「先生!もっとあたしらに構って!」 作:アキラゼミ
第1校舎の屋上でテンコ達が作業し、生徒会室で作戦会議が行われていたその頃────第2校舎の家庭科室では、美食研究会対策委員会の生徒達が、援護を担当する一般生徒の希望者を招集──廊下に生徒が溢れるほどの人数が集合していた。
2年生委員長・
「思ったより集まったわね……。何を作るか決めたら第1校舎の家庭科室に半分くらい移動させよっか」
「そうですね、ここだけじゃ入りませんしね……」
第2校舎は実習棟がメイン。実験室、家庭科室、音楽室などなど、移動教室とされるものの多くは、この第2校舎に集中している。
その中でも、例えば、委員会や部活動に使用する教室は小規模ながら第1校舎にも併設されている。アスカ達は普段は第1校舎で活動しているものの、今回は同じ委員会以外の生徒も来るので、より広いこちらで行う事にしたが、彼女の想定よりも多くの生徒達が招集に応じ──もしくは、名乗りを上げたようだった。
「え、えっと、じゃあ皆には、明日の戦いに備えて回復アイテムを作ってもらうんだけど──放送した通り、何を作るか……考えてきてくれたかな……?」
対策委員会の生徒はコクコク頷いている。恐らく彼女達にとっては「いつものこと」だからだろう。しかしそれ以外の生徒は初めての事なので、事前に考えておいてと言われていても、数時間やそこらでポンポンと思いつくものでもなかった。
それに気付いたアスカは、小さく咳払いをして、まずは自分の流儀を教える事で道を示そうとした。
「体力回復と言えばお菓子! 甘〜いお菓子っ!! 対策委員諸君、そしてここに
「でも委員長さん、ヒールとしての料理だとしたら眠気とかは? どうするのさ?」
「え? あー、うーん……戦うのが夜だから……?」
「委員長とかみたいな悪魔さんは夜に強くっても、一般生徒はそうもいかないんだからね? そりゃ、体力の回復も大事だけど、眠気どうにかしないと。仮眠じゃあどうにもならない事もあるんだし……」
「ましてやお菓子って、血糖値スパイクってヤツで余計眠くなりそうじゃん??」
「体力回復
「あぅ……」
戦闘が夜であること、天使の生徒と普通の生徒と悪魔の生徒では生態も体質も何もかも違うことなどアスカが気にもしていなかった様々な視点の意見が集まってくる。
飂熾冘巫髏大決戦では、他校の勢力も加勢に来てくれたお陰もあり、アスカ達の負担は少なかった。しかし今回はアスカ達だけで行わなくてはならないおかげで、前回やこれまでよりも考える事が多い。
「……少なくとも悪魔の生徒達からは割と好評だよ! あと……天使の子達からもっ!」
「でも普通の生徒さんは……い、委員長ぉ……」
サエが今にも泣きそうなか細い声で呟く。それでアスカも気が付いた。これまで自分が援護してきた生徒達の中に、その「普通」の生徒が居なかった、という事実に。
「ちょっと待って。普通の子達の援護したことないかもしんない……。よく考えたらリエ議長は天使だしスズも一応悪魔らしいし……飂熾冘巫髏に入って戦闘する前に辞めちゃったし結局『普通』の子の好みが分かんない……ど、どうしようサエッ!?」
「わ、私も天使なので、よく……」
ハドマ学園は天魔混合。天使も悪魔も入り乱れる学園なのである。いっそトリニティのように普通の生徒と天使の生徒──そしてゲヘナのように普通の生徒と悪魔の生徒だけなら、どれだけ良かったか。
そして学園は天魔混合だったとしても、その中で生まれる小規模なグループでも天魔混合になる事は極めて稀なのである。
例えば、クラスは天魔混合でも、クラス内にある小規模な派閥などは、やはり種族毎に別れやすい。
3年生で言うと、リエとシエルは優秀な天使派、リンコは優秀な悪魔派。ライムも優秀ではあるが、エロいことや下ネタに超特化した悪魔派。レイアは清楚な悪魔枠。
2年生なら、ルーシィとテンコは優秀な悪魔派、スズは劣等、さらには戦闘特化の悪魔派。アスカはお菓子・料理好きな
1年生ならルビーは有名人枠、レイコは戦闘狂。サエは万人に好かれる優しい子枠。
──と、このような事は一例に過ぎないものの。ただ「各人の好み」程度ならまだしも「種族全体の傾向」を測るには、普段から同じような傾向を持つ生徒のコミュニティに属してるせいで、判断材料が全く足りないのだ。
当然、アスカ率いる美食研究会対策委員会にも、サエ以外にも天使の生徒は居る。アスカやアガリの他にも悪魔の生徒は居る。なんならどちらでもない普通の生徒もちゃんと居るのだ。
それでもアスカの「お菓子」に惹かれて加入した生徒が大半である以上は「お菓子、甘いもの好き」といった偏りがどうしても生まれてしまいがちだ。そしてそれは、傾向を測る際にはノイズとなる。
「〜〜〜〜〜ッ、じゃあ皆はっ、何を食べたら回復すると思う!?」
「パラパラのチャーハン!!」
「ゴツゴツのアハン!」
「カフェインタブレット!」
「ロールケーキ!」
「パフェ!」
「イワシ!!」
「ラーメンッ!!」
「あわわわわ、メモまとまんないよぉ……。というかラーメンで回復って……流石にそれは……」
「出来らあっ!!」
その生徒の威勢ある声に、アスカは確かな熱意を感じ取り──第2校舎の家庭科室の面々が準備する料理を、ラーメンにしようと決意を固めた。
確かにラーメンは、殆ど万人にウケる。それこそ種族関係なく。その証拠に、どこの自治区にだってラーメン屋はあるのだ。荒廃してしまった、現在のアビドス自治区にさえも。
「よ、よーし! じゃあ明日の夜までに研究だよ! 体力とか諸々を回復させる魔法のラーメン!」
「え!! ラーメンで体力回復を!?」
「出来るんでしょっ!? じゃあやるしかないよ! 材料ならあると思うし、もしも無ければえっと──そう、ゲヘナ部隊の子達に買ってきてもらおうっ! バイクあるみたいだからね、24時間営業の店で調達してきてもらって、それでどうにか──」
そして日付が変わる頃にようやく方針が定まり、朝を迎える頃には試食が完成しつつあった。
アスカのように甘い物を作る生徒は第1校舎の、ラーメンや付属の食べ物を作る生徒は第2校舎で、それぞれ試作を進めていく……。
「よ、よし……試作第1号、完成だ〜っ!」
「初っ端から餃子セットとか重くない? メンヘラ女子より重いわ。ていうか量も何人前? これ……」
「誰に食べてもらう!?」
「やっぱり、ここはアスカさんじゃない? ここの委員長なんでしょ?」
「総長は? 総長も学園に来てるでしょ!」
「シャーレの先生も来てるらしいよ」
第2家庭科室で完成品を前に騒ぐ生徒達。するとそこに、匂いを嗅ぎつけてきたらしい飂熾冘巫髏の総長・ルーシィ、元副総長・レイコのコンビがこの家庭科室にやってきた。
「やっほ〜大将、やってるぅ?」
「うまそーな匂いじゃん、私が試食してやるわ!」
「「「「そ、総長〜〜〜っっ!?」」」」
「「「「レイコさんまで!?」」」」
「屋上まで香ってきたわよ、美味しそうな匂いが。試食……シてあげよっか?」
「ほらほら冷めちゃうでしょ? 早く出しなさい、生徒会会計のこの私が、自ら味見してあげるわ♡」
「は、はいっすぐに!!」
「お皿用意して!」
「盛り付け用のネギ切ってなくない!?」
「うわぁラー油が無い! お酢も! どこ!?」
「ここに無いんなら
「背脂も追加しなさい、あとニンニクは抜きよ!」
「こらレイコ、ワガママは言わないの。ニンニクも食べれるでしょ」
「ぶーぶー」
「ていうか対策委員会はどこ行ったの!? まさか全員が
「あ、あの、えっと、予備の調味料なら隣の家庭科準備室にありますけど……」
「鍵開いてなくないWOWWOW」
「ドア壊すか」
「あったよ、家庭科準備室の鍵が!!」
「でかした!!」
「……こんなんで
「大丈夫でしょ。作るから別れてるだけで、本番はアスカが率いる事になってるんだし。──それに、レイコを生徒会に推薦するくらい押しが強いアスカだったら、ちゃんと皆をまとめ上げてくれるって」
「……それもそっかぁ」
ラーメンセットに舌鼓を打った2人は、それぞれ好きなように改善点を指摘し、今度はアスカの居る第1家庭科室に向かった。
そこではアスカ達の用意したお菓子やスイーツをデザートとして食べ……満足した2人は仮眠する事にした。
◆
「────色んなラーメンのニオイでむせ返りそうだけど……なんか、上手くいったみたいだねっ!」
「総長にも満足してもらえました!」
「レイコさんからは辛口評価だったけど……」
「あはは……。レイコちゃんって、案外グルメなとこあるからね。でも、改善点があるってことは決して悪いことじゃないからっ! ──じゃあこの後は、できるところまで量産していこうっ!」
「「「「えい、えい、おーっ!!!」」」」
抗争後──アスカ率いる美食研究会対策委員会に加入する生徒が増えたのは、言うまでもない。
やや左に偏った某動画、出来らあっ!、あったよ&でかした、パフェいわし……などなど。
ネタを闇鍋のようにブチ込んだ。