「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
ルビーに黒服のバリアを付与して戦線復帰させてすぐに「モルモ*テラー 18歳の姿」は撃破した。しかし儀式を止めるには至らず「17歳の姿」になり戦闘がスタートしてしまった。
地下生活者の解説、黒服のバリア付与もあって、先程までと比べると格段に戦いやすくなった。ただ編成の都合でホシノにはバリアを付与出来なかった事だけが少し申し訳ないが……。
しかしホシノは素で硬いし、今のところはあまり問題は無さそうだった。
ルビー、レイコ、ホシノの誰の攻撃も、モルモに対して有効打になっていない。逆にモルモの攻撃も誰に対しても有効打になっていない。
属性相性がここまで噛み合わない事があるのか?
人数的には3vs1みたいなものだが、攻撃と防御という2つの属性が一人一人にあり、そのどれもがたったの1つたりともモルモと噛み合わない……?
4人も生徒が居て、Weak、Effective、Resistの どれも出ないなんて事があるのだろうか……。
『分かりました!』
『了解です』
ルビーは「振動/軽装備」という組み合わせだ。衣装違いバージョンもそれと同じのはずだ。
そしてレイコは「?/特殊装甲」。この「?」は扱う武器によって可変するという意味だ。レイコはあらゆる武器に適性があるからこそ、攻撃タイプが可変という異色の存在だ。
今回のホシノは「ホシノ(臨戦)」という極めて戦闘に特化しているスタイル。そんな彼女の有する属性は「神秘/重装甲」だ。
アロナとプラナの分析によると、今のレイコは、どうやら「爆発/特殊装甲」らしいので、そこからモルモの属性を導き出すと……。
まず攻撃タイプから考えよう。ルビーの軽装備、レイコの特殊装甲、ホシノの重装甲の三種を相手に有効打を与えられないという事はモルモ*テラーは少なくとも爆発、神秘、貫通ではないのは確かだ。
更に、重装甲のホシノ相手にResist、特殊装甲のレイコ相手にEffectiveにもならないことから、振動でもない事が分かる。
──つまり彼女の攻撃タイプは「ノーマル」だ。
次に防御タイプだ。
ルビーの振動、レイコの爆発、ホシノの神秘では有効打を与えられないし、半減もしない。
つまりは軽装備、重装甲、特殊装甲、弾力装甲のどれでもない。導き出されるのは「通常装甲」だ。
『分析結果が出ましたっ!』
『ここまでの戦闘から、モルモさんの属性は……』
『っっ!?』
『肯定。こちらはモルモさんに有効打を与える事ができませんが、モルモさんも特にこちらに有効打を与えられません。つまりは──』
『す、素のステータスとスキルの勝負になります!属性相性が、利用できないので……っ!』
参った。
素のステータスの差を覆す為に利用すべき大きな要素が、まさにその「相性」じゃないか。ホシノはともかく、ルビー&レイコとモルモの間には大きな壁がある、それこそ越えられないと言える程の壁があるというのに。
ホシノは厳密には私の指揮下ではないから詳細な指示は飛ばせないようだし……。
地形適性については──ここは屋内判定なので、モルモはSS、ルビーはS、レイコとホシノはA。どう足掻いてもモルモがこちらを上回ってしまう。
バリアもそろそろまずいからと、再度私のEXを使用──確率がほぼ50%だからか再び黒服が登場しマロンによるバリアをルビーとレイコに付与する。
「はい!『
モルモに対し確定会心ダメージ。17歳のモルモはこれでトドメになった、しかし……。
「邪魔、すんじゃあ……ないわよッ……!」
「粘り強すぎですよ、モルモさん……ッッ」
「どーしてよモル姉ッ!そろそろ諦めてよッ!もう私達もっ……打つ手が無くなるからさぁっ!!」
「モルモ先輩!もう──もう、やめてくださいっ!ルビーちゃんもレイコちゃんも、もう限界です!!先輩はそんな事を──後輩とか、親戚の子、とかを傷付けてでも!そんな事をしてでも、まだそんなに若返りたいんですかっ!?」
「ンなワケ無いでしょーよッ!でもそうしなくちゃダメなのよ!私はホルスに勝ちたい──キヴォトス最強になるって、あのとき、ホルスとセトの戦いを見て誓ったんだッ!あれからずっと私は私のまま!私のままで成長を続けてきてるのッ!今更、歩みを止めようなんて……できるワケないでしょッッ!」
「『できるワケない』?……ふふ。笑わせます……」
「それはこっちのセリフだっつーのよ!モル姉ッ!しっかりしなさいよねッ!」
「あァッ!?」
「やっと私達の──吸血鬼のルーツを知る、あなたという存在に出会えたんです。懺悔みたいなセリフばかり吐いて勝手に居なくなるなんて──」
「モル姉はさっ!私にとって師匠みたいなモンでもあるし、お姉ちゃんみたいなモンでもあるのよッ!それなのに、モル姉ってば、天涯孤独の妹を置いて勝手に若返るっての!?普段は勝手にしなさいって言いたくなるけど、それでも──」
「モルモ先輩とは、あんまり深く関わってきたワケではないけれど。でも、後輩や、皆を置いて勝手に居なくなっちゃうなんて、そんなの──」
「「「絶対に見過ごせないッッ!!」」」
レイコ、EX発動。遅れてルビーのEXも発動し2人のEXにモルモが怯んだ隙にホシノがすかさずEXを叩き込む。
統治委員長のスズは時間経過と共に指数関数的に攻撃力が高まるが、ルビーもまた、スズ程では無いものの時間経過で攻撃力が高まるスキル持ち。
更に、ここまで時間が経過すればレイコに掛かるデバフが限界を迎えるが、その前にどうにか決着を付けなくてはならない────が。
「あーーー……そォ。よぉく分かったワ。あんたらはどうあっても、私を止めるって言うのね」
「当然です」
「トーゼンッ!」
「わ、私はまだ戦えないけどっ……ホシノちゃんならモルモ先輩にだって勝てますっ!!きっと、先輩を止めてくれます!私の、私の大事な、可愛い可愛い後輩は……!誰よりも強いんですから!」
レイコの、サブスキルによる自己デバフが限界に到達するまで……残り15秒。
彼女との戦闘がこの「17歳の姿」で終わらないとするなら、レイコは、まず間違いなく退場になる。正直、攻撃力だけで言うならレイコはホシノすらも上回っている。一番退場してほしくないメンバーと言えるだろう。しかし……。
「ッッ、もうダメっ……抑え、らんないっ……!!」
「!!」
「……ッ!?」
戦闘開始から100秒後、レイコは限界を迎えた。
レイコのサブスキル──それは、時間経過と共に彼女自身にデバフを与えるというもの。時間にして10秒毎に、実に10%もの命中率の低下である。
0%になると同時に、EXスキルを無制限で連発するようになる。それは、レイコの意志によるものではなく、戦闘本能が刺激された結果による一種の暴走状態のようなものであり、レイコ本人のHPが尽きるまでそれは続く。
そして最悪な事に、彼女のEXは味方にも影響があるもの。
────大体の生徒は、HPが満タンだろうと、レイコのEXを2回も喰らえば退場だ。
「ホシノさんッッ!!」
「〜〜〜〜〜ッッ……!!」
暴走状態のレイコのEXを既に何回か経験済みのルビーは、彼女の呼び掛けに即座に順応して、回避できたようだった。
しかしホシノは、並外れた機動力はあっても少し知識が足りなかった。ダイレクトに喰らったようでHPがゴッソリと持っていかれてしまう。
強めの通常攻撃を2、3回程度受ければ、それで撤退してしまいそうな危うさがある。
移動系──それこそ体操服ユウカのようなスキル持ちの生徒を編成できていれば、レイコだけ円形の範囲外になるよう調整して、誘導できたのに……。
「ホシノさん!大丈夫ですかっ!?」
「うん、ギリギリね。それよりレイコちゃんは?」
「……も、だめ……っ」
レイコ、脱落。EXの暴発を極限まで利用して、
「モルモ*テラー 17歳の姿」を打倒すると同時の事だった。
────しかし元・飂熾冘巫髏の副総長はそれで終わるような生徒ではない。
「──出番だよッ!私の代わりに暴れなッ!!」
「「「「!?」」」」
自分達が落下してきた穴へと、吐血しながら声を張り上げる。すると、ツヤのある墨汁のような黒のロングヘアーを揺らして、2人の少女があの穴から飛び降りてきた。
見るからに吸血鬼。ルビーやレイコの同族と見て良さそうだ。
身長は2人共、レイコより小さい。しかし……。
「相変わらず強いなぁ、レイコは。
「レイコの代わりなんて務まらないと思うけど──まっ、なるようになる……ケ・セラ・セラ、だね」
「
「同じく技術開発部、2年生、博愛レイラだよ〜。お話しするのは初めてだね、先生♪」
「レイコの姉じゃなくて
「生まれ育ちはゲヘナじゃなくてハドマだけどね。まっ、そんな事より……」
「私達で助けになるかは分かんないけどサ」
「モチのロンだよ、せんせ♪」
「他の誰が来ようと、レイコ以外は木っ端よ──!舐められたものね、ホルスを超える為に鍛え続けた私をそれっぽっちの戦力で倒せるとでもッ!?」
「フンッ、やれるもんならやってみなさァいッ!!第4ラウンドのスタートよッ!!」
第4ラウンドと宣言すると共にモルモが赤い霧に包まれ、その霧が晴れると──若返った彼女の姿が現れた。それを見たユメは声を上げる。
「あ……わ、私が知ってる頃の先輩だっ……!」
──「モルモ*テラー 14歳の姿」、遂に顕現。
14歳という事は、誕生日を迎える前の中学3年生なのだろう。胸は少し小さくなったが、それでも尚豊満と言える程度には大きい。髪がロングなのは、ずっと固定らしい。
編成画面でルビー、レイア、レイラの存在を確認しながらそんな事を考えていると、モルモの口から絶望感溢れる言葉が放たれた。
「──言っとくけど。私、ここまでスキル……1回も使ってないからね?」
「「「「…………ッッ!?」」」」
「レイコが
「……うへぇ〜。ホルスとか言われても、おじさん、よく分かんないなぁ……」
「フンッ、うへうへ言ってられんのも今のうちよ。今回の私はあんたに勝てないけど、次やその次──いつか、何度目かの私は、きっとあんたに勝つよ」
「おじさん、勝負はいつでも受け付けるけど。でも先生やユメ先輩は、あなたのリスタートを許さないらしいから……それなら、全力で止めてみせるよ」
「やってみなさい……ここからが本番よォ!!」
そしてその宣言通り──モルモはここにきて己の持てるスキルを
戦闘終了まで、あと少し────。