くな──あ゙ぁああ〜〜っ♡♡」
「あー、間に合わなかったね。お掃除はしっかり、綺麗にするんだよ」
「フーッ……フーッ……♡ は、はいぃ…………♡♡」
(せ、先生……レイコに一体何を…………)
詳細を尋ねたい気持ちはあったが、それを知ると自分も
こうしてシャーレの先生の協力を得て、ルビーとレイコは手を組む事にしたのであった。