※この作品はR-18です。

「先生!もっとあたしらに構って!」   作:アキラゼミ

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第9話:地下生活者

 

 モルモ*テラーとの戦いは、熾烈を極めた。

 まずホシノが最前線に立ち、切り込み隊長の如く彼女に立ち向かう。私の指揮するルビーとレイコがホシノに追従し、または援護する形で攻撃をする。

 HPゲージは削れている、このままのペースなら制限時間内に余裕を持って問題なく勝てるだろう。しかし、どうも違和感があるのだ。シッテムの箱に表示される彼女の名前に、違和感しかない。

 

"「モルモ*テラー 20歳の姿」……?"

 

 何気に、モルモの年齢が20歳で確定したのが少し驚きなのだが、そこではない。

 この「〇歳の姿」という表記は、少しおかしい。これではまるで、今の「20歳の姿」以外の姿があるみたいな表現ではないか。

 

"アロナ、プラナ……これは?"

 

『分かりません……ただ、モルモさんから受け取れる

「情報」が、彼女を「こうである」と、そう教えてくれている、というか……』

 

『肯定。「既知だから表示できている」のではなく

「Aであるという情報のみ出ているからAであると表示しているだけであって、Aについて知っているワケではない」──と言えばよいでしょうか……』

 

"……成程、世の中そういう事もあるよね"

 

 今回アロナ達によって編成されていた「私」は、通常バージョンではなく「ゲマトリア名誉顧問」の私、つまり衣装違いのようなバージョンだった。

 この状態の私のEXスキルはゲマトリアの誰かをランダムで召喚するというもの。黒服が来た場合、バリアを付与だったか。しかもホシノが来るとそのバリアの耐久力が少しアップする。

 今回は味方にホシノが居るから、黒服が来たなら格段に戦いやすくなるだろう。

 ちなみに、ゲマトリア名誉顧問としての「私」の強さはアロナとプラナが真面目に考えた「わたしのかんがえたさいきょうのせんせい」みたいな感じになっていて、ゲームで例えるならアニバーサリーのフェス限……よりも更に壊れた性能になっている。

 射程距離は任意の距離だし、攻撃タイプは全属性対応可能とされていて防御タイプはシッテムの箱。いや防御タイプが「シッテムの箱」って何なんだとツッコミを入れたくなるだろう。

 屋内戦適正はSS。屋外戦、市街地戦もSSだ。アロナ達、これは流石に盛り過ぎです。ソシャゲに実装されたら台パン確定、クソゲー化不可避だ。

 

"よし、使うぞ……"

 

"EX──召喚!平行世界(いせかい)先生(ティーチャー)ズ!"

 

「────ヒヒッ。全て見ていましたよ『先生』。まさか小生が、先生により戦場にお呼ばれする事になろうとは……いやはや……恐悦至極に存じますぞ」

 

"ッッッ!?"

 

 ヒャンッ!!という甲高い音と共に現れたのは、顔の輪郭全体が白髪らしきクセ毛に覆われ、黒いローブのような物を身に纏った謎の人物。額には、何故かローマ数字で18──XVIIIと書いてある。

 真っ黒の顔面には時計が6つありその中の1つは割れてしまっている。ローブの隙間から焦げ茶色の手袋を付けた手を出して、ゲームのコントローラーなんかを持つようなポージングをしている。

 

"あなたは……誰?"

 

「そうですね──小生は先生を知っているが先生は小生を知らない。──『地下生活者』とでも。そう小生こそ真のゲマトリア、真の探求者であり、真の求道者。ゴルコンダやフランシス、デカルコマニーなんかの奴は邪道、口ばかりの木偶。独活の大木。そうですとも、小生と先生こそが真のゲマ……」

 

"ごめん、地下生活者"

 

"愚痴があるのなら後で聞くから"

 

"今は戦闘の手助けをしてくれると嬉しいな"

 

「……フヒッ。失礼」

 

"それで、地下生活者は何をしてくれるの?"

 

「そうですねぇ、小生も指揮や誘導などが得意な方なのですが──この戦闘においてそれは先生が担うという事ですから、小生は『ナビゲーター』でも。今起きているキャンペーンについて、サラリと解説なんかしてみましょうか。神の視点での……ね」

 

"……それなら教えて"

 

"モルモに一体、何が起きているの?"

 

「フヒッ、ヒヒヒッ!いきなり核心を突きますか!では、お望み通りに。──彼女が始めた『儀式』、いえ、ここでは敢えて『魔宴(サバト)』と表現しましょう。名を『終血(しゅうけつ)の儀式』──と言います」

 

"「終血の儀式」……"

 

「盛宮モルモ、彼女の有する『神秘』はそれはもう実に恐ろしいモノなのですがね。言ってしまえば、過去、現在、未来──などなど『司る』のですが。それが、真の姿に『回帰』した事により、高精度で己に適用できるようになったのです。それによって彼女は自身の力で過去の自分への逆行を試みているという段階でしょう。この『儀式』が成功すれば、彼女は、記憶を失った状態で幼い頃に回帰します。そこから『成長し直す』為ですね……ヒヒッ」

 

"……"

 

「今の彼女を呼称するならば『常世(とこよ)のヘカテー』!

『暁のホルス』と相反するなどとは、口が裂けても言えません。しかしそのレベルに限りなく近付く。そう、もはや手遅れなのです。何人(なんぴと)たりとも過去へ歩み出した彼女はトメラレナイ……!!」

 

"後ろ向きの解説はいらない"

 

"攻略法を教えて"

 

「……本来、攻略法というものは己で見つける道こそ至高のもの。小生が授けて、それが先生にとって、なんになるのでしょうか?得になるのでしょうか?情けは人の為ならずという言葉をご存知でない?」

 

"…………"

 

「そ、そのように睨まなくとも……」

 

"黒服達に回収してもらおうか?"

 

「分かりました、分かりましたよ、解説しますよ、このままナビゲーター務めます。キレ症ですねェ……」

 

"何か言った?"

 

「ヒィッ!?」

 

 地下生活者、中々にクセが強い。慣れるまで少しこの苦手意識が隠せなさそうだ。というか、たまに彼がこちらに顔を向けてグッと顔を近付ける時の、あの音は何なんだろう。ジャンプスケアは困るが。

 

「──なんと言うべきでしょう。彼女は『未来』を恐れているのです……。永遠に『過去』と『現在』を繰り返している!嗚呼、なんという苦行……小生にはとても耐えられそうにはありません。全ての過去を封じ、そして今一度、過去に戻ろうとしている──並の苦行ではありません」

 

"よく分からないけど……でも"

 

"恐がっている生徒がいるのなら"

 

"「恐くないよ」って、言いに行かないとね"

 

「ほう……どうすると言うのですか?あの者を止める手立てなどありはしません……」

 

"言葉が、手が届くのなら"

 

"まだ可能性(やりよう)はあるさ"

 

「……?」

 

"ホシノ、ルビー、退(ひ)いて!!"

 

"レイコ、トドメだッ!!"

 

「はいよッ!『荒ぶる破壊神の顕現(EXスキル)』ッッ!!」

 

"────今だ、ユメッ!!"

 

「はいっ!!ええぇいっ!!」

 

 レイコのEXスキルは彼女の異常なまでに強力な吸血鬼の技能──超音波の発射を破壊という方向に使用したもの。物理的に作用する物理破壊の音波はこんな遺跡の地下で使えばそれこそ生き埋め必至。

 だからこそ、ここでユメの盾が活きてくる。

 モルモ*テラーとレイコを一緒に、ユメが投げた盾のバリアで包み込む。その上でレイコがバリアの内側でEXを使用すれば──どうなるか?

 

「うぎっ……ぎゃあああぁっ、あがぁっ、ああ!!」

 

 バリアの中で反響しまくる破壊音波に、逆位相の音波を出すという対処が遅れてしまったモルモは、ひたすらダメージを受け続ける事になるのだ。

 もちろんユメのバリアとて完全防音ではないので少しはバリア外に漏れる……が、微々たるものだ。

 流石、ビナーの熱線すら防げるユメの盾(バリア)だ。

 

「フヒッ……イヒヒヒッ、なんというハメ技だ!酷いものですねぇ!……おや、そろそろ時間です、小生はまた地下での苦行に戻ります。あぁ、くるしい……」

 

"お疲れ様、解説ありがとう"

 

 頭を抱えた格好のままで消えていく地下生活者。言っては悪いが、あんなのがゲマトリアに居たとは知らなかった。黒服達め、どうして隠し事を……。

 次に会ったら地下生活者について聞いてみるか。何かしら意図して隠していたんだから、そう簡単に答えてくれるとは思えないが……果たして。

 

"……さて"

 

 地下生活者の解説も相まって、少しではあるが、全貌が見えてきた。

 モルモ*テラーは、自身を若返らせ記憶を封じる為だけに「儀式」を行い、しかしそれが邪魔されるからと応戦している──つまりモルモからすれば、無理に戦闘する必要は無いワケだ。あくまで私達の妨害を止めさせたいから応戦するというだけで。

 だったら攻撃の手を止めればそれで話(戦い)は終わるがそれだと今度は「儀式」が止められない、と。ならやはり戦い続けるしかないのだろう。

 

「ぎぁっ……ああぁあああぁぁっっ!!」

 

"レイコ、もう1回だッ!"

 

「任せな!!」

 

 残りゲージは僅か5本、レイコの火力なら余裕で削り切れる。

 ユメのバリアは耐久値ギリギリだが、どうにか、バリアの崩壊と同時に戦闘が終了しレイコのEXが強制的に中断。地下で生き埋めにならずに済んだ。

 バリアの出処となった盾は爆風に吹き飛ばされて再びユメの手元へ。

 

"……戦闘終了にならない……"

 

"中断(・・)扱いなのか、これは"

 

 という事は──やはり。

 モルモ*テラーは、まだ倒せていない。

 

「ジャマ、すんじゃ、ないわよ……私は……強くなる為だけに何回も、何回も何回も何回も!この流れをやり直してんのよ!──ここで折れたら、これまで頑張ったのが無駄になるじゃないのよ……っ!!」

 

 ドンッ!とモルモを中心に、爆発的なまでの風が遺跡の中で吹き荒れる。

 新たな戦闘が始まってしまった。次に表示された彼女の名前は「モルモ*テラー 18歳の姿」。ほぼ見た目に変化は無いのだが、18歳の姿……らしい。

 まずい、順当に「儀式」が進んでしまっている。何か、打つ手は無いのだろうか。……どうすれば。

 

"NS「召喚!人工天使擬人化4姉妹!+」"

 

 時間経過により私のノーマルスキルが発動した。召喚されたのは長女、ローニィ。敵全体に攻撃力の350%のダメージを与え残りHPに応じて上乗せ。

 実質的に攻撃力の700%分のダメージを与えた。

 その間、ホシノやレイコ、ルビーの攻撃もあって残りゲージ、7本。元が15本しか無かったからか、すんなり終わりそうだ……が、それだけに不安だ。

 先程の形態ではゲージが10本しかなかったのだ。レイコのEX1回で4本半ほど飛ばせたから良いが今回は彼女達のNSに私のNSも重なったからか、ダメージ効率は決して悪くは無い。

 

"……!"

 

"ルビー、一旦バリアまで退(ひ)いて!!"

 

「っ……すみません……ッ」

 

 モルモの攻撃力が上がっている。お陰でこの中で一番打たれ弱いルビーのHPが既に半分近くにまで削られてしまっている。

 そして回復スキルは無し。

 

"────レイコ、少し持ち堪えられそう?"

 

「えぇ全然OKよ!」

 

 私のEXでゲマトリアの誰かを召喚する。黒服は確率が殆ど2分の1だ、それに賭けて……。

 

"EX──召喚!平行世界(いせかい)先生(ティーチャー)ズ!"

 

「……クックック……見ていましたよ、先生。やっと私の出番ですか」

 

"確か、ホシノが居る場合は……"

 

"バリアの耐久力、計24%上乗せなんだよね?"

 

「ええ。編成されている場合は(・・・・・・・・・・)、そうですね」

 

"……おっと?"

 

「お察しの通りです。現在ホシノさんは編成されていない扱いですので、ノーカウントです」

 

"おっふ……"

 

「クックックッ……さてマロン、お仕事の時間です。皆さんにバリアを付与しましょう」

 

『はい、黒服。……シャーレの先生指揮下の生徒さん2人、及び先生にバリアを付与しました』

 

 相変わらず彼が使うのは壊れた外見のシッテムの箱だ。彼なら、中身はそのままに外見だけ修復などできそうなものだが……。

 しかしあのシッテムの箱は、黒服にとって唯一の

「人間時代から引き継いだ物」と言える。きっと、何よりも思い入れが強いのだろう。

 

「上出来です。それでは後は私自身が遮蔽物となり先生を守」

 

"あっ……"

 

 被弾した彼は言葉の途中で居なくなってしまう。

 黒服の召喚効果は各生徒の最大HP量に依存したバリアを付与するというもの。

 全く、こういう時に「吸血鬼」という種族は凄く有効に働くようで──素でタフな彼女達は種族的な特徴として、基本的にHPが高い傾向にあるのだ。

 故に黒服の召喚効果のような「最大HP依存」やそれ系統のスキルとは相性が抜群なのである。

 

"ルビー、イケそう?"

 

「はい。……このバリア、頑丈そうです」

 

"頑丈さ。キヴォトスでも指折りだよ"

 

"なんたって、先生のお友達の技なんだから"

 

"……さっ、行こうか"

 

「……はいっ!」

 

 モルモ*テラー18歳の姿──残りHPゲージは、僅か2本である。

 案外、本当の戦いはこれから……かもしれない。

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