※この作品はR-18です。

「先生!もっとあたしらに構って!」   作:アキラゼミ

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第7話:真祖

 

「んふふっ、どうしたの?オバケでも見たみたいな顔しちゃって……♡」

 

「いやっ……だって、なんでモル姉がここに」

 

「待ってくださいレイコ。それもありますけど、今モルモさんが言った『秘密基地』とは?」

 

「秘密基地は秘密基地、それ以上でもそれ以下でもないわぁ。ここ、ヴァンプ遺跡はこの私の秘密基地なのよ。まぁ……実家──とも言えるかしら?」

 

 実家──アビドス出身な事は知っていた、しかしそれ以外に情報が特に無かったので、実家と唐突に言われても全員がポカーンとしていた。

 そんな中、レイコとルビーから目線を外しユメとホシノの存在に気付いたモルモは、まさかの再会に目を丸くした。

 

「……?アビドス高校の校章みたいなそのヘイロー、もしかして……ユメちゃん?」

 

「あ……やっぱりモルモ先輩だ!?ルビーちゃん達の話を聞いて、まさかとは思ってましたけど……」

 

「えー!?中学以来だから、5年ぶりィ!?あんたなんでまだ学生やってんの!?ゲヘナでわざと留年しまくってる私より謎なんだけど……」

 

「えへへ……事故で2年くらい意識不明で……。最近復学したというか……今、リハビリ中で……」

 

「じ、事故で2年意識不明って、ドジなユメちゃんらしいわぁ……前よりもおっぱい大きくなっちゃってもうッ、エロい身体してんじゃないのよぉ♡」

 

「え〜?そんな事は……」

 

「ん゙っンンッ!!」

 

「んで、そのピンクの子がユメちゃんの後輩、ね。あ、でも2年?も意識不明だったんだから実質的に後輩でも学年は同じか追い越されてるのかな?」

 

「はい、同じ3年生って事になっています。ねっ、ホシノちゃん!」

 

「ええ、まぁ……はい」

 

「ホシノ────へぇ、あんたが小鳥遊ホシノね。情報だけ知ってるわ、アビドス最強ですってね?」

 

「……」

 

「んふっ、スゴい警戒心♡ まっ、それで正解よ。ほら、あんたらはさっさと帰りなさい。ここからは私の時間──『儀式』を始めるんだから」

 

「『儀式』……ですか?」

 

「そっ。説明してやる義理なんか無いけど、どうせもう二度と会う事は無いでしょうし、教えたげる」

 

「なんッ……」

 

 二度と会う事は無い──その言葉を聞いて即座に反発、深掘りしようと口を開きかけるレイコ。だがモルモは手を伸ばして制止し、そのモルモの鋭くてどこか冷酷さを帯びた視線に射抜かれたレイコは、ヘナヘナと力無く座り込むより他に無かった。

 

「────この私はね。5歳から18歳までを延々と繰り返してるの。いえ、もはや永遠と(・・・)、と言っても良いかもしれないわ」

 

「繰り返してる……?」

 

「本来なら18歳で1ループなんだけど、今回の私(・・・・)はしばらく燃え尽き症候群っていうか──まぁそんな小休止みたいな期間を挟んでいたからね。だから、今回は20歳なんて迎えたのかもしれないわ」

 

 どこか他人事な言い回しで、自分の来歴について語っていく。その予想外な出来事もそうだったが、今、こうして目の前で話している「盛宮モルモ」の正体不明さは、まさに未確認生命体のソレと同質。

 

「──私さァ。『最強』になりたかったのよねェ。キヴォトスで知らぬ者は居ない、そんな当たり前と言えるレベルの『圧倒的な最強』になりたかった。だけどダメなのよ、私なんかじゃそんな『最強』になれっこないの。だから私は考えた。生徒として、永遠に成長していく事ができれば、いつかはそんな圧倒的な最強に手が届くんじゃないか──ってね」

 

「18歳で1ループ……?」

 

「生徒として永遠に成長……?」

 

「ワケ分かんないよ、モル姉……何言ってんの!?」

 

「あんたらは『ベニクラゲ』って知ってるかしら?老化と若返りを繰り返す、理論上は不老不死の海の生物。私はそこに着想を得たのよ。私の『神秘』を最大限に利用すれば、それに似たような事が自分に適用できてね。ある程度の戦闘経験を積むことで、封じ込めていたかつての記憶の封印を解き────その時点で私の求める『最強』に届いてなければ、また『儀式』をして新たな1ループのスタートよ。5歳から改めて成長し直すのよ*1」

 

「分からない……どうしてそんな事をするんです?」

 

「ルビーちゃん、あなたも吸血鬼なら分かるはず。この『強さへの憧れ』──決して、分からないとは言わせない」

 

「それはッ……」

 

 言えるハズもなかった。ルビーだって、レイコ程強烈に欲しているワケではないものの、統治委員長であるスズと肩を並べて戦いたいと、そしてそれをスズに褒めてもらいたいと、いつも思ってるから。

 そして「キヴォトス最強」を求めるレイコは尚更モルモの言う言葉を黙って飲み込むしか無かった。この4人の中で一番強く「強さ」を欲しているのは他でもないレイコだから。

 

「私の地元がアビドスってのは本当。そしてそれは

『今回の私』こと『盛宮モルモ』としての地元で、

『私自身』の地元でもある。──このアビドスは、全てが始まった土地なのよ」

 

「分かんないよモル姉ッ!『盛宮モルモとして』と

『私自身』って何なの!?同じでしょ!?」

 

「同じじゃあないわよ。言ったでしょ、私は何回も

『成長し直している』の。同じ名前を使っていたら記録がおかしな事になるでしょ。ましてや、たった13年で18歳を迎えた時点で1ループなのよ?そんな短いスパンで、同じ名前は使い回せないわ」

 

「……ッ!」

 

「もしもその話が本当だとしたら──モルモさん、あなたは一体、何歳なんですか……?」

 

「さぁ?私自身、自分の年齢なんか覚えてないわ。こと『強さ』にしか興味無いし、何回ループしたか数える余裕なんて無かった。私はただ内なる自分に従って行動しているだけの事よ」

 

 ルビーは初めて、未知への恐怖に震えていた。

 レイコはモルモに冷たくされたショックからまだ立ち直れていなかったのに、そんなワケの分からぬ話をされた事で既に頭がパンク気味だった。

 一方でユメは、数年ぶりに再会した先輩がワケの分からない事を言うので、これまたポカーンとする他に反応のしようが無かった。

 ホシノはと言うと、出会った時に感じた違和感と警戒心の正体に、本能的に気が付き始めていた。

 

「答えてくれるとは思えませんが敢えて聞きます。モルモさん……何故ですか?(・・・・・・)」

 

「主語が抜けてて『何について』の『何故』なのか分からないわ。……ま、理解(ワカ)るけどサ。……そーね、強いて言うなら憧れよ。羨望……そして、嫉妬。私もああなれたらいいな、凄いな、カッコイイなぁ……。そんな純粋で強烈な憧れが、私をこう(・・)したの」

 

「……『儀式』って何ですか。何をするんですか」

 

「自分の記憶を封じ込め、肉体を若返らせるのよ。まぁ、魔女のサバトみたいな、そんな感じ。自分を生贄にして、自分に呪いを掛ける──みたいなね」

 

「呪い……?そんなものが実在するとでも?」

 

「それは言葉の綾。物の例えでしかないわ。ただ、私にはそういう事ができるの。そういう『神秘』を持ってんのよ……ビビりな私はね」

 

「ビビり……?モル姉のどこがビビりなのよ、誰より強気で戦闘ん時も誰より真っ先に突っ込むのに!」

 

「それは表層でしかないわね。私はビビりなのよ。

『何回もやり直してるのに大して強くなれないまま終わりを迎える』、そんな未来が(・・・)怖くて仕方ない。強くなれない自分が嫌だし、そんな自分になるのが怖くて……怖くて怖くて怖くて、怖くて仕方ないの。憧れに、絶対に手が届かないと知った時の絶望──まだまだガキなレイコには分からないでしょうね、だけどこのまま『最強』を目指すのならいつか必ずブチ当たるわ。『越えられぬ壁』ってヤツにね」

 

「……モル姉……」

 

「でも、ごめんね、レイコ。アンタをそういう風にしてしまったのは……私。全部、私のせいなの」

 

「……えっ?」

 

「レイコだけじゃない。今のキヴォトスに現存する全ての吸血鬼がどこか野蛮で、どいつもこいつも、大なり小なり『強さ』を求めて『自分よりも強いと認めた他者』に従う気質を持つのは私のせいなの。全部……全部、全部、全部、私のせい……ッ!!」

 

 声を震わせ、血が出る程に強く拳を握る。

 

「どういう、事ですか?……いえ、モルモさんの話を聞いて、何となくですが……察しは、つきましたが」

 

「ルビーちゃんは頭が良いものね。なら、本人たるこの私から答えを開示してあげるワ。──『全ての吸血鬼の始祖』に当たるのはね、この私『吸血鬼の真祖・モルモリュケー』……つまり、ルビーちゃん、レイコ、その他大勢は私の子孫も同然ってワケ♡」

 

「な……ッ!?」

 

「……何回も人生をやり直しているなら、有り得ない話ではない……と思っていましたが……」

 

「と言ってもあくまで『子孫も同然』ってだけよ。血がガッツリ繋がってるワケじゃない。アンタらは厳密には『私が吸血鬼化させた奴らの子孫』よ」

 

「────ゴルコンダさん達のあの実験によれば、吸血鬼Aが第三者を吸血鬼化させた場合、生まれた吸血鬼aは吸血鬼Aの因子を持っているそうです。つまり私達は、血もガッツリと繋がっていますね」

 

「そうだったの?そこまでは知らなかったわね……。まぁ何にせよ、私以外の吸血鬼が何かしらの弱点を持っているのは、私が未熟な頃にアンタらの先祖を吸血鬼化させたからなのよ。私が未熟だったせい。だから……ごめんね、としか言えないわ」

 

「そう……だったのですか。モルモさんが未熟だったせいで……でしたか。だから、この弱点は生まれつきなのですね、私も含め全員……」

 

「ちょっ、ちょっと待って!私は!?ねぇモル姉、私、弱点なんて無いんだけど!?」

 

「レイコは──何なのかしらね。先祖返りだとか、突然変異だとか、そういう類のものだと思うわよ。何故か尻尾も生えてるし」

 

「そんな……」

 

 先祖返り、突然変異──確かにレイコについてはそうとしか説明できない事象があまりに多すぎた。

 吸血鬼としても規格外な怪力、吸血鬼の技能に、異常なまでのタフネス。もしレイコが本気を出せばハドマ学園の全員が束になっても勝てるかどうかが怪しくなる、そのレベルでの異常な強さの格差。

 ハドマで最強の神秘であろうリエが、初見の技で不意打ちしてやっと少し足止めができるくらいだ。ハッキリ言って、レイコはあまりにも異常過ぎる。

 

「『自分より強い他者に従う』ってのも、きっと、私自身がそういう気質だからでしょうね。だから、私は憧れを抜きにしても強くならなきゃいけない。このまま放置すれば、吸血鬼の皆の力が、第三者に悪用される。ルーシィの組織の『飂熾冘巫髏』が、それを証明してしまった……!」

 

「……ッ!!」

 

「だから私は──キヴォトスの誰より強くなって、全ての吸血鬼を従えられるようにならなきゃダメ。それが、未熟な頃(かつて)の自分が犯した罪を償う、唯一の方法なんだから……」

 

「ッ!待って!モル姉の目的は、強くなって私達を支配する事なのッ!?そんなの認めないから!!」

 

「黙りなさいッ!アンタらの力を利用される現状が見過ごせないのよ!アンタ自身は『利用されてるんじゃなくて私自身の意思』とか思ってるんでしょ!だけどそうじゃないのよ!!そう考える事(・・・・・・)自体が、既に『与えられた本能』に従った結果でしかない!私のせいでッ!私が、1人は寂しいと感じたままに行動したから──我慢できなかったからッ!!」

 

「モル姉が黙りなッ!私の意思は私の意思なんだ!モル姉から与えられた本能なんかに従ってない!!私ら吸血鬼のアレコレを、全部全部自分のせいとか思うなッ!!バカぁッッ!!」

 

「じゃあどうして、アンタらは吸血鬼同士で徒党を組むのよッ!!どうしていつも同族で組むのッ!!それ自体がっ……かつての私と(・・・・・・)同じなのよ(・・・・・)……っ!」

 

「だっ、だっ、て…………だってッ!!」

 

 同族の方が、組みやすい。話しやすい。気持ちも通わせやすい。指揮系統がまぜこぜになりにくく、一本筋のようにスッキリとしている。

 だからレイコが加入していた頃の飂熾冘巫髏は、頂点にルーシィを据えつつその下にレイコを置き、各部隊の幹部達とは別の枠(・・・)で、レイコ直属の吸血鬼部隊を設置していたのだ。

 これは、ルーシィが考案した「吸血鬼の本能」を最大限に活かした組織の系統図だ。事実、モルモはこの詳細は知らないものの、見事に彼女達の本能、本質をそっくりそのまま利用している。

 それもまた「強者に従う」という彼女達の気質が影響しているし、寂しくて同族を増やしたという、かつての彼女と似通っている。

 遂にそこに気付いたレイコは、モルモへの反論のしようがなく、俯き、黙ってしまった。

 

「……モルモ先輩は、強くなりたかったんですね」

 

「そ〜よぉ。人数の少ないアビドスじゃ、あんまり持ち合わせてない貧相な才能だけじゃ、あまり強くなれないと思って。それなら人数が多くてカオスなゲヘナに行った方がより正確、そして迅速に目的に辿り着けると考えたのよ……当時の私は、だけどね」

 

「今は違うんですか?」

 

「まぁ、そうね。どうせやり直せばいいんだから、後悔なんかしてないけど──」

 

「……けど?」

 

「……ゲヘナに行ったのは失敗だったかもしれない。だって、悪魔の子って、少し性格が似通っててさ。話してて楽しいから、つい友達とか作っちゃって。その友達が殺されて復讐して──キレイに燃え尽き症候群になって。だけどそのせいで、余計な空白ができてしまった。だから結果として戦闘経験を積む機会が減り、こうしてかつての記憶を取り戻すのも遅くなった。ホント、マヌケで笑えるわ……」

 

「……良いんじゃないですか、強くなくても」

 

「……あん?」

 

「もし、モルモ先輩が将来、最強になったとして。ルビーちゃんやレイコちゃん、他の吸血鬼の子達を従えられるようになったとして。──力で支配して自分の身の回りを固めるなんて、そんなのは、信頼関係でも友人関係でも、なんでもありません」

 

「ッッ……!」

 

「先輩も、本当はそれに気付いているんですよね?だから、昔より成長したのに(・・・・・・・・・)同族を増やしてない(・・・・・・・・・)。ルビーちゃん達のご先祖様を吸血鬼にしたあとに、気付いたんですよね。『同族を増やしただけでは、この寂しさは埋められない』……って……」

 

「……知ったような口を……!」

 

「知りません。そんな寂しさなんて。私はずっと、1人だったけど。ホシノちゃんと2人になったからずっと頑張ってこれたと思ってますし、今なんて、シロコちゃんにノノミちゃん──対策委員会の皆も先生も居ます。昔から生きている先輩の寂しさは、それこそ、私には想像しかできないけど……」

 

「だったらしゃしゃり出てくるんじゃあないわよ、ユメちゃぁん……!精神的に追い込む気ィ……?」

 

「そんなつもりはありません。だけどきっと、私もレイコちゃんもモルモ先輩が好きだから──そんな先輩と、お別れなんてしたくないんです。だって、楽しい事だって、いっぱいあったじゃないですか?アビドス砂祭りも、何回も経験したでしょ……?」

 

「……」

 

「だから、せっかくの記憶を封じ込めて成長し直すなんてそんな寂しい事、もう、しないでください。未熟な頃の先輩が犯した罪なんて、そんなの、今を生きる誰も気にしてません。──先輩はもうずっと同じ事を繰り返して、ずっと苦しんだんですから。もう……許してあげてください。自分の事を……」

 

「…………」

 

 強く握った拳から血が流れるのは、止まらない。握られた拳以外からもポタリ、ポタリ、と赤い雫が滴り落ちる。

 その雫の始発点を見れば、モルモの下唇。ユメの言葉に反発したい気持ちはあれども、反論の言葉が紡げずにいた彼女は激情が渦巻く心で何を思うか。

 額に青筋を浮かべ、普段のにこやかで勝気な彼女からは微塵も想像できないほどに掛け離れた表情に染まっていた。それは、ユメやレイコの知っている盛宮モルモという少女の姿ではなく……。

 

「レイコや他の子孫達の事なんか、所詮、後付けの理由に過ぎないわ……。でも、だけど、私は、最強にならなくちゃダメなのよ……最強になる女なのよッ!伝説に並び立つんだって、誓ったんだから……ッ!」

 

「誓った、って……伝説って……?」

 

「原初の欲求は何よりも私を強く突き動かすのよ、そういうモノなのよ!だから私は今よりもずっと、ずっと、強くならなきゃダメなの!!強くなれない未来をこのまま迎えちゃうだなんて、そんなのは、死んでもごめんなのよッッ!!」

 

 錯乱した様子のモルモは、ガリッと頬を爪で鋭く引っ掻く。ギャルとして夜桜キララや旗見エリカと組む事もあったので、そんなモルモの爪は常人より綺麗に整えられている。が、そんな爪も鮮血で赤く染まり、指まで血が垂れ落ちる。

 

「どうしても私を止めたいっつーんなら、勝負よ。ついてきなさァいッ!!」

 

「「「「ッッ!!!」」」」

 

「記憶も戻ったばっかで頭もズキズキ痛いけどォ、戦えないこたぁないわッ!!」

 

 血に染まった拳を握ったモルモは突如ルビー達の方へと飛び込んできた。反射的に身を引くルビー、拳を構えるレイコ、盾を構えるホシノ。

 しかしモルモの狙いは彼女達4人の誰でもなく、彼女達の立つ床面であった。

 

「キャッ……」

 

「ぬわぁっ!?」

 

「ユメ先輩、離さないでください!」

 

「ひゃぁああっ!?」

 

 彼女が地面を殴ると、床面が大きく割れ真っ暗な大穴が口を開けた。まるでビナーの口の中へと続くような深くて深くて、とても暗い穴。

 足場を急に失った4人とモルモは、その穴の中へ揃って落ちていく。

 

「──私のヴァンプ遺跡は、ただ中に来るだけならただの何の意味も無い一本道でしかない。何なら、盗掘された後のピラミッドにすら見えるでしょう。でも、それは違う。行き止まり地点の床は、床材を敷いてるだけで──ある程度の力で強引に壊せば、こうして下層への道が開けるのよ」

 

 ハドマのラブホのキッチンにて、地下へ続く道にルビーを案内したときの事を覚えているだろうか。床下倉庫に見せ掛けた地下通路──モルモもまた、同じ発想にて、隠し通路を設計していた。

 この「同じ発想」には、ルビーもレイコ自身も、血の繋がりを感じずにはいられなかった。

 

「道が開けるというか、落ちてますけど……!」

 

「ふふ、ルビーちゃんは口が回るわね。残念ねぇ、私は飛べるからいいけど……レイコもルビーちゃんも滞空すらままならない、ましてや──」

 

 ホシノの方にチラリと視線を移す。

 ユメを背負いながら壁に手をついて、ガリガリと欠片を飛ばしながら、強引に落下速度を落とそうとしているが……殆ど効果は無いようだった。

 やがて最下層に到着すると、その時点で既にこの遺跡の主であるモルモ以外の全員が多かれ少なかれ何かしらのダメージを受けているようだった。

 地下空間は広い、それこそ戦闘が余裕で行えそうだった。入口さえあれば軍用ヘリコプターでさえも運用できそうなくらいに広くて、声は山頂のように何重にも反響した……。

 そして地下深くなのに、どういうワケか、仄暗い程度の明るさがある。電灯やランプなどの光源は、特に見受けられないが──どこからか、優しい色の光が舞い込んできている。

 

「掛かってきなさい。──私を止めたいってンなら力で屈服させることね。……できるものなら……ね」

 

「ム、ムリに決まってンじゃん!?モル姉になんて勝てた試しが無いのに!!私よりも弱いルビーと、立てないアホ毛巨乳と、チビピンクじゃあ……!」

 

「アホ毛巨乳ってまさか私!?……ひぃん……」

 

「チビピンク──って、確かにレイコちゃんの方が私よりも少し大きいケドさぁ……」

 

「……そぉかしら?私に勝てるヤツ……居るでしょ」

 

「「「?」」」

 

「ねェ……そうでしょう?……小鳥遊ホシノ……?」

 

「「!?」」

 

「チビピンクがモル姉に勝てるゥ〜〜〜〜〜???そんなに強いワケ?アビドス最強ってのは???」

 

「ええ、私が知る限り『歴代』のアビドス生でさえ小鳥遊ホシノの前には赤子同然じゃあないかしら。アビドスの歴史をリアタイしてきた『この私』が、断言したげるワ。アンタが最強よ、小鳥遊ホシノ」

 

「……うへぇ。買い被り過ぎですよ、先輩の先輩」

 

「フン。何枚被ってるか分かんないけど可能な限り引っぺがしてやるわ。その剥がれ掛けた猫をね」

 

「……」

 

「……でも、大して強くもない今の私の力なんかで、何枚剥がせるかしら。──まぁいいわ、ご本人様(・・・・)を相手に、腕試しとイキましょ……♡」

 

 2丁のSG、ヴリコラカス&ドロフォノスを構え臨戦態勢に。対するホシノも自分が出るしかないと察した事で、盾をユメに託して自衛させながらも、愛銃とHG1丁ずつ持ち、モルモの前に立った。

 

「……すみません、ホシノさん。この人は……恐らく今の私達では手に負えない相手です。戦闘に……手を貸してもらえませんか……?」

 

「私からもお願い、ホシノちゃんっ!」

 

「ま……見過ごすのは夢見が悪いですし。やれるだけやってみます。ルビーちゃん、援護はお願いね?」

 

「任せてください。元より、援護は得意ですから」

 

 吸血鬼の真祖による憧れ(ホルス)との戦い────開幕。

*1:
5歳というのはモルモが自身で設定した「ある程度自分の力のみで生きられる最低限の年齢」であり、この数字自体には特に意味は無い

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