「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
相変わらずホシノは編成できないらしい。HPは残り数ミリ、通常攻撃で飛びそうな程の少ないHPくらいしか残っていない。
今回の戦闘にて編成できるのはルビー、レイア、レイラ、私だけ。回復できる者は、やはり居ない。
「即席のパーティにはなりますが、よろしくお願いします。気を引き締めていきましょう」
「だね。あのピンクの子は援護かな」
「かな?援護、ヨロシクね♪」
「モチロン、おじさんにまっかせなさ〜い!」
((おじさん……?))
遂に、「モルモ*テラー 14歳の姿」との戦闘が幕を上げた。彼女の「儀式」は更に進行してしまい20歳だった彼女は14歳まで若返ってしまっている。
ホシノに詳細な指示ができないのが辛い、EXの発動タイミングだったり色々と指示を出したいのにそれができないというのは────。
「イくよ、レイラッ!」
「オッケーお姉ちゃん!」
「──さっさと終わらせます」
さて。戦闘を開始して真っ先に表に出たスキルは奇しくも私以外の3人のもの──私のを先に使えば少しはマシになっただろうに。初期設定ができない特殊な戦闘だから仕方ないかもしれないが……。
「了解。『
「鬱陶しいわねェ……『
範囲が広い。私はアロナバリアがあるからいいがホシノも含めて全員が巻き込まれてしまう。確実にホシノが退場してしまう。
レイコが退場した今、火力が一番高いのはホシノだろう。今ここでそんな彼女を失うワケには……。
「うへっ?せ、先生!?」
怪我上等。指示が効かないのなら物理で対処だ。即ち、シッテムの箱を通した指示ができない今──戦地に立つ私が自ら、ホシノの元に向かえばいい。
「Bang☆」
モルモのEXが放たれる刹那、ホシノをどうにか突き飛ばして、シッテムの箱に表示されている赤い特大円形の範囲外へ彼女を追いやったものの──。ホシノは助けられたが私自身は円形範囲内に残ってしまった。
「せんッ──」
「ホシノちゃんッ!!」
EXスキルが炸裂する刹那、立ち上がろうとする私に駆け寄ろうと動くホシノの足を引くユメ。
「ユメ先ぱっ……先生が!先生がぁっ!!」
「ダメッ!!先生が、どんな想いでホシノちゃんを助けようとしたと思ってるの!どうにかできるの、ホシノちゃんしか居ないのっ!」
EXスキルによる攻撃が着弾。
凄まじい爆発と共に足に激痛が走る。どうやら、全身が範囲内に入っていたワケではなく、足だけがギリギリ範囲内に入ってしまっていたらしい。
熱さを感じる。テラー化した影響なのか、彼女のEXスキルによる攻撃はアロナバリアを貫通して、私の肉体に直接的なダメージを与えてきた。
シッテムの箱を見てみれば──私のSDキャラはレイコと同様に、ヘリで回収されて撤退していた。
そういえば私のHPは1とかその程度だったか。アロナバリアにどれだけ己が救われているのかが、よく分かる結果だ。
「先生ッ!先生ぇぇえええええっっ!!!」
「あっ、ホシノちゃん!」
目元に涙を溜めたホシノが駆け寄ってくる。頭のすぐ側にしゃがみこみ、膝枕をするようにして頭を上げさせると、ポタポタと涙が私の顔に落ちるのも厭わずにしきりに話しかけてくる。
「先生っしっかりして!先生っ!!」
「無理だよ、先生の指揮も無しに!撤退しようッ!せめて先生だけでもここから──」
「っ……!!それなら皆に戦闘をやめさせて……」
「今はそんな事を言ってる場合じゃっ……」
「〜〜〜〜〜〜ッッ……」
戦闘中の今、悩む時間などない。この場の誰より戦闘に特化して、エキスパートとも言えるレベルに鍛えられている彼女だからこそ、決断は早かった。
血が流れる程に強く下唇を噛み、ギリッ、という歯の食いしばる音が銃声に紛れて聞こえてくる。
「………………分かったよ、もうッ!ユメ先輩、先生をお願いしますッッ!!」
「任せてっ!」
私をユメの傍に運んだホシノは戦線に復帰する。
私はと言えば、ユメの盾によるバリアの中で足を再生させようと、
「先生、手持ちのタオルで足を縛らせてください。ほんの少しでも止血になると思うので……」
「で、でも……」
「あうぅ……」
「怪我の度合いは、どう……でしょう?……ガッツリ爆発に巻き込まれたように見えたんですが……」
程なくして止血は完了。激痛はそのままだがまだ気絶するワケにはいかない。なんとしてでもここでモルモを止めなくてはならない。
大丈夫、本当に緊急事態に陥った時は、またあのインスタント転送装置を使い緊急離脱すればいい。その為に、前以てシャーレの執務室の座標を装置に登録しておいたのだから。
そう──そうやって避難してから複製で足を再生させてやればいいんだ。そうでなければ、何の為に私はゲマトリアの名誉顧問という肩書きを得て──マエストロに師事してまで、物理方面で複製能力を使えるように特訓したんだ。全ては、こういう時の為だろう。
◆
私が離脱してからも、戦闘は続く。
ユメに守られながらシッテムの箱を操作し生徒を導く。大人であり、先生である、私の役目だから。
モルモのあのEXは、博愛姉妹とルビーのHPの半分近くを持っていってしまった。回復役が居ないこの戦闘においては、これは極めて痛手だ。
「ほ〜らね……レイコ以外の木っ端の吸血鬼なんか、所詮はこの程度なのよ。この私を止められるなんて思い上がりは、もうやめなさい」
「ハァッ……ハァッ…………!」
「さっきまで、あんなにガリガリ削れたのに……」
「自己治癒のスキル持ちかぁ……メンドーだね……」
「そ。レイコのEXのせいで使えなかったスキルがあるワ。今はその妨害も無いからねぇ。ほらほら、さっさと削らないと──
そんなまるで魔王のような宣言をするモルモは、彼女達にはどう見えただろう。
私が離脱したせいでコスト回復力がグッと落ち、EXスキルを連発できなくなってしまっているのがかなり痛い。
「……
「「ッ!?」」
レイアが飛び出す。モルモは連撃を加えるが水のように滑らかな、流れるような身のこなしでそれを回避していき……。
「NS『悪魔の巫女』」
レイアのノーマルスキルが発動。懐から、細長い棒のようなものを取り出したかと思うと──なんとそれでモルモの頭をガツンと殴り飛ばした。
「グッ!?」
「レイラッッ!!!」
「はーい、任せて♪ EX『無双封印 絶』ッ!」
コストを3だけ消費して、レイラのEXスキルが発動。効果により攻撃前にモルモは防御力ダウン、続けざまに爆発によるダメージを与えるがそれすらモルモを倒すには至らず。しかし……。
「SS『投擲の巫女』!」
条件が重なったのか、レイラは防御力が下がったこのタイミングでサブスキルを発動。懐から何か、石のようなものを取り出したかと思うとそれを2つモルモに向かって投擲。5回程、連続でダメージを与えたかと思うと、モルモに、状態異常「混乱」が付与された。
「おねーちゃんッ!」
「はいよ!──EX『無双封印 夢幻』ッッ!!」
同じくコスト3を消費し、レイアはEXを使用。防御力が低下した上に混乱中のモルモに対し、確定会心ダメージを全力で叩き込む。
なんてコンビネーションだろう。レイアの属性は奇しくも「貫通」なので、モルモが重装甲であればこれで倒せただろうに……。通常装甲であるが故に、決定打にはならなかった。
どうやら、数値上の火力は低いが、双子のようなコンビネーションが特徴的のようだ。
「あ……ぅ……くッ……よく、も……!!」
「「今だよ、ルビーッ!!」」
「──ありがとうございます、2人共。……全力で、ブチ込んであげます。終わりです──モルモさん。
『
ルビーのEXもまた確定会心のダメージを与えるというものである。ゲージはまだまだ残っているがレイラのスキルによる防御力のデバフは継続中だ、ブチ込むなら今しかない。
混乱している間にコストが溜まっていたらしい。
「はぁあああああっっ!!!」
地を揺るがすような強大な一撃はモルモに残ったHPゲージを一気に吹き飛ばした。ふっ、と全身の力が抜けたらしいモルモは倒れ伏す。それは、この戦闘が終了した事を告げていた。
「あーあ。ルビーってば隊長だからってイイトコをかっさらってさぁ……」
「まぁまぁ、おねーちゃん。運命ってヤツだよ」
「ふぅ。これで……倒せた、んですかね?」
「「あっ」」
「?」
「ちょい待ちルビー。今、どうしてそれ言った?」
「え。……単純な疑問を口にしたまでですが……?」
「あーあ……これヤバイね、おねーちゃん」
「ヤバいね、確定だね」
「???」
「そりゃ無いよぉ、ルビーちゃぁん……それってさ、モロに『フラグ発言』ってヤツだよぉ……」
博愛姉妹に続き、ホシノまでもがルビーの言葉に顔をヒクつかせる。
それに呼応するかのように、倒れたモルモの全身からあの赤黒い霧が溢れ、彼女の身体を包み込む。
────新たな戦闘が始まった。
今回は──「モルモ*テラー 5歳の姿」だ。
『警告。モルモさんは5歳まで回帰する事を目標にこの「終血の儀式」を発動させました。つまり……』
『ここでモルモさんを倒しきらないと!「儀式」が完了して、身も心も本当に子供に戻っちゃいます!先生っっ!!』
戦闘画面を見る。戦闘が開始したから、生徒達はあの赤黒い霧に包まれたモルモ──正確に言うなら赤黒い霧のような、モルモを包み込むバリアに対し攻撃を開始している。
しかしゲージは、数ミリずつしか減らない。何かギミックがあるのだろう。さっきまではガリガリとHPゲージが削れていたのに、こうも急にゲージが削れなくなるだなんて、そんなの絶対におかしい。
「……モルモ先輩……」
「……はい。中学時代の話です。関わりが深かった、なんて事は無くて。人数が多くない学校だったけど顔見知り程度でした。会えば挨拶はするし、雑談や近況を笑いあったりする、その程度の関係でした。だけど……。たったのそれだけの関係だけど、勝手に居なくなろうとするなんて……ワガママかもしれないけれど、やっぱり、見過ごせないんです」
「はい。でも……どうやって……?」
この「5歳の姿」になってからは、モルモからの攻撃が一切無くなった。まぁ、本人はあの霧の中で既に気絶しているから、そういう事なのだろうが。
つまり「気絶させる」以外の手が必要なワケだ。
「何なのよ、この霧はぁッ!クソッ、硬いわね!」
「霧っぽく見えるけど……これ、バリアっぽいね」
「銃弾も跳ね返してませんか、これ……?さっきから撃つ度に火花を散らしてる気が……」
「うへ〜……向こうからは攻撃してこないだけさっきよりマシだけど、これ、本格的にマズイよぉ〜……」
生徒達の攻撃も、効いてないも同然な状態だ。
攻撃が通じないなら──手段は、1つしかない。
「!?は、はいっ!どんな作戦でも頑張ります!」
最終決戦が、今、始まった。
先生が自己回復キャラになったから、先生の怪我のシリアス度が皆無なんだよね。ジョジョ5部的な。ジョルノは仗助と違って自分の怪我すら回復デキるけれど、まさにそんな感じ。
でもそれはそれとして、生徒は先生が傷ついた事にダメージを受ける。今の先生は(意識さえあれば)大抵の怪我は擦り傷みたいなものだから……。
モルモ*テラー
STRIKER(FRONT)
レア度:☆3
クラス:アタッカー
射程距離:650
攻撃タイプ:ノーマル
防御タイプ:通常装甲
屋内戦:SS
屋外戦:S
市街地戦:A
EX:常世の魔宴
特大円形範囲内の敵に攻撃力1,120%分のダメージ
NS+:最古の魔女+
通常攻撃20回毎に会心値を15%増加(10秒間)
PS+:幼き日の憧憬+
攻撃力を36%増加/会心値を36%増加
SS:終わりなき苦行
1分の間に会心が30回決まった場合、最大HPの10%分だけHPを回復させる
固有武器:SG(2丁)
固有武器名:
愛用品:古のHG
隠し武器のHG。幼少期はこの銃を使っていた。反動は殆ど無いが威力は折り紙つき。普段は誰にも見せないこの銃だが、普段は胸の谷間に挟んで収納しているとかいないとか……。