※この作品はR-18です。

「先生!もっとあたしらに構って!」   作:アキラゼミ

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第3話:ゲヘナとD.U.

 

 吸血鬼調査隊ヴァンピールの結成から、数日後。隊長のルビー、副隊長のレイコの他に、百人超えの部下を集めて今後の方針を発表した。

 

「────という事で今後の方針としては、レイコ副隊長の助言によって、まずはゲヘナ風紀委員会の副委員長である盛宮(もりみや)モルモさんに助言を求める為、風紀委員会の方に向かいたいと思います」

 

「そん時、この前まで起きていたルーちゃん関連のいざこざのノリで戦闘とかになりかねないから──とりあえず、全員で行くわよォ♪」

 

「「「「おーーー!!」」」」

 

 レイコですら身長が高い部類の、吸血鬼の集団。揃って声を上げるその姿は小学校低学年頃の子供のお遊戯会のようにも見えてしまう。

 そのままのノリでゾロゾロと集団でハイランダー鉄道学園運営の列車に乗り──ゲヘナ学園へ向かうその姿は、小学生の遠足や体験学習か何かの、学校行事のよう。しかし忘れる事なかれ。小学生にすら見えても、その実、中身はれっきとした高校生だ。

 

 ◆

 

「────モルモはD.U.に居るけれど……?」

 

「え゙ぇっ!?う、うそぉ!?」

 

「無駄足でしたか……」

 

 風紀委員会本部に到着したはいいものの、特に、レイコが期待(危惧)していた戦闘にはならず、風紀モブを通してヒナへのお目通りが叶った。

 ルビーとレイコの2人のみヒナとの面会の時間を設けられ、アコの出す美味しくないコーヒーに舌を攻撃されながらモルモに会わせろと言う。

 しかしヒナから返ってきた答えは、上記の通り、無情にも期待を更に裏切るような悲報だった。

 

「嘘なんてついて何の意味があるのよ……。というかレイコ……あなたなら知ってたんじゃあないの?」

 

「ハッ?何で私が!」

 

「何でって、あなた、飂熾冘巫髏の副総長だったのでしょう?モルモがアッチに行く事になったのは、総長であるルーシィの計略だったハズよ。マコトを上手く言いくるめてイオリと共にゲヘナから飛ばしゲヘナを乗っ取りやすくする為……でしょ?」

 

「ッ!そ、そーなんだけどさァッ!アレからかなり時間も経ってるし、もうアッチから撤退してるって思うでしょ!?」

 

「事情が変わったのよ」

 

「事情ォ!?」

 

「確かに初めこそは、ルーシィに言いくるめられたマコトからの圧力による、強引な出向だった。でもよく考えてみたら、かなり利用できると思ったの。先生を守るのに、ゲヘナは遠すぎる────……」

 

「……っ!」

 

「だから、私とあまり変わらない強さのモルモや、次期委員長であるイオリを呼び戻す必要は無いって結論に至ったわ。どうしてもキツイ時には、2人のどちらかを呼び戻せばそれでいいしね」

 

「そ……そっ……か」

 

「────確かに、ここゲヘナからシャーレまでは遠いと言わざるを得ません。お隣のハドマ自治区もシャーレまでは特急で数時間を要するくらいです。ゲヘナもそれに近いでしょうし……」

 

「そういう事ね。マコトからの圧力だったけれど、利用できるものなら利用してやる──それだけよ」

 

 ちらりと視線を時計に移す。もう、時間だった。

 ヒナは時間に追われる生活をしている。今日とてたまたま時間があっただけであり、こなすべき仕事そのものは、常に山のようにあるのだから。

 

「じゃ、そういう事だから。モルモに用があるならシャーレ近所の『風紀委員会支部』に行ってみて。あっちはゲヘナ程は忙しくないし、時間もあるハズだから。一応、時間を設けるようモルモにも連絡はしておくわ」

 

「えっ!モル姉の連絡先、知ってんの!?」

 

「まあ……私は委員長で、モルモは副委員長だしね。寧ろ、知らない方が問題よ」

 

「教えて!私から連絡するからッ!」

 

「それはできない相談ね。個人情報保護の観点から言っても、例えあなたとモルモが旧知の仲だろうと無闇に教えるべきではないと判断するわ」

 

「うぐ、流石は風紀委員長……情報管理もしっかりとしてるわ……」

 

「私、元は情報部だから。こと『情報』の扱いには気をつけているつもり。──あなたが飂熾冘巫髏(テロ組織)を辞めたっていう話は、本当らしいわね」

 

「なァによ、疑ってたワケ?」

 

「あれだけ嬉々として暴れてたんだし、ね……」

 

「ハンッ!別にィ?強いヤツと戦って、キヴォトス最強はこの私だって世の中に知らしめたいだけよ。所属は関係無い。今はこの場所が私の居場所だってだけなんだから」

 

「近々、またお手合わせを願いたいわね。次は私が勝てるよう鍛えておくから」

 

「やーなこった。一度でも勝った相手には挑まない主義なの♡ 時間の無駄なんだもの♪」

 

「ふふ。……それ、手の内を知られた相手には二度と勝てないから──でしょう?勝ち逃げかしら」

 

「あァ!?なんですってぇ!?今ここでブッ潰してやってもいいのよォ!?」

 

「負け惜しみに聞こえるかもしれないけれど。私も負けたままでは気持ち悪いからね。強さなんてのは興味無いけれど……『先生を守る』為に、必要になる要素だもの……」

 

 ◆

 

 ゲヘナ学園でのヒナとの面会は、一応、最後まで平和(?)に終わらせる事ができた。しかし最後の最後で火花を散らすので、ルビーは頭を痛め、胃をキリキリと締め付けるように痛めていた。

 

「全く、レイコは相変わらず好戦的なんですから……胃を痛める私の身にもなってくださいよ」

 

「おー?なんだお前ー?副隊長が風紀委員長如きに負けるとでも思ってんのかー?」

 

「そーなのか、隊長ォ?オォン!?」

 

「違いますって!レイコの強さなんて、誰より私が知ってますよ!だからこそ、互いに強さが拮抗して戦闘がより激しくなったら大変な事に──」

 

「「勝てばよかろうなのだーーーーッッ!!」」

 

「ダメですね部下達(コイツら)、早くなんとかしないと。脳筋過ぎます」

 

 ルビーが引率し、レイコが後ろから誘導する形で列を作りD.U.の街中を進むその様はまさに遠足。

 班長のルビーと引率の先生のレイコにも見える、列の作り方──歩いていく内に自然と形成されたが故に、誰もこの列の異様さには気付かないらしい。

 

「〜♪ 〜〜〜♫」

 

「「〜〜♬♬︎」」

 

 シャーレの近くの、新築の教会前を通り掛かる。

 ルビーやその他の生徒は黙って通り過ぎるものの最後尾であるレイコだけはその場で足を止め、その純白の洋風の教会を注視する。

 

(やたら荘厳な音楽ね……賛美歌?っぽくないけど。ちっこい教会なのに、造りはやたら丁寧で、どこかその辺のよりキレイ……。歌ってんのはガキかしら?やたら幼い声ね……)

 

 教会の中で歌っているのは、人工天使4姉妹だ。飂熾冘巫髏大決戦の際にシャーレの先生により召喚されたので、レイコも声に聞き覚えはあるはずだ。しかし自身の戦闘に夢中だった彼女がそれに気付くハズもなく……。

 

(あ、石碑なんてある。なになに、『早瀬──)

 

「レイコ?風紀委員会支部はもうすぐですよ」

 

「あ、うん、今行くわ」

 

 ◆

 

「────で?『吸血鬼(自分達)』の出自(ルーツ)を調べに私に話を聞きに来たって……?」

 

「そ!モル姉なら何か知ってるかなって!」

 

 呆れ果てたモルモは大きな溜め息をつく。しかしレイコは年の離れた姉に甘えるような、普段と違う態度と口調を変えず更に言葉を続けた。

 モルモはそんなレイコの頭をワシャワシャ撫でて強制的に黙らせると、普段よりもちょっぴり強めの口調での説得を試みる。

 

「アンタバカァ?アンタ強いってのに、こんなバカみたいに大所帯で押し掛ける必要ある?つーか寧ろ怪しまれるでしょーがよ、戦争しに来てるようにも見えるわよ?」

 

「見えない見えない!そう見えたら、そいつの頭がおかしいだけだから!」

 

「生意気(ナマ)言うのはこの口かしらねェッ!?アンタの行動がおかしいでしょっつってんのよ〜ッ!」

 

「うみゅみゅぶぅぅ……」

 

 頬を両側から引っ張って、ウニウニと上下左右に動かしてやる。クスクスと笑い声が上がるが、その声の発生元を優れた耳で捉えたレイコは、モルモに手を離されてからお尻に蹴りをお見舞いした。

 

「それで、モル姉!何か、知らない……?」

 

「何かって……あのねぇ、抽象的過ぎるわよ」

 

「そりゃそうかもだけどっ……でも!」

 

 うーんうーんと頭を悩ませるモルモ。唐突な話、しかしそれ以前にモルモもあまり深く自分の出自を思い出そうともしてこなかったから。

 だからモルモにとってこの悩みは「思い出すのに苦労する」悩みであった。

 

「────アビドスに行きなさァい」

 

「うげっ。暑くてヤバイのに、砂漠地域に……?」

 

「レイコも知ってるでしょ。私の出身はアビドス。私を足掛かりにして自分達の種族そのものの出自(ルーツ)を辿りたいなら──アビドスに行くより他に、方法は無いわよ」

 

「アビドスかぁ〜、遠いし暑いしメンドー……」

 

「ンなこと言ってないで行ってきなさいよ〜」

 

「や〜だ〜……」

 

 モルモとレイコがそんなやり取りをしている中、ルビーは素知らぬ顔でスマホをポチポチとイジって自分の世界に入っている。

 調査隊として来ているのに隊長が何を──と軽く咎めようとしたレイコが口を開こうとしたその時。スマホに伸びてきたレイコの手を払い除け、2人の眼前にスマホの画面を見せ付けた。

 

「私のバイト仲間がアビドス高校の生徒なんです。アポが取れました。今すぐ行きますよ、レイコ」

 

「嘘でしょォ!?今日は風紀委員会支部(ここ)で休んで、明日以降にしようよぉ……」

 

「思い立ったが吉日、善は急げ。ほら行きますよ」

 

「うへ〜、マジでやだぁ〜〜〜!!暑いの嫌いなの最悪なのー!吸血鬼は環境変化に弱いんだからね!分かってんの!?」

 

「逆に何故分からないと?私も吸血鬼ですが?」

 

「〜〜〜〜ッ、部下のザコ共(アンタら)は後から来なッ!」

 

 部下達には一時的な休憩を指示。全員が支部から出て行き、近辺で遊び始める頃合いまで今後の事を話し合い、2人もまた支部を出て今度はアビドスへ向かおうとする。

 目を輝かせるルビーに反してレイコはグデグデでやる気の欠片も感じられない。暑いのが苦手なのに暑い地域に向かおうという話になっているのだからこんな反応になってしまうのも無理は無い。

 暑いのが嫌いなあまり普段から暑い日はパンツを履かないレイコからすれば、汗をかく事すらも嫌悪するべきことなのだ。

 モルモは、制服をちゃんと着ているかと思えば、乳首が見えそうなくらいにガッツリと大きく胸元を開いている。暑さ対策らしい暑さ対策をしていない吸血鬼なんて、それこそお堅い一面のあるルビーかそれくらいだろう。

 当然、冷感スプレーの他に多数の汗ふきシートを常備してはいるが、気休め程度でしかない。

 

「仕方ないですね、アイス買ってあげますから」

 

「うぅ……ヤダなぁ、暑いのヤダなぁ……オアシスも枯れちゃってるんでしょ?行く意味よ……」

 

「あ、そーだ。ちょい待ち、ルビーちゃん」

 

「はい?」

 

「『思い立ったが吉日』、『善は急げ』──確かにそうとも言えるけれどね。本格的に行動する前に、これも覚えときなさい。『急がば回れ』──焦って行動すると、ろくな目に遭わないわ。案外、わざと遠回りしてみるのも……アリかもね?」

 

「…………覚えておきます」

 

 そして数時間後────吸血鬼2人、アビドスに現着していた。

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