※この作品はR-18です。

「先生!もっとあたしらに構って!」   作:アキラゼミ

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第7話:建前

 

 リエ&ルーシィvsスズ&シエルの戦闘は、当然のようにリエとルーシィの勝利で幕を下ろした。

 当然と言われれば当然である。リエは、レイコに及ばないとはいえ、学園内でも2番目か3番目ともされる実力者であり、スズはそれに一歩及ばず──ルーシィは戦闘も補助も可能ながらシエルはそれに及ばず。

 4人全員が七天魔の経験者で、うち2人は現在も七天魔でありながら、確かな格差がそこにはある。

 

「ま……こうなるのは分かってたわよ。クソッ……。イライラと不満を、これ幸いとばかりに、好き放題ぶつけたかっただけだっつーの……ゲホッ」

 

「スズ……」

 

「それでも、いっつもあたしらの邪魔ばっかして、果てには学園を併合しやがったルーシィ(あんた)のことは、理解はしても許すことはできない。チンピラ共から学園を守れても、あたしらは敵同士だから」

 

「スズさん、この期に及んで何をっ──」

 

「いいのよ。飂熾冘巫髏のせいでこうなったのに、学園に助けを求めてる私達の方が、虫がいいことを言ってるって……よく分かってるからさ……」

 

「よく分かってんじゃないのよ、バ〜カ。自分からハドマに砂を掛けてテロ活動しておいて、ケジメも付けないで『ピンチだから助けてください』だぁ? ふざけてんでしょ。組織を守りたいっつー意識は、まぁ、いいとしてもさ。最低限、ケジメ付けなよ」

 

「シエルさんまでそんな……」

 

「だからいいって、リエ。私が都合のいい事ばっか言ってるってのは、理解してるよ。ハドマに対して学園の名そのものを消すようなテロ行為なんてのを働いておいて、それでも手を貸してくれるリエが、甘すぎるだけだよ。……ありがとう、リエ議長(・・)」

 

「……願わくば、組織を解体して、ただの一般生徒に戻ってもらいたいものですけれどね」

 

「それは………………この件が終わったら、考えるよ。今すぐには答えられないから。これでも、数百人を抱えてる組織だしさ。もしここで無責任に解散とかしちゃったら、きっと、同じ事の繰り返しになる」

 

「そうですわね。……それは、大事な事です」

 

 ◆

 

 ある日──ハドマ学園の議長、リエから仕事用のPCの方に連絡が来た。どうやら「学園」としての依頼らしい。

 その内容を確認した私は、一息つくと共に口元を緩めた。この連絡が来たことは、私とリエが立てたとある作戦が成功したことを意味しているからだ。

 そのメールを引用しながら、連邦生徒会長代行のリンちゃんに業務用メールを作成。これより私は、長期の「出張」に取り掛かる。

 

 ◆

 

「言っとくけど、手ェ組むにしたって、あたしから背中を刺されるくらいの覚悟はしときなさいよね? 分かってんの?」

 

「分かった、分かったから……」

 

"まぁまぁ、落ち着いて、スズ……"

 

「あ、先生。来るなら言ってよ、迎えに行くのに」

 

 しばらくぶりに、ハドマ学園生徒会室での会議に同席する事になった。しかもその場には飂熾冘巫髏総長であるルーシィも居る。少し懐かしい光景だ。正体の判明前は、ルーシィも堂々とこの場に居た。判明後の現在では考えられない光景だが、実現したらしい 。

 

「ルーシィ。リエにはちゃんと謝罪したんだね?」

 

「うん。スズやシエル先輩の猛反発は食らったけどそれでも力を貸してくれるって言うしさ。なんか、勝手にリエを敵視してたのがバカみたいに思えて。力が抜けちゃうよ、ホントに……」

 

「コ〜ラ。リエ議長(・・)、またはリエ先輩(・・)ですわよ?」

 

「はーい。そーだね、リエ議長」

 

 リエもリエなりに、落とし所を見付けたらしい。能天気なお嬢様だと揶揄される事もあるリエだが、こうして事態を確かに好転させる能力としても活用できるなら、それは決して欠点ではないのだろう。

 

「やっぱり──先生が言ってた『建前』ってのは、こういう事だったんだね」

 

「? 先生が何かルーシィさんに仰ったのです?」

 

「先生、前に言ってたんだ。『ルーシィ達には力を貸せない』って。連邦生徒会側の人間だし、そりゃテロ組織なんかに力は貸せないよね。でも……」

 

 ルーシィがリエに頭を下げ謝罪の意を示す事で、公にハドマ学園と飂熾冘巫髏は和解に至る。しかしそれだけじゃない。公に謝罪する事により、組織はハドマ学園の力を借りられるようになり、それでも力が敵に劣るようであれば……。

 

「きっとルーシィさんが一歩踏み出したお陰です。だからこうして『ハドマ学園』から先生へ、堂々と救援要請を送る事ができたのです。更に、結果的にあなたの組織もまた──」

 

「飂熾冘巫髏も堂々とシャーレの先生の恩恵に与る事ができるってワケだね。先生、ここまで考えて、私に『謝りなさい』って言ってきたんだ……」

 

 ルーシィはようやく、全てを理解するに至った。

 秩序側に立つ者としてテロ組織に力は貸せない。ならばどうするのか。

 ハドマ学園から公に救援要請を出させることで、学園に力を貸すという形式を執るのである。

 シャーレの先生という立場からしても「学園」の救援要請に手を貸さないワケにいかない。関わりの有無に限らず、それも、仕事の一つだからである。

 しかしリエがあの集会にて表明した通り、彼女のスタンスは「ルーシィから歩み寄るならば」というモノである。そして、ここでの「歩み寄る」とは、平たく言えば「謝罪」を指す。だからルーシィからリエへの謝罪は、この「建前」を成立させる為には絶対に必要不可欠だった。

 

「……そこに気付けただけ、一歩前進だね」

 

「ふふ、ありがと。あとは『ケジメ』かぁ。ふぅ……解散すんのは、ちょっと寂しいな……」

 

「仲良しクラブ程度なら、勝手にやっていいのよ。テロ行為さえしなきゃ、あたしら統治委員会だって敵対はしないしさ。──だから、テロ組織としての飂熾冘巫髏は一旦、解散しなさい。で、テロ以外を目的とする新組織を発足させりゃーいいじゃない」

 

「ハドマ学園の庇護下で、でしょ? それは勘弁」

 

「あぁ? あんたまだ──」

 

「ハドマ部隊に関しちゃそれでもいいんだけどね。他の学園のヤツらともつるんでるから悩んでんの。特に、8人目の脱獄囚──ユウナ。ハッキリ言ってレイコと変わらないレベルの強さよ。なんせ、牢に収監された私のことを、建物を物理的にブッ壊して救出したくらいなんだから」

 

「あー。責任、取んなきゃってコトね」

 

「そーそー。外部顧問みたいな感じとはいえ、一応組織に入れてるワケだからね」

 

「──であれば、ルーシィさんはハドマで『他文化交流』を名目とする委員会や、部活を創設しては? 他の学園の皆さんも、確か、大半は帰宅部のハズ。部隊毎に、その学園内にて『他文化交流』を活動の目的とする団体を作ってもらう──というのは如何でしょう?」

 

「さっすがリエ! ……議長! 待ってそれフツーにアリじゃない?」

 

「いやいや。部活や委員会ってのは生徒会の承認を得てやっと発足できるのよ? ハドマについては、そりゃあ、リエが承認を出せばいいんだろうけど。でも他の学園はそうもいかないでしょ。他の学園の生徒会の目線に立ってみなさい。『テロ組織に所属していた生徒が他文化交流を目的とする組織を発足させたいと言ってきた』──な〜んて状況、普通に怪しすぎ。承認なんか出さないでしょ。トリニティなんかは特にその辺は厳しそうじゃん」

 

「「う……」」

 

 トリニティ部隊はまさにそうだ。既に全員の顔が割れており、解かれたとはいえ、停学にされていた過去がある。

 例えば、クロノとマトイが代表者となり、他文化交流を目的とする部活や委員会を発足させることをナギサに申請したとして。ナギサがそれを、素直に承認を出すだろうか? 

 クロノとマトイ、そしてその部下も全員、既に、ナギサと面談済み。顔が割れているのだ。絶対に、彼女は承認を出さないだろうという自信がある。

 でも────。

 

「アイディアとしては悪くないと思う。もう二度とテロ行為をしません、と誓うのなら、許してくれる学園も……中にはあるんじゃないかな」

 

「先生まで……そんな能天気な……」

 

「それでもまだ許してくれそうになかったら、私がその組織の顧問として立候補するよ。そうすれば、その組織は『シャーレの監視下にある』って名目が完成するワケだから。そしてこれは、反発心を抱く生徒への抑止力にもなる」

 

「だけどそれって、万が一その組織の生徒が問題を起こしたら、先生が責任を負う事になるよね?」

 

「っ、そうですわ、気軽に賛同してしまいましたが先生がそこまでする必要はありません。ハドマの事でしたら、議長である私が責任を負えますけれど、ハドマ外の事は……私には手出しできませんし……」

 

「『先生』ってのはね、元よりそういうものだよ。問題が起きた時に責任を取るのは『先生』としても1人の『大人』としても、当たり前の事。だから、生徒である君達はそれについて心配しなくていい。まだ、自分達の事だけを考えていていいんだ。勿論ある程度の限度はあるけどね」

 

「先生……」

 

「分かった。後で各部隊の幹部達に話してみるわ。でもレッドウィンター辺りは厳しそーね〜……」

 

「────ていうか、飂熾冘巫髏の解散後の話とかしてる場合じゃなくない? なんで集まったのよ。飂熾冘巫髏がチンピラだかスケバンだかに叛逆されハドマ学園自体も危機に晒されてるから、でしょ? 解散した後の話なんか二の次三の次でいいでしょ」

 

「……スズの割に冴えてるわね……」

 

「あ〜ら、何言ってるのかしら。元からこうよ〜? 飂熾冘巫髏を捕まえる為に頭使いまくったからね、その効果が出てるのかもねぇ?」

 

 スズはルーシィに対して、警戒心も敵対心も未だバチバチだ。戦闘中にもいがみ合っているなら少し問題だとは思うが、今は、それのお陰で話の軌道を修正できているし、話も進むし、警戒心や敵対心を抱く事自体は悪い事ばかりではないのだろう。

 せめてもう少しだけでも、仲良くしてほしいなと思わないこともないのだが……。

 

「──それじゃあ、改めて事態を整理していこう。まず先日、ハドマ部隊が、チンピラやスケバンから襲撃に遭って敗北した……と。そうだね?」

 

「そう。明確に宣戦布告されたワケじゃないけど、明らかに『この集団は飂熾冘巫髏の構成員だ』って理解しながら襲ってきたようだから飂熾冘巫髏への叛逆だって判断した。ライムの不在時を狙ってきた可能性も高いしね」

 

「何か『お礼参りだ』みたいなワードを口にしてたなんて事は無い?」

 

「実は、ハドマ部隊の生徒に聞き取り調査、みたいなのは一切してなくて……。その……チンピラとかに叛逆されたってことで頭がいっぱいになっちゃってその辺のこと全く分からない……ごめん……」

 

「「…………」」

 

 シエルもスズも口をキッと結んで、キツイ視線を投げ掛ける。無理からぬ事ではあるが、そんな強く当たる必要も無いのではと思ってしまう。

 今からでも聞き取り調査をしてみよう──などと提案しようとしたその時、私よりも数瞬早くリエが口を開く。

 

「では校内放送で呼び掛けてみましょう。誰か1人2人くらいは協力的な方もいらっしゃるでしょう」

 

「ほんとリエはのんびり屋というかなんというか。この前の集会の時だって『協力なんてするかー!』みたいなヤジが飛び交ってたでしょうよ。ましてやルーシィがリエに謝罪に来て、こうして協力体制を敷いてるって事も、一般生徒は知らないんだよ?」

 

「いいえ。とうに周知できている(・・・・・・・・・・)ハズですわ(・・・・・)」

 

「……どういう事?」

 

「先生に連絡を送った時、同時に、レイコさんにも連絡を送っておいたのです。飂熾冘巫髏の皆さんに伝言をお願いします、とね」

 

「!?」

 

「レイコさんから旧吸血鬼部隊の皆さん、旧吸血鬼部隊の皆さんからその他の飂熾冘巫髏の皆さんへ。果ては全校生徒へ──彼女達の拡散力というのは、決して侮れません。今回は私が、それを利用させてもらいましたわ。という事で、サクッと校内放送をしてしまいましょう」

 

「「「…………」」」

 

 思った以上のアクティブさに私達は全員、口元を少々引き攣らせる。彼女が放送室に向かい数分後、状況の軽い説明と、生徒会室にて情報を待つという旨の告知が流れた。

 そして、リエが生徒会室に戻ってきて話し合いを再開してから更に数分後──1人の生徒が、身体のあちこちにガーゼを貼り、包帯を巻いた酷い状態で現れた。

 

「こんちゃーす。あ、先生も居んの? おひさ〜」

 

「「「「!?」」」」

 

 どう見ても怪我が尋常ではないその生徒は、少し前にアビドス砂漠で共闘した元吸血鬼部隊の生徒、そしてレイコの従姉妹である、博愛レイアだった。

 ハドマ学園3年生──飂熾冘巫髏を脱した現在はしっかり学園に通っているらしい。

 

「レイア……あんた今日は学校休んだ(サボった)かと思ったら。何なのさ、その怪我……」

 

「うちの神社、チンピラ共から襲撃受けてさ。今は吸血鬼部隊だった連中で、最低10人以上で、交代で常駐してるんだけど……。いやー、アイツら倫理観の欠片も無いね。神社は守れたけど、私自身は結構、手酷くやられたよ……」

 

 ネルにボロ負けした後のトキのような大怪我だ。歩いているのもやっとのようにも見えるが、そこは流石はキヴォトス人──いや、流石は吸血鬼だ、と言わざるを得ない。それでもこんな酷い怪我なのはまずいと思う。

 

「レイア、私の血を飲んで」

 

「……なんで? お腹空いてないよ」

 

「『吸血鬼は吸血する事で回復が早まる』──って教えてもらったよ。私、それなりに血は多いから、遠慮しないで飲んでいいからね」

 

「……レイコかルビーに聞いたのかな? 余計なこと言いやがって……こういう裏技は部外者に教えちゃあダメでしょっつーの……」

 

「レイコでもルビーでもない。無論、飂熾冘巫髏の吸血鬼の生徒じゃあない。さ、そんな事はいいから早く飲んで。神社が襲撃を受けた件について、色々話を聞かせてほしいな」

 

「……わかったよ。先生、献血とか大丈夫な人?」

 

「毎回、400mlの全血献血さ。600mlくらい飲んで構わないからね」

 

「そう……。先生の身体に感謝……いただきます」

 

 足もふらつくようなので、対面座位のように私に座ってもらい、首に噛み付いて吸血してもらった。

 ちなみに情報源はゴルコンダだ。ゴルコンダ達の吸血鬼の生態に関するデータを受け取ったときに、そんな記述を見た。そして彼らの実験結果は全て、キヴォトスの全吸血鬼の始祖であるモルモと共有し確認してもらっている。つまりは、始祖のお墨付きというワケだ。

 情報源として、これ以上頼りになる人は居ない。

 

「実はこの前、賽銭泥棒に遭ってさ。お灸を据えて帰したはいいんだけど、どうもその時の賽銭泥棒、私達姉妹が飂熾冘巫髏の吸血鬼部隊だったって事を知っての泥棒だったっぽくて。だから最初の方は、単に賽銭泥棒を邪魔された逆恨みだろうと思ってたけど、どうも違うみたいで……尋問してみたら……」

 

 チンピラ達の中では、吸血鬼部隊が飂熾冘巫髏をとうに辞めているという事実が知れ渡っていない。それどころか「飂熾冘巫髏じゃない」と伝えても、

「そんな事知るか」の一点張り。

 つまり飂熾冘巫髏だろうと元(・)飂熾冘巫髏だろうと関係ない、全て敵だと言わんばかりの勢いだ、と。

 一番最初に飂熾冘巫髏狩りをした際──つまり、ハドマ部隊を襲撃した際に「吸血鬼部隊、ひいては飂熾冘巫髏のわかりやすい拠点」としてレイア達の博愛神社の名が上がったことで、本格的に襲撃するようにしたのだそう。

 

「なんて事……。飂熾冘巫髏を辞めているのであれば襲撃の必要など無いでしょうに……」

 

「『そんな事知るか』で切り捨てられたのは流石に笑ったよ。あぁ、聞く気ねえなコイツら、って私もすぐ身構えたよね」

 

「飂熾冘巫髏は各地のアジトを隠すようにしてる。秘匿性が極めて高いのは、総長の私もかなり自負はしてるけど……分かりやすい目印が1つでもあれば、そりゃ、そっちに流れる……よね……」

 

「じゃ、うちの神社襲撃については組織の秘匿性が高いのが仇になった、って感じなんだね。総長?」

 

「私の見立てでは。……えっと、レイアでいい?」

 

「いーよ、好きに呼びなよ。総長、一応私の元上司でしょ。1歳しか違わないし」

 

「そ、ありがと。──ごめん。まさかこんなことになるなんて、読めてなかった……!」

 

「別にいーよ、謝んなくて。私が負けたのは、私が弱いからだし。レイコなら勝ってた。あんなザコの集団……塵も積もればって言うけど、まさかあんなに大勢で来るなんて思わなかった。50人は居たよ」

 

「それに対して10人ちょいで足りるの……?」

 

「吸血鬼、舐めないでくれる? 弾切れしたって、1人で15人は余裕で片付けられる。私が負けたのはそういう事。あの時は、多かった。多すぎた。私とレイラの2人で相手をするには、多すぎたんだよ。電話で増援を呼んでから仲間が来るまでの時間が、永遠にも感じられたよね、マジでさ」

 

「じゃあ、レイラは? レイラは何してるの?」

 

「レイラは私より頑丈だし、吸血鬼としての資質も高いから、回復も早くてさ。神社に居ると思うよ。私が今日、こうして登校してきたのも……まぁ、傷が治るまでの『避難』の為みたいなモンでさ……」

 

「……では、レイアさん。博愛神社では、今も?」

 

「今も襲撃があるかは分からない。でも、いつ次の襲撃が始まるかは……全く分からない」

 

「そう……ですか。ルーシィさん──先生」

 

「うん」

 

"私達も行こうか"

 

"博愛神社へ……! "

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