※この作品はR-18です。

「先生!もっとあたしらに構って!」   作:アキラゼミ

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第6話:急転直下

 

 数ヶ月前────ゲヘナ学園、学生広場にて。

 

「ようやく見つけましたよ──ゲヘナ学園3年生、帰宅部、自称『吸血鬼』……盛宮モルモさん」

 

「……?何、アンタ?」

 

「申し遅れました。私の事は──『黒服』、とでもお呼びください」

 

「黒服ゥ……?裏方か何かでもやってんの?」

 

「この呼び名が、どうにも気に入っていましてね。クックックッ……」

 

「あっそォ。で、何の用なワケ?今ね、人間観察で忙しいんだけど?」

 

「探していて骨が折れましたよ。キヴォトス最高の神秘に届きうる逸材──キヴォトスでは7、5本の指に入るであろう程の強烈なまでのその神秘を探すその道のりはね。盛宮モルモさん、あなたですよ」

 

「私が?……はん、意味分かんないわね」

 

「そう、あなたこそは『常世のヘカ────」

 

「うっさいわよォ、黒豆。おせちにでもブチ込んでヤリましょうかァ?今からおせちなんて作ったら、来年の正月には腐ってるでしょうねー♡」

 

「く、黒豆……」

 

「ほら見てよ、黒豆。あの子、ヒナちゃんだっけ。情報部から風紀委員になって、風紀委員長になったらしいんだけど、スゴイ暴れっぷりよね♡ 見てて惚れ惚れするわぁ……♡」

 

「『強き者』に……憧れでも?」

 

「……戦える力があったら、誰しも求めるでしょう。

『最強』の称号を、さ。……まっ、最近はちょ〜っと燃え尽き症候群みたいなとこあるんだけどネ」

 

「あなたのそれ(・・)は、異常だと思いますがね」

 

「あらそォ?んじゃ、そんな異常者に構ってる暇ァ無いんじゃなぁい?何を企んでるか知らないけど、アンタに協力する気も無いしね?」

 

「──そうですか。では、これにて失礼します」

 

 ◆

 

 そして現在、遺跡と呼ぶべきかピラミッドと呼ぶべきか──ともかく、アビドス砂漠にて発見されたそのピラミッドにルビー、レイコ、ユメ、ホシノは遂に足を踏み入れていた。

 スマホのライトを頼りに一本道を進む。入口には罠があったが、それ以降は罠らしい罠は特に無い。というより──罠が尽きている、と言うべきか。

 カイザーらしきオートマタや、見た事の無い型のオートマタやドローン等があちこちで朽ちている。約2年前、ユメがドジを踏んで入口の罠が作動するより前に、ピラミッドに侵入した者達なのだろう。

 

「先生から連絡来たよ。入口に書いてあったのは、模様とか絵じゃなくてこの遺跡の名前みたいだね。やっぱりアレは、古語で正解だったよ」

 

「古語ですか……成程」

 

「先生、マジに古語の解読なんかもできるワケ?」

 

「うんうん、そーだよぉ。先生ってば幾つか種類がある古語を全部覚えようとしてるくらいだからね。因みにこの遺跡の名前は『ヴァンプ遺跡』だって。ヴァンプは、まぁ直訳で『吸血鬼』の事で、有名な英語である『ヴァンパイア』の、省略表記みたいなものらしいよ」

 

「つまりここは『吸血鬼遺跡』……って事ですか」

 

「いやそのまんまかーーーい!!そのまんま過ぎ!ネーミングセンス皆無か!この遺跡の製作者は!」

 

「先生も困惑してるよ、こんなドストレートな名前なのかなって。まぁ他に解読したいものがあったらドンドン送ってねって事だから、何かあったらまた先生に頼ろっか」

 

「そうですね、それが良さそうです」

 

 それから更に先に進む。一本道なのは変わらず、そしてオートマタなどの残骸もドンドン増えていき足の踏み場も怪しくなってくる。

 

「邪魔くさいわねー……」

 

「下手に暴れないでくださいよレイコ、下手したら私達全員が生き埋めです」

 

「いや暴れないから!あんた、マジで私のこと暴走列車か何かだとでも思ってんの……?」

 

「そんな事は。……あれ?」

 

「あん?……えっ」

 

「うへぇ……ウソでしょ?」

 

「そんなぁ……」

 

 4人はそれぞれ、困惑の声を漏らした。ライトが照らすのは一本道、しかしその道にも遂に終わりが見えたのだ。部屋があるのではなく、行き止まりになっているのである。

 入口からここまで、完全な一本道。入口から吹き込む風以外には、微弱な隙間風すらも感じられない密閉された缶詰のような空間。

 また「落ちてきた壁」と考えたレイコとルビーは2人で壁の突起に指を掛けて持ち上げようとするが今度はビクともしない。

 可動式ではなく、固定された普通の壁らしい。

 

「こういう時、漫画やアニメだと壁や床のどこかにスイッチみたいなのあるんだよね。ガコッて凹む、押しボタンみたいなやつ」

 

「流石ユメ先輩です、多分それですねっ!よーし、皆でそれ探しちゃおーう!」

 

「「おー!!」」

 

 ホシノはユメを床面に下ろし、ルビー達と一緒にペタペタと床や壁を触り始める。ユメもユメで手の届く範囲は自分も協力しようと、うーんうーん、と力を込めている。

 しかしどれだけ力を込めようとそれらが動く事は無く、ましてや吸血鬼の膂力でしか動かないなんて事すらも無く……時間は刻一刻と過ぎていく。

 

「ひぃん……ごめんね、皆……私が余計な事を言ったばかりに……」

 

「ユメ先輩のせいじゃないです、私だってもう少ししたら同じ事を思い付いてたと思いますし……」

 

「ですね。ユメさんの言う通り、漫画なんかで見るあのパターンじゃないかと思うのは仕方のない事。寧ろ一本道なのに行き止まりになってるこの遺跡の造り自体が意味不明なだけですから」

 

「この遺跡……何か、変……」

 

「ほんっとそれよ、マジ意味わかんないわ!本当に遺跡だったら絶対後から手ェ加えられてるでしょ!そんで秘匿されてんでしょ、核心の部分がさぁ!」

 

「確かに、後から手を加えられた感じはしますね。妙な違和感です。さて、どうしたものか──」

 

 その時、ズドォンッ!と重い何かが落ちたような音と地響きが聞こえてくる。遥か向こうでは入口を塞いでいたあの壁が、何故かまた落ちてきて遺跡の入口を再び塞いでしまったのが見えた。外の景色が見えなくなってしまっている。

 

「え、えっ!?なんでまた落ちてきたの!?」

 

「罠が作動した……?いや、ここの罠は使い捨てで、2年前にユメ先輩が作動させた事で消費したハズ。外から誰かが閉めた……とか?」

 

「別に何でもいいでしょうよ。私とルビーが居りゃ面倒だけど一応アレ持ち上げられるんだし」

 

「ですね。閉じ込められたワケではありませんし、焦る事はありません。弱いですが、電波は入るようですし、いざとなれば生き埋め覚悟で爆破します。というか入口の壁だけ的確に破壊すれば生き埋めになんかならないと思いますが……」

 

「壊すのは、あくまでも最終手段にしてほしいな。吸血鬼に関する情報とかが何も無かったとしても、アビドスの名所になりそうな所だから……ね?」

 

「もちろん。ユメさんから言われるまでもなく──元よりそのつもりです。そもそも私とレイコでアレ持ち上げられたんですし、改めて内側から破壊する必要なんかありませんからね」

 

「そーそー。つーか、何でまた落ちて────」

 

 その時。

 コツン、コツンと何者かの足音が聞こえてきた。長く、入口が閉ざされた廊下に足音が反響する。

 光源が全く無い廊下はスマホのライトが届かない距離になると何も見えなくなる程に暗く、侵入した何者かの姿は見えない。しかし、その足音から推測するなら、ルビーやレイコ、ホシノのような小さな体格ではなく、ユメのような少し大きめの体格だと吸血鬼達の超人的な「耳」が告げていた。

 

「……コイツが入口を閉じたんだわ」

 

「えっ?何が目的で……?」

 

「侵入者を潰す為、なーんて。いやでも、他に何かあるかな?おじさん、緊急事態でパニックだよぉ」

 

 などと言いつつ、ホシノはしっかりとユメを守る為に前に立ち、盾を構えている。戦う術の無い今のユメを守るにはホシノがこうするより他にない。

 足音は、尚も大きくなってくる。ドンドン両者の距離が縮まって来ていると肌で、耳でよく分かる。

 ルビーとレイコは、あの重さを動かせる者を候補としてピックアップして侵入者を特定しようと思案していた。

 ルビーの候補はハドマの生徒会長、我猛リエだ。レイコの候補は、先日実際に戦った事で生の力量を目の当たりにした元ティーパーティー、聖園ミカ。

 しかし、そのどちらも違うと、レイコの「鼻」が告げた。

 

「あれ……この、香水の匂いって……」

 

「レイコ?」

 

「まさか……」

 

「あらぁ?私の秘密基地に侵入者が居るじゃない。とんだ命知らずのおバカさんねェ」

 

 歩調に合わせて揺れる豊満に実った乳房と、長い桃色の髪──悪魔としても吸血鬼としても異質な、妙に筋肉質な翼を背に備えた少女は、妖艶に笑う。

 

「ハロハロ〜♡ 数時間ぶりねェ、レイコ♡」

 

「……モル姉……ッ!?」

 

 現れたのは、ゲヘナ風紀委員会の副委員長──、ヒナに次ぐ実力者とも言われる自称吸血鬼の少女。アビドス出身のゲヘナ生──盛宮モルモだった。

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