※この作品はR-18です。

ユー・アー・マイ・スペシャル   作:グリム・グリルグリン・グリーングリップ

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 アンケートの結果、モチモチJC(326) vs ムチムチJK(722) の票差になりましたので、本作の年少ヒロインの本番()時期は【ルーズソックス履いたミニスカ紐パンもちもちメスガキJC】ではなく【メス臭ドスケベ肉厚ムチムチむっつりデカチチJK】に決定させて頂きました。

 ご協力頂いた紳士の皆様方に、この場を借りてご報告と感謝を申し上げます。

































11 あまやかしてあげよっか?

 

 

 

 12.

 

 

 

 意識が、緩やかに浮上してゆく。

 

 眠っていた感覚に物音が引っ掛かり、禪院真希は薄暗がりのなかで瞼を開いた。隣では妹が熟睡している。次いで視界にデジタル表記された「6:00」の並びが映り込み、妹の肩を揺らしたが、完全に寝入っていた。

 

「おはよう」

 

 ひとりでベッドを抜け出すと、リビングではスーツに着替えた坂本が、消音でニュースを点けていた。カーテンの向こう側には、曇り空が広がっている。

 

「おはよ。今日は、センダイだよな?」

 

「そう、仙台。夕方には帰れると思う」

 

 ニュースを消すと、坂本は少ない荷物を持って立ち上がった。「いってらっしゃい」玄関まで見送りに出ると、坂本は軽く微笑み、寝癖の付いていた禪院真希の頭を撫でる。

 

「行ってきます。――〈キキョウ(・・・・)〉、頼んだぞ」

 

 ちらと坂本が顔を向けると、禪院真希の背後に、花の香りと共に、音も無く女が現れていた。青紫が涼やかな着物姿の、(しゅ)を墨で一筆書きされた無貌の仮面の女がおっとり頷くと、坂本は音を鳴らさないよう静かに出て行く。

 やがて車の排気音が聞こえ、禪院真希は顔を洗うと、立てかけてある木刀を手に取って庭先に降りた。

 空気が湿っている。昨夜の雨の影響で芝が濡れ、庭に植えてある花々――向日葵(ヒマワリ)百日紅(サルスベリ)薫衣草(ラベンダー)桔梗(キキョウ)など――の花弁にも雫が乗っている。入念に準備運動をし、伸ばした木刀の刃先に四重に硬貨を積み重ねると、用意しておいた黒い帯で目隠ししてから、禪院真希は日課の素振りを始めた。

 

 振り上げる。

 振り下ろす。

 

 無心に繰り返す。幅の無い木刀に硬貨を乗せたまま均一の速度で振り続けるためには、物体の重心をつぶさ(・・・)に認識し、神経を張り巡らせるように握っている木刀と硬貨を肉体の延長線上のものとして細部まで掌握し、すべてを精密機械さながらに一糸の乱れなく、されど柔軟性を失わずに連動させ続ける必要がある。そのうえ人間の感覚器としては最大割合を依存する“視界”にも枷を掛けた状態であるから、他の五感も拡張されているフィジカルギフテッドといえど負荷(ストレス)は無視できず、ましてや発熱した肌に纏わりつく汗や不快な水分といった情報が余計に鬱陶しさを誘うため、集中力の持続という意味でも輪をかけた難易度と化している。

 

 振り上げる。

 振り下ろす。

 

 大気を裂く音と呼吸音。水滴の飛び散る音と衣擦(きぬず)れの音。揺れ動く硬貨の位置と踏みしめる雨水を吸った芝の泥濘(ぬかる)んだ感覚と鼻先をくすぐる花の香り。それらに意識がほんのちょっとでも必要以上に引っ張られてしまうと、噛み合っていた全体の滑らかさに些細な狂いが生じ、生じた狂いが動きの精確さを僅かに損なわせ、気が付けば連鎖的に偏りが波及してしまう。

 至難だった。現に、手元の操作に細かな狂いが生じつつある。修正しなければならない。しかし急激に動かそうとすると“揺り戻し”が来る。慎重かつ大胆に。

 だが、意識し過ぎたのが悪かったのか――「おはよう」――外から声を掛けられた瞬間、弾けるようにして硬貨が飛んでいってしまった。

 

「………、」

 

 目隠しを外す。「おはよう」妹の禪院真依が、まだじゃっかん眠たげな顔をして立っている。

 

「邪魔しちゃった?」

 

「いいや」

 

 集中を乱した自分が悪い。時計を見やると、長い針が一周していた。

 

「おじさまは」

 

「とっくに行ったよ」

 

「……起こしてって言ったのに」

 

「起こしたけど、起きなかっただろ?」

 

 片付けると、シャワーを浴びる。何が駄目なのか。熱い湯を頭から被りながら、いつものように課題を分析する。やはり、感覚を拡張し過ぎてしまうのが良くないのだろう。掌握するために広げた感覚が不必要な情報まで拾い上げてしまい、逆に手元を狂わせてしまっている。

 明鏡止水。かつて師が教えてくれた言葉で、禪院真希が目指すべき境地でもあった。簡単には届きそうもなかったが。一級呪霊を討伐したときでも、ここまで梃子摺(てこず)らされた経験はない。どうしたものか。

 

 髪を乾かしてから向かうと、テーブルには既に朝食が並んでいた。見るからにしっとりふんわりしていて食欲をそそるフレンチトースト、新鮮しゃきしゃきなサラダ、ひんやりトマトスープ、甘すぎないヨーグルト、瑞々しい桃とブルーベリー。さながらホテルのモーニングで文句なぞ付けようのない出来栄えであり、しばらくすると起きてきた菜々子と美々子も、「おはよー」「おはよう」「おう、おはよう」「おはよう」席に着くやテンションを上げている。

 

「かわいー。これって私がリクエストしたやつだ。ありがとっ、〈キキョウ〉」

 

 傍で皿を水拭きしている、坂本の式神である〈キキョウ〉がゆるゆると頷く。

 

「いただきます」

 

 フォークを取り、なんとなしに禪院真希が横を見やると、作業中の〈キキョウ〉が(仮面で見えないし喋りもしないが)どことなくドヤ顔するような気配を醸していた。“天与の暴君”に至り得る資格を手にする前は気が付かなかったことだが、るんるんと家事をしているこの式神、よくよく観察すると実は式神とは思えないほど表情が豊かであるらしい。単純に作製段階で豊富な行動(パターン)をプログラムしているからか、それとも坂本の作ったこの〈キキョウ〉が特別仕様なのかは不明だが――似たような“パンダ”が高専にいるとはいえ――少なくとも記憶にある限り、禪院家では見たことが無かった。

 

「うまっ」

 

 トーストを口に運ぶと、思わず声が漏れてしまう。視界の隅で〈キキョウ〉がぐっと拳を握るのを知覚していると、天気予報を点けた禪院真依が、ぽつりと呟いた。「雨か」

 関東は一日中晴れるとのことだが、東北側は天候が不安定な模様で、まだ梅雨明けには遠いらしい。チャンネルをワイドショーに切り替え、そのほとんどを聞き流しながら食事を終えると、洗濯物を〈キキョウ〉に手伝ってもらいながら干したのち、禪院真依が言った。

 

「さあ、勉強の時間よ!」

 

「ヤダぁァァァ」

 

 テーブルに「小学4年」と印字された問題集を並べると、禪院真依は「やだやだ」言っている菜々子を取っ捕まえて、椅子に拘束する。

 

「だーめ。この前のテストでギリギリだったの、アンタだけだったんだから。このままだと連れてってもらえないわよ、アンタだけ」

 

「それもやだ。……〈キキョウ〉ぅ」

 

 菜々子がうるうると縋るように見た先では、ふるふるとかぶりを振った〈キキョウ〉が、腕で“×(ばってん)”を組んでいる。

 

「ひえぇぇ」

 

「まずは、菜々子の嫌いな算数からね」

 

「真依、悪い顔してる」

 

「だな」

 

「そこ、聞こえてるから。二人もやるの」

 

「……ひえー」

 

「イイ顔してるよ」

 

「それ皮肉(ヒニク)? 増やしてもいいのよぉ、二人のぶんの課題」

 

横暴(オーボー)だろそれっ」

 

「おじさまからも言われてるんだから。きっちりやってもらいます」

 

「お父さん……」

 

「恨むぜ、師匠」

 

「おほほほほほ。なんとでも言いなさいな」

 

 

 

 禪院真依が悪役めいた高笑いを上げていた頃、新幹線を仙台駅で降りた坂本は、改札口前で待機していた補助監督と合流を果たしていた。

 煙るような霧雨が降るなか、そのまま補助監督の運転する車で現場に向かう道中、改めて任務の説明を受ける。

 

 事件が発覚したのは一週間前。県西部の観光エリアで原因不明の体調不良を訴える集団が出たという情報が“窓”から寄せられ、情報を精査した結果、被害者らは怪異研究サークルのメンバーであり、観光エリア近辺に存在する怪談スポットを訪れていた事実が判明した。残穢と霊障の規模から四日前に二級呪術師が派遣されたが帰還が確認できず、二日前に改めて一級呪術師が投入されたがこちらも安否不明となり、昨晩になると被害者メンバーのうち一人の容体が急変して死亡、ほか三人が昏睡状態となったため、緊急で坂本に依頼が回ってきたという経緯になる。

 

「なるほど」

 

 呪術師たちを送り届けたという現場に到着し、傘を差しながら車を降りると、坂本は目を細くした。

 シャッター街が続いている。独特の臭いと気配が備わっていた。如何にも呪霊の好みそうな、特有の淀んだ雰囲気もある。

 

 【闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え】

 

 補助監督によって「帳」が下ろされると、坂本は探索を始めた。

 しばらく歩くと、怪異研究サークルが訪れたという、それらしき物件に行き当たる。

 

「こんなところに、教会とはね」

 

 交差点の角に建つ、長屋の建物であり、(ひさし)には十字架のシンボルが掲げられている。寂れた教会だった。集会案内板は茶色く錆び付き、壁紙は日焼けで変色し、一部は剥げて捲れている。路面(アスファルト)には砂利や枯葉が敷き積もっており、放置されて随分と経っていることが汚れ具合から分かる。

 

 そして入り口の扉が、不自然に、開きっぱなしにされていた。

 

 鬼が出るか蛇が出るか。坂本は〈領域展延〉を纏うと、教会に踏み込んだ。

 扉をくぐると、途端に広がった異質な光景に、へえ、と息をこぼす。

 

 まず見えたのは、列柱(コロネード)だった。中央の身廊と左右の側廊を分けるように支柱が並び、上部でアーチ状に繋がっている。身廊にはそれぞれの側廊に寄せるように長椅子が置かれていて、その側廊の壁面には屋根から伸びるステンドグラスが嵌め込まれており、身廊の奥では、薔薇を模したガラス窓から薄暗い光が降り注いでいる。天井の高さは三階建てか四階建てに相当し、この時点で、外観から想定していた長屋の体積と実際の空間が異なっていた。十中八九、“敵”の結界の仕業だと判断していい。

 

 振り返ると、入り口の扉が消えていた。壁面となっており、旧い字体で“主の住まう家”と彫られてある。

 坂本は鼻を鳴らすと、視線を、(かび)臭い身廊の正面にやった。

 

 本来ならば祭壇が設置されているはずの場所に、聖母を模した石膏像が置かれている。聖母像の手元には、赤子ほどの大きさの、“白い(まゆ)”のようなものが抱きかかえられている。

 

 ひとまず近づこうとしたとき、坂本は長椅子の最前列に、崩れるように横たわっている人間を見つけた。

 派遣されたという、二級呪術師。聞いていた特徴とも合致している。既に息は無かった。苦悶を顔に張り付けているが、外傷は見られない。服装にも特に破れなどは無い。しかし不可解なことに、死んでいる人物は白髪(しらが)だった。皮膚のたるみ(・・・)や染みは完全に老いさらばえた人間のそれだが、補助監督の話によれば、この二級呪術師は三〇代後半のはずだった。

 訝しい点は他にもある。先に入ったという一級呪術師の姿が見当たらない。代わりに聖母像の近くに、高専の制服を基にしたらしい衣装が上下揃って捨てられていた。二級呪術師のものではない。こちらも損傷は無く、だが持ち主が訳あって脱ぎ捨てたにしては服の並びがおかしかった。服だけ落としてしまったような――まるで中身(・・)が突然消えて服だけがその場に取り残されたような、そんな奇妙な印象を覚える。

 

 可能性を考えながら、とりあえず坂本は、折り畳んでいた傘にも〈展延〉の効果を乗せた。

 聖母像へ叩きつける。脆い手ごたえと共に、胴体と泣き別れた聖母像の半身が散らばった。抱えていた“白い繭”も一緒に、陶器のように割れ砕ける。残骸を靴先で転がすと、中には“鏡”が入っていた。それ(・・)は黒塗りで、何も映していない。坂本が傘の石突(いしづき)で試しに刺してみると、“鏡”は呆気なく蜘蛛の巣状に罅割れた。

 しかし、何も起こらない。結界が解除される兆候も無い。

 

「どうしたものかな。居留守のつもりか?」

 

 落ちていた聖母像の顔面を蹴り飛ばしてみるが、やはり同じだった。続けて長椅子を蹴り崩し、倒しても問題なさそうな支柱に斬撃を奔らせる。舞い上がる粉塵がガラス窓の光片によって煌めくが、一向に何かが襲い掛かってくる気配は無い。

 

「俺もお会いしてみたいんだがね、神さまってやつに」

 

 どうしたら出てきてくれるのかな。聞かせるように呟いてみる。祈りでも捧げれば、出てきてくれるのかな。

 ステンドグラスを粉々にしながら、坂本は一つ、アイデアを思い付いていた。こちらも〈領域〉を展開する。此処の結界を〈領域〉で塗り潰してしまえば、“敵”を炙り出すのは難しくない。ただし〈領域〉を展開するには一度〈展延〉を解かなければならない。ここまで反応のない“敵”も、当然その隙は見逃さないだろう。

 強力な効果と引き換えに使用後に生得術式が焼き切れる〈領域展開〉は、一級呪術師を如何にかしてしまえる“敵”の本拠地で、しかも肝心の“敵”が視認できない状況下では、あまり積極的に切りたい手札ではなかったが。

 それからも、手当たり次第に破壊を試してみたものの、やはり変化は現れなかった。物理だけでは埒が明かない。術式を奔らせるには、どのみち〈展延〉を解く必要がある。

 

「仕方ないな」

 

 気が進まないまま、坂本が〈展延〉を解いた、――次の瞬間。

 待っていたといわんばかりに。

 

 横たわる呪術師の“(しわ)”や壁紙の“染み”や床面の“(ひび)”、そして砕けたはずの“鏡”が目蓋を開き(・・・・・)、それら皴や染みや罅や“鏡”の内側に隠れていた無数の“瞳”が、一斉に坂本を凝視した。

 

 坂本は、呪力を防御に回していたはずが、臓腑(・・)の裏側を覗かれた気がして。

 

「―――」

 

 気が付くと、視界が一変していた。

 

 眩しい白い光。青い手術ガウンを着たマスク姿の人間たちが、部屋の中央を取り囲んでいる。

 教会ではなかった。近代的な部屋の中央には手術台が置かれ、その上では、機械に繋がれた男が横たわっている。

 皮膚を斬り裂かれ、臓器が良く見えるよう胸部を抉じ開けられ、気管にチューブを挿入されている男の双眸は、開け放たれている。

 胸部から噴き出した血液がガウンに降り掛かり、マスク姿の人間たちの動きが慌ただしくなると、やがて男の双眸に、ペンライトの光が注がれた。

 執刀医がかぶりを振り、場面(シーン)が切り替わる。

 眩しい白い光。ガウンを着た人間たちの指が、台座に裸で横たわる男の口を抉じ開けて、洗浄液を流し込んでいる。

 男の肌を無造作に撫で回し、消毒用の液体を塗りたくると、ガウンを着た人間たちは男の身体に穴を開け、動脈に管を突っ込み、血液を排出すると共に防腐剤を注入してゆく。

 管と繋がった装置が、唸り声を上げている。装置の振動が大きくなり、男の体内に繋がれた管が、吸引されてゆく内臓の色で赤黒く染まり、場面(シーン)が切り替わる。

 眩しい白い光。狭い(ひつぎ)のなかで、白い花に囲まれて男が横たわっている。綿を敷き詰められた口腔は固く閉ざされており、横たえられた男のことを、次々と入れ替わるように人間たちが見下ろしてゆく。

 柩の蓋が閉じられる。

 柩の外が燃え始める。

 男の躰も燃え始める。

 花が燃える。

 肌が燃える。

 綿が燃える。

 瞳が燃える。

 炎が揺れる。

 

 男の意識が燃え尽きるまで。

 

「―――――――そうか。わかった」

 

 坂本は。姿なき“敵”の“攻撃”に対して。

 

「いいね、悪くない。気合い十分ってわけだ。ならこっちも、それなりにやらせてもらう」

 

 凍てつくほどに、低い声をして。(からだ)から滾々(こんこん)と溢るる呪いで、“敵”の結界を侵しながら。

 

「【天網皆燼(てんもうかいじん)(サイ)】」

 

 焼き尽くしてやるよ。

 

 

 虚空へと、わらいかけた。

 

 

 

 

 13.

 

 

 

「ごちそうさまでした」

 

 箸を置き、手を合わせて呟く。

 

 クーラーの効いた部屋で午前の勉強を無事に終えた一同は、昼食として〈キキョウ〉が料理したペペロンチーノを丁寧に平らげると、のんびり昼休みを過ごしていた。

 腹が満たされ、心地よい眠気が生じつつある。その誘惑に抗いきれなくなる前に、禪院真依は勢いをつけて立ち上がると、各々がまったり休憩しているのを尻目に、押し入れから掃除機を引っ張り出した。

 

「えー、もうやるの?」

 

 もっとあとでよくない、とソファーでぶつくさ言う美々子と菜々子にコロコロ(・・・・)のクリーナーを押し付け、こうなったら拒んでもしょーがねえと理解している禪院真希にモップを任せると、自身は掃除機のスイッチを入れ、スマホをタップする。

 直後ブルートゥース接続したリビングのオーディオ・スピーカーから、唸り出す掃除機の騒音に負けない声量で、爆音がシャウトした。

 フォール・アウト・ボーイの「アイ・ドント・ケア」、オフスプリングの「スタッフ・イズ・メスド・アップ」、フランツ・フェルディナンドの「ディス・ファイア」、次いでスーパーフライの「ビープ!!」、クラリスの「コネクト」、フランプールの「君に届け」といったアニメソングも流れる。

 

 坂本から多分に薫陶を受けた禪院真依の再生リストに入っているのは洋楽邦楽ジャンルを問わないタイトルの数々であり、いくら大宮八幡宮近辺の龍脈を利用して防音結界を張っているとはいえノリノリで(歌詞もよく理解しないまま)カラオケお掃除大会を開催するさまは、屋敷で暮らしていた頃しか知らない人間が見ればあんぐり(・・・・)するほど俗世にどっぷり(・・・・)染まり切った姿だったが。この場には一緒に歌って踊ったりエア・ギターする人間こそいても、激高して理不尽に怒鳴り散らす輩はいない。

 

 禪院真依は東京事変の「絶対値対相対値」を歌いながら――坂本を押し倒して「とっておきの寝技」をくらわせちゃう自分を妄想しつつ――掃除を完了すると、菜々子たちとハイタッチを交わした。

 時計を見ればいい頃合いになっており、今度はテレビの前に集まると、てきぱき呪術鍛錬用の機材をセッティングしてゆく。

 

「今日はどれにする?」

 

「最初はマリカーでいいだろ」

 

 Wii(ウィー)を起動し、ソファーに横並びに座った。任天堂のロゴに続いて「マリオカートWii」のタイトルが表示され、それぞれが操作キャラを選び、コースを選択する。

 なお呪力操作鍛錬が目的であるため、禪院真依は直接コントローラーに触ることができない。あくまでも呪力を介してボタンとスティックを操らなければならず、そのルールは菜々子と美々子にも同様だった。そして禪院真希は呪力を持たないのでコントローラーを唯一じかに操作できるが、両手には「ぴったり四〇〇キロの握力を掛け続けなければ動かせなくなる」という手袋(グローブ)型呪具を嵌めているため、一人だけ楽をしてレースに臨めるわけではない。

 

「さあってと。今日は私の全勝かなー」

 

「あらあら気が早いこと」

 

「寝言は寝て言えよ」

 

「最高速度でブチ抜く」

 

 レース開始と同時に全員がスタートダッシュを決めるも、試合が白熱するにつれて呪力操作が甘くなり、滑落するシーンが徐々に出始める。握力を「四〇〇キロ±(プラマイ)ゼロ」に留めなければならない禪院真希も精神が高揚した状態で肉体を繊細に制するのはまだ完全ではなく、つい力が入り過ぎてしまい、時おり操作不全に陥ってしまう。

 

「まってまってまってやだやだやだ」

 

「ちょおぉぉぉ」

 

「おいバカやめろおいばか!」

 

「あー!!」

 

 

「くらえっこのっ、くらえっ!」

 

「当たれ! ……なんで避けんのよ! 当たりなさいよ!」

 

「曲がれ曲がれ曲がれ曲がれ曲がれ」

 

「おいさっきからなんで私ばっか赤甲羅ふざけんな真依ぃぃぃ!」

 

「ちっ。はあぁぁぁバナナ回避とか」

 

「真希はゴリラだもんね」

 

「ゴリゴリ」

 

「うるせえよ!」

 

 

「いいの真希またコントローラー壊しちゃうんじゃない~~~~!?」

 

「うるせえ壊さねえよもう!」

 

「あ、壊れた」

 

「壊れてねえ!」

 

「壊したー」

 

「壊してねえっつってんだろ! ――あ」

 

「はいザコー」

 

「てめっこら菜々子ぉぉぉ!」

 

 

 カートの技量を競ったあとは「大乱闘スマッシュブラザーズX」を起動し、熱量を引き継いだままスマブラ大会が始まる。

 

「そろそろ飛びたいんじゃない? いいのよ飛んでも、さっさと……飛べェ!」

 

「いいかげん落ちて。……落ちろ! ……落ちろっていってるのに!」

 

「真依は星になるのがじょーずだね」

 

「ねー」

 

「ツブス!」

 

 

「プリン(鳴き声)」

 

「あ”ぁ”!?」

 

「プリプリ~(挑発)」

 

「べこべこにヘコましてやんよオラァ!」

 

 

「ねえ待って今コントローラーおかしいちょっと変だから待ってちょっとやめろ狙うなほんとやめろっ」

 

「メテオメテオメテオメテオメテオメテオメテオメテオ」

 

「アァ―――――――!」

 

「はっはー! 復帰できねえのが悪ぃんだよっ」

 

「なんでぇ……? こんなのぜったいおかしいよ……ぜったい反応してなかったのに、このコントローラーぜったい壊れてる」

 

「あぁ~~~~負け犬の遠吠えェ~~~~~~~!」

 

「……………ナメやがって。目ニモノ見セテヤル!」

 

「へへ、やってみろ……みゃっ!? どこさわっ――てめっ、本体攻撃はルール違反だろ!」

 

「直接じゃないからノーカンですぅ~~~~~」

 

「ルール違反だよなァ〈キキョウ〉!?」

 

 呪力で身体をくすぐられている禪院真希が見やると、審判役を兼ねる〈キキョウ〉は、悩ましげに腕で“(まる)…?”を組んでいる。

 

「カミは言っている、これはルール違反ではないと……っ!」

 

「じゃあ私も」

 

「おいっ」

 

「くらいなさい真希!」

 

「やめっ」

 

「「「こちょこちょこちょこちょこちょこちょ~~~~~~!」」」

 

「ふみゃぁ~~~~~~~~!!」

 

 姦しい対戦模様は〈キキョウ〉に中断されるまで続き、呪力鍛錬の成果は順調に実を結びつつあった。

 

 

 

「―――」

 

 掌印を解く。

 

 顔を上げると、視界に「帳」の降りた空が広がった。

 雨粒が頬に当たる。冷たさは感じない。

 

 (かび)臭さは消えていた。(まが)つ気配は、どこにも残っていない。

 

 指先に加えていた、不必要な力を抜いてゆく。ゆっくりと息を吸い、ゆっくりと溜めていた息を吐き出してゆく。そうすることで坂本は、先ほどまで込み上げていたモノの、燃え滓のようななにかを誤魔化した。

 

「やり過ぎたかな」

 

 見回す。長屋の教会は、錆び付いた集会案内板を除いて、影もかたちも無くなっていた。屋根も壁面も支柱もガラスも、十字架も聖母像も黒塗りの鏡も。何もかもが。完全に更地であり、おまけに眼下には、大穴が空いていた。どうやら教会の地下に空間が(こしら)えてあったようで、そこに“ナニか”が収まっていたらしいが、呪霊に関連するものすべてを「蒸発」させたがために、もはや大穴くらいしか残っていない。

 

「まあ、いいか」

 

 地元民への言い訳は、高専に任せればいい。

 

 傘を広げた。踵を返す。

 

 坂本は笑った。誤魔化しきれなかったものは、いつものように、わらって心の奥底に沈めた。

 

 

 東京に帰った足で高専に寄ると、珍しい顔ぶれを見かけた。

 

「恵、がんばれーっ」

 

 校庭で、ふよふよ浮いている呪霊二体と対峙した伏黒恵が、式神である〈玉犬・白〉を戦わせている。そんな彼に向けて、霊視できる眼鏡を掛けた伏黒津美紀(ふしぐろつみき)が声援を送っていた。

 

「坂本さん」

 

 伏黒恵に指導している夏油傑が、片手間に〈呪霊操術〉を行使しながら目礼してくる。

 

「お疲れ様。調子はどう?」

 

「まあまあですよ」

 

 そう言って笑う。嘘ではないらしい。一時期に比べれば、目の隈はだいぶ良くなっている。

 

「坂本さんは、戻りですか」

 

「そう、仙台だった。雨が降っててね。どこもかしこもジメついてて、観光の気分にはならなかったな」

 

「今年の梅雨は長引くそうです」

 

「嫌な時期だよ。呪霊にとっちゃ、恵みの雨か」

 

 汗を流し、呪力を絞りながら奮戦する伏黒恵を見物しつつ、ぽつぽつと言葉を交わす。

 

「夏油君は、ちゃんと休めてるのか」

 

「ええ。まあ」

 

「なんだよ、曖昧だな。実家に帰省とかは?」

 

「忙しくて」

 

「そりゃあ今は忙しい時期だけどな。周りがひいこら(・・・・)言ってても、きちんと休みは取れよ。君の貢献を知りながらそれに報いないほど、あの学長は恥知らずじゃないだろう」

 

 夏油傑は苦笑いを浮かべている。特徴的な前髪が、ぷらぷらと風にそよいでいる。

 

「親が生きていて、しかも仲がいいのなら。会えるタイミングで顔を出しておいたほうがいい」

 

「でもなあ」

 

「また悪い癖が出てるな。俺が言うのもなんだが、抱え込まないことだ」

 

「そんなつもりはないんですが」

 

「癖っていうのは、自分じゃ気づけないもんさ。君は生真面目過ぎるところがある。これは褒めてるんじゃないぜ」

 

「前にも言われましたね」

 

「今の君の周りには、もっと君が頼ってもいい仲間がいるだろう」

 

「悟ですか」

 

「それだけじゃないさ。教師として、そこそこ評判いいんだろ?」

 

「誰に聞いたのやら」

 

「ここの学長だけど」

 

「あの脳筋が?」

 

 意外そうな顔をするが、坂本は「シンプルな悪口」に苦笑していた。当の本人が聞けばまたぞろ青筋を浮かべるだろう。特級クソガキ元教え子兼部下二名を采配する夜蛾正道の苦労が偲ばれるが、それでも所詮は他人事でしかなかった。

 

「君の教え子なら、君から頼られれば、喜んで協力するんじゃないか。そうでなくとも、夏油傑に助けられた術師は、大勢いる」

 

「坂本さんもですか?」

 

「俺も、子供が世話になっているしな。常識の範囲内だったら協力するさ。それ以上は、“貸し”でいい」

 

「それは怖いな。あなたにこれ以上“借り”を作ると、返せなくなりそうだ」

 

「結界術のことか? あれに関しては、俺は“貸し”とは思っちゃいないけどな。あのときの君は、そのうち非術師を皆殺しにして、術師の王国でも作りかねないくらい思いつめていた。そんな鬱状態の人間から取り立てるほど、俺は阿漕(あこぎ)じゃないのさ」

 

「ですが」

 

「もし、どうしても気になって仕方ないんだったら。過労でぶっ倒れる前に休んでくれ。それで、“チャラ”だ」

 

「……いえ、それには及ばないです。ちゃんと休みますよ」

 

「ならいい。余計なお節介だったかな?」

 

「そうですね」

 

 呪力を練れなくなった伏黒恵が膝をつき、呪霊に吹っ飛ばされる。伏黒津美紀は思わず腰を浮かせるが、夏油傑に言い含められているのか駆け寄ろうとはせず、しきりに夏油傑のほうをちらちらと見ている。

 

「いいのか、行かなくて?」

 

「行きますよ。坂本さんって、わりと面倒見いいですよね。それに心配性だ」

 

「お人よしって言ってるように聞こえるな」

 

「違いますか?」

 

「違うね。俺に善人を期待するのはよせ。俺は、気楽でいたいんだ」

 

 信じていないという表情で、夏油傑は肩をすくめた。

 

「本当にどうにもならなくなったら、頼らせてもらいます」

 

「そうしてくれ。初回は割引でいい」今さら闇堕ちみたいなクソ展開は御免だからな。「そういや、お土産があるんだ。あとで皆で食べるといい。五条君に食い尽くされちまう前にな」

 

 校庭に背を向ける。高専には、幾つか用事が残っていた。

 

「硝子のところですか?」

 

 揶揄するような声に、坂本は、手だけ振って立ち去った。

 

 

 

 14.

 

 

 

 家入硝子は、医務室にいた。灰皿から煙が伸びており、本人はちょうど、棚から薬品のようなものを取り出している。

 

「あ、おじさんだ」

 

「よう、お疲れ様。これ、お土産な」

 

 自他共に認める酒豪の家入硝子は、受け取って包装を剥がすと、途端ににまにま(・・・・)笑みを浮かべる。

 

「おー。勝山じゃん。急にどうした?」

 

「顔を見に来た」

 

「なんだ。怪我したとかじゃないんだ」

 

「そのときは自分で治すさ。おいおい、今から開ける気か?」

 

「別に酔ったりしないよ。おじさんも飲む?」

 

「いいよ、俺は」

 

「そう。じゃあコーヒーね」

 

 家入硝子は、坂本が何か言うよりも先にコップを取り出すと、止める間もなくインスタント・コーヒーを注いだ。はい、とコップを押し付け、自身もオフィスチェアに座ると、別に用意した猪口に、とくとくと酒を満たしてゆく。

 軽く笑って着席した坂本にも一抹の吟醸香が届き、家入硝子は常温で一口にいくと、ほう、と吐息をこぼした。

 

「……いい酒だね。おじさんも飲めるようになればいいのに。人生の半分は損してるぞ」

 

「おまえの人生の半分は酒で出来てんのか」

 

「諸説あるな」

 

「どこ発表だよ。俺は酒には酔えないからな」

 

「酔うだけが酒の楽しみ方じゃないんだよ、おじさん」

 

 ちょっと得意そうな言い回しで、なんとなくおかしかった。「酔うのも大事だけどね」俺の人生の半分はなにで出来ているのか。ふと思ったが、それは顔には出さなかった。

 

「何かあった?」

 

「なにかって?」

 

「珍しく疲れてるじゃん」

 

「そう見えるのか」

 

「うん。何かあったんでしょ」

 

 あったとも言えるし、なかったとも言える。コーヒーに口をつけながら考えた。つまりは、いつも通りということだ。

 

「医者相手に隠すなよ」

 

「問診だったのか、これ」

 

 酒を飲みながらとは斬新だった。表情は気だるげだが、しかし双眸に茶化す色はない。

 坂本はため息を吐くと、小さく笑った。ほんとうに何でもないんだよ、と。

 

「ふるい鏡を見つけた。それで、少し昔を思い出した。それだけさ」

 

 それ以上でも、それ以下でもない。ただ驚いたのは確かだった。壊れたから押し入れに仕舞い込んでいた玩具の人形が、ひょんなところから壊れたままの顔を覗かせたような、気まずさに近い感傷がある。

 

 すると家入硝子は、なぜか坂本の前に立つと、そっと手を伸ばした。

 しなやかな指先で、子供にそうするように頭に触れてくる。

 

「おい、硝子」

 

 ぽんぽん。

 

「なに?」

 

 なでなで。

 

「なんだこれ」

 

「いい子、いい子ーって。おじさんの真似」

 

 棒読みだった。坂本は気が抜けた声を出しながら、家入硝子の手を退かせた。

 

「もう酔ったのか?」

 

「酔ってないよ。これくらいじゃ酔えないし。……ねえ、おじさん」

 

 あまやかしてあげよっか?

 

「は?」

 

 家入硝子は猪口に再び注ぎ、一息で呷ると、酒瓶と一緒にデスクに置いた。

 

「疲れ、溜まってるでしょ。甘えていいよ」

 

 そう言って、のしかかってくる。ボブカットだった以前よりも長くなった毛先が、坂本に向かって幕のように垂れ下がり、すぐ近くに家入硝子の顔がある。

 眼差しに酔いはない。酔いにも似た熱を、微かに含んではいたが。

 

「どんなふうに」

 

 触れ合いそうな距離で、囁くように問いかける。

 

「もちろん、こんなふうに」

 

 薄くルージュを引いた唇が、僅かに開かれて。

 女の匂いが、ゆっくりと降りてくる。

 

 

「―――」

 

 

 触れかける手前で、坂本の感覚は、近づいてくる音を拾った。そして思い出す。そういえば、鍵は掛けていない。

 

「……心惹かれる提案だけど」

 

 どいたほうがいいな。坂本が言うと、家入硝子は怪訝に眉を寄せた。

 

 がちゃり、とドアノブの回る音。

 

 

「硝子、入るわよ~~~~…ぉ………………………………………」

 

 

 庵歌姫が。扉を押したままの姿勢で、固まっている。

 家入硝子も。闖入者と目を合わせて、硬直している。

 

「…………………、」

 

「……………………………………………………、」

 

 完全にやらかした(・・・・・)空気を可笑しく思いながら。坂本はやんわり家入硝子を押すと、立ち上がった。

 

「惜しいけど、今日のところは帰るよ。子供にも、夕方には戻るって言ったしな」

 

 それに、と内心で呟く。今からしたら、きっと一回じゃ我慢できなくなる。

 

「でもおかげで、少し元気が出た」

 

 坂本は笑うと、自然な動きで家入硝子に近づき、浅く口づけした。

 

 当然、庵歌姫もそれを見ていて、「ひょぇっ」とよく分からない感嘆詞を叫んでいたが。坂本は顔を離すと、明らかに血色がよくなった家入硝子に、にやりと微笑んだ。

 

「コーヒー、ご馳走さん。またな」

 

 それから、壁に背を貼り付けていた庵歌姫と擦れ違いざま、彼女に言う。「硝子をよろしく、庵さん」

 

 扉を閉めた。

 

 …硝子ォ~~~~~~~!? というバカうるさい悲鳴が背後から聞こえてきたが、振り返らなかった。

 

 

 足取りが、高専を訪れた時よりも、ほんのちょっと軽くなった気がする。坂本は歩きながらくつくつと肩を揺らし、そのせいで夜蛾正道から不審な眼差しを向けられたが、些細なことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





・菜々子 … マリカーで優勝した。

・美々子 … スマブラで優勝した。

・禪院真希 … コントローラーを破壊した。

・禪院真依 … 術式研鑽の一環で様々な映像作品に触れた。そのうちオタクに(ちょっと)やさしい女子になる(かもしれない)。

・家入硝子 … センパイ………………!?

・センパイ … 硝子ォ~~~~~~~!?

・絶対値対相対値 … 歌詞に共感した(禪院真依談)。

・ディス・ファイア … 歌詞に共感した(坂本談)。





・教会の呪霊 … 教会の地中深くに封じられていた殉教者たちの呪霊。亨保の時代、拷問の末に生き埋めされた隠れキリシタンの怨念は今や忘れ去られたが、無知な慮外者が行った儀式を呼び水に現代へと蘇った。
 〈絶望を具象化する〉術式効果を持つ。「自らの意思で結界に踏み入る」、「強い悔恨を抱えている」という二つの〈縛り〉を満たす相手に発動し、対象が抱える“最も深い絶望”を肉体と精神に反映する。最大捕捉範囲は結界内に入った人間すべてであり、対象が「抱えている悔恨を誰にも打ち明けたことが無い」場合は個別で術式倍率にバフが掛かる。
 術式発動中は「絶望以外の記憶を麻痺させる」ため、一度術中に囚われると「絶望の記憶しか認識できない状態で/肉体の死か精神の死を迎えるより先に絶望を克服する」以外の対処方法がない。
 対象が“絶望に親しんだ生涯”を送っている場合、術式効果は(相対的に)弱体化される。

・一級呪術師 … 絶望を克服できず、毒蟲(呪霊)に肉体と精神を食い尽くされて消滅。呪術師に悔いの無い死はない。

・二級呪術師 … 絶望を克服できず、老い(呪霊)に肉体と精神を食い尽くされて死亡。呪術師に悔いの無い死はない。


・坂本 … 呪術師に悔いの無い死はない(なんて知ったこっちゃねえ)俺は俺が幸せになるために生きることにするよ。





















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